「速いな・・・・・・・」 ジンのプテラ、ジーテの翼で打つ。 ボールから出現すると同時に、ジーテは一瞬でクーラルを始末した。 そのスピードは、カゼマル並。 (やっぱここはカゼマルが妥当か・・・・・・?) カゼマルのボールに伸びかけていた手が、そこでストップする。 (いや・・・・・・・・カゼマルのスピードはとっておきたい・・・・・・) カイは再び考える。 (ライラで大ダメージを狙うか・・・・・・?) が、またもそこでストップする。 (ダメだ・・・・・・。ライラはなんてったって“切り札”だからな、そーゆーモンは易々と使うモンじゃねぇ・・・・・) (じゃあ・・・・・・誰で行く?) *****************  リベンジャー  第78話「穴を掘るVS空を飛ぶ」 ***************** とあるボールの中から、視線を感じた。 といっても中は見えないが。 視線という名の願望。 戦いたいという願望が、カイの脳に直接飛び込んできていた。 カイはそのボールを見たまましばらく考え込んだ後、ふうとため息をついて、 「わかったわかった、お前の度胸には負けたよ」 ボールを軽く放った。 中から現れたのは、1匹のサンドパン。 名を、スピン。 「ギャアアアアア!!」 フィールドの反対側で待機していたジーテが、スピンの姿を見た瞬間、雄叫びを上げる。 戦いの飢えを満たす相手が現れたために上げた、歓喜の雄叫び。 その雄叫びにびくりと反応したスピンだが、すぐにキッとジーテを睨む。 が、睨み返され、再びびくりと反応する。 「・・・・・・・前よりマシか。スピン!穴を掘れ!」 スピンはジーテの視線から逃れるように、急いで穴を掘り、地中へと姿を消した。 「・・・・・・・・どーゆーつもりだ?あんにゃろ」 スピンが掘った穴を見つめながら、クロがぼやく。 「飛んでる相手に穴を掘るだァ?脳みそイカレちまったのか?あいつ」 「まぁ・・・・・・カイなりに何か考えがあるんじゃない?・・・・・・・多分」 ティナがやや自信無さ気に言う。 「あ、あの、私ちょっと思ったんですけど」 キキが遠慮がちに切り出して、皆の視線が集中する。 「穴を掘っている状態でも、地震でダメージを与えることって、出来ますよね?」 「そうだけど、それがどうかした?」 キキが何かを確かめるように訊いてきたので、ユウラが不思議そうに答えた。 「ジーテ・・・・・・・・地震できるんですけど・・・・・・」 3人と1匹の表情が、凍りついた。 (・・・・・・・・どうゆうつもりだ?) ジンはカイを鋭い目線で見つめる。ほとんど睨んでいるといってもいい。 ジーテが指示を催促するかのように首だけこちらに向けてジンを見下ろしているが、ジンはジーテに見向きもしない。 (カイほどのトレーナーなら、プテラが地震を覚えることは承知済みの筈・・・・・) 微笑しながらこちらを見ているカイ。 それを睨み返すジン。 (試している・・・・・・・?) その時だ。 何かが地表を突き破り、ジーテの背後を襲う形で飛び出した。 無数の刺状の突起物を装備した、謎の影。 「ジーテ!」 「ギャア!」 ジンの声とジーテの雄叫びが重なった。 すぐ様振り返ったジーテがその硬い翼をその影にぶつけようとする。 一撃をくらい、ただダメージを食らっただけに終わった影は、重々しい音を立て、地面に転がった。 転がった影の正体を見て、ジンは目を見開いた。 少しばかり彫刻され、簡単なサンドパンの形をした、ただの岩。 「岩!?・・・・・・しまった!」 再び何かが地表から飛び出し・・・・・・・・。 翼で打ったばかりで無防備状態のジーテの顔面に突っ込んだ。 体を無数の刺で覆った、本物のスピン。 顔をしかめるジーテを他所に、スピンは再び地中へと姿を消した。 「スゲェなアイツ!彫刻家になれるぞ!」 いつものクロのやかましい声を耳元で聞いているユウラは、どんな気分なのだろうと、ティナはなんとなく疑問に思った。 それから数秒後のことだ。 再び何かが、地表から飛び出した。 しかも3つ。 どれも刺を持っていた・・・・・・が。 「ジーテ!全部ニセモノだ!」 そう、ジーテを取り囲むように舞い上がったその3つの影は、何もせずに落下していった。 「あ、やっぱ気付いたか」 カイが悪戯がばれた子供のように、呆然と呟いた。 が、すぐに口元に笑みを浮かべる。 「なァジン。お前、下ばっか見て何か見落としてねぇか?」 カイが妙に自身ありげに言うので、ジンは頭の上に?マークを浮かべる。 が、すぐに事の重大さに気付く。 ジンは慌てて上空を見上げた。 ジーテよりも、はるか上空を。 太陽を背に、スピンがボール状態で落下してきたのだ。 悲鳴を上げるジーテに乗っかったまま、スピンはジーテを地面に叩きつけた。 跳ね上がり、空中で丸まりを解いたスピンはすぐに体制を立て直し、両腕を地面に向けて落下する。 「あれは・・・・・」 「スピン!地割れだ!」 ダメージを負った体を起こし、立ち上がろうとするジーテのすぐ側で、スピンは地割れを放った。 「・・・・・・器用なサンドパンだな。カイ。  いや・・・・・・・・・逆に臆病とも言えるか」 地割れを受け、戦闘不能となったジーテをボールに戻しながら、ジンはうめいた。 巨大な地割れで荒れ果てたフィールド。 これでジンの手持ちポケモンは、残り3体となった。 「打ち上げた岩にへばりつき、さらに岩からジャンプしてジーテの死角をついた・・・・・。  そんなところだろう。だがな・・・・・・・・」 ジンがゆっくりと、スピンを指差した。 突然指差され、ギョッとするスピン。 「お前のサンドパン・・・・・・・・スピンはもう戦えない」 「・・・・・・・・・は?何言って・・・・・・・」 その時だ。 スピンの背後から、何かか飛び出した。 飛び出した何かは一瞬でスピンの腕に噛み付いた。 そして――― 「ギガドレイン」 「サンドパン戦闘不能!アーボックの勝利!  カイ選手、残り3体!」 「・・・・・・バケモンだな、ジンのポケモンは」 ボールに吸い込まれるスピンを見届けながら、コウが呟いた。 「穴を掘る音すらしなかった・・・・・・・・素早さが異常だ。  ジンもいつアーボックを出したか分かりゃしねぇ・・・・・・」 「お兄ちゃんのアーボック・・・・・・ジークは相手を瞬殺することを生きがいとしています」 キキが説明口調で語りだした。 3人と1匹が耳を傾ける。 「瞬時に相手に近寄り、巻きつき、牙を刺し、毒を送り込む、またはギガドレインで体力を吸い取る。  これがジークの基本的な戦闘方法です」 「・・・・・・・・・」 3人が黙り込む中、クロは何か考えているように見えた。 そして・・・・・。 「ユウラよ」 「何?」 「俺は今の説明を聞いていて、思ったことがある」 「?」 クロがジークをじろりと見て、 「俺とあのアーボックと絶対友達になれねぇ」 「いや、別にムリに友達にならなくてもいいんじゃない?」 カイは腰のボールの中にいる戦闘可能のポケモンを確認しながら、考える。 ジンの残りポケモンで分かっているのは、今目の前にいるアーボックと、ニューラ、そしてカイの知らない1匹。 (ジンの野郎、予選でジール以外全然使ってなかったからな・・・・・・。  ティナ戦でわかったニューラ・・・ジーニを除いて・・・・・・謎の1匹。これがわかりゃあ苦労しねぇ・・・・) カイの手が、無意識にボールの1つを手にとった。 (ま、逆に分かってたらつまらねぇか) 「うっし・・・・・・・行け!リング!」  つづく  あとがき コウ「オイバカ作者!」 YAN「ん?どうした?つーかバカって言うな、バカって」 クロ「これ見ろこれ!」 YAN「何だこの紙・・・・・・。何ィ!?ホントにレギュラー全員の署名集めてきたのか!?」 コウ「フッフッフ・・・・・・・どーだ!俺達の実力!」 クロ「これで俺達に出番が増えるってことだな!」 YAN「・・・・・・・・・・・」 クロ「(小声)おいコウ!何か疑るような眼で紙見てっぞ!バレたんじゃねぇか!?」 コウ「(小声)い、いや!俺の血と汗と涙と胃液の結晶はそう簡単には・・・・・・」 クロ「(小声)胃液はダメだろ」 YAN「おい」 コウ・クロ「な、何だ!?」 YAN「これ・・・・・・コウ、お前の字だろ」 コウ「!!?な、何で分かったんだ!?」 YAN「いや、確実に汚いんだけど。この字」 クロ「ち、畜生!おいコウ!テメェもうちょっとマシな字ィ書けよ!」 コウ「何をぅ!これでも精一杯書いたんだぞ!」 YAN「精一杯って・・・・・・・なんだよこの字、アーボが躍ってるような字だな・・・・」 コウ「そこまで言うなァァァァァ!!」 YAN「・・・・・・・・そーいや、全然今回の話について語らなかったような・・・・・・・」