何かが鉄の床を蹴り、走り出す。 ジグザグに黄色い軌跡を残し、瞬時にカオスに接近。 カオスのどてっ腹に渾身の体当たりをくらわせた。 ************  リベンジャー  第89話「最強生命体」 ************ やはり壁を張り遅れ、それ以外に何も対策を立てていないミュウツーの体が吹っ飛ぶ。 が、あまりダメージがないのか、機械の鎧を纏ったミュウツー・・・・・・カオスは平然と起き上がり、偽獣の効果でキュウコンの姿となったキキを見つめ、呟く。 「レベル改訂。危険レベルS。最優先デ排除スル」 向けられた機械の腕が、怪しく光り・・・・・・・。 それ以上の動作が行われる前に、キキの跳び蹴りがカオスの仮面にヒットした。 無抵抗に吹っ飛ぶカオスをほうって、キキが叫ぶ。 「皆さん!私がカオスに大きな隙を作ります!  そうしたら皆さんのポケモンで最も強力な攻撃を仕掛けてください!」 一瞬、呆然となる一同だが・・・・・・・。 最初に口を開いたのはコウだった。 「よっしゃ!まかせときなァキキちゃん!!」 ユウラとティナも賛成したことを表すかのように、ボールを手にとる。 エデンも傷ついた体を自己再生で癒しながら、頷いた。 「排除スル・・・・・・」 そうカタコトを呟きながら起き上がったカオスを確認しながら、キキが大きく跳躍した。 9つの揺れる尻尾が、その先端にスピードスターを装着し、さらに炎で包み込む。 炎の嵐が襲った。 「“九つの流れ星”!!」 炎を纏った9つの流れ星が、綺麗に曲線を描きながらカオスに集まっていく。 その全てが、水色の壁に遮られるが――― 何処からともなく現れた別の流れ星が、カオスを真後ろから襲った。 流れ星の何発かが生命維持装置にヒットして苦しみながら、彼は肩越しに攻撃者を確認した。 キキとは違う、別のキュウコン。 そのキュウコンが大きく跳躍して、キキの隣に着地し、振り返る。 「いくよ、イリス!」 キキのキュウコン・・・・・・・イリスがその9つの尻尾を扇状に広げると同時に、キキも己の尻尾を扇状に広げる。 美しく広げられた18つの尻尾の先に、炎を纏った星。 「“無限の流星群”!!」 撃ちだされた18つの流れ星。 がしかし、カオスは当然のように全ての攻撃が壁に遮断し・・・・・・・。 そこで違和感に気付く。 もうすでに18発の流れ星を打ち消したはずなのに、攻撃は止む気配を見せない。 それどころか明らかに弾数を増やして発射されてくる流れ星・・・・・・・。 そう、彼女たちは全ての流れ星を放ち終わった後に、さらに連射していたのだ。 無限の如く襲い掛かる流れ星に、ついにカオスの壁にヒビが生じて・・・・・・・。 一際大きな音を立てて、エネルギーで生み出された壁が割れた。 割れた後も襲い来る流れ星を立て続けに数十発受けて、ぐらりと傾くカオス。 「皆さん!今です!」 「うっしゃあ!!」 彼流の掛け声と共に、コウがボールを放つ。 中からは彼の相棒、エレブーのエレクが飛び出す。 スカイアッパー風の雷パンチが、倒れかけたカオスを打ち上げるの様に捉える。 本当に打ちあがったカオスを襲ったのは――― 「出番待ちキーック!!」 ボールの中でそわそわしていたヤミカラス、クロだった。 殆ど下へと叩きと落とす様に放たれたクロのキックはカオスの腹に見事に決まった。あまり似合っていないが。 急降下するカオスを下で待ち受けていたのは、4本腕のポケモン。 「え――!?」 そのポケモンを凝視するキキの目が、おのずと高台の上へと移った。 その高台から、ニョキっと腕が一本と飛び出していて・・・・・・・。 握られた拳から親指だけが天を向き、その腕の持ち主が、4本腕のポケモンに静かに指示を出した。 「ジーキ・・・・・・・四連爆裂パンチ」 ジンのカイリキー、ジーキの4つの光り輝く拳が、カオスの背中へと叩き込まれた。 ピンボールの玉のように、カオスの体が再び打ち上げられる。背中の機械が、またもバチバチと嫌な音を発する。 そんなのにはお構いなしにカオスを襲うのは、大きな貝殻。 ティナのサイドン、サイクスによって投げられたその大きな貝殻が、カオスの目の前でガコンと開く。 中から現れた口が、ニヤリと笑った。 「シェルド!大爆発!!」 今までで一番大きな轟音が、部屋中に鳴り響いた。 黒焦げになったパルシェン・・・・・シェルドが煙の中から現れ、ゴロンと転がるのを尻目に、カオスの体も煙の中から現れる。 シェルドとは違いボロクズのようになったカオスの体が、ドタッと重たそうな音を立てて不時着した。 それでもなんとは立ち上がろうとするカオス。至近距離で大爆発を受けて立ち上がろうするカオスはもはやポケモンではないように見える。 何とか立ち上がったカオスの体が、不思議と動かなくなる。 ユウラのバタフリー、テフナがばらまく痺れ粉で、カオスの体が麻痺したのだ。 「損ショ・・・・ウ率・・・・・・・88パー・・・・・セ・・・・ント・・・・・・。  麻ヒ症ジョ・・・・・ウニ・・・・・・ヨリ・・・・・・コ・・・・ウ動制限・・・・・・・5ジュ・・・・・%低下・・・・」 とりあえず体の症状を読み上げた後、カオスの腕が光りだす。 「自己再生・・・・・・か。もはや手遅れだ」 カオスの背にあてがわれた、エデンの左手。 その掌を中心に、大きな魔方陣が現れる。 エデンの紫の瞳が、幾分か鋭くなる。 「もう終りだ・・・・・・観念しろ」 魔方陣が、一際大きな光を発して――― 大爆発をも大きく凌駕する爆音が、研究所内に響き渡った。 ミサイルの残りタイムリミットが、丁度20分を切った瞬間だった。 地を揺るがす大爆発の後に残る、わずかな余韻と白煙。崩れる壁の破片。 白煙の向こうに見える、巨大な穴があいた壁。 さらにその穴の向こうに、青い空と海がかすかに見える。 「・・・・・・・」 左腕をゆっくりと降ろしたエデンの眼が、穴の入り口で倒れている物体を捕らえた。 足をこちらに向け、うつ伏せに倒れているミュウツー、カオス。 全身の機械が砕けており、色を変え、そして傷を治せばエデンとなんら変わりない姿で、最強生命体は倒れていた。 顔も床に突っ伏して、眼をあけているかどうかすら分からない。 「死ん・・・・・・だの?」 恐る恐るカオスを覗き込むユウラ。 その肩の上で、クロも興味津々に覗いている。 「恐らく・・・・・な」 エデンが右手で左腕を掴みながら、言う。 「我が最強の秘技、デス・ハザードを至近距離で受けたんだ。  壁すら張る隙を与えずに・・・・・・な」 (ヤツはこれでも生きていたがな) 皆の緊張は解けない。 まだ、やり残してることがあるから。 「ふ〜・・・・・・・・・とりあえず一段落・・・・・・ってワケでもねぇな」 コウの眼が自然と発射を待つミサイルに吸い寄せられる。 「コレ、ぶっ壊したりしたらマズイかな?」 「ここで爆発してみんなお陀仏でしょうが」 ティナの物言いにより、コウの提案は却下。 「あの・・・・・・私、他にも気になることがあるんですが・・・・・」 今度は偽獣を解いたキキに視線が吸い寄せられる。 胸の前で手を組みながら、キキは心配そうに告げた。 「カイさん・・・・・・・遅すぎやしませんか?」 全員ハッとなって、この部屋に入る際に使ったドアを凝視する。 あの部屋でカイと別れて数分立っている。カイはこちらの進行を阻むガードロボ、J3をひきつけ、皆を先行させた。 もうあのロボットを片付けて現れてもよさそうなのだが、カイは一向に現れない。 「確かに遅すぎる・・・・・・・・ヤツがあんなガラクタ相手に負けるとは思えん・・・・・」 高台の上で半身だけ起こしたジンが呟く。 コウも我が親友を心配してか、顎に手を当てて呟く。 「確かに遅ぇな。道草でも食ってんのか?」 「この研究所の何処で道草食うのよ」 ユウラにツッコまれ、コウの推測は却下された。 (カイ・・・・・・あんたまさか・・・・・・) ティナの頭の中に、あまり考えたくない状況が浮かぶ。 それを無理やり振り払うが、やはり・・・・・・・。 (死んだりしてないよね・・・・・・・?カイ・・・・・・・) カイを信用して通路には戻らず、先にミサイルを止めることになり、彼らは各々のポケモンたちをボールにしまい、高台へと集まった。 「あと20分か・・・・・・・・。どうやって止める?」 「どうやってって言われたって・・・・・・・」 ジンの言葉に、ユウラは言葉を濁した。 機械に限らず、この中で一番知識が豊富なユウラが端末の前に立っているのだが、解決策が見つからない。 唯一ボールに戻っていないポケモン、クロが、鼻の穴をほじくりながら呟く。 「やっぱぶっ壊すしかねぇんじゃねーの?  未来予知とかで時間差でよ」 「未来予知で壊せるとは限らないし、壊せてもあたしたちが逃げた場所まで爆発が届くかもしれないじゃない」 全員が考え込む。ユウラが頭の中の機械に関する知識を探り、コウが何の情報の無い脳の中を掻き漁る。 エデンも流石にミサイルを止める術は知らず、考え込む。 ・・・・・・・・刹那。 「止める必要は無い・・・・・・・・どうせこの場で全員死ぬのだからな」 その場にいた仲間の誰でもない、妙に低く、図太い声。 端末を見ていた彼らの真後ろから、その声は聞こえてきた。 冷たく、そして刺が含まれたその声の持ち主。 彼らは声の持ち主を確かめるべく、振り返った――― 「な・・・・・ッッ!!!??」 誰がそう言ったのか、確認する気にはなれない状況。 そう、彼が立っていたのだ。 彼は冷たい・・・・・・冷気を感じそうなほど冷たい青い眼で、こちらを見ていた。 人型・・・・・・青い眼・・・・・・青く長い尻尾・・・・・・。 ついさっき倒したはずの青きミュウツー、カオスが立っていた。  つづく  あ クロ「ぬああぁぁぁ!!?ついにやりやがった!「あ」だけにしやがった!」 YAN「だってさ、コウが前回言ってたじゃん。せめて「あ」だけにしろって」 コウ「真に受けんなバカ!これじゃ一体何のトークだかわからねぇぞ!」 YAN「いや、このトークはあとがきトークには変わりないが、この場所は「あ」だ」 コウ・クロ「ワケわからんわァッ!!(怒)」 クロ「チックショ〜・・・・・・やっぱ今回も出番少ねぇじゃねーか!このウソツキ作者!ホラ吹き作者!」 コウ「バカ作者!世界で最も彼氏になって欲しくない男の化身!」 YAN「いやちょっと待てい!バカは前から言われてたが、なんだその後者は!」 コウ「まぁなんだっていいじゃん♪」 コウ「なんだ、主人公が消えかかってるぞ?ついに交代か?」 YAN「いや、主人公交代とか無いし」 クロ「お、ついに俺に主人公の座が?」 YAN「120%ありえないし。なんだお前ら、ついに脇役からやられ役に後退か?」 コウ・クロ「ごめんなさい(土下座)」 YAN「まぁそこそこ許しといてやろう。    ちなみにカイはなァ・・・・・・・そうだな、91話ぐらいに出てくるかもな。もしかしたら90話・・・・・次回かも」 コウ「よし!出てくる前に息の根を・・・・・・」 YAN「やめい」