激しかった雷の勢いが弱まり、暗い空はわずかに明るさを取り戻していた。
しかし依然として雨の止む気配は無く、冷たい雨は無情に降り続いて黒に紅のメッシュの髪を彼女の肌に張り付かせ、体温を奪う。

なんとか雷神は捕らえたものの、予想以上のダメージを食らってしまっていたようだ。
動きの取れぬまま不安げなポケモン達に寄り添われ、消えかかる意識を必死に繋ぎ止めようとしていた彼女の耳に、
突如、場違いなほどににぎやかな人声が飛び込んできた。

「あそこに誰かいるぞ!」
「さっきの兄ちゃんの言ってた、警察の人じゃないか?!」

またたくまに何人もの人やポケモンが駆け寄ってきて、彼女たちをわっと取り囲む。

「大丈夫ですか、怪我はありませんか?」
「体を温めなきゃ! ……おい、誰かヒノアラシ持ってたよな! あと炎ポケモン持ってるやついないか」
「暖かいお茶ありまっせ! このタオルも使ってください。いやー、大荷物かついで来た甲斐があったわー」
「この人のポケモンも大分疲っちゃ様子だない。こういう時ゃ、モーモーミルクが一番だぁ。花子、頼んだべ!」
「あら〜、可愛らしポケモンいてはるわぁ。ちょ、そこの黄色いクモちゃん、あんたアメちゃん食べる?」
「フィ?」
「こらこら! ヒトさまのポケモンに、勝手にふしぎなアメちゃんあげたらあかんていつも言うとるやろ!」

極限まで張り詰めていた緊張が緩む。彼女は安堵とともにゆっくりと目を閉じ、気を失った。





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