まず吹き飛んだのは、最前列にいた3体。 1つは真っ二つに切り裂かれ、また1つは強力な拳で殴り飛ばされ、また1つは念力で捻じ曲げられる。 問題は殴り飛ばされたヤツだ。 「チッ・・・・・・・」 ジンの横をエネルギー弾が通り過ぎる。そう、まだ動いているのだ。 胴体がやや凹んだ程度のダメージしか見られない。 「意外と・・・・・・・頑丈だな」 *************  リベンジャー  第86話「遅過ぎた認識」 ************* 「デスグラビティ!」 紫の炎を灯らせたエデンの左腕が、床を叩く。 その先にいた卵型ロボットがぐしゃりと嫌な音を立てながら潰れていく。 『・・・・・・・・・・・・』 エネルギー弾を乱射してくる5体を相手に、カゼマルが切り込んでいく。 弾の雨をすいすいと避けながら、一気に距離を詰めていく様は圧巻だ。 『試すか』 瞬時に、カゼマルの刃が煌く。 腕、足、胴を縦に、胴を横に、そしてカメラアイをそれぞれ一撃。 動かなくなり、倒れたのは・・・・・・・・。 『・・・・・・・・どうやら』 機能停止したのは、胴を縦に、横に、そしてカメラアイを潰された機体のみ。 まぁ胴体を真っ二つにされて動けたら異常だが、カメラアイを潰されて動かなくなった所を見ると、どうやら弱点は・・・・・・・・。 『カメラアイ』 カゼマルのメタルクローが、残りの2体のカメラアイに炸裂する。 一方、エデンはというと・・・・・・・。 「エクスプローション」 近距離で放たれた爆発が、ロボットのカメラアイどころが胴体の半分を微塵に吹き飛ばす。 「ぬん!」 カメラアイに突っ込まれていた腕を無理やり引き抜くジン。 バチバチと音をたて、倒れるロボット。 「・・・・・・・成る程な」 数分後。 メタルクロー、黒炎拳、サイコキネシスが、同時に最後の1体に炸裂した。 もはや原形をとどめぬほどに破壊されたロボットが、力なく倒れる。 「で、なんだったんだ?コイツら」 カメラアイが潰れたロボットの頭部らしきパーツを持ち上げる。 ぐしゃぐしゃなカメラアイの破片に、カイの顔が映りこむ。 「侵入者を排除する・・・・・・・警備ロボットってとこか?」 「おそらくね。ジェド博士作でしょ」 そう言ってユウラが持ってきたのは、これまたロボットの破片。 それも、肩のパーツだ。 「見て。ここに【J1】って書かれてる。  Jってのが、ジェド博士のマークだと思うんだけど」 「面倒だな」 「何がだよ」 既に偽獣を解いたジンがこぼした言葉。 それがカイにとって妙に引っかかった。 「俺の記憶が正しければ、この下の階・・・・・・・つまり地下2階だな。そこにある大部屋にも妙な言葉が書いてあった」 「J2?」 「それだ」 ジンの視線が、部屋中に転がる無残なロボットの残骸を一瞥する。 「J2が・・・・・・・・コイツらJ1と同じとは限らない」 「強化型ってか?」 「おそらくな」 「お・・・・・・・・・扉だ。また部屋か?」 「いや、違う」 考えていても仕方が無いということで、再び歩き出した一行。 通路の先に待ち受けていたのは、またも扉。 先ほどとは違い、横の壁になにやらボタンがついている。 どこかで見たことあるような、ボタンの配列・・・・・・・・。 「エレベーターじゃねーか?これ」 クロの言葉に、全員が納得した。 「非常電源が入ってるから・・・・・・・・・多分動くと思うんだけど」 ユウラの指が、ボタンをなぞる。 ここから地下2階、そして地下3階までいけるようだ。 「意味無かったな、J2」 「確かに」 カイとティナはとりあえずホっとしておく。 地下2階にJ2が待機していたとしても、彼らはすでに地下3階まで来ていた。 エレベーターが直通だったことに感謝する。 地下3階は地下1階と比べて薄暗く、どこか不気味な雰囲気をかもし出していた。 「こーゆー場合って、地下2階からしか地下3階に行けないっていうのが定番だと思ったんだけどな」 「そうそう!俺もそう思ったんだけどなー!何か拍子抜けだ」 「静かに!」 コウとクロの雑談が、エデンによって沈黙した。 立ち止まった一行。 「どうしたの?」 キキがエデンの顔を覗き込む。 「また・・・・・・・・聞こえた」 「ここだ」 そこも、やはり扉だった。 緊張の糸が張り詰める。 先ほどの件と同じような現状なら、この先には地下3階の番人、J3がいるはずだ。 「この先から・・・・・・・機械音が聞こえた」 「うっし!今度は俺が始末したる!」 コウが指を鳴らしながら前へ出る。 「平気か?J1と同じとは限らんぞ」 「大丈夫だろ。さっきの奴らだってお前ら楽に潰してたじゃねーか」 「まぁ確かにそうだが・・・・・・・・」 エデンの心配を他所に、コウがボールを放った。 中から現れたのは、カイリューのリュウ。 「破壊光線!!」 轟音と共に現れた閃光が、扉を粉々に吹き飛ばす。 白煙が立ち込める部屋の中へと悠々と進んでいくコウとリュウ。 その後姿が、ふと止まった。 白煙の向こうに見える光景に対し、一言。 「へ・・・・・・・・・?」 ロボットなのだが、先ほどの卵形とはうって違い、スマートなボディ。 丸みは程ほどで、無駄な部分が全く無い。 卵形と大きさはあまり違わないが、その雰囲気は違った。 鋭い爪。獣をかたどった、好戦的な作りをした頭部。 必要なのかは知らないが、何本か牙が覗いている。 全員が部屋の中へと入っても、ロボットは動かない。 通路に通じる扉の前を護るように陣取ったロボット。 どうしたらいいか分からず、しばし呆然となる一同。 そんな中、ユウラがコウの肩をポンと叩き、 「じゃ、よろしく」 「よろしくされてたまるかァ!!なんかヤバ気じゃねーかアイツ!  もうちょっとでも近づいたら今にも襲い掛かってきそうだぞ!」 「じゃ俺がやる」 「よし!まかせたってええ!?カイ!?」 堂々と前へ出るカイ。 その手には、古いモンスターボール。 ロボットのカメラアイに変化が起きた。 黒いカメラアイが魂でも注入されたかのように赤い輝き、さらに体が起動する。 カメラアイが一同を右からゆっくり観察するかのように移動していく。 止まった。ボールを構えたカイの所で。 その姿が静かにロックオンされ、ロボットが片言で呟いた。 「敵意ヲ感知。侵入者トミナシ、抹殺スル」 その攻撃は唐突だった。 ロボットが振りかぶった右腕が、ロケットパンチの如く飛んできたのだ。 その攻撃を受け止めたのは、赤い影。 「ここは俺が食い止める!みんなは先に行け!」 「心配か?」 「え?」 走りながら訊かれたティナ。 その横に、ジンのポーカーフェイスが見える。 「ヤツは強い・・・・・・・・あんな鉄の塊には負けん」 「で・・・・・でも・・・・・・・・」 やはり心配なのか、先ほどからしきりに振り向いている。 時々聞こえる謎の轟音、打撃音が、ティナの不安を膨らませる。 「ヤツの残した言葉を忘れたか?」 ―――俺は平気だ!すぐに追いつくから、心配すんな!――― 「忘れたわけじゃないけど・・・・・・・・でもやっぱり・・・・・・」 「信じろ」 「え?」 「仲間の言葉を信じろ。信じられぬ相手なら、それは仲間とは呼ばない。  ヤツが必ず追いつくことを信じるのが、お前の勤めだ」 「こりゃまたデッケェな〜・・・・・・・無駄にデカイ」 彼らの前に立ちはだかったのは、巨大な門のような扉。 明らかにこれまでの扉とは違う雰囲気をかもし出す、不気味な扉。 コウはそれを遠くの山を眺めるように見え上げる。 「ここが最深部だろう・・・・・・・・。  ?どうした、キキ」 「え・・・・・・・?」 自分でも気付いていなかったのか、キキは疑問符を返す。 扉を見ず、これまで走ってきた道を見つめている。 薄暗い通路。もし戻っても、カイの元へは帰れないのではないかと考えてしまいそうな闇が続く。 「心配するな。ヤツはきっと追いつく」 「うん・・・・・・・そうだよね」 「チッ・・・・・・・」 エデンの放ったエクスプローションは、扉に傷一つ付けなかった。 この扉だけ、硬度が絶大に高い。 ユウラが扉を触ってみたり、叩いてみたり、扉の横に何かついてないかと探してみたり。 が、何も見つからない。 「どーする?エデンの攻撃で傷一つ付かないとなると、お手上げなんだけど」 ・・・・・・・・・・刹那。 重々しい音と共に、扉が両開きに開いた。 「え!?」 驚く一同。 だが、一番驚いていたのは扉を開けた当の本人、エデンだった。 「なんか・・・・・・・・念で捻じ曲げて穴を作れないかと扉にサイコキネシスを放ったら・・・・・・」 「開いちゃったと?」 「ああ・・・・・・・・」 「なんだここ」 コウがそう呟くのも無理はない。 部屋はこれまでよりかなり広い造り。 天井がやけに高い、何かの研究室のような場所。 そう思わせたのは、奥に並ぶコンピュータ。 さらに、そのもっと奥、部屋の一番奥に・・・・・・・・。 「・・・・・・・・俺の予想、当たってたんじゃないのか?」 ジンの言葉は、正しかった。 ミサイルだ。 巨大でとても危なそうなミサイルが、部屋の一番奥に設置されている。 しかもそれが置かれているのは、発射台のような台座。 その前に並ぶコンピュータが、このミサイルを管理する端末だろう。 そんな巨大ミサイルよりも、もっと気になるものがあった。 コウとユウラが、揃ってそれを見下ろした。 部屋のど真ん中に設置された奇妙な台座に、見たことのないモンスターボールが置かれている。 いや、置かれているとはいえないのだが・・・・・・・。 通常のボールの赤い部分が紫で、さらにMの文字。 「そいつはマスターボールだな」 ジンが一度見たことがあるかのように、呟いた。 まぁロケット団内部にいれば、マスターボールは幾度となく目にするが。 どんなポケモンでも捕獲し、最高の強度を持つボール、それがマスターボール。 そんなマスターボールが・・・・・・・・。 台座の上で、バラバラに砕かれていた。 それがマスターボールだと分かったのは、奇跡的に破損していないMの文字のおかげ。 その時、エデンの記憶の糸が、逆戻りする。 この秘密研究所に入る前に見た、ジェド博士の日記。 その中にも、確かマスターボールについて・・・・・・・・・。 ―――――!!? エデンが不意に天井を見上げた。 そこに、ヤツはいた。 機械的な片言で、そいつは呟いた。 「侵入者発見。全力ヲ持ッテ、排除スル」 機械の仮面の奥で、青い眼が光り輝くのが見えた。  つづく  あとがき YAN「フッフッフ・・・・・・・・待っていたぞ」 キキ「え?あ、どうもこんにちは」 YAN「いやいやこちらこそってぅおい!何故に初対面!?    まぁ確かに初対面だけど、一応知っとくべきだろう!?」 キキ「あ、もしかして、この小説の作者さん?」 YAN「・・・・・・・・・天然?」 キキ「最後のエデンが見つけたのって、一体何なんですか?」 YAN「イキナリ核心めいた質問はよしなさい。これからがつまらなくなるでしょーが」 キキ「気になってたこと訊いてもいいですか?」 YAN「へ?」 キキ「カイさんは無事なのか無事じゃないのかハッキリしなさい〜!!」 YAN「あ、ちょっと首絞めないで。妙な関節技かけないで。    ・・・・・・・・・はうッ!!」 キキ「あれ?気絶しちゃった。なんか変なもの蹴ったような・・・・・・・・。    気のせいかな・・・・・・・・・?」