12月23日、あたしは今はっきりいって厳しい状況におかれている。もう少しでクリスマスなのに・・・ あの人と、久しぶりに会えるっていうのに・・・・・ 「そして奇跡は舞い降りた」 あたしの名前はキイラ=チェリク。これでもチョウジジムジムリーダーの妹よ。長かったポケモンリーグも終わって、 あたし達はばらばらになった。あたしはチョウジに戻ってきた。ヒューゴ君とリリちゃんにフスベシティに戻ったって 聞いてるから、会おうと思えばいつでも会える。だけど、あの人は違う。あの人はずっと遠くのワカバタウンに帰っていった。 会いたいけど、いつでも会える距離じゃない。あたしは今、その人のために一生懸命クリスマスプレゼントの製作に取り組んでる。 始まりは1ヶ月前、あの人から電話がきたときだったっけな・・・・・ 1ヶ月前チョウジジム 朝、久しぶりに電話がなった。挑戦の申し込みかと思ったんだけど、お姉ちゃんが忙しそうだったから、 あたしがとることになったの。そして、電話の外にいた人は・・・・・・ 「久しぶりだね、キイラ」 キイラ「ゼロ君!」 この人がゼロ=アンドリュース。この前開かれたポケモンリーグのチャンピオンで・・・・あたしの好きな人。 正直いってこのとき電話がきたときには驚いたな。 ゼロ「元気だった?」 キイラ「うん。あたしは元気だよ。ゼロ君は?」 ゼロ「こっちは相変わらずだよ。カーレルさんと一緒にいるんだ」 ゼロ君はポケモンリーグが終わったあと、カーレルさんに誘われてSHINEって組織と一緒にDARKを追ってる。 ゼロ君と瓜二つのあの子、リク君を追って・・・。でも、ゼロ君から電話してくるなんて滅多にないからつい 長話になっちゃった。お姉ちゃんが大声で呼んでいるのに気付いたのは、電話がかかってから30分ぐらいあとのことだったっけ。 その時、急にゼロ君がいってきたの。 キイラ「お姉ちゃんが呼んでる。それじゃ、またねゼロ君」 ゼロ「あっ、ちょっと待って! ・・・キイラ、クリスマスあいてる?」 キイラ「クリスマス? ・・・・予定は入れてないけど」 本当はゼロ君と過ごしたかったし。でも、これはあたしの胸のうちの秘密。そのあとのゼロ君の言葉が嬉しかったな。 ゼロ「良かったらさ・・・ワカバにこない?」 キイラ「ワカバに?」 ゼロ「うん。丁度その時ワカバに帰る予定だから・・・ヒューゴやリリちゃんも誘ってさ」 キイラ「皆来るの?」 ゼロ「ヒューゴにはもう言ってある。二人とも来るって。やろうよ、クリスマスパーティー」 ゼロ君からの誘いに思わず飛び跳ねそうになっちゃった。二人っきりじゃないのがちょっと残念だけど・・・(笑)。 キイラ「うん。いいよ」 ゼロ「本当に?」 キイラ「うん。クリスマスにワカバタウンだよね」 ゼロ「うん。それじゃ、クリスマスに」 キイラ「それじゃあね」 あたしはゼロ君の顔が消えるまで電話にしがみついていた。久しぶりに見たゼロ君の顔はあのときより少し 大人っぽくなってた。あたしはクリスマスにゼロ君に会えるってことだけで、有頂天になってったっけな。 「キ〜イ〜ラ〜」 一瞬、背筋が凍るような冷気が通ったような気が・・・・恐る恐る振り返ってみると、後ろには笑顔で怒っている おねえちゃんが・・・。お姉ちゃんの名前はキリエ=チェリク。チョウジジムのジムリーダーなの。 ちょっといざこざがあったけど、今では凄く仲良し。 キリエ「あんたねぇ〜、人がせっかく朝食作ってあげたってのに・・・」 キイラ「ご・・・ごめん。お姉ちゃん」 キリエ「・・・ま、いいわ。今の電話ゼロ君なんでしょ?」 うっ・・・見破られてる。仕方なく、今のゼロ君との電話の内容をお姉ちゃんに話さなくちゃいけなくなっちゃった・・・・・。 キリエ「・・・ふ〜ん。なるほどねぇ〜」 キイラ「ねぇ、いいでしょお姉ちゃん」 キリエ「別にいいんじゃない? クリスマスにまで挑戦する馬鹿もいないだろうし」 キイラ「やったぁ! お姉ちゃん大好き!」 はぁ、こんな風にゼロ君にもはっきりいえたらなぁ・・・・。一応何回か告白はしてるんだけど・・・・ キリエ「・・・で、あんたどうすんの?」 キイラ「どうするって・・・・何が?」 キリエ「プレゼントよ! プ・レ・ゼ・ン・ト!」 そういえばそうだった・・・。ゼロ君に会えるってことだけでそんなことすっかり忘れてた・・・。 キイラ「えへへ・・・・どうしよう?」 キリエ「あんたねぇ〜〜〜」 キイラ「だってぇ・・・」 キリエ「はぁ・・・まだ日はあるから、ゆっくり考えなさい」 キイラ「はぁい」 こうして、当面のあたしの課題はゼロ君へのクリスマスプレゼントとなった。 翌日、あたしはデリス(デリバード)に乗ってコガネシティまでやってきた。まだプレゼントを決めたわけじゃないけど、 ヒューゴ君たちのも買わなきゃならないし。それにはやっぱりコガネデパートよね。デパートで一通りプレゼントを 買い終えて外に出たら、意外な人に会ったの。 「キイラやないか!」 キイラ「アカネちゃん!」 そう、コガネジムジムリーダーアカネちゃんに・・・・ アカネ「そっかそっか、ゼロへのプレゼントか」 キイラ「うん・・・・それで、どんなものがいいと思う?」 アカネ「難しいな・・・ゼロが欲しいもんとかわからへんか?」 キイラ「それが分かれば苦労しないわよ・・・」 アカネ「そりゃそうや」 キイラ「ゼロ君って何がほしいのかなぁ・・・」 アカネ「・・・物だけやないと思うで」 キイラ「えっ?」 アカネ「大切なのは心や。キイラが丹誠こめたもんなら、きっとゼロは受け取ってくれるやろ」 キイラ「そうかなぁ・・・」 アカネ「そうやそうや! なんたって愛の力や!」 キイラ「あ、愛って・・・・(///)」 アカネちゃんに、愛って言われて顔が赤くなったのはがわかる。しかも、そのときのあたしの行動が不自然 だったのか、アカネちゃんに疑われることに アカネ「ひょっとして・・・まだ伝えてないとか?」 キイラ「・・・そのひょっとして」 アカネ「は、はは、はは・・・・」 アカネちゃん、余計なフォローはしなくていいからね。と、あたしは目で訴え続けた。そうしたら、通じたらしく、 アカネちゃんはその後何もいうことはなくなった。不意にあたしは外が寒いことに気がついた。 キイラ「ちょっと冷えるね・・・」 アカネ「今年は例年なく冷えるらしいで」 キイラ「ふ〜ん、そうなんだ・・・・・・・・そうだ!」 いいこと思いついちゃった♪早速製作に入るために急いでチョウジに帰らないと。 アカネ「ど、どうしたんやキイラ!?」 キイラ「アカネちゃんありがとう! おかげで決まったよ!」 それだけいってアカネちゃんとさよならした。アカネちゃんが後ろで頑張れって言ってくれてるような気がする。 嬉しいんだけど・・・・恥ずかしいよぅ(恥)。それから、急いでコガネデパートで材料を買って、すぐチョウジに 戻ってあたしのプレゼント製作が始まった。 12月24日 ゼロ「ねぇキイラ・・・大丈夫?」 キイラ「・・・ウ〜ン・・だいじょぶ・・」 久しぶりにかかってきたゼロ君からの電話。だけど、電話越しのゼロ君はあたしを心配していそうな目で 見つめている。しょうがないか、今のあたしってすっごく体調悪そうだし キイラ「大丈夫・・・・だから・・・・」 ゼロ「明日・・・迎えに行こうか?」 キイラ「いいよ! 絶対行くから待ってて!」 ゼロ「そ、そう・・・じゃあ46番道路で待ってるよ」 キイラ「うん! じゃあ明日ね!」 ゼロ「また明日」 プツン。電話が切れた後、改めて時間がないことを実感した。 キイラ「間に合うかなぁ・・・?」 キリエ「間に合わせるの! さ、やるよ」 キイラ「うん」 お姉ちゃんにも手伝ってもらって、作業再会!時間がないから急がないと 12月25日 キリエ「キイラ! 急がないと遅れるよ!」 キイラ「は〜い!」 お姉ちゃんに呼ばれて支度を調えたあたしは外に出る。今日はいつもの格好じゃなくて、ちょっとおしゃれしてみたの。 お姉ちゃんが久しぶりの再会だからおしゃれしていけって。それで、格好は水色のロングスカートにお気に入りの ラプラスのTシャツ。その上に白いカーディガン。そして、全身は白のダウンコート。 それから・・・右手にはゼロ君から貰ったブレスレット。 キリエ「それじゃ、いっといで」 キイラ「行ってきます!」 キリエ「何なら朝帰りでもいいんだよ?」 キイラ「お姉ちゃん!」 だんだんお姉ちゃんのからかいのパターンが読めてきたような気がする。デリス(デリバード)を出して、 あたしはワカバタウンの近く46番道路まで飛んでいった。46番道路の一番奥には、1番道路とを結ぶ建物がある。 ゼロ君と待ち合わせしたのはここのはず。ドアの前で一度深呼吸してドアをくぐりぬけた。 ゼロ「キイラ!」 すぐにあたしを呼ぶ声が聞こえた。その方へ顔を向けると、そこにはゼロ君が手を振っていた。ゼロ君の姿を 確認したら、もう我慢の限界がきちゃったみたい。周りの人なんて関係なしに、あたしは走ってゼロ君に抱きついた。 当然、ゼロ君は驚いてたけど♪ ゼロ「キ、キイラ!?」 キイラ「会いたかった・・・・会いたかったよぉ!」 ゼロ「・・・・・僕も」 でも、いつまでもここで抱きついているわけにも行かなくて、あたし達はゼロ君の案内でワカバタウンに歩くことにした。 歩きながらゼロ君といろいろ話した。実をいうとあたし、ワカバは初めてだったから、ちょっと楽しみだったんだ。 ゼロ「もう、ヒューゴたちは来てるから、僕たちがくれば始まるよ」 キイラ「ヒューゴ君たち、きてるの?」 ゼロ「うん。少し前にカイリューで飛んできたけど・・・」 いろいろ話し込んだら時間がたつのを忘れちゃうね。すぐにワカバについたような気がした。始まりの風が 吹く町ワカバタウン。緑がいっぱいで過ごしやすそう。ゼロ君についていってある家まで到着。 キイラ「ここって?」 ゼロ「僕の家。さぁ、入って」 ゼロ君が扉を開けて、あたしを手招きする。あたしはそれに習って家の中に入っていった。中には、 見慣れた人たちがいっぱいいた。ヒューゴ君、リリちゃん、シグマ君、フェイさん、カーレルさん、ウォルスさん・・・ それにあの人は? ゼロ「紹介するよキイラ。僕の母さん」 母「ゼロの母です。旅の間ゼロがお世話になって・・・」 キイラ「い、いえ・・こちらこそ、ゼロ君にお世話になって・・・」 この人がゼロ君のお母さん・・・。想像していたとおり優しそうな人。 リリ「キイラさん、お久しぶりです!」 キイラ「リリちゃんも元気そうね」 リリ「はい!」 ヒューゴ「遅かったな」 キイラ「・・・そう思うなら迎えに来てよ」 ヒューゴ「ワカバぐらい知っていると思ったんでな」 ゼロ「じゃ、始めようか!」 そして、パーティーが始まった。皆楽しそうに料理を食べたり、おしゃべりしている。ヒューゴ君とウォルスさんが 早食い競争やっているような・・・二人とも、お腹壊さないようにね。そのとき、もって来た袋を思い出したの。 さすがにこんな大勢の前で渡すのは・・・ちょっと勇気がいるかも。 キイラ「ゼロ君、ゼロ君」 ゼロ「ん? どうしたの?」 キイラ「ちょっと・・・・いい?」 ゼロ「うん・・・?」 あたしはゼロ君と一緒に外に出た。外はまだ寒くて、防寒着がないと凍えちゃいそうだった。ゼロ君も寒そう。 ゼロ「どうしたの、キイラ?」 キイラ「あのね・・・・あのね・・・・」 勇気を出せキイラ! 大丈夫、ゼロ君なら受け取ってくれるから! あたしは意を決して袋から小包を取り出してそれをゼロ君に渡した。ゼロ君はちょっと驚いていたけど、 すぐにこの袋の意味がわかったみたい。 ゼロ「僕に・・・?」 キイラ「・・・・(コクッ)」 ゼロ「開けても・・・・いい?」 キイラ「うん・・・・」 ゼロ君が袋をどんどんはがしていく。今のあたしの心はゼロ君がこれを受け取ってくれるかどうかでいっぱい。 そして、ゼロ君が箱を開けて、箱から出てきたのは・・・・白いマフラー。 ゼロ「これ・・・」 キイラ「今年寒くなるって聞いたから・・・。でも、初めてだからあんまりうまくいかなくって」 ゼロ「だから、昨日あんなに眠たそうだったの?」 あたしは黙って首を頷かせる。ゼロ君は、少し戸惑ってたみたい。でも、しばらくしてやさしい顔で・・・ ゼロ「ありがとう。使わせてもらうよ」 キイラ「本当に?」 ゼロ「うん」 キイラ「よかった・・・・・」 本当に安心した。受け取ってもらえなかったらどうしようかと思ったの。早速マフラーをつけるゼロ君。 あたしはゼロ君のそのときの動作一つ一つが愛しかった。そのとき、不意に上空から白いものが降ってきたのを気付いた。 ゼロ「あっ・・・」 キイラ「雪・・・」 空から雪が降ってきたの。本当にホワイトクリスマスになっちゃった。ゼロ君もあたしも一斉に顔を振り向かせ、笑う。 こんなに笑うの久しぶり。やっぱりあたしはゼロ君が好きなんだ。 キイラ「実はね、もう一つあるの」 ゼロ「もう一つ?」 キイラ「はい、これ」 そして、ゼロ君に手渡したのはシャワーズのストラップ。コガネデパートで偶然見つけたこの品。 ゼロ「シャワーズのストラップ・・・」 キイラ「それ、あたしだと思って持ってて」 ゼロ「・・・」 キイラ「我侭かもしれないけど・・・やっぱりゼロ君とは一緒にいたいから」 ゼロ「・・・考えてること同じなんだなぁ」 キイラ「えっ?」 すると、今度はゼロ君が何かを出してあたしに差し出した。あたしはすぐ受け取ってその箱を開けてみた。 そうしたら、でてきたのはエーフィが彫られているリング。 キイラ「これ・・・」 ゼロ「エンゲージリングまではいかないけどさ、それ僕だと思って欲しいんだ」 急にゼロ君から信じられない言葉を聞いた。あたしの耳がおかしくなったのかと思ったけど、ゼロ君も 顔を赤くしてたから、間違いじゃないんだと思ったの。 キイラ「それって・・・」 ゼロ「うん。僕は・・・・キイラが好きだ」 涙が出るほど嬉しかった。ゼロ君からの告白。しかも、好きって・・・・・。これって両思いって思っていいんだよね? ゼロ君もあたしと同じ気持ちだって信じていいんだよね? ゼロ「キイラと離れてようやく気付いたんだ。僕には・・・キイラが必要だ」 キイラ「ゼロ・・・君」 ゼロ「だから今いう。ゼロ=アンドリュースはキイラ=チェリクを愛しています」 キイラ「・・・・・あたしも」 ゼロ「・・・」 キイラ「あたしも、キイラ=チェリクもゼロ=アンドリュースを愛しています」 ゼロ「・・・キイラ」 キイラ「・・・・ゼロ君!」 思わず、ゼロ君に抱きついちゃった。だって、嬉しいんだもん。ようやく夢がかなったようなこの満足感。 もう、思い残すことは何もないようなこの感じ・・・・ あたしとゼロ君の視線がぶつかって・・・あたしがそっと目を閉じる。そして、ゼロ君がゆっくりと近づいてくるのは 分かった。あたし達の唇が触れ合おうとしたときに・・・・ ヒューゴ「ゼロー、どこいったー?」 急にヒューゴ君が呼んでる声が聞こえたの。その声に気付いて慌てて離れるあたし達。離れた後都合よさそうに ヒューゴ君があたし達の前にきたの。 ヒューゴ「ここにいたのか・・・・ってどうかしたか?」 ゼロ「な・・・何が?」 ヒューゴ「顔が赤いぞ、二人とも」 ゼロ「な、なんでもないよ! それより何?」 ヒューゴ「何じゃない。急に消えたから探しに来たんじゃないか」 ゼロ「そ、そうなんだ・・・じゃ、戻ろっか!」 ヒューゴ「おい、ゼロ!?」 ゼロ君が先に家の中に入っていっちゃった。・・・なんか気分がぶち壊されたみたい。すると、ヒューゴ君が こちらも振り向いたの。そしたら、何故か分からないけど少しあとずさんだ様な・・・? あたしってそんなに顔に出るのかなぁ? ヒューゴ「何か悪いことしたか、俺?」 キイラ「・・・ヒューゴ君のバ〜カ」 あたしもヒューゴ君を置いて家に入っていった。ヒューゴ君はまだ外で考え事してるみたい。家の中でゼロ君と視線があっても、 あたし達はただ笑って答えるだけ。でも、今年のクリスマスは忘れられないクリスマスになったの。 皆もこんなクリスマスが遅れるといいね。 メリークリスマス!!!