「ったく。いきなり掃除ってどーゆーこったよ。  掃除ぐらいしとけよな〜・・・・って本人の前で言ったら殺されるから止めとこう」 「そうだな。同感」 「まぁ確かに俺たちが使う部屋なんだから俺たちで掃除するのは分かるぜ。  だけど・・・・ここまで埃まみれだと掃除する気も失せるってな」 「おう、同感」 「あ〜もう、半分物置みたいな部屋だな。  あ、エレク。それは部屋の外に出しといてくれ。ライラも手伝いよろしく」 「ブル」「ライ」 「・・・・・・・・よし。  おいコウ。今の今まで同意を続けてたが、そろそろ反対させてもらおう」 「はい?」 「死ねェェェ!!」 カイが繰り出したハイキック。それは見事にコウの頬に命中。 脚立の上からコウの体が飛び出し、落ちて回転、部屋の壁に顔面からぶち当たる。 痙攣を繰り返すコウの手には、使い古しのはたきが。 肩の上に箒を乗せて、カイは半分怒鳴るように告げた。 「いいかコウよ。棚の上に誇りがたまっていたからはたきで落とす。コレは分かるぞ。  だがそれには一つ注意せねばならないことがある。それを教えてやろう。  それはだな、棚の前に人がいないかどうかを確かめることだ」 ***************  リベンジャー  第97話「ホウエン地方の男」 *************** 「ホッントにこの部屋汚ぇな。随分長い間使ってなかったんだな。 ティルアさん、ドア開ける時最初開かなかったし。まぁ強引にブチ開けたけど。  蝶番いも買い換えとく必要があるな。今度コガネまで行かねぇと」 頭の上の誇りを払い落としながら、愚痴るように呟くカイ。 ちなみに彼愛用のヘアバンドは現在非装備。 彼らの会話から分かる様に、現在部屋の清掃中。 ティルアから与えられた一室。2人で使う場合、決して狭くは無いのだが・・・・問題はその部屋が長期使われていなかったこと。 入った瞬間、どこかのオバケ屋敷のような雰囲気をかもし出していた部屋。ゴーストが棲みついてもおかしくなかった。 自分にだけ聞こえるようにぶつくさ文句をたれながら・・・・不意に、今朝から姿を見せない真紅のポケモンの姿が脳裏を過ぎる。 「・・・・あんにゃろ、何処行ってんだろ。  まぁあいつのことだ、瀕死で帰ってるなんてオチじゃねぇだろ。・・・・ん?」 開いた扉のすぐ横で、ある一転を凝視している2匹のポケモン。 ライチュウのライラと、エレブーのエレク。 先程カイが蹴り倒した遺体ともいえるコウの醜態を見つめている。 ライラが「何かあったのか」という顔を向けてきた。 「あぁ、気にすんな。ちょっとお仕置きしたまでだ。  その内眼ェ覚ますからほっとけ」 ジョウト地方、エンジュ〜アサギ間に佇むとある森。 最近、ストライクとハッサムしか棲んでいないと噂される森の中心の湖。 その付近の大樹。その根元に・・・・せり出した巨大な根を背に玉座のように座っているハッサムが1匹。 戦士の証ともいえる大きな傷跡を額に持つハッサム。見上げるように空を一心に見つめていたが、駆け込んできたストライクに眼をやる。 『た、大変ですよヤイバさん!ナタさんたちが、例のハッサムに全員・・・・!』 慌てまくるストライクに対し、ハッサムは全く取り乱さずに、 『あぁ・・・・なんだ、もうやられたか?あの名もねぇハッサムに?  もう少しねばると思ったんだが・・・・買いかぶり過ぎたか』 『そんな悠長な!どうするんです!?』 『ほっとけ』 『・・・・ええ!?ほっとけって・・・・いいんですか!?』 『構わねぇさ。十中八九俺に用があんだろ。 俺が潰しといてやるから、テメェは引っ込んでろ』 真紅のポケモンの最後の一振り。 相手のポケモンは軽やかに宙を舞い、軽やかに着地・・・・できなかった。下品にドタンと音を立てて地面に落ちる。 完全に気絶したナタと大量のストライクを見下ろして、彼は1人ごちる。 『・・・・もう終りか。面白くない』 森の入り口付近で出会ったストライクから吐かせた場所。湖付近に聳え立つ、森の象徴とも言える大樹。 そこに・・・・2匹の赤いポケモンの姿があった。 『・・・・久しいな。ヤイバ』 仁王立ちのハッサムが告げる。相手のハッサムは大樹の根元で根を玉座のように座っていた。 『ハ・・・・。名もねぇテメェが俺の名を口にすんじゃねぇよ。  それとも何か?進化していい気になってんのか?あ?』 『・・・・それはお門違いだ。・・・・名ぐらいある。カゼマルという名がな』 『ああそうかい・・・・。じゃあカゼマルさんよぉ、早速質問だ』 『なんだ』 『テメェ・・・・俺になんか用か、あ?』 最後のセリフだけ・・・・幾分か殺気が混じっていた。 気付いてはいたが、あえて気付かぬ振りをして、彼は告げた。 『お前を倒しに来た』 『・・・・お前が?俺を?倒す?』 ヤイバは嘲るように何度も訊き返す。カゼマルに答える気は無い。 おかしくて仕方が無いのか、ヤイバは肩を震わせながら立ち上がる。 『おいおい冗談はよせよカゼマルちゃんよぉ。  いくらなんでもよぉ、お前が俺を倒す?』 そこで彼は一呼吸置いて―― 『フザけてんじゃねぇぞコラァ!!』 一振り。打って変わった鬼のような形相で、彼は巨大な木の根を叩き潰した。 力だけの攻撃。完全粉砕された根の破片が宙を舞う。 『テメェが俺を倒すだァ!?調子ぶっこいてんじゃねぇぞクソ野郎!!』 『・・・・・・・・』 ヤイバの豹変に、カゼマルは瞬きもせず。表情を変えずに怒鳴り散らすヤイバを睨み続ける。 『今まで何度も俺に挑みかかって、その度にぶちのめされたのは何処のどいつだ!  最後も派手にやられて、そのまま人間のガキと一緒に出て行ったよな!?ただの腰抜けにしか見えねぇなァ!!』 『・・・・・・・・』 『どうせあの時から大して変わってねぇんだろう!?ナタたちも姑息な手でやったんじゃねぇか!?  あの人間に捨てられて、結局は逆戻り!?こいつぁお笑い・・・・』 『黙れ!!』 カゼマルの一喝。 面白半分で怒鳴っていたヤイバも、カゼマルの気迫に押されて黙り込む。 『カイが俺を捨てた・・・・!?ありえない話だな!  それに俺は今、カイには無断でここに来た!これ以上カイを侮辱するようなマネをしてみろ!ただじゃおかないぞ!!』 『・・・・・・・・!!』 眼を剥いてカゼマルを凝視するヤイバ・・・・が、すぐに不敵に笑う。 『いい殺気を向けれるようになったじゃねーか。  どうだ?今からでも遅くねぇ。俺の側近に・・・・』 落ち着きを取り戻したカゼマル。 『愚問だな・・・・。俺はお前を倒しに来たんだ。  もうお前の群れに興味は無い』 『さて・・・・。そんじゃあ始めようか?  テメェが望んだ・・・・戦いをよぉ』 ヤイバのハサミが、太陽光に反射してギラリと光る。 血に飢えた刀のように、不気味に輝くヤイバのハサミ。 『上の連中は・・・・加わらないのか?』 『・・・・!よく気付いたな・・・・』 カゼマルの言葉の真意。 彼らのすぐ近くの大樹。幹はかなり太く、順応無尽に伸びまくっている枝もまた太い。 生い茂る葉の間に除く・・・・緑の中の緑。 ヤイバの群れの者であろう大量のストライクが、息を潜めて隠れていた。 『いや・・・・あいつらはやらねぇ。  テメェごとき、俺一人で十分なんだよ!』 その掛け声とともに、ヤイバが飛び出す。その真紅のハサミを携えて。 『居合切りィ!!』 一振り。防御。 金属がぶつかり合う音がして、鍔迫り合いになる。 『クハハ!まだまだ行くぜェ!!』 ハサミを弾き、ヤイバの身体が後方へ飛ぶ。 そして着地すると同時に大地を蹴りつけ、再び飛び出す。 『俺様第二段!燕返し!!』  ガツン・・・・ッ!! 『ぅ・・・・っ!?』 突然の鈍痛。受けた場所は背中。 衝撃に倒れそうになって・・・・何とか踏ん張り、振り返る。 『ほう、倒れなかったか。ただの攻撃バカからだいぶ成長したんじゃないか?』 『テ、テメェいつの間に背後に!?』 『お前が鈍感だから気付かない。アホめ』 『ン・・・・ンだとゴラァァッ!!!』 カゼマルの言葉に本気でキレたヤイバ。眼を血走らせ、両腕に力を込める。 空気がハサミを中心に渦巻き、そこにとどまって・・・・。 『あれは・・・・』 何度も見たことのある技の予備動作。・・・・否、何度も使用したことがある技の予備動作。  かまいたち・・・・! タメが終了すると同時に、ヤイバがハサミを振るう。 空を切る一筋の白刃。カゼマルのかまいたちよりやや太めな白刃が、瞬時に回避したカゼマルの真横を通り過ぎる。 それを自然と眼で追った、カゼマルの眼に映ったもの・・・・。 『!』 後ろに聳え立っていた木が、上から下まで真っ二つに切り裂かれたのだ。 2つに分離した木だったものが、軋んだ音を立てて倒れていく。 『クハハ・・・・。名付けて“剛・かまいたち”だ。  そんじゃそこらのかまいたちとは質が違う。受けねぇほうが身のためだぜ』 『・・・・確かにそうだな。受けないほうがよさそうだ』 ・・・・あまり驚いていないように見えるカゼマルの表情。 それが彼にとってしゃくに触ったのか、ヤイバが再び白刃のエネルギーを溜める。 『余裕こいてられるのも今の内だぜ。コレを受けたが最後、テメェは起き上がれなくな・・・・』  ガン・・・・ッ! 『ぐっ!?』 不意な一撃。高速移動で瞬時にヤイバの眼前に迫ったカゼマルのメタルクローだ。 吹っ飛び、構えが解かれ、さらにかまいたちのエネルギーも霧散する。 『そんなもの・・・・放てさせなければいい。簡単な話だ』 『こ・・・・の野郎がァ・・・・!』 起き上がり、ヤイバはカゼマルの鬼の如き表情で睨んだ。 だがカゼマルは全く表情を変化させずに、構えを取る。 『今度は俺のかまいたちを見せてやる。お前のかまいたちとは正反対のかまいたちをな』 カゼマルのハサミに既に宿った白刃。 両腕を包み込む白刃を構えて、彼は叫んだ―― 『かまいたち・・・・乱れ撃ち!!』 振るわれたハサミから一発。それに続くように一発、二発。 エネルギーを分散させて放たれたかまいたち。威力は劣るが・・・・この数を相手にするのは流石にまずい。 『チィ・・・・ッ!!』 一発目を回避・・・・が、二発目が右足に直撃。痛みによろけそうになって・・・・。 『ぬ・・・・おおおおお!!』 追い立てるように飛来した約十発のかまいたち。 それらを立て続けに全身に受けてしまうヤイバ。顔面と胴は両腕でガードしたため、ダメージは薄い。 身体から煙が立ち込めるぐらい・・・・よろけるぐらいのダメージ。 腕をだらりと下げて、上目遣いで・・・・というほど可愛いものではない。不気味な眼つきで睨んでいる。 『クハハ・・・・やってくれるじゃねーか・・・・』 『・・・・・・・・』 『ホントに・・・・』 ヤイバが不意に、ハサミを振り上げる! 『やってくれるぜェェ!!』 『!!』 飛来するかまいたち・・・・改め、剛・かまいたち。 不意打ちで回避できなかったカゼマルの左肩を、剛・かまいたちが襲う。 鋼タイプのおかげでダメージは薄い・・・・が、かなりの威力を持つため顔をしかめざるを得ない。 『これからだぜェ・・・・。カゼマルちゃんよォ・・・・!』 『・・・・!』 どれくらいの間、戦っていただろうか。 夕日が沈み始めた頃。彼らはまだ・・・・ハサミを交えていた。 大樹の枝の上で見守るストライクたちも、流石に不安になってくる。 お互いに肩を上下させ、構えを取る。2人とも、まだ眼は死んでいない。 『しぶてぇな・・・・。カゼマル・・・・よォ・・・・』 『貴様も・・・・随分としぶといな・・・・。そろそろ倒れたらどうだ・・・・?』 『ハ・・・・。そりゃ愚問だな。ここで負けたら同胞たちに示しがつかねぇもんよ・・・・。 『お前にも・・・・プライドがあるのか・・・・?』 『おいお・・・・い・・・・。バカにすんじゃねぇぞ・・・・。  俺ァ・・・・負けるわけにはいかねぇ・・・・。一度決めたこたぁやり通す主義・・・・なんでな・・・・』 『・・・・?』 ヤイバの言葉に、カゼマルは疑問を抱いた。 ・・・・一度決めたこと?やり通す? 『へ・・・・。こんな世間話してる場合じゃねぇな・・・・。  そろそろ・・・・ケリつけようや・・・・』 『ああ・・・・そうだな・・・・』 2人が腰を低く、ハサミを前へ突き出して構えなおす。 そのまま・・・・互いを睨む。冷たくなりだした風が、2人の間をすり抜けていく――  ヤツを倒すには・・・・とっておきがいい。  四刀流奥義、風車大回転・・・・。あれしかない・・・・! ポケモンリーグ決勝。カイの元、ジンのカイリキー、ジーキとの戦いで、引き分けに持ち込んだ技。 2つのハサミ、2つの羽にかまいたちを纏わせ、敵の横をすり抜ける瞬間に回転。 こちらがダメージを追う確率が高い・・・・が、敵はかまいたちの回転で巻き起こった白刃の渦に飲み込まれる。 ヤイバの技は威力がある分、隙がある。そこをつければ・・・・。 『・・・・あ?』 『なん・・・・だ?』 2人の注意が、ある一点に絞られた。それはよくヤイバたちが利用する獣道だった。 この森には今、ストライクとハッサムしか生息していない。 だが、彼らの耳には聞こえていた。ポケモンとは違う・・・・全く別の何かの音。 ヤイバに聞き覚えは無い・・・・が、トレーナーと共に旅をしたカゼマルにとって、聞き覚えのある音。 ジョウト地方最大の都市、コガネシティで耳にした、車道を走る機械物体が出していた音。 その音の正体が・・・・“バイク”という名称を持つ二輪車だということに、カゼマルは気付かなかった。 「ぬっほっほっほ!こりゃまた大漁だぜェ!」 声の主はバイクを降りて、下品な声で笑い出した。 ボサボサの黒髪、黒ジャンパーの男。ヘルメットをハンドルにかける。 そしてそのバイクの荷台・・・・なにやらダンボールが括り付けられていた。 2匹のハッサム・・・・そして大樹の上のストライクを舐めるように見渡す。 「噂を間に受けて来てみたが、こんなにストライクがいるとは思いもよらなかったぜ。少数だがハッサムもいやがる。  ホウエン地方にゃストライクもハッサムも生息してねぇからな。売り飛ばせばかなりの額になる」 下品な笑みを浮かべながら、男は荷台のダンボール箱を漁りだした。 その姿を呆然と見つめていたヤイバ。はっと気がついて、彼は首をかしげた。 『・・・・んだ?あいつァ。  おいカゼマルちゃんよォ、あの人間、テメェの知り合いか?』 『・・・・いや、知らん』 首を振りながら、カゼマルはダンボールを漁る男の後ろ姿を見つめた。 そして、男が言動をゆっくりと解釈する。  噂とは・・・・ヤイバたちが他のポケモンたちを追い出したこと。  そしてホウエン地方。あきらかにこのジョウトや、隣のカントーとは違う地方。  ホウエン地方にはストライク、及びハッサムは生息していないらしい。  その・・・・ホウエン地方に生息していないポケモンを、ホウエン地方で・・・・。 『・・・・おいヤイバ』 『あ?なんだ、続きでもおっ始めるか?』 『いや、休戦だ』 『・・・・なにィ?テメェ、そりゃどーゆーこった?』 『あの男は俺たちを捕獲して・・・・ストライクやハッサムが生息していない地方で高値で売り飛ばそうとしているらしい』 『あぁ?だからなんだってんだ。ぶっ飛ばしてやりゃあいい』 『よく考えてみろ。あいつは俺たちハッサムやストライクを捕獲しに来てるんだぞ。  つまり、虫、飛行、鋼タイプに有効なポケモンをズラリと連れて来ているはずだ。  それにヤツ自身も・・・・この行為を何度もこなしている様子。要するにその道のプロってわけだ』 『・・・・つまり?』 『つまり・・・・』 説明しようとして、言葉を切る。男が荷台からダンボールを降ろし、地面においていた。 蓋が開いている。・・・・そして見えた。その中に・・・・大量の赤と白の球状の物体が。 大量の捕獲用モンスターボール。中には見慣れない色のものもある。恐らく、ストライクやハッサムを捕らえやすいボールだろう。 「さ〜て、ポケモン狩りだ。1匹残らずとっ捕まえてやるぜェ・・・・!」 男が笑いが、やたらと下品に聞こえて・・・・。 飛来した。2つの・・・・中身入りのモンスターボールが。 「そいつらを痛めつけちまいな!オオスバメ!ノズパス!!」 ジョウト地方一帯を旅し、リーグ出場経験のあるカゼマルでも聞いた事のない種族名。 紺と赤の身体に鋭い眼、嘴。オオスバメと呼ばれた鳥型のポケモン。 見てすぐに岩タイプだと分かるぐらいゴツゴツした身体に、不釣合いなデカイ鼻。 どこかで聞いた事のある「もあいぞう」とかいう岩に良く似たポケモン。 種族名だけでなく、やはり姿も初めて見るポケモンだ。男の言う、ホウエン地方とかいう地方で生息しているポケモンだろう。 「キュオオオ!!」 「ノ・・・・」 オオスバメの甲高い鳴き声。ノズパスのやる気なさげな鳴き声。 不意に、ヤイバが大樹を見上げて―― 『おいテメェら!加勢しろ!こいつらをぶっとばせ!』 「オオスバメ!高速移動!ノズパス!岩石封じ!」 オオスバメが高速で空中を旋回。それに翻弄されたストライクたちの足元から挟み込むように現れる岩の壁。 割って入ったカゼマルのメタルクローが、岩の壁を粉々に粉砕する。 『く・・・・こいつら、息が合ってるな・・・・』 『感心してる場合じゃねぇだろ!』 叫んで、ヤイバが構える。ハサミを空に・・・・オオスバメがいる空間を狙う。 『コイツをくらって動けたら誉めてやるぜ!  吹き飛びやがれ!破壊光線!』  ドゥン・・・・! ヤイバのハサミから放たれた一筋の閃光。 破壊の力のみを司る光線が・・・・オオスバメの高速移動でバッチリ外れる。 『う・・・・』 『無駄に体力を使うなヤイバ!』 一喝して、カゼマルが飛び出す。 木の幹を蹴り、三角跳びの要領でオオスバメに接近する。 「!?」 『落ちろ!』 メタルクローの襲撃。・・・・が、これも高速移動で避けられる。 男の指示が轟く 「オオスバメ!ストライクどもに翼で打つ!」 『ぬあっ!?』 紺色の翼が、身近にいたストライクを狙う。 それをギリギリで回避したストライク・・・・が、あることに気付く。 『・・・・あ、そーだ。  別にこの鳥公や石像野郎を相手にしなくたって、あの指示を出す人間を黙らせればいいんじゃん!』 とっても重要なことに気付き、勝利者気分で男に飛び掛るストライク。 バイクの側から動かない男に、渾身の一刀が・・・・。 「おいおい、俺様をナメんじゃねぇぜ?  受け止めろ、マルノーム!」 男が放ったボールから現れた、紫色の生命体・・・・。 脚は無く、小さな腕を持ち、加えてかなりとぼけた顔したポケモン。 構わず振り下ろされる、ストライクの鎌。 迷い無い一刀。・・・・が、マルノームと呼ばれたポケモンの・・・・皮膚で止まった。 正確には、マルノームの皮膚の手前に出来た・・・・ドロドロした液体、ヘドロに。 ヘドロはマルノームの皮膚と同化、さらにストライクの鎌にへばりつく。 『いっ!?なんだこりゃ!  ネバネバして・・・・とれねぇ!』 ビビまくりながらも鎌を引く。だがマルノームの皮膚にくっついた鎌はなかなかとれない。 代わりとでも言うように、マルノームの皮膚がグニャグニャ伸びている。 「マルノームの特性・・・・粘着だ。  本来持っていう道具を盗られたり叩き落とされたりしないされねぇための特性だ。  だがまぁ本質は、身体に付着した物体を身体にくっつけるってカンジさ』 男の下品な笑みの元話された説明。 さらにとぼけ顔のポケモンが口を開く。 『ボクにくっついたら・・・・ボクが離れようとしない限り、簡単には取れないよ。  さらに、こーゆー事も出来るし』  ――ドゥンッ! 『なっ!?』 カゼマルが驚くのも無理はない・・・・。 ストライクの身体をくっつけたまま、マルノームが口から吐き出した球体の物体。 ・・・・ヘドロ爆弾だ。 『テメェ!何しやが・・・・!』 助けに行こうとしたヤイバの前を・・・・もあいぞうが立ちはだかる。 「ノズパス、ロックオン。・・・・そして電磁砲」 ノズパスのデカイ鼻先が、ヤイバを捉える。 バチバチと電気を漏らして――飛んだ。・・・・電撃球が。 『うっ!?』 ロックオンされて逃げ場を無くしたヤイバ。当然の如く、本来命中率の低い電磁砲が簡単にぶち当たる。 吹っ飛ぶヤイバを一瞥して、カゼマルが一言。 『ここは任せた!』  ドゥン!・・・・ドゥンッ!! カゼマルの視線の先で、マルノームが第二、第三のヘドロ爆弾を吐き出した。 動けないストライクに容赦なく炸裂。煙が晴れるたび、ボロボロになっていくストライクの姿が見える。 ほとんど気を失ったストライクを見て、男が下卑た笑みを浮かべた。 「ぬはは・・・・。そろそろだぜ。  ストライク捕獲、第一号だ!!」 男がちょっと大げさに振りかぶる。 勿論その手には・・・・赤と白の彩りの・・・・ボールが。 ・・・・放たれた。 『やめろっ!!』 『うわっ!?』 「な!?」 2つの白刃。 カゼマルが間一髪ではなった2つのかまいたちが、マルノームの身体と同化したヘドロを、飛来したボールを両断。 1人と1匹が半分になったボールの残骸に気を取られている間に、カゼマルがストライクの身体をかっさらう。 敵と距離をとり、ストライクの身体を見下ろす。 ・・・・重症。特に上半身が黒焦げの状態。 未知の敵はまだノーダメージ。  ・・・・カイ。  お前ならこうゆうとき・・・・どうする?  教えてくれ・・・・!  つづく  あとがき ・・・・なんだか状況がえらく変わってます。 カゼマルVSヤイバだったのに、なんか謎の密猟者風な男が登場しました。 まぁ・・・・この男自体に深い意味は無いんですけどね。