マサラのポケモン図書館
ポケモンストーリーコンテスト・ベスト 特設サイト

こちらはポケモンストーリーコンテストの優秀作品を収録した文庫本の告知サイトです。
ストーリーコンテストの過去ログに関しましては〔ポケストアーカイヴ〕をご覧ください。





仕様:A6文庫サイズ312P、フルカラーカバー・口絵付き
ジャンル:ポケモン、オリトレ、小説、アンソロジー

作品紹介: 
10000字で競うポケモン短編小説コンテスト「ポケモンストーリーコンテスト」は、お陰様で3回を開催し、合計92作品の応募をいただくことが出来ました。今回、その応募作品のうち上位入賞作品14作が改稿の上、文庫化となります。
巻頭では各回大賞作品をイラスト化し掲載。 巻末に毒舌な審査員、渡邉健太氏の解説付き。
使用可能字数も12000字まで拡大し、さらにパワーアップしたポケモンストーリーをお楽しみください。

・2012/04/24 通販開始しました。
完売しました。



<収録作品 書き出し紹介>
掲載時文章は変わることがあります。


第一回 / 塀の外 / 久方小風夜

 男の子が生まれたのは、塀の中でした。

 広い草むらを切り開いて作られたこの町は、周囲をぐるりと高い塀で囲まれておりました。
 外の世界と繋がっている場所はふたつ。町の一番南にある海と、一番北にある道路だけでした。道路といっても人の行き来で出来たもので、青々とした草むらが生い茂っていました。

 男の子は、生まれてから一度も草むらで遊んだことがありません。
 草むらには、凶暴な野生のポケモンがたくさん住んでいるからです。男の子が草むらに入ろうとすると、大人たちはみんな慌てて止めるのです。


第一回 / blindness / 586

 逆さにしたって、溜息しか出ない。
「……こんなんじゃ、ランク入りは無理か……」
 伸びないページビュー。社交辞令に過ぎないコメント。沈黙を守るレーティング。
「なんであんな絵がトップを突っ走って、あたしのが……」
 不平を言いかけて止める。昨日、ランク入りしたあの絵を見て、無意識のうちに★10を付けていたことを思い出した。敗北を既に認めている証。
「……どうでもいい。あたしは、あたしの絵を描くだけ」
 言ったところで手は動かない。口と手が喧嘩するのは、日常茶飯事。こんなことはもう一度や二度じゃない。

第一回 / フレアドライブ/ CoCo

 駆け抜けた。走った。
 深い森を掻き分け走った。喉が痛い。吐き捨てた息は白く吸い込んだ風は気管支を痛めつける。足の裏に木の根の感触。冷え切っているのにどうしようもなく熱い。ジグザグ走行。太股がパンパンに張っている。道が合っているのかわからない。あーっつう、地図とか見てる暇がない。ぶん投げる腕で掻き分ける空気が冷たい。枝が痛い。
 衝動が湧き上がる。
「追いつく」
 追いつく。あれには追いつける。
 俺の口から零れ落ちた言葉をすくい、隣を走るゴウカザルが雄たけびを上げた。響き渡って夜明けに染みた。でも俺はそんな染みも超高速で踏み越えてさらに速く。まだ暗い森、併走する猿の明かりだけを頼って。
 胸を圧迫する呼吸のたび掠れる喉の奥が痛い。


第二回 / 雨街レポート / リナ

 六月三日。シオンタウンはどしゃ降りの雨だった。
 今朝のニュースで見た天気図では、カントー地方全体を分厚い雨雲がすっぽりと覆っていた。今年の梅雨入りは例年より少し早いようだ。
 八年前のあの夜と同じように、大きな雨粒が窓を打つ。

 ――私は両手を合わせ、目を閉じた。


 名もなき命へ。

第二回 / あいつに置いていかれたから / MAX

 轟々と音が響き、煙の柱が空へと伸びる。
 自室の窓から見る景色に真っ直ぐな白線が引かれ、また一つ飛び立ったか、と眺め続けた。

 ホウエン地方はトクサネシティ。ここはロケットの基地がある島だ。島というからには海に囲まれており、当然ながら船乗りが多い。加えて宇宙開発の技術者もまた多く、宇宙を身近に感じる土地だった。
 そんな土地柄、多くの住民は海や宇宙に興味を抱き、特に子供たちは強く影響を受けていた。オレの身内や知り合いもほとんどが船かロケットに乗り込み、島を離れるようなヤツはオレを含むごく少数だった。



第二回 / ヨーヨー、顔文字、オムライス / 久方小風夜

 じわじわ、じわじわと、テッカニンの鳴き声が止むことなく響いている。
 俺は窓を開けた。吹き込んだ風は蒸し暑くて、部屋の温度を下げてくれる効果を期待できそうにはない。それでも閉め切っているよりはましだろう。クーラーは電気代が怖くてつけられない。この夏は、何とかうちわと扇風機で乗り切りたい。
 こういう時はトレーナーが羨ましい。水や氷のポケモンがいればきっと涼しいだろう。でもまあ、俺はポケモンを持っていないから我慢するしかない。あとはパソコンが暑さでやられてしまわなければいいのだけれど。
 大学一年生の夏休み。やることがなさすぎる。何か適当なサークルにでも入ればよかったなぁと少し後悔したけれども、それはそれで面倒なので諦めた。八月の頭から、九月の末。大学の休みは長い。
 うん、よし、何もやることがないなら、書くか。俺はスリープ状態だったノートパソコンを開いた。

第二回 / レックウザのタマゴ / 鶏

 わたしが十歳だった時には、じじいがいて、おやじがいて、もちろん母さんも祖母さんもいて、いなくてもいいのに男の子の幼馴染がしっかり揃っていた。
 その中でも問題だったのは、あのくそじじいと、くそおやじで、いい年こいてポケモンリーグのチャンピオンになるんだって、私が物心ついたときからずっとそんな夢物語とか、嘘だかほんとだかも分からない武勇伝なんかを耳にイシツブテができそうになるまで、わたしに話し続けた。
 主にじじいで、たまにじじいとおやじのダブルアタックで、だ。

第二回 / こちら側の半生 / と

 画面の中の俺は惚れ惚れするほどのイケメンであるのだが、画面に映る俺は世に恥ずべきブサイクなのである。
 折り畳むことが出来るコンパクトな携帯ゲーム機、その二つの画面は電源を入れるとまばゆく輝く。バックライトに照らし出された其処については皆さんもご存じであろう、夢と冒険とポケットモンスターの世界は俺を魅了して止まない。
 しかし電源を切るとどうだ。つるりとした真黒い平面で起こる、入射角反射角共に零度の鏡面反射を経て俺の網膜に飛び込んでくるものは悲しいかな、画面の中の世界に生きるモンスター達よりもよっぽど化け物じみている。

第二回 / 生まれゆく君へ / hokuto

 やあ、目を覚ませ。もうじき夜明けのときだ。
 ううん、なんだか眠そうだな……なんたって日にそんな顔をしているんだよ、もっとしゃきっとできないのかい。まったく、先が思いやられる。僕にいらない心配をかけないでおくれよ。
 ついに、旅立ちの朝が来た。もうしばらくすれば、君は新しい世界へ飛び出していく。こうして二人でいる時間なんて、幾らも残されていないんだ。……言葉にすると、なんだか感慨深いね。
 だから、そうだな。今日はいままでにしなかった話をしよう。
 君の、これからの話だ。

第三回 / 記念日 / きとかげ

 ある町の通りをのんびり歩くあなたの肩を、誰かが叩きます。誰が何の用だろう、とあなたが振り向くと、女の人が小さな手帳を持って何か尋ねたそうにしています。赤色の長い髪に優しい浅葱色の目をしています。知らない女の人です。
 あなたが立ち止まって待っていると、彼女は手帳のあるページを開いてあなたに差し出しました。そこにはこう書かれています。
『仲良しの女の子にプレゼントを贈りたいのですが、どんなものがいいのでしょう? その子はおてんばだけど素直な、小さな女の子です』
 それから女性はボールペンを取り出して、こう書き加えました。
『今日は私とあの子が出会った、記念日なんです』

第三回 / 居候、空を飛ぶ / No.017

 僕がその黄色い生き物を見つけたのは、メタングの胴体に似た掃除機と共に母が二階から引き上げていった後だった。
 電源の少ない僕の部屋で掃除機をかけるには、パソコンプリンタのコンセントを引き抜かなくてはならない。そこで掃除機をかける時になると、一旦、僕がそれを引き抜くのが暗黙のルールだった。かといって母がコンセントを戻すかというとそんな発想は無いらしく、部屋に戻った僕は再びコンセントをブタ鼻に刺すことになるのだ。黄色い生き物を見つけたのはそんな時だった。
 毛の生えた黄色まんじゅう。それが第一印象だった。


第三回 / ベトミちゃん / レイコ

 青い静かな夜空を仰ぐと玉のような月が輝いていた。
 防犯灯の下までこぎ着けた彼女は、霜が降りたような白い路上に突っ伏して呻く。長く冷たい外気にさらされたせいで体の水分がすっかり凍り付いていた。こんな所で行き倒れるわけにいかない。彼女は自分を奮い立たせる。気をしっかり持てと――でも駄目だ。視界が徐々に狭まっていく。所詮、自然の力には敵わない。
 力なく閉じられた瞼の裏に、あの人の笑顔が浮かんで、消えた。彼女の意識は不意に途切れた。まるで舌の上でほろりと溶けた砂糖菓子のように。

第三回 / 赤い月 / クーウィ

 中天を横切る月を見上げつつ、俺は一人耐えていた。  重い体に霞む視界。刻一刻と鈍る嗅覚に、辺りを包む血の臭い。既に指一本動かす事も出来ねぇってのに、なのに未だに俺は死ねない。  隣に転がってるクソッタレ。俺をこんな目に合わせやがった張本人が、まだくたばってねぇからだ。思いっきり腹を引き裂いてやったと言うのに、赤い瞳をカッと開いて、同じ色の舌をダラリと垂らしながらも、そいつは未だに意地を張ったまま、意志ある目付きで俺を見る。互いに相手より先には逝けないと、思い詰めてるってな訳だ。

 止めすら刺せずにへたり込んでいる俺達を、生温かい風が無遠慮に撫で回して行く。しかも御丁寧な事に、そんな馬鹿共を見守っている月までが、嫌味か皮肉か知らないが、異常なまでに赤かった。

第三回 / Ultra Golden Memories / レイニー

 やあやあ、よく来たね! こんな辺鄙な所まで人が来るのは珍しいよ。すごく久しぶりのお客さんだ。おじさんうれしいよ! さあさあ、座って座って。今からお茶淹れるから、ゆっくりしていってね! 
 そうだ、どうせ来てくれたんだから、これを持っていってよ! おじさんからの贈り物、遠慮せず持ってって!
 ……え、どうして見ず知らずの自分にこんなものをくれるのかって? それはおじさんの過去と深い深い関係があるんだな、これが。
 え、何、その話聞きたいって? 長くなるけどそれでもいいかい? ……いやいや、遠慮する必要はないよ! じゃあ話すね。

解説 / 渡邉健太


 歯に衣着せない批評で、多くの参加者に恐れられた審査員、渡邉健太氏がズバッと解説。






大賞作品口絵 / 夏菜、ノラ、カンツァー

企画編集・表紙・シルエット / No.017




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