「何だ・・・・・・・・・」 戦闘不能になったジーキをボールに戻しながら、ジンがうめく。 「ヤツのハッサムは一体・・・・・・」 *********  リベンジャー  第81話「終戦」 ********* 「信じられねーって顔だな、ジン」 カゼマルをボールに戻したカイが、微笑しながら聞いてくる。 ジンは睨んでそれを返す。 「なーに、簡単なカラクリさ。  カゼマルが4本の刃を回転させて、かまいたちの渦を作り出した。  ジーキはそのかまいたちの渦のド真ん中にいただけのこった」 「・・・・・・・わからん」 「なんだよ、この説明で大体・・・・・・・」 「技の内容はもうわかった。俺が分からないのは他のことだ」 「他のこと?」 ジンは少し前を置き、 「お前のハッサム、カゼマルの潜在能力だ」 「へ?」 予想していなかったことなのか、カイは訳がわからないという顔をする。 「このバトルを振り返って思った。  カゼマルは普通のハッサムの限界を・・・・・・いや、ポケモンの常識を覆す力を持っていた。  どんな鍛え方をしたらあんな力を持つ?」 「どんなって・・・・・・・・・普通に鍛えたぜ?フツーに」 「・・・・・・・・・」 ジンは何も言わなかった。 代わりに6つ目のボールを手にとり、申し訳なさそうに告げる。 「すまない・・・・・・・いらんことを訊いた。  バトルの続きをしよう。  そして・・・・・・・・終わらせよう。最後の戦いだ」 「え〜と、2人の残りポケモンは・・・・・・・」 ユウラの頭の中に今まで登場したポケモン達の顔ぶれが浮かぶ。 そうやって考えてる中、ティナが、 「カイの残りポケモンはライちゃんだけよ」 と告げる。 「お兄ちゃんの最後の1匹はジーニです」 キキも言う。 「ふ〜ん・・・・・・・さすがティナね、カイの残りポケモンをすぐに割り出すなんて」 と、ユウラが意地悪そうに言う。 ティナは少し赤くなりながら、 「ちょ、ちょっと!それどーゆー意味!?」 一方、いつもの五月蝿い1人と1匹は、 「カーイ!遠慮せずに一気にぶっ潰せェェ!!」 「秒殺だ!いや、瞬殺でいけェ!!」 と、相変わらず五月蝿い。 「ジーニ、お前が最後だ。気を引き締めていけ」 ジンのニューラ、ジーニがカギヅメをシュシュッと振る。 「さぁ行くぜェ・・・・・・・・・・チーム一の実力者!ライラ!」 カイが、その最強の電気ねずみの入ったボールをブン投げる・・・・・・・。 スタジアム内の観客達が、ざわめいた。 カイの6匹目のポケモン、ライチュウのライラを見て。 今までのバトルで、ハガネールを打撃だけで倒したり、1匹で相手トレーナーのポケモンを全滅させたり・・・・・・・・・と、ライチュウとは思えない武勇伝を持っている。 ライラの表情は、厳しかった。 何かを、覚悟しているかのような、そんな表情。 「うっし!まずは一発入れて調子つけるぜ!ライラ!爆裂・・・・・・・」 カイの言葉は、そこで途切れた。 「・・・・・・・なんだァ?あの構えは・・・・・・・」 クロが、ボソリと呟く。 ライラの構えが、妙だった。 己の尻尾を両手に持ち、その先をジーニに向けている。 明らかに頭に【爆裂】という言葉のつく技には見えない。 「!?まさか・・・・・・・」 ティナはその構えに見覚えがあるようだった。 口に手をあてたまま、呆然とライラを見やる。 「ティナ、何か知ってるの?」 ユウラが訊くが、ティナは顔も向けずに、呟く。 「まさか・・・・・・・・でも・・・・・・あの技は、まだ・・・・・・・」 「何のつもりだ?」 『何のつもり?』 ジンとジーニが、カイとライラに訊いてくる。 「何のつもりだなんて訊かれてもなァ・・・・・・・・ライラの独断だし」 と、後頭部に手をやってぶっきらぼうに答えるカイ。 ライラは尾を持ったまま、目を瞑り、集中する。 カイは少し考え込んだ後、口を開けた。 「ライラ・・・・・・・お前、まさかアレやるつもりじゃねぇよな・・・・・・・?」 電気ねずみの後姿は、何も答えない。 決心が固まっていると気付いたカイは、ハァとため息をつき、 「べっつにいいけどよ・・・・・・・・まだ1回しか成功してねぇじゃねーか・・・・・。出来んのか?」 やはり、答えない。 カイも、決意を固めた。 「・・・・・・わーったよ!お前のバクチに付き合ってやらァ!」 カイが、叫ぶ。 「ライラ!“巨雷剣”だ!」 ライラの身体に変化が起きた。 全身から電気があふれ出ると、その全ての電気が尻尾の先に集まっていく。 雷の形をした、ライチュウ特有の尻尾へ。 最も電気を発している頬の電気袋からは大量の電気が流れ出している。 その後も、電気は流れ続けた。 その光景を、ジンは、ジーニは、観客達は呆然と見届けた。 電気の流れが、止まった。 体内の電気が全て注ぎ込まれたその尻尾は、時折電気を漏れ出しながら、バチバチと音を出している。 ライラは尻尾を右手だけで持ち、空を斬るかのように左から右に薙ぐ・・・・・・・・。 「!!?なんだありゃあ!!?」 いち早く、クロが驚愕する。 ライラの尻尾に注ぎ込まれた電気が一気に開放され、雷型の尻尾が巨大化したかのように見えた。 そう見えてしまっても、おかしくは無いだろう。 雷型の尻尾を、全長5mほどの巨大な雷型の電気が包み込んでいた。 その姿、まさしく電気の刀。 電気の刀はバチバチと鳴りながら、その巨大な勇姿を見せ付けている。 観客達は、もう声も出なくなっていた。 「さぁて・・・・・・・ここまではいいんだよな・・・・・・」 カイはあまり乗り気じゃないのか、やややる気無さげに呟く。 修行のとき、ライラは1度だけこの技を発動させることに成功した。 が、出現しただけで、振ることもなく消えていった。 しかもそれだけでライラの疲労は頂点に達してしまうという欠点もある。 「なァライラ・・・・・・・それ、振れんのか?」 「・・・・・・・・」 肩で息をしているライラは、何も答えない。 何も答えないことが、カイに対しての答えだった。 「覚悟の上・・・・・・・・か」 「なんだそれは・・・・・・・・・」 呆然としたジンの言葉。 カイが答える。 「まァ・・・・・・・なんだ、バクチってヤツだ。  コイン1枚でスリーセブンを狙うくらいの儲かる可能性が極めて低いバクチさ」 「賭け事はあまり好きではない・・・・・・・・・が」 ジンが呟く。 「その覚悟、しかと受け止めよう。・・・・・・・ジーニ!」 ジーニが、両腕を地面に突き刺した。 「さぁ来い。俺とジーニはそれを全力で受け止めよう」 「ライラ!」 ライラが巨大な雷の剣、“巨雷剣”を振りかぶる。 「ジーニ!」 地面に突き刺さったジーニのカギヅメが、冷気を発する。 スタジアムが、静まり返る――― 「“雷神光刃斬”!!!」 全力で振られた“巨雷剣”から、その巨大さに匹敵する大きさの電気の刃が飛び出した。 その姿、光の剣ともいえる。 光の剣は地面と水平に、真っ直ぐジーニに向かって飛んでいく。 「“氷結の大地”!!!」 ジーニのカギヅメが光り輝き、大量の冷気を出すと同時に、波状の氷が飛び出した。 その姿、氷の津波ともいえる。 氷の津波は地面を凍らせ、バキバキと音を出しながらライラに向かっていく。 光の剣と氷の津波がぶつかる瞬間、思わず目を覆ってしまうほどの光がスタジアムを覆った。 観客席の中で、唯一眼を閉じていない人物が、1人。 コウだ。 眼を覆った両手の隙間から、コウはその瞬間を目撃していた。 光の剣が、氷の波を切り裂き、ジーニにヒットする瞬間を。  つづく  あとがき クロ「うわっ!短ぇ!」 コウ「手抜きだ手抜き!作者としてあるまじき行動だ!」 YAN「うっさい、黙れ」 コウ「しっかしアレだな。決勝さ、時間かかりすぎだろ、何話分使ってんだ?」 YAN「え〜と、76話から決勝始まって、終わったのが今回の81話・・・・・」 クロ「5話分?」 YAN「そーだな、5話分だ」 コウ「かかり過ぎたテメェ!」 クロ「5話もあったらアレだ!ちょっとしたラブロマンスでも書けそうだぞ!?」 YAN「いや、ラブとか得意じゃないし、つーか何故にラブ?」 クロ「なんとなくだ!俗に言うノリだ!ノリ!」 コウ「今回も変な技出しやがって!」 クロ「巨雷剣(きょらいけん)やら雷神光刃斬(らいじんこうじんざん)やら変なモンばっか!」 YAN「変なモンとはなんだ、変なモンとは。巨雷剣は結構自信作だぞ?」 コウ「変だ!俺から見りゃ変だ!」 クロ「そーだそーだ!」 YAN「こっちから見ればお前らの存在のほうが変だ」 コウ・クロ「うっさい!黙れ!」 YAN「パクんな!」