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  [No.1222] Subject Notes. 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/03/23(Mon) 20:20:55   77clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

前スレッド:http://masapoke.sakura.ne.jp/lesson2/wforum.cgi?no=3632&mode=allread

元のスレッドが長くなってきましたので、こちらで継続することにしました。
引き続きお楽しみいただければと思います。


  [No.1223] #118174 「ウバメの森のジャンクション」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/03/23(Mon) 20:25:10   65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#118174

Subject Name:
ウバメの森のジャンクション

Registration Date:
2007-06-14

Precaution Level:
Level 3(2013-05-20以前)→Level 0(2013-05-20以降)


Handling Instructions:
ジョウト地方南西部の「ウバメの森」に繋がる2箇所のゲート(コガネシティ側・ヒワダタウン側双方)で、無線通信が可能な電子機器の電源を切るよう通行者に伝えてください。必要に応じて、ウバメの森では電波に悪影響を受ける希少なポケモンが保護されているというカバーストーリーが利用できます。無線通信が行わなければ本案件は露見し得ないため、それ以上の対策は必要ありません。

本案件による異常現象が確認された初期に一部の匿名掲示板やblogへ投稿された内容は、秘匿する必要がある情報を含んでいます。事象の確認後に「噂を再検証した」という名目で虚構記事の作成や掲示板への投稿を繰り返し行ったことで、ほぼすべての情報が確度の低いゴシップに過ぎないと見なされています。現在も新たな情報が投稿されないか監視を続けていますが、既に数年に渡って本案件への言及は無く、噂は沈静化したものと推測されます。

複数回の実験から得られた結果から、ウバメの森内部からアクセスできるサイトは実際に当時のサイトへ接続されているものとほぼ断定されています。過度の介入は予期せぬ結果をもたらす可能性がありますので、実験を行う場合は少なくとも3名以上の高レベル責任者から承認を得る必要があります。その際、様式F-118174に沿った完全な実験計画を提出しなければなりません。

[2013-05-20 Update]
上記の取扱方は廃止されました。現在は過去に制定された手順を適切に実行しても、異常なサイト群へアクセスすることはもはやできなくなっています。案件#118174は既に無力化されており、これ以上の保全は必要ありません。


Subject Details:
案件#118174は、ウバメの森の内部で所定の手順を踏むことにより接続することができる、異常な性質を持つインターネットサイト群です。それらは合計で7件のサイトと252のページで構成され、1の動的なコンテンツを含みます。

以下に示す手順を実行することにより、案件#118174を構成する特異なサイト群、及び本案件の中で特に注目すべきサイトである「特異点#118174」にアクセスすることができます:


手順01:ネットワーク接続の確立
ウバメの森の内部で、端末の無線通信を有効にします。この時、端末にはIEEE 802.11bまたは11gのいずれかの方式に対応した無線LANモジュールが組み込まれていなければなりません。手順が成功すると、名称が識別できない不明なアクセスポイントに接続されます。

手順02:ポータルサイトへのアクセス
Microsoft社のWebブラウザ「Internet Explorer」を使用し、ポータルサイト「goo」(www.goo.ne.jp)にアクセスしてください。WebブラウザとしてInternet Explorer以外(Mozilla Firefox等)を使用した場合、この後の手順で継続が不可能になるポイントがあります。また、「goo」以外のサイトにアクセスを試みた場合、瞬時にネットワーク接続が切断されます。この場合、手順01から改めて再実行する必要があります。

手順03:キーワードの入力と中継サイト1への接続
ポータルサイト「goo」が完全に読み込まれたのを確認してから、中央にある検索ボックスに「masatoのポケモン道場」と入力し、検索を実行してください。成功すると、キーワードと同名のサイトが検索結果のトップに表示されますので、通常通りアクセスしてください。この時、先述した以外のキーワードで検索を試みた場合、手順02の失敗時と同様に接続が終了します。手順01からやり直さなければならないのも同様です。

手順04:中継サイト2から中継サイト6への接続
手順03により「masatoのポケモン道場」への接続に成功した場合は、当該サイトのリンク集(「リンク集」と書かれたバナー画像が目印になります)へアクセスし、上から数えて14番目に存在するサイト「ゲームっ子の広場」にアクセスしてください。

以下同様の手順で、次のようにサイトへのアクセスを繰り返してください:
「ゲームっ子の広場」
→「キツネスペース」(前ページのテキストアンカー「Link」から移動できるページにある上から数えて8番目のサイト)
→「ダークエージェント」(前ページの画像アンカー「同盟サイト」から移動できるページにある上から数えて15番目のサイト)
→「星屑の砂漠」(前ページの画像アンカー「Perfect Links」から移動できるページにある上から数えて2番目のサイト)
→「スマブラ大辞典」(前ページのテキストアンカー「リンク集」から移動できるページにある上から数えて6番目のサイト)。

手順05:特異点#118174への接続
手順04で「スマブラ大辞典」まで到達した後、同ページ内の中段にあるテキストアンカー「チャット2(雑談・交流)」を選択してチャットページへ移動することで、特異点#118174への移動は完了します。この時WebブラウザとしてInternet Explorerを使用していない場合、「サポート外のブラウザです」というエラーページに遷移し、特異点#118174へは移動できません。


手順02以降に接続可能なポータルサイト及び中継サイト1〜6から得られた情報から、これらのサイトはすべて「2001-04-15」時点のサイトに忠実であることが分かりました。ブラウザ上で実行できるスクリプトレットから取得された情報は、これらのサイトがオリジナルサイトの2001-04-15時点におけるデジタルコピーではなく、「実際の2001-04-15時点でのサイト」であることを裏付けるものでした。

接続可能なサイトは極端に限られており、ポータルサイトはトップページ及び所定のキーワードによる検索結果以外の全ページが接続不能です。中継サイト1〜6は同一ディレクトリ内のページであれば完全な形で閲覧が可能ですが、中継サイト以外の外部サイトへのアクセスは例外なく失敗します。どちらのケースでもその時点でアクセスポイントとの通信が途絶し、手順を初めからやり直さなければなりません。

最初に接続することになるポータルサイトに設置されたJavaScriptによるリアルタイム時計は、常に19:57:02からカウントが開始されます。これはいかなる時刻に実験を行っても常に一貫しています。

以上から、何らかの特異な事象により、所定の手続きを経ることで2001-04-15 19:57:02におけるそれらのサイトを部分的に閲覧できているというのが、本案件に対する管理局の見解です。


特異点#118174:
特異点#118174は、特異なサイト群を調査する過程で唯一接続に成功した動的コンテンツであるオンラインチャットです。特異点#118174以外の動的なコンテンツ――電子掲示板・オンラインチャット・その他サーバサイドのプログラムで動作するすべての動的コンテンツ――へのアクセスは、あらゆるケースで即時の接続終了を招きます。例外的に特異点#118174のみが、オンラインチャットとしてのすべての機能が利用できます。

接続先時間で20:32:17を迎えると、特異点#118174に「綺羅々★」というハンドルネームの利用者が入室してきます。こちらから一切アクションを起こさなかった場合、利用者「綺羅々★」は21:17:39までチャットに残り、その後「母親に呼ばれた」旨のメッセージを残して退出します。20:32:17から21:17:39までの間、「綺羅々★」以外の利用者は入室してきません。これは接続を試みたすべてのサイクルで一貫して繰り返されます。

本案件において特異点#118174のみが例外的に接続可能な理由は判明していません。特異点#118174自体には何の異常性も無く、通常想定されるオンラインチャット以上の機能や性質は一切持ちません。


[2007-08-12 Update]
局員による特異点#118174における利用者「綺羅々★」へのコミュニケーション実験が提案されました。局員からコンタクトを取ることで、本案件に対する新たな情報を得ることを目的としています。実験の開始が承認されました。


[2008-04-27 Update]
これまでに利用者「綺羅々★」へのコミュニケーション実験が計63回行われましたが、成果ははかばかしくありません。利用者「綺羅々★」は局員を不審な人物、当該コミュニティの言葉で表現するならば「荒らし」と認識しており、適切なコミュニケーションが取れない状況が続いています。実験の一時中断が提案され、案件は現状保全フェーズへ移行させることが決定されました。


[2012-11-04 Update]
局員の一人(以下局員Aと表記)が本資料を閲覧し、利用者「綺羅々★」へのコミュニケーション実験を再開したいと申し出てきました。申し出によれば、局員Aはかつてこのサイトで「綺羅々★」と交流していたという背景があり、「綺羅々★」とのコミュニケーションを円滑に行える自信があるとのことです。本案件の性質をより正確に理解するための情報を得ることが期待できるため、実験の再開が承認されました。


[2012-12-15 Update]
局員Aによる実験計画が提出されました。実験計画は承認されました。実験は2012-12-20に実施される予定です。


[2012-12-22 Update]
2010-12-20に特異点#118174で行われた第64回目の実験セッションにて、局員Aによって事前の計画を大幅に逸脱した会話が行われました(事案118174-1)。事案118174-1によって生じた現在の時間軸に至るまでの最終的な影響の度合いは未だ明確になっていません。事案118174-1を受け、管理局では特異点#118174を含む案件#118174に関するあらゆる実験を無期限に禁止することを決定しました。局員Aは直ちに権限を剥奪され、懲戒解雇処分を受けました。


[2013-04-13 Update]
別案件に関する資料を整理していた局員が、2001-05-19に発生したバスの転落事故を報じた新聞記事について、2012-10-02時点に許可を得て取得した記事のコピーと記述が相違していることを報告しました(事案136577-1)。当該事故は修学旅行中の中学生を乗せたバスが崖から転落したというもので、当時多くのマスメディアで取り上げられています。

局員が取得したコピーでは12名の死者が出ていると報じられていましたが、元の新聞記事は11名の死者が出たことを伝えています。死者はいずれもすべて修学旅行中の生徒です。


[2013-04-25 Update]
事案136577-1における死者数の相違について、事案118174-1との関連性が提起されました。調査のための準備が進められています。


[2013-05-08 Update]
事案136577-1に関する調査の過程で特異点#118174への特例アクセスが試みられましたが、手順01における不明なアクセスポイントへの接続が確立できず、アクセスは失敗に終わりました。その後数十回に渡って接続の確立が試みられましたが、すべての試行で失敗に終わっています。

調査委員会は、2012-12-21から2013-05-08の間のいずれかのタイミングで案件#117184がその性質を変化させ、結果として事実上無力化されたという仮説を提起しました。関係する局員は、大半がこの仮説を支持しています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1224] #141018 「ワタッコカメラ No.7」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/03/24(Tue) 23:07:04   76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#141018

Subject Name:
ワタッコカメラ No.7

Registration Date:
2014-08-28

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
日々送付されてくる写真にユニークなファイル名を付け、異常性を持つ画像ファイルを格納するための専用ファイルサーバに保管してください。写真の一般への公開は、既に「カメラが故障した」というカバーストーリーに基づいて停止されています。問い合わせがあった場合は、カバーストーリーに沿ってカメラが故障していると繰り返し伝えてください。異常性のある写真について言及することは許可されません。

写真は管理局のチームによって解析され、合成などの編集を経て作成されたものではないことを確認します。これまでのところ写真はすべて未加工であり、またカメラや衛星に画像の編集・処理機能は搭載されていない裏付けが取れています。写真について何らかの発見があった場合、様式F-141018に基づいて申し出てください。写真が未知の情報災害をもたらす恐れがあるため、閲覧には汎用的な情報災害防止機構を備えた専用のタブレット端末を使用することになっています。

本案件で扱う「カメラを装備したワタッコ」を発見した場合は、速やかに確保してください。単独での確保が難しい場合、直ちに管理局の保安チームへ応援を要請してください。


Subject Details:
案件#141018は、GPS機能付きカメラを搭載した一体のワタッコが日々送信してくる異常な写真とそれに付随する一連の案件です。異常な写真を送信してくるワタッコは1体のみで、それ以外のワタッコは何ら異常性の無い写真のみを撮影・送信し続けているため、本案件では取り扱いません。

この案件は、2014-06-10にジョウト地方コガネシティで行われた「ワタッコの世界一周カメラ」という企画に端を発します。同企画はGPS機能付きの小型カメラを計10体のワタッコに装備させ、そのワタッコが風に乗って世界を一周する様を毎日14:00に自動的に撮影・送信されてくる写真によって追跡しようという目的で計画されました。2014-06-10にワタッコが飛び立って以降、現在もすべてのワタッコが日々写真を送信し続けています。写真は企画事務局が問題ないかをチェックした上で、公式ウェブサイトに日々掲載されることになっています。

10体のワタッコのうち9体(カメラ番号1〜6番及び8〜10番)は、GPSの座標や写真の撮影時刻から勘案して一切の異常性と矛盾の無い正常な写真を送信していますが、残る1体(カメラ番号7番)はそれに当てはまりません。2014-08-23を境に正常な写真の送信が停止し、他の情報と矛盾する異常な写真を送信してくるようになりました。企画事務局は初期段階でカメラの故障を疑い、遠隔操作によるカメラの再起動を数度実施しましたが、異常な写真の送信が止まることはありませんでした。事態を重く見た事務局は内部で協議を行い、本案件を案件管理局へ持ち込むことを決定しました。

以下は、2014-08-23以降にカメラ番号7番のワタッコ送信された異常な写真の抜粋です:


2014-08-23 14:00:00に撮影された写真:
ワタッコが送信してきた異常な写真の中でももっとも初期の写真になります。激しい爆撃を受けたように見受けられる、崩壊した都市が撮影された写真です。地理学的特徴からカントー地方タマムシシティの可能性が示唆されていますが、写真が撮影された際ワタッコはタマムシシティから少なくとも3,000km以上離れた地点を飛んでいたことが、GPS座標のログから明らかになっています。写真から確認できる限り、生きている人間はいないように思われます。暗雲の向こうに数体の影が確認されましたが、具体的な正体は不明です。搭載したカメラの故障が疑われ、企画局内部で公式サイトへの掲載の中止と速やかなカメラの再起動が決定されました。

2014-08-24 14:00:00に撮影された写真:
前日の夜間にカメラが再起動され、その後に撮影された写真です。三角形の窓が大量に取り付けられた六階建ての校舎がある恐らく小学校と推定される場所で、六本の腕を持つカイリキーと思われる存在と、五つの首を持つドードリオと思われる存在(うち一つには頭部が存在しません。一つには嘴が二つ存在します)が、目と鼻の無い数十名の子供(背丈はいずれも小学校低学年程度ですが、一名だけ3m近い身長を持つ個体が存在します)のような存在に取り囲まれています。カイリキーとドードリオは子供たちと親しげに遊んでいるように見えます。この時のワタッコのGPS座標は、カロス地方近辺の海上を指していました。写真はワタッコが通常空を飛ぶ高度からは考えられないほど近距離で撮影されています。事務局内部で案件管理局への持ち込みが提起されましたが、最終的にもう一度カメラの再起動が試みられることになりました。

2014-08-25 14:00:00に撮影された写真:
二度目の再起動後に撮影された写真です。確認できるだけで759体のモンジャラ(写真はそれ以上の数のモンジャラが存在していることを示唆しています)が、正確な場所は不明ですが都市に集結し、一つの建物に向かって押し寄せている様が撮影されています。都市や建物に荒廃した様子などは特に見られません。僅かに見える空は紅く染まっており、黒い太陽がくっきりと写真に写り込んでいます。太陽は通常の20倍程度大きく、また撮影時刻から見て著しく矛盾した位置に存在します。企画事務局にて、本件の案件管理局への持ち込みが全会一致で決定されました。

2014-08-27 14:00:00に撮影された写真:
案件管理局へこれまで撮影された写真と企画に関する資料一式が持ち込まれてから初めて撮影された写真です。視認できる限り終わりのない雪原に、十五体のナッシーが立っています。ナッシーは寒冷地帯では長く活動することのできない携帯獣として知られていますが、撮影された写真からはナッシーが衰弱している様子は見受けられません。これまでの写真と比較すれば異常性は低いものと考えられますが、ワタッコのGPS座標は雪原地帯とは明らかに異なる地域を指し示しており、矛盾した写真であることに変わりはありません。

2014-08-30 14:00:00に撮影された写真:
昼間に撮影されたにも関わらず、写真は非常に暗い闇の光景を映し出しています。一人の十代後半と思しき少女と、少女に付き従っているように見える四体の携帯獣の姿が見えます。携帯獣はタブンネ・コータス・エアームド・ラグラージと酷似したフォルムを持ちますが、いずれも確認されたことのない異常な体色です。タブンネは明るいエメラルドグリーン、コータスは暗い紫色、エアームドはファイアローに酷似した配色、ラグラージは本来の体色をグレースケールにしたものです。少女はこちらに対して背を向けており、具体的な特徴は不明です。

2014-09-04 14:00:00に撮影された写真:
写真は特段の異常性のないキキョウシティの風景を撮影しているように見えますが、マダツボミの塔が本来の高さの半分程度の高さしかありません。同日までにマダツボミの塔が改修されたという記録は存在しません。

2014-09-09 14:00:00に撮影された写真:
カントー地方トキワシティ北部にある「トキワの森」と推定される風景を撮影した写真です。写真には数体のピカチュウと思しき存在が写し出されていますが、同時に撮影された木々と比較して約四倍の背丈を持っています(およそ60mほどと推定されます)。ピカチュウは未知の電子機器を頭部に装備し、スタンロッドのような武器を手にしています。周囲に人間やその他の携帯獣の存在は確認できません。

2014-09-11 14:00:00に撮影された写真:
写真の撮影された時刻は14:00にも関わらず、周囲は2014-08-30の写真のように夜の闇に包まれています。高層ビルの屋上にて「Help us」と書かれたダンボールを掲げた二人の成人男性と思しき存在が写し出されています。男性の周囲をベトベターもしくはベトベトンに酷似した多数の謎の存在が包囲しており、脱出可能な経路はありません。謎の存在は外見こそベトベターもしくはベトベトンのそれと類似していますが、それぞれのフォルムは以下に示す携帯獣のものに類似しています:モンメン・リザード・ムウマージ・アズマオウ・スバメ・エレザード・ピジョンまたはピジョット(判別困難)・識別不能(計12体)。


2014-10-10に、異常な写真を送信し続けていたワタッコが発見され、事務局員三名の手によって成功裡に保護されました。ワタッコは企画事務局によって精密検査を含む完全な検査を受けましたが、異常な点は何ら検知されませんでした。その後ワタッコは案件管理局へ引き渡され、異常性が無いかをあらゆる角度から検証されましたが、管理局でも異常性を見出すことはできないという結論に達しました。

その後新たな機材が与えられ、ワタッコは再度世界一周の旅に出ました。しかしながら、使用する機材を完全に入れ替えたにもかかわらず、異常な写真の送信は依然として続いています。また、2014-10-10以前に異常な写真を送信していた機材を使用して管理局の局員が写真の撮影を行う実験も行われましたが、これまでのところ異常な写真の撮影には成功していません。

ワタッコが撮影する写真にいかなる意味があるのか、加えて写真に登場する人物や携帯獣がいかなる存在なのかという点に付いての統一的な見解は未だ出されていません。ワタッコにも機材にも異常が無かったことが確認され、かつ機材が入れ替えられたにも関わらず、今なお異常な写真が撮影され続ける理由も不明です。その他のワタッコが送信する写真に一切の異常性が見られないことも、本案件について説明が付かない一因となっています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1225] #120602 「拡張される地図と現実」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/03/25(Wed) 21:03:56   61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#120602

Subject Name:
拡張される地図と現実

Registration Date:
2008-03-21

Precaution Level:
Level 5


Handling Instructions:
可能な限り繰り返し、クレッフィを電子機器に近付けてはならないというメッセージを広く拡散してください。当該Webサービスの利用を停止させるためのGoogle Inc.との協議が現在も続けられていますが、それとは別にこれ以上の被害が出るのを防ぐための活動も併せて行われなければなりません。局員が本案件に掛かる事項を記載しているサイトを発見した場合、直ちに当該サイトの管理者へ記事の削除を申し入れてください。記事の削除に際しては、クレッフィの身体に重大な悪影響をもたらすというカバーストーリーが使用できます。

実験、あるいは偶発的に本案件によって生成された写真を目撃した局員は、当該写真が指し示す地域に立ち入ることを制限されます。現時点で写真を視認する前の状態へロールバックするための方法は確立されていません。通常の道とそうでない道を判別することは極めて困難です。多くの「拡張」された道は周囲の風景に対して矛盾の無い形で出現し、視認しただけでは異常性を見いだすことができません。2005-02-07以前に作成された紙媒体の地図との比較は道が正常なものか異常なものかを判断するためのもっとも安全で確実な手法となります。これまでのところ、紙媒体の地図への「拡張」は確認されていません。

写真に曝露したことで「拡張」された道を認識可能になった局員のみで構成されたチームで、一般的な手順に基づいて進入路を封鎖してください。進入を試みた一般市民は警告の上速やかに退去させ、指示に従わない場合は非致死性の武器を用いて制圧・拘留することが認められています。現在確認済みの拡張された道はいずれも封鎖されていますが、定期的に封鎖が意図せず解除されていないかを確認しなければなりません。過去に延べ24回、理由が不明な封鎖の解除が確認されています。


Subject Details:
案件#120602は、ある特定の条件を満たした状態で、Google Inc.の提供するWebサービス「Google Maps(グーグル マップ)」を利用した際に発生する事象と、それに付随する一連の案件です。現在のところ、条件を満たさない状態での事象の発生は観測されていません。

条件は三つです。

 1: 近く(およそ3m以内)に携帯獣の「クレッフィ」がいる
 2: クレッフィがいる状態でGoogle Mapsが持つ機能の一つである「Google ストリートビュー」を利用する
 3: 特定の地域の写真を視認する。視認しない限り、条件は満たされない

以上の条件を満たすと、該当する地域に本来存在しないはずの未知の道路が出現していることが確認できます。2014-07-28時点で確認している限り318箇所で地図が「拡張」されていますが、Google Inc.が保有するデータ量の膨大さのため、実際にどれだけの箇所で地図が「拡張」されるのかは判明していません。

クレッフィを側に置いてGoogle ストリートビューを使用した際に「拡張」されて出現する特異な道は、Google ストリートビューの持つ機能によって通常通り経路を辿ることができます。拡張された道は入り口を除いて通常の領域とは交差せず、地理的に見て明らかに矛盾した結果を示します。通常の道を辿った場合行き止まりになると想定される箇所であっても、拡張された道はさらに先へ進むことが可能です。拡張された道を参照している間、クライアントとGoogleのサーバ間では通常想定される程度の非同期通信が行われていますが、その間Googleがクライアントに返しているパケットは、一貫して正常な道を撮影した写真のみです。

一度でも拡張された地図を視認した場合、その後にクレッフィを遠ざけたり、セッションを初めからやり直したりしても、一貫して拡張された地図が表示されます。この効果は現在のところ永続的です。さらに、拡張された地図に基づくGoogle ストリートビューの画像が表示された状態で別の人間や携帯獣がそれを視認した場合も、同様の効果を発揮します。

拡張された地図を認識した状態で、地図に現れた未知の道路が存在する地点を訪れると、「拡張された道」が実際にあることが分かります。拡張された道は通常の道と同様に進入でき、ある程度の距離(およそ200m以内)までであれば、正常な道へ帰還することもできます。拡張された道に進入しただけでは特段の身体的または精神的異常は発生しません。拡張された道を認識している(拡張された道を見ている・拡張された道へ進入している/進入しようとしている・拡張された道から戻ってきた)状態はその光景を目撃した他者の認識にも影響を及ぼし、以後目撃者も拡張された地図を認識した状態になります。上記の特徴と併せ、拡張された地図/拡張された道は自らの存在を非常に強い力で他者に伝播させる能力を持ちます。

Google ストリートビューを使用する限りにおいては、拡張された道を安全に探索することが可能です。探索の結果、数々の未知の施設や建物、あるいは異常性があると思われる種々のオブジェクトが発見されています。以下はその抜粋です。


カントー地方ハナダシティ南西部・17番異常道路:
想定では雑木林が存在するはずの箇所が拡張され、舗装された道が存在しています。拡張された道を600mほど進むと、色あせた赤いホーロー看板が取り付けられた古い小屋を発見できます。劣化の度合いから見て、ホーロー看板は取り付けられて少なく見積もっても二十年以上が経過していると推定されますが、記載された電話番号は一般的な固定電話の番号ではなく、「050」から始まるIP電話用の番号になっています。このホーロー看板及び電話番号は、その異常性から別案件として扱われることが決定されました。

カントー地方ニビシティ北西部・23番異常道路:
路地裏から拡張された道を500mほど進み、交差点を右に曲がってさらに400mほど進むと、「有限会社未来志向研究所」というプレートの付いた中規模の研究施設が見つかります。この間、Google ストリートビューの写真には通常想定される程度の一般的な乗用車が写り込んでいますが、その大部分が既知の車種と一致しません。「有限会社未来志向研究所」という名称の企業は、これまでのところ実在が確認できていません。

カントー地方アーシア島アーシア村中央部・52番異常道路:
村の中央部に存在する食料品店の駐車場から、拡張された道が伸びています。Google ストリートビューによる探索では、進入からおよそ1,700mの地点で高層ビル群が立ち並ぶオフィス街へ到着します。オフィス街のビルにはいずれも明かりが灯っていますが、人影はまったく見当たりません。一部のビルは窓からオフィス内部の様子を観察できますが、確認されたすべてのオフィスで、個人用端末としてファミリーコンピュータ ディスクシステムを接続したCommodore 64が使用されていました。ハードウェアが実際に稼働しているビルもいくつか見受けられます。

ホウエン地方トウカシティ北部・179番異常道路:
拡張された道を2,000mほど進むと、トウカシティに極めて類似した未知の都市に到着します。未知の都市の構造はトウカシティとほぼ同様で、トウカシティジムと同様のジムも確認できます。地名に該当する箇所にはすべてモザイク処理が施されており、具体的な地名は不明です。市内の中央に位置するコンビニエンスストアの前で、胸部を鋭利な刃物で刺されて死亡しているポケモントレーナーが発見されました。ポケモントレーナーの特徴から、死亡しているのは2007年6月にシンオウ地方で消息を絶ったトレーナー「オオシマ ヨウジ(トレーナーID:22397/登録:カロス地方ミアレシティ/登録年:2006年)」氏と断定されました。遺体は腐敗の兆候を見せておらず、写真はトレーナーの死亡直後に撮影されたように見えます。

この拡張された道を発見したのはオオシマ氏の母親に当たる人物で、Google Inc.に対して自身の子供が死亡している写真を掲載したと抗議の連絡が行われたことで、Google Inc.及び案件管理局が状況を知ることになったという経緯があります。Google Inc.の幹部と管理局局長がオオシマ氏の母親と接触し、例外的に本案件について当局が把握しているすべての情報を開示しました。その上で、拡張された道への進入を思いとどまるよう再三に渡り説得を試みましたが、最終的に母親は当局の申し出を拒絶しました。母親は数名の支援者とともに拡張された道へ進入し、オオシマ氏の遺体の回収に乗り出しました。その後、オオシマ氏の母親及び支援者の行方は分かっていません。写真はGoogle Inc.が管理するその他の異常性の無いGoogle ストリートビュー用写真とともに2014年に更新されましたが、遺体は依然として死亡直後の状態のまま何の変化も見せていません。オオシマ氏の母親や支援者の姿は見つかりませんでした。


Google ストリートビューを使用しない拡張された道の探索は非常に危険です。これまでにのべ6名の局員が実地調査を行いましたが、いずれも未帰還のまま数年が経過しています。Google ストリートビューによって観測された未知の施設やオブジェクトへの物理的なアクセスはすべて失敗に終わっています。加えて、これまで各地域で届出がなされた原因不明の失踪事件について、本案件によるものと推定されるものが最低でも249件あると考えられています。

本案件は伝播力が非常に強く、また完全な回復方法が確立されていないことから、警戒レベルは通常案件における最大の「5」が設定されました。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1226] #93326 「そらをとぶピカチュウ」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/03/26(Thu) 21:00:43   64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#93326

Subject Name:
そらをとぶピカチュウ

Registration Date:
1999-07-30

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
原因不明のピカチュウの消失についてポケモンセンター及び金融機関から申し出があった場合、報告元のサービスエンジニアまたはシステム担当者にインシデントが発生したサーバの情報を調査させてください。攻撃を受けたサーバはセキュリティ監査を実施し、必要に応じてハードウェアをリプレースします。通常のシステムでピカチュウが預けられた場合、可能な限り高いセキュリティ対策が施されたサーバへ自動転送される設定を組み込むようポケモンセンターへ通達しています。現在全世界のおよそ96%のポケモンセンターで設定が有効化され、本案件の未然防止に高い効果を上げています。金融機関からの申し出は、2012-10-18時点の直近10年間で1件もありません。

案件に伴って出現したピカチュウは可能であれば捕獲し、通常のフィジカルチェックリストに沿って異常が無いかを精査してください。過去の捕獲事例より、多くの場合ピカチュウそのものにも何らかの異常性が認められます。捕獲及び精査の際は、対レベル2バイオハザード用スーツを着用することが義務付けられています。予期せぬネットワークへの接続が行われないようにするため、捕獲を実施する拠点では不要な無線ネットワークを稼働させないことを強く推奨します。これまでのところ有線接続によるネットワークへの参加は確認されていませんが、有線接続が可能な改変が施されたピカチュウの出現も可能性としては否定できません。

調査・保全の過程で捕獲されたピカチュウは、異常性が無く正常と認められれば本来のトレーナーの元へ送り返します。その際は、ピカチュウを識別するための生体情報を確保し、専用のデータベースサーバに暗号化して保管してください。研究チームは取得した生体情報のうちトレーナーの個人情報に該当する部分を除いた全情報にアクセス可能ですが、アクセスの際には必ず監査証跡が記録されます。

捕獲の際に取得した風船及び各種広告は、第三低異常性取得物保管庫のブロック8-Eにある引き出しへ他の取得物と区別して収容してください。


Subject Details:
案件#93326は、次の3件から成る一連の事象に掛かる案件です。

 1: 不定期に試みられる「ポケモン預かりシステム」及び「ポケモンバンクシステム」への不正アクセス
 2: 1に伴う携帯獣「ピカチュウ」の消失
 3: 2で消失したピカチュウの異常な形での再出現

本案件への対応比重は、3のピカチュウの再出現に大きくリソースが割り当てられています。

1998年下半期頃より、一般利用者向けの携帯獣管理システムである「ポケモン預かりシステム」及び、富裕層向けの携帯獣関連資産管理システムである「ポケモンバンクシステム」の双方に対して、断続的に不正なアクセスが試みられるようになりました。過去に「ポケモン預かりシステム」で計118体、「ポケモンバンクシステム」で計7体のピカチュウが消失しています。これに関しては管理局でも再現可能な通常のクラッキング手法が使われており、不正アクセスそのものは十分なセキュリティ対策を施すことでほぼ防ぐことが可能です。2000年代前半に各金融機関の相互協力により「ポケモンバンクシステム」が刷新され、それに伴うセキュリティの大幅な強化により外部からのアクセスが事実上不可能になったことで、攻撃者の標的は「ポケモン預かりシステム」に絞られていると見られています。

消失したピカチュウは、これまでの観測で3日から7ヶ月のランダムな期間が経過した後に再出現します。今までに現れたピカチュウの特徴は様々ですが、大まかな部分である程度類似した特徴を持ちます。

ほとんどの場合、ピカチュウは人目に付きやすい都市部、それも人口の集中しやすい大都市部に出現します。その際は様々な色の大量の風船が体に括り付けられ、あたかもアドバルーンや飛行船のように空を飛行している状態で現れます。出現後は、その都度著しく内容が変わるアジテーション的またはプロパガンダ的広告を様々な方法で宣伝しようとします。

以下は過去に出現したピカチュウの一部抜粋です:


1999-09-01 カントー地方セキチクシティに出現:
風船を括り付けられたピカチュウが市の北部にあるサファリゾーンの入り口付近に出現し、空中から後述するメッセージが記載されたビラを大量にバラ撒いていました。ピカチュウはビラを配り終えると未知の方法で風船を括り付けたまま着地し、その後激しい閃光を10秒間放ちました。捕獲されたピカチュウは極度の緊張状態にあり、保護から4時間後に死亡が確認されました。本来のトレーナーには亡くなった状態で見つかったと報告しています。

配布されたビラに書かれていたメッセージは下記の通りです。

「休暇という服役は今終わった
 学校という娑婆へ出ていこう」

その場に残されたビラ及び風船からは、特段の異常性は検知されませんでした。


1999-10-24 ジョウト地方コガネシティに出現:
コガネデパートの屋上にて、風船を括り付けられたピカチュウの姿が観測されました。ピカチュウは後述する垂れ幕を提げ、アドバルーンのように周囲を遊覧していました。出現から3時間後に突如としてすべての風船が破裂し、ピカチュウは無防備なまま地面に叩き付けられました。本来であれば即死は免れない高度からの落下でしたが、ピカチュウは地面に躓いて転んだ時のようなごく軽いかすり傷を負ったのみで、命に別状はありませんでした。管理局が確保した後の各種検査でも異常が見つからなかったため、ポケモンセンターに照会の上本来のトレーナーの元へ送還しました。以降、当該ピカチュウとトレーナーについて何ら異常は報告されておらず、現在もジョウト地方ヒワダタウンにて健在です。

ピカチュウが提げていた垂れ幕に書かれていた内容は以下の通りです。

「売り場に並ぶ肉を選ぶように
 あなたのパートナーを選ぼう」

ピカチュウを保護した際、この垂れ幕は消失しており回収できませんでした。


2000-03-16 カントー地方シオンタウンに出現:
当時建設中だったラジオ塔近辺に突然出現し、周囲を旋回するように飛行しているところを発見されました。上空から写真が入ったビラを大量に配布し、ラジオ塔の建設に従事していた作業員が一時避難する騒ぎになりました。ビラを配り終えた後、ピカチュウは少しずつ風船を破裂させながら徐々に降下、最終的にラジオ塔入口付近に着地しました。その時点で既に現場監督からの通報を受けて管理局の局員が3名駆けつけており、着地したピカチュウの回収に当たりましたが、ピカチュウは既に死亡していました。

配布していたビラには、死亡したポケモンの遺影をバックに以下の文言が印字されていました。

「大切な思い出はプライスレス
 球コロ程の価値もありません」

トレーナーIDは読み取りに失敗したため、本来のトレーナーは不明です。ピカチュウの検死を行ったところ、死因は器官に水を詰まらせたことによる溺死とほぼ特定されましたが、同時に脱水症状を起こしていたことも判明しました。加えて、切開した胃から通常の3倍近いエネルギーを持つ雷の石が摘出されています。この雷の石は研究のため、別の拠点にて保管されています。


2002-05-05 シンオウ地方ミオシティに出現:
市の北部に位置する図書館の上空で出現が確認されました。拡声器を用いて市の全域に大音量で後述するメッセージを流すという形でアピールが行われています。出現から2時間30分後に風船が未知の原理で高度を上げ、そのまま北東へ飛び去っていこうとしたところを管理局の局員が捕獲しました。捕獲されたピカチュウは外見こそ正常で目立った傷はありませんでしたが、脳を含むすべての内蔵が取り出され、代わりに綿が詰め込まれていました。体組織からIDが割り出され本来のトレーナーが特定されましたが、トレーナーは現在に至るまで行方不明のままです。

ピカチュウが放送していたメッセージの抜粋は下記の通りです。

「(前略)……伝承という名のプロパガンダを打倒し……伝統という名のバ(雑音・不明瞭)を撃滅し……神話という名のデマゴーグを粉砕しよう……私たちは新しい時代に生きている……(中略)」

ほぼ同一のメッセージが、本件以前の出現でも確認されています。


これら一連の出来事には、人間と携帯獣の相互不可侵と分離独立を強く主張する先鋭的なNGO団体「ピース・フォー・ピース(Piece for Peace)」が関与している可能性があります。同団体は2000年上半期に携帯獣の惨殺死体を使用した過激なアート的アピールを繰り返したことにより、各方面から多くの批難を集めました。案件管理局においても、これまでに起票された案件の一部で同団体が異常特性を持つオブジェクトや生命体を生産した疑いが払拭できておらず、そのため要注意団体として管理対象になっています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1227] #99711 「I’m Feeling Lucky」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/03/27(Fri) 19:49:33   61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#99711

Subject Name:
I'm Feeling Lucky

Registration Date:
2001-08-07

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
該当するボタンが配置されているページを見つけたことをクローラーが連絡してきた場合、ページをサンプルとしてファイルに保存してから、サイトの管理者にページがウイルス感染している旨を伝えて削除を要請してください。三日以内に管理者が要請に従わない場合は、サーバの管理者へ同様の連絡を行いサイトを凍結させてください。いずれにせよ、ボタンが存在しているページへのアクセスを一刻も早く妨害する必要があります。

ボタンを押したいという衝動を訴える者が現れた場合、速やかにGoogleのトップページを案内してください。Google Inc.と管理局の担当者による監視がなされているため、本ページに設置されたボタンは安全であることが保証されています。また、このボタンの押下は衝動の沈静化に大きく寄与し、ほとんどの場合1回の、それ以外の場合でも3回以内の押下で衝動が完全に消失することが確認されています。ボタンについての知識が十分にあれば、ボタンを視認しても速やかにページから離脱するか、またはウィンドウを閉じることでそれ以上の進行を食い止めることができることが分かっています。

世界中のラッキーの生息数を観測する活動が行われています。ラッキーの増加そのものに対処する必要はありませんが、生息数は可能な限り正確に把握しておかなければなりません。ラッキーの生息数増加が通常と比べて異常なペースで確認された場合、クローラーに -detecthotspot オプションを付与して稼働させてください。このオプションはサーバ/クライアント共に非常に高い負荷が掛かるため、緊急を要する場合を除いては有効化しないでください。

局で把握しているすべてのラッキーのコロニーは定期的に観察され、局員によって写真に収められます。写真は専用のサーバに保管され、対応に当たる局員が写真に不審な点、特にラッキーとは思われない生物が写り込んでいないかを確認します。不審な生物が確認された場合は局員が対象のラッキーを捕獲し、手順M-99711-1による検査を行ってください。検査の結果異常が認められた場合、手順M-99711-2による「回復」の上、最寄りの医療機関へ移送してください。


Subject Details:
案件#99711は、インターネット上の不特定多数のサイトに現れる「I'm Feeling Lucky」ボタンとそのボタンを押下したくなるという認識異常、及びボタンを押下することにより発生する症状からなる案件です。

この事象はWebサイトに「I'm Feeling Lucky」とラベリングされたボタンが出現することにより開始されます。これまでのところ、ボタンが出現するサイトは何の法則にも則っていません。企業が開設したWebサイト、個人が開設したWebサイト、多数の人が利用する電子掲示板、SEO目的で作成された実態の無いスパムサイトなど、サイトの種類は問われません。出現方法もページに単純に埋め込まれるものから、投稿ボタンを装って配置されるものなどパターンは多彩です。多くの場合、元のWebページのレイアウトを極力破壊しない形で出現します。

出現する「I'm Feeling Lucky」ボタンはごく単純なHTMLによって作成され、アクションは何も関連付けられていません。管理局が同様のHTMLを記述してページを作成しても、ボタンは何ら異常な特性を示しません。異常なボタンを挿入している母体を突き止めるための試みは現在も続けられています。

本案件で扱う「I'm Feeling Lucky」ボタンについての知識が不足している場合、ボタンの存在を認識した者は「ボタンを押したい」という強い衝動に駆られます。対策の初期ではボタンを視認することがトリガになると考えられていましたが、視覚障害者がテキストブラウザを使用した際にも同様の認識がなされたため、視認するだけでなくボタンの存在を知ることが発動のための正確な条件であると考えられます。

ボタンを押下した場合、画面上は何の変化も起きませんが、押下した人間には自分自身を携帯獣の「ラッキー」であると認識するという症状が起こります。明らかな種族的特徴や容貌の矛盾が発生するにもかかわらず、罹患者はその矛盾に気付くことができません。多くの場合、周囲に(実際の携帯獣及び同じ症状を呈している人間の双方の意味での)ラッキーが居ないことに強い孤独感を覚え、ラッキーが集まる場所を目指して徘徊を始めます。原理は不明ですが、多くの罹患者は自然とラッキーの集まるコロニーへと辿り着き、以後回復するか死亡するまでラッキーとして生活し続けます。観察の結果、周囲の「本物の」ラッキーは罹患者を同族とみなしていることが分かっています。

過去の事例から、ラッキーとしての能力――身体能力や各種技能など――が覚醒したり、追加されたりするケースは一切見られません。自分自身をラッキーであると信じ込んでいることを除けば、罹患者は完全に正常な人間のままです。他者との会話も可能ですが、多くの場合共に認識異常を起こしているため、正常な会話は行えません。

携帯獣としてのラッキーを知っている人間や携帯獣が罹患者と接触した場合、罹患者のことを同じく「ラッキー」であると認識するようになります。会話が可能なことや容姿の決定的な相違など無数の矛盾点があるにも関わらず、対象は罹患者をラッキーであると認識し決して疑いません。これはあくまで罹患者に対してのみ発生する現象で、後述する方法で回復された罹患者については、正常な人間であると認識できます。対象は罹患者がラッキーであった時のことを記憶していますが、記憶の内容は罹患者が通常の人間であったかのように置き換えられています。

自分をラッキーであると認識している罹患者は、携帯獣としてのラッキーを知らない人間から「あなたは人間である」もしくは「あなたはラッキーではない」と口頭で指摘されることにより、瞬時に元の状態へ回復します。この時罹患者は一時的に混乱した様子を示し、しばし「自分はラッキーではない」と繰り返します。これは一時的なもので、長くとも2時間ほどで自然に治まります。以後は「I'm Feeling Lucky」ボタンを押下しない限り、症状は再発しません。

症状からの回復のためには、ラッキーについての知識が無い人員が必須です。昨今のポケモンセンターや介護施設におけるラッキーの雇用増加は、ラッキーがこれまでより多くの人に認知されやすい土壌を形成する大きな一因となっており、人員の確保が困難になりつつあります。案件管理局では、ラッキーが生息していない地域から本案件に対応するための人員を確保するルートを積極的に形成することを奨励しています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1228] #116368 「第38話」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/03/28(Sat) 21:02:39   61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#116368

Subject Name:
第38話

Registration Date:
2006-11-17

Precaution Level:
Level 1


Handling Instructions:
映像そのものに強い異常性は見られませんが、視聴した結果予期せぬ健康被害をもたらす可能性がありますので、発見次第速やかに保全の上アクセス遮断の手続きを取る必要があります。動画投稿サイトへの削除申し立ては、様式F-116368-1に必要な事項を記入してワークフローを回付してください。週次の処理で一括して削除の請求を行います。削除に際しては、権利者からの申し立てというカバーストーリーが使われます。

保全した動画ファイルは、異常性を持つ映像を収容するための専用サーバへ暗号化を施した上で保管します。研究目的で映像を使用する場合、様式F-116368-2に必要な事項を記入してワークフローを回付してください。承認が下り次第動画へのアクセスが認められます。映像の視聴に際しては、異常メディア閲覧用にカスタマイズと各種セーフティロックが施されたタブレット端末が一時的に支給されます。動画ファイルへの直接のアクセスは許可されません。

これまでに取られたデータの統計から、新たな動画の出現ペースが短くなっていると予測されています。便乗した形での動画投稿も少なくありません。動画の性質上、クローラーによって一律に異常な動画を検出することが困難なため、本案件へ割り当てる人員を増員することを検討しています。


Subject Details:
案件#116368は、アニメ「ポケットモンスター」第1シーズンの第38話「でんのうせんしポリゴン」を元にした多数の出所不明の動画と、それに付随する一連の案件です。オリジナルの第38話には異常性が無いため、本案件の管理対象ではありません。

2006年下半期頃から一部の動画共有サイト(主に「YouTube」)にて、「ポケモンアニメの欠番(「発禁」と表記されるパターンも複数確認されています)回を公開」といったキャプションが付いた動画が投稿されるようになりました。動画はいずれもオリジナルの第38話を元にしていると推定されますが、一部の動画はオリジナルの内容から完全にかけ離れたものになっています。具体的な内容については後述します。

オリジナルの第38話は、作中で使用された過度の点滅表現によりおよそ700人に対して頭痛・吐き気等を伴う光過敏性発作を引き起こさせたことが大きく取り上げられ、問題とされました。このエピソードは事件後一切の再放送・ソフト化がなされておらず、現在のところ公式に視聴する方法はありません。

これまで発見された動画はオリジナルで問題とされた過度の点滅表現を必ず含んでおり、意図せず視聴した場合はオリジナルと同等の程度で健康を害する恐れがあります。しかし現在のところ、映像を視聴したことによる影響はそれ以上確認できていません。視聴者は動画の内容を正しく、論理的に説明することができ、不快な内容であれば相応の不快感を訴えることができます。これは動画そのものに異常性や情報災害に繋がる要素が含まれていないことを示しています。つまり、映像としては総じて異常で時として不快な内容ですが、それ以上の危険性は持ち得ないと見なされています。

本案件で注目すべきは、映像に対して行われている編集が、通常想定される個人あるいは小規模な団体では為し得ないほど突出して高度なものであることです。いかなる個人あるいは組織が、どのような意図を持ってこれらの映像を作成・頒布しているのかは分かっていません。現在の本案件への対応方針は、動画の作成元を突き止めることに焦点が当てられています。

動画の投稿者を突き止めることは幾度か成功していますが、投稿者からのヒアリングでは「別の動画サイトから転載した」「ファイル共有ソフトでダウンロードして、面白かったので転載した」といった回答しか得られていない状況です。映像の制作者を追跡する試みは、これまでのところすべて失敗しています。

これまでに管理局によって確認・保全された映像について、以下に抜粋しました:


映像#116368-1(投稿日:2006-07-12/投稿時タイトル:「第38話 rev.3」):
管理局が本案件について調査を開始した最初期に確認された動画です。大まかなストーリーの流れはオリジナルのエピソードに準じていますが、主人公の少年である「サトシ」と、このシーズンでヒロインを務めた少女「カスミ」(実在するカントー地方ハナダシティのジムリーダーをモデルとしています)に差異が見られます。サトシはこれまでのエピソードとは明らかに異なる服装をしており、カスミは未知の少女のキャラクターに置き換えられていました。カスミの代替キャラクターを演じているボイスアクターは不明です。

[2013-11-12 Update]
これまでカスミの代替とされてきた未知のキャラクターは、2013-10-17より放送が始まった第11シーズン「ポケットモンスター XY」に登場する「ユリーカ」(実在するカロス地方ミアレシティのジムリーダーの妹をモデルとしています)と、ボイスアクターも含めて完全に一致することが判明しました。動画が投稿された時点ではモデルとなったユリーカ氏は出生していませんでしたが、彼女の出生年に動画が投稿されていることは注目すべきファクターです。サトシの服装についても、このシーズンのデザインと一致することが分かっています。


映像#116368-2(投稿日:2006-08-22/投稿時タイトル:「第38話 rev.Δ」):
動画の前半部は、軽微な差異は見られますが概ねオリジナルのエピソードに準じていますが、コマーシャル映像を挟んだ後の後半部は本来の展開を明らかに逸脱しています。登場人物の一人「アキハバラ博士」が突如として鈍器を持ち出し、主人公たちが潜入しているサーバーコンピュータを片っ端から破壊し始めます。五分間の絶え間ない破壊活動の後、アキハバラ博士はポケットから拳銃を取り出し、自らの頭部を撃って自殺します。最終的に、本来登場するはずのピカチュウがおらず、ただモンスターボールが一つ転がっているスタッフロールが流れ、動画は終了します。アキハバラ博士の破壊活動に際して、サーバーコンピュータの爆発が画面の点滅によって表現されます。


映像#116368-3(投稿日:2006-10-10/投稿時タイトル:「第38話 rev.♯」):
タイトルの「♯」は「#(いげた)」ではなく、音楽記号の「シャープ」です。ストーリーの展開にオリジナルとの差異は見られませんが、すべてのキャラクターのボイスアクターが変更されています。変更後のボイスアクターについて調査を実施したところ、放送局及び制作会社がまったく異なる少女向けアニメのものに差し替えられていることが分かりました。キャラクターボイスは流暢で合成した形跡は見られず、管理局が目的を伏せて実施したブラインドテストでは、98%という明らかに異常な確率で「本人が演じている」との回答が得られました。ボイスアクターへのヒアリングでは、このエピソードへの出演は誰一人として認められませんでした。


映像#116368-5(投稿日:2007-01-01/投稿時タイトル:「第38話 rev.X」):
エピソードが全面的に差し替えられ、主人公一行はサーバーコンピュータ内に閉じ込められて約一年が経過しているという設定の元にストーリーが展開されます。サトシは「ポケモンマスター」なる、恐らくはゲームマスターや管理者的な存在について繰り返し言及し、自身がその立場を得ることでサーバーコンピュータからの脱出を目指します。このエピソードでは携帯獣が強大な力を持つ怪獣的存在として描かれ、しばしば主人公の近親者や同じく閉じ込められた人物の凄惨な死亡シーンが描かれます。主人公以外の登場人物は、第4シーズン(「ポケットモンスター アドバンスジェネレーション」)以降に登場するゲストキャラクターに酷似しています。


映像#116368-21(投稿日:2007-03-08/投稿時タイトル:「第38話 rev.38」):
映像はオリジナルのものと差異が見られませんが、主人公であるサトシのみ、すべての台詞が逆再生されています。映像を逆再生することで、サトシのみ台詞を正常に聞き取ることが可能です。逆再生された台詞はほぼすべてオリジナルに準じていましたが、一つだけ未知の台詞が含まれていました。台詞は「表現はいついかなる時も自由でなければならない」というものでした。この台詞が使われたエピソードは、これまでのところ確認できていません。


映像#116368-39(投稿日:2007-06-17/投稿時タイトル:「第38話 rev.-1」):
映像は前半部と後半部が二分割され、さらに「後半部後半→前半部前半→後半部前半→前半部後半」に順序が入れ替えられていました。登場人物はエピソードの順序が入れ替えられていることに戸惑い、終始具体的なアクションを起こせずに一方的にストーリーに翻弄されます。断絶したエピソードの合間合間にロシア語/キリル文字で書かれた過激なアジテーション的メッセージが60分の5秒間挿入されますが、この意図は不明です。視聴者はいずれもメッセージが挿入されたことに気付かず、静止画で確認しても意味を理解できませんでした。


映像#116368-106(投稿日:2010-09-12/投稿時タイトル:「第38話 rev.65536」):
明らかに管理局の局員と分かる人物(識別不能)が端末で映像を鑑賞しているという形で、オリジナルから左右反転及びネガポジ反転処理が施された映像が記録されています。セキュリティインシデントが発生した恐れがあるため、該当する拠点が一時閉鎖されました。この映像で流れた「左右反転及びネガポジ反転処理が施された映像」は現在までに発見されていません。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1229] #112213 「Netscape Navigator 3.06」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/03/29(Sun) 20:21:59   72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#112213

Subject Name:
Netscape Navigator 3.06

Registration Date:
2005-07-24

Precaution Level:
Level 3


Handling Instructions:
本案件で管理すべきWebブラウザは、少なくともインターネット上のサイトからダウンロードすることは極めて困難か、または不可能な状態を保てています。一般に頒布されたバージョンでないことに加え、最新のオペレーティングシステム上では正常に稼働しないことも、対象を抑え込むことに寄与しています。現在はファイル共有ネットワーク上でこのWebブラウザの配布が行われていないことを監視する体制作りが進められています。

このWebブラウザを使用して得られた情報はポケモンセンターの統合監視室へ問い合わせて取得したデータと日々照会し、内容の一致/不一致を厳密に確認してください。これまでのところ、例外#112213のデータ群を除いたすべてのデータが常に最新の情報と一致していますが、万が一不一致が見られた場合は直ちに相違箇所を抽出し、様式F-112213-1に沿ってワークフローを回付してください。

Webブラウザをリバースエンジニアリングした結果は、案件別サーバの成果物リポジトリに保管されています。かつてNetscape社に在籍していた開発者を通常よりも高額の報酬で雇用するオプションを適用したことで、プログラムの解析が想定よりも早いスピードで進められています。これまで判明している情報では、本案件で主要な管理対象になっているGopherプロトコルの実装について、公開された最終版と有意な差異が認められることが分かっています。さらなる検証が続けられる予定です。


Subject Details:
案件#112213は、かつて存在していたNetscape Communications Corporation(以下Netscape社)が開発したWebブラウザ「Netscape Navigator」の未公開バージョンと、そのバージョンでのみ接続が可能な異常なGopherサーバにかかる一連の案件です。

2005年前半、既に配布されなくなった古いバージョンのソフトウェアを配布しているWebサイトのフォーラムに「Netscape Navigatorのバージョン3.06は存在しないはずではないか」という問題提起の書き込みがなされたのが本件の発端です。管理者はサイトがクラッキングされたと判断し、一時的にサイトを閉鎖しました。その後サイト管理者から案件管理局のイッシュ地方ヒウンシティ支部へ通報があり、管理者からヒアリングを行った結果重大な異常性が認められました。これにより、対象を案件として管理することが即日決定されました。

本案件で管理する「Netscape Navigator」のバージョン3.06は、公式のバージョン履歴には存在しません。3.x系列の最終バージョンは3.04で、その後は4.x系列へ移行しています。4.x系列は2002年リリースのバージョン4.8が最終版となっています。このためこのバージョン3.06は非公式にビルドされたものである可能性を含んでいますが、ファイルに記録された署名はいずれもNetscape社公式のものと一致しています。Netscape社に在籍していた元開発者からのヒアリングでは、3.04のリリース以後に3.x系列のメンテナンスを行うチームや担当者は存在しなかったとのことです。

このバージョンのNetscape Navigatorは、バージョン3.04までに搭載された機能をすべて搭載していますが、一見したところバージョン3.04から変更された箇所は無いように見受けられます。しかしながらこのバージョンは、GopherプロトコルによりローカルホストのGopherサーバへ接続を試みた際に、通常想定されないような異常な振る舞いを見せます。

実際にローカルホストにてGopherサーバが稼働しているかによらず、Gopherプロトコルによるローカルホストへの接続が行われた場合、Netscape Navigatorは膨大な量(2014-05-21時点で763239件)のリスト(以下第一階層)を画面に表示させます。第一階層を辿ると、さらに別のリスト(以下第二階層)が表示されます。最終的にリストは第四階層まで展開され、それ以上リストが展開されることはありません。

リストの構造は以下のようになっています。

 第一階層:ポケモン預かりシステムを構成するサーバ一覧(仮想サーバ単位)
 第二階層:サーバ毎に管理されているアカウント一覧
 第三階層:アカウント毎に管理されているボックス一覧
 第四階層:ボックス毎に管理されている携帯獣一覧

アクセス可能なアカウント一覧及び携帯獣一覧については、正規の手順でアクセスした際の最新の状態と完全に一致することが判明しました。携帯獣は数値化されたパラメータ、分析された性格タイプや出会った経緯等のテキスト情報、所有しているアイテム、及び公式戦で参戦させるに当たり事前に届け出る必要がある標準使用技能など、通常のインタフェースで表示される情報をすべて参照可能です。これに加えて、現在のインタフェースでは参照できない未知の情報が多数列挙されています。これらの情報を解析する試みが続けられています。

これまでのところ、ポケモン預かりシステムがGopherサーバを稼働させていた記録も、同システムがGopherプロトコルによる接続を受け付けていたという記録もありません(同システムはクローズドソースの独自プロトコルにより接続が行われる仕組みになっています)。HTTPによる携帯獣情報閲覧サービスは提供されていますが、パケットの解析結果から本件とのつながりは無いことが確認されています。

Netscape Navigatorをインストールした端末をネットワークから切り離しても、依然として接続は可能です。Gopherプロトコルは仕様によりドキュメントの取得毎にコネクションが切断されますが、コネクションとコネクションの間でどのようなネットワークに関する設定変更が行われようと、未知のGopherサーバは一貫して結果を返しつづけます。これはWebブラウザから見た時、あくまでローカルホストのGopherサーバへアクセスしていることが理由と推定されます。

本件で危惧すべきは、本来携帯獣情報の照会時に必須となるアカウント認証をスルーし、制約なしにあらゆるアカウントの保有する携帯獣の情報が参照可能なことです。重大な機微情報の流出につながる恐れがあり、かつ現時点でGopherサーバへの接続を阻止する術が無いことから、管理局では本Webブラウザが配布されないことを主な目的として活動を続けています。


[2008-09-30 Update]
未知のGopherサーバの調査中、実在するアカウントと一致しないアカウントが大量に登録されたサーバ群が発見されました。いくつかのアカウントはこれまでに発見されていない携帯獣の保有を示唆しています。これらのアカウント群は例外#112213と命名され、別途管理対象とされます。

[2012-05-23 Update]
ミニブログサービス「Twitter」にて、Mac OS(バージョンX以前の所謂「Classic」オペレーティングシステム)向けWebブラウザである「iCab」の未知のバージョン「2.9.12」について言及がありました。本案件と類似した異常性があることが示唆されていますが、GopherプロトコルではなくFTPプロトコルを用いていることの差異が見られます。FTPプロトコルの性質を鑑み、現在人員を増強しての「iCab 2.9.12」の捜索が続けられています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1230] #62403 「スリーパーに気を付けろ」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/03/30(Mon) 19:42:02   72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#62403

Subject Name:
スリーパーに気を付けろ

Registration Date:
1989-10-11

Precaution Level:
Level 4


Handling Instructions:
管理局が開設している医療機関及び行政機関の窓口に「スリーパーに襲われる夢を見た」という直接の申し出があった場合は、直ちに捕獲のための特別チームを出動させてください。対象は一時的に保護入院の措置を執り、捕獲が完了した段階で退院してください。夢を見た際に強い心的外傷を負っている虞があるため、解放の際は併せて専用に調整した精神安定剤を処方してください。

パソコン通信の各ホストで開かれているフォーラム、特に医療に関するフォーラムを継続的に監視し、スリーパーに関する悪夢を訴える利用者がいないかを確認してください。該当する利用者が見つかった場合、ホストに問い合わせを行い利用者へコンタクトを取ってください。コンタクトの際は身分を明かし、見た夢の内容は危険であること、身の安全を保証するために数日間指定の病院へ入院して欲しい旨を丁寧に伝えてください。

野生のスリーパーを捕獲するための試みが続けられています。スリーパーを目撃した局員は決して直接アクションを起こさず、案件#62403の担当者に電話または社内メールで連絡を取ってください。スリーパーの持つ能力の性質上、捕獲に際しては特別な技術を持つ専用チームが出動する必要があります。スリーパーの捕獲後は、手順M-62403に沿って適切な処置が施されます。


Subject Details:
案件#62403は、携帯獣の「スリーパー」に襲撃される夢を見るという事象と、それに伴って現実でスリーパーと出会うという事案の2件からなる案件です。

少なくとも1970年代後半頃から、夢の中に明朗な形でスリーパーが現れ、数日以内に実際に野生のスリーパーと接触するという事象が各地で報告されていました。案件管理局が把握している最古の例は、1969年にカントー地方クチバシティ在住の十四歳の少女が同様の夢を見た翌日にスリーパーと出会い、危うく誘拐されかけたところを別のポケモントレーナーによって救出されたというものです。以来地域を問わず、スリーパーが棲息しているすべての地域で同様の事象が発生しています。

この事象の特徴的な点は、現実にスリーパーと接触する前に必ず夢を見るというものです。夢の内容は大まかな部分で一致しており、スリーパーが被害者の夢の中に突然現れ、被害者の夢を「食べて」しまうというものです。夢を食べられた被験者は強い恐怖心に襲われ、その後実際にスリーパーと接触するとほとんどの場合パニックに陥ります。現在のところ管理局が把握しているケースで実際に野生のスリーパーに襲われた事例は無く、いずれも何らかの形で救助が行われていますが、被害者は往々にして強い心的外傷を負います。

昨今のパソコン通信の発達により、この事象が国内各地で発生していることが明らかになりました。医療機関への相談件数も増加の一途を辿っています。案件管理局では本件を重大案件として採り上げ、専門チームを組織して対策に乗り出しています。主な対策は夢を見た対象を保護することによる防御的措置、及び野生のスリーパーを捕獲することで本件の事象が起きることを防ぐ積極的措置の二つから成ります。

取扱資料にもある通り、決してスリーパーに直接アクションを起こしてはなりません。野生のスリーパーを見つけた場合、速やかに援護要請を行ってください。最寄りの拠点から専門チームを派遣します。これは事前に夢を見た場合も同様です。繰り返しになりますが、何があろうと個人でアクションを起こさないでください。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムは公開されていません。管理局の判断により、付帯資料に付いては秘匿する方針が定められています。本件に携わるレベル1以上のセキュリティクリアランスを持つ職員にのみ、限定的にアクセスが許可されます。


  [No.1231] #62403付帯資料1 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/03/30(Mon) 19:42:49   71clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Appendix 1:
案件の本文を読み、些か違和感を覚えた局員も多いかと思われます。付帯資料では、本案件の実情について説明します。

現実として、野生のスリーパーが無害な人間を襲うケースは確認されていません。もちろん、携帯獣を連れたトレーナーが先に攻撃を仕掛けるなど、明確な敵意を持っていると判断できる場合は除外しますが、その場合もスリーパーの行動は専ら防御的で、攻撃の意志を見せないことがほとんどです。管理局が行った検証では、スリーパーが自発的に攻撃を仕掛けてくるケースは確認できませんでした。

スリーパーは方々で「夢を食う」という特徴が有るとされ、一部の資料では「人を襲って眠らせ、見ている夢を食べる」というような記載が見られます。これは事実ではありません。スリーパーの食性は草食寄りの雑食であり、主に野生の果実を採取して摂食しています。スリーパーが持つ催眠術を初めとする各種超能力は、ほとんどの場合防御的にしか使用されません。これは生物学的にも実証されています。

何より、野生のスリーパーは「夢を食う」と呼ばれる行動――実際には眠っている人間に干渉して生命力を吸い取るという技能を、どのような形であっても自力では習得することができません。スリーパーがこの技能を習得するためには、一般的に「技マシン」と呼称される携帯獣向け汎用的技能習得装置を使用するか、技能を持つ人間から教授してもらうことが不可欠です。

各種資料にある「人を襲う」「子供を狙う」という記述はいずれも不正確で、実情に即したものではありません。過去に子供を誘拐したという事例は一切確認されていません。類似した事例では、そのすべてが被害者の側からスリーパーに何らかの敵対行動を仕掛けたものであることが明らかになっています。しかしながらあまりに広範にこの記述が広まり、スリーパーに対する危機意識はもはや回復不可能なレベルにまで高まってしまっています。管理局ではこれまでに再三に渡り資料の記載を変更し、正しい情報を広めることを試みましたが、それらはいずれも失敗に終わっています。

本件がもたらす本当の問題は、そうしたスリーパーの実像から外れた誤った認識が広範に共有されることで、スリーパーの生息数がここ数十年で激減していることにあります。管理局の把握が遅れたことにより、野生のスリーパーはその数を大きく減らしてしまいました。仮に何の対策も打たなければ、最終的に十年以内にスリーパーは絶滅し、二十年以内には波及効果により進化前の形態である「スリープ」もまた同様に絶滅するものと推測されています。

非常に厄介なことに、野生のスリーパーには自らの意志に寄らず、睡眠中の人間に対して「スリーパーが襲い掛かってくる」という悪夢を見せてしまう習性があることが分かっています。本文で記載されている悪夢はこの習性によるものです。これは彼らが自然界を生き抜く中で、近くに居る敵性生物に恐怖心を与え自らを護るために身に付けた自衛行動の一種と考えられていますが、現代においてはスリーパーへの無用な敵対心を喚起し、結果として個体数を減らす結果に繋がっています。現在のところ、この悪夢を止める術は見つかっていません。

管理局では局員に「スリーパーは危険である。決して個人で対処しようとしてはならない」という、受け取り方によっては虚偽の情報を提供しています。これは本案件に携わらないすべての局員に謝罪しなければならないことであると理解しています。しかしながら、「スリーパーは危険な携帯獣である」「スリーパーは子供を狙う」といった知識は所謂「常識」のレベルにまで浸透してしまっており、「スリーパーは保護すべき携帯獣である」という情報は多くの局員を混乱させるものと考えられています。本案件に携わることになった局員にはすべての情報を公開することを約束し、また管理局として虚偽の情報を提示していたことを深く謝罪します。

スリーパーの保護に全力を挙げてください。彼らは不幸にして広まってしまった「常識」によってその命を奪われようとしています。管理局は正しい情報を把握し、その情報に基づいて行動を起こさなければならないのです。


[2009-09-24 Update]
先月中旬に発生した、クチバシティ在住の少女がスリーパーに襲撃された事件についての調査が終了しました。事前に推定された通り、事件を起こしたスリーパーは元々野生の個体ではなく、別のトレーナーによって育成されたものが不法に野に返されたことで凶暴化したものであるということが裏付けられました。対象のスリーパーは既に管理局にて保護し、専門チームによってカウンセリングを受ける予定となっています。

残念ながら、この事件がスリーパーへの危機意識をさらに醸成する物になることは避けられません。管理局ではこれまで以上に本案件へ対応する人員を増やし、スリーパーの絶滅を防ぐための活動を続けていく予定です。


  [No.1232] #115064 「恐らくはコラッタではない何か」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/03/31(Tue) 20:24:01   58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#115064

Subject Name:
恐らくはコラッタではない何か

Registration Date:
2006-06-19

Precaution Level:
Level 3


Handling Instructions:
ショッピングモールサイトを定期的に巡回し、不審な「ペットショップ」が出店していないことを確認してください。本案件で取り扱う異常な携帯獣を販売していると思しき店舗を発見した場合は、速やかにサイトの管理者へ報告して退去を命じさせてください。ショッピングモールサイトの利用者にはできるだけ積極的に注意喚起を行い、不審な店舗から携帯獣を購入しないよう呼び掛けてください。

これまでに16体のコラッタのように見える異常な生物を収容しています。いずれも同一の異常特性を示しており、取り扱いには注意を要します。いかなる形の接触においても、対レベル2バイオハザード用スーツを着用することが義務付けられています。この生物はほとんどが管理局に対して敵対的で、これまでに計5件の収容違反を起こしています。現在の収容手順はこれらの違反を受けて都度改訂を行ったものになります。

一般市民からコラッタのように見える異常な生物について届け出があった場合は速やかに確保し、可能な限り詳細に入手経路を質問してください。これまでのケースでは未確認ですが、仮に野生のコラッタが異常特性を示しているという証言があった場合は、最悪の場合当該地域に棲息するすべてのコラッタを検疫する必要が生じます。これはこの生物に限らず、正常に見えるコラッタも含んだ措置です。


Subject Details:
案件#115064は、大手ショッピングモールサイトに不定期に出現する「オブライエンのペット・ショップ」という詳細不明のペット用品店と、そこで販売されているコラッタのように見える異常な生物からなる一連の案件です。

条件は不明ですが、概ね一年の間に2回から3回のペースでそれぞれ一週間ほどの間、ショッピングモールサイトの検索結果に「オブライエンのペット・ショップ」という店舗が表示されるようになります。これは検索に使用したキーワードに依存しておらず、正常な検索結果の間に自身を挿入する形で出現します。リンクをクリックすると、「オブライエンのペット・ショップ」が開設した特設サイトへ移動します。

移動先のサイトでは「キュートでクールでユーモラスな、エキゾチックでエキサイティングなニューエイジ・ペット」という触れ込みで、通常より青みの強い体色をしたコラッタのように見える生物の写真を展示し、税込価格2,000円で販売しています。この広告には異常性はなく、多くの利用者が興味を持たずにこの時点でページから退去します。写真に興味を持って購入手続きを進めると、決済にはクレジットカードのみが使用可能な旨のメッセージが表示されます。通常利用可能な銀行振込等の入金手段は、この販売店が開示している情報の不足により利用できません。

クレジットカードによる決済を完了すると、一週間以内に決済を行った人間の元へ標準的なケージに入れられた青いコラッタのような生物が届けられます。この生物は一見した限りでは体色以外に通常のコラッタと差異が無いように見受けられますが、管理局があらゆる観点から調査を行った結果、次のような異常性を持っていることが分かりました:


・性別
この生物は性別を区別できません。個体により差異はありますが、いずれも♂♀両方の特徴を持っているか、またはどちらも持っていません。

・視覚
顔にある瞳は機能しておらず、代わりに尻尾に隠された「第三の瞳」と呼ぶべき器官で視覚情報を得ています。事実上単眼生物であるためか、通常のコラッタと比較して空間認識能力が著しく劣っています。

・聴覚/嗅覚
視覚の機能を補うため、これらの機能が発達しています。管理局による観測の結果では、聴覚は通常のコラッタの三倍、嗅覚に至っては約十倍の鋭さを持っています。

・前歯
コラッタの特徴である前歯にも異常が見られます。通常のコラッタとは異なり、前歯は超ジュラルミンによって構成されています。仮に欠損が発生しても、長くとも三時間以内には完全に元の形状に自己修復する機能を持ちます。

・鳴き声
通常のコラッタとは異なり、この生物は「効きの悪くなった自転車のブレーキを引いた時のような音」と形容される非常に不快で耳障りな鳴き声を上げます。死亡した個体を解剖した結果からは、声帯部分に通常のコラッタとの差異は認められませんでした。

・血液
血液の色は明るい青をしています。血液型は不明です。負傷した際は特に顕著ですが、流出するなどして血液が減少すると、通常の動物以上に動きが鈍くなります。そのためか、皮膚は通常のコラッタとは比較にならないほど強固であり、およそジュゴンのそれに匹敵する強度と耐熱性を持ちます。

・携帯獣としての性質
この生物は外見こそコラッタに酷似していますが、携帯獣用に開発されたデバイスはこの生物を携帯獣として認識することができないか、または誤認識します。これまでのテスト結果では、全126台のデバイスのうち98台が認識不能と判定、4台がフリージオと判定、2台がそれぞれライボルトまたはトドグラーと判定、残り20台の判定結果は次の通りです:オオタチ・ドクケイル・コンパン・ポリゴンZ・アンノーン(Q)・バッフロン・ポッタイシ・バリヤード・アンノーン(T)・ニャオニクス(♀)・ハガネール・コフーライ・マグカルゴ・モジャンボ・シェイミ(ランドフォルム)・カラカラ・ハブネーク・バルキー・ニンフィア・ケイコウオ。なお、コラッタとして判定したデバイスは存在しませんでした。

・生殖
これだけの差異が認められるにもかかわらず、生殖器を持つ個体の場合は異常性の無い♂♀両方のコラッタと繁殖活動を行うことができます。生まれてくるタマゴは、つがいとなるコラッタが♂♀どちらであっても(つまり、正常なコラッタとこの生物のどちらがタマゴを産んでも)、この生物とまったく同じ異常性を持った個体となります。


通常のコラッタと問題なく繁殖活動が行えることから、この生物が仮に野に放たれるようなことがあれば、個体数は幾何級数的に増大していく恐れがあります。現在の案件対応方針は、この生物を頒布している「オブライエンのペット・ショップ」と名乗る個人または組織への接触と、この生物が野生に生息していないかの監視に重点が置かれています。

Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1233] #110804 「シンオウ地方241番道路」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/01(Wed) 19:51:51   61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#110804

Subject Name:
シンオウ地方241番道路

Registration Date:
2005-02-11

Precaution Level:
Level 1


Handling Instructions:
対象は物理的な保全が不可能なため、存在の有無を突き止めるための作業に焦点を当ててください。管理局が入手した物件からは間接的に存在が示唆されていますが、これまでのところ実在した/実在しているという証拠は得られていません。新たな物証、または証言が得られた場合は、既に得ている資料との整合性を検証してください。矛盾している場合も、それらには変更を行わずにそのまま保全対象に加えてください。

得られた物証は、第十四低異常性取得物保管庫のブロック2-Hにある棚へ保存してください。研究のため物証を持ち出す場合、様式F-110804に所定の内容を記述し、ワークフローを回付してください。それぞれの物証について異常性は見られないため持ち出しが許可されていますが、紛失を防ぐため持ち出しに際しては必ず一人以上の局員が付き添うことが求められます。保管庫への入退出時は監査ログが記録されます。


Subject Details:
案件#110804は、これまでのところ実在が確認されていないシンオウ地方241番道路と呼ばれる未知の道路と、その存在を示唆する物証からなる一連の案件です。

2005年初頭にホウエン地方ムロタウンにあるポケモンセンターから案件管理局へ通報があり、本件の存在が提起されました。ムロタウンのポケモンセンターでは日々「ポケモン預かりシステム」との通信ログを集計し、システムの稼働統計レポートを自動作成する運用となっていましたが、その際2件の例外データが発生していることを確認しました。サービスエンジニアが例外扱いとなった2件のログを確認したところ、それらはいずれも携帯獣の出身が「シンオウ地方241番道路」と記録されていたことが判明しました。例外データとして除外されたのは、稼働統計レポート作成に使用されるバッチジョブがこの道路を認識できなかったことが原因です。対象の携帯獣は既にトレーナーによって「ポケモン預かりシステム」から引き取られていたため、その時点ではさらなる調査は難しいと判断されました。

その後、同様の通報がカントー地方シオンタウン、及びジョウト地方エンジュシティのポケモンセンターからも寄せられました。通報の内容はいずれも存在しない道路の名称が記録されているというものです。この段階になって、管理局ではこのデータ異常を案件として取り扱うことが決定されました。

管理局による広範な調査においても、シンオウ地方241番道路なる道路が存在した記録は見つかりませんでした。しかしその後も、各方面からシンオウ地方241番道路の存在を示唆する物証が次々に寄せられています。以下はその一覧です:


・物証#110804-1/2005-04-30取得
カントー地方セキチクシティにて運営されている自然公園「サファリゾーン」にて、他地域から受け入れた一部の携帯獣の移動履歴に「シンオウ地方241番道路」が記録されていることが確認されました。それらの携帯獣は一般のポケモントレーナーからの寄贈という扱いでサファリゾーンへ持ち込まれましたが、該当するトレーナーのIDは既に登録を抹消されていました。

・物証#110804-2/2005-06-09取得
数ヶ月前にサービスが開始されたGoogle Inc.が提供する地図情報サービス「Google Maps(グーグル マップ)」にて、地名のオートコンプリートの候補として「シンオウ地方241番道路」が登場しました。オートコンプリートのリストに現れるにもかかわらず、実際の検索ではこの道路は検索結果に現れません。本件について、Google Inc.の窓口担当者に詳細な調査依頼を出しました。

・物証#110804-3/2006-01-14取得
シンオウ地方ミオシティにある「ミオ図書館」に収蔵されていた1985年発行の古い学習用の地図帳に、索引として「シンオウ地方241番道路」が存在しました。索引は実際には機能しておらず、該当するページ内に「シンオウ地方241番道路」は存在しません。地図帳の出版社は1992年に経営破綻し、現在は清算されています。

・物証#110804-4/2006-02-19取得
ホウエン地方カイナシティにある造船所の駐車場に放置されたナンバープレートの無い自動車を駐車場の管理者が撤去しようとした際、中から「1/18 シンオウ241番道路にて合流」と走り書きされた付箋が発見されました。車両の所有者に関する情報は車内に残されておらず、その他の物証は異常性を示しませんでした。車両はよく整備され、燃料も最大まで補給された状態で放置されていました。

・物証#110804-5/2006-02-28取得
オーレ地方にて活動中の局員から、地域で催されたバザーにて「シンオウ地方241番道路」について言及した書籍を入手したとの報告がありました。書籍のタイトルは「シンオウぶらりひとり旅」、著者は「守田 博彦」、出版社「明星出版」、出版年は1978年となっています。タイトル・著者・出版社はいずれも実在したという記録がありません。後に局員から送付られた書籍を確認したところ、著者が241番道路を経由してクロガネシティへ向かったとの記述が見つかりました。いかなる資料においても、クロガネシティから241番道路なる道路へ接続していたという記録はありません。

・物証#110804-6/2006-07-18取得
カントー地方トキワシティの遺失物保管所に、数十枚のデジタル写真が保存されたUSB接続のフラッシュメモリが届けられました。管理局が内容を確認したところ、「241」と記された看板の写り込む積雪した道路の写真が数枚発見されました。残る写真はそれらと関連の無い道路を撮影したものですが、いずれの写真にも人影は見当たりません。フラッシュメモリの所有者は今に至るまで現れていません。

・物証#110804-7/2007-03-07取得
かつてカントー地方ハナダシティに住んでいた、現在はジョウト地方アサギシティ在住の男性が、「小学生の頃にシンオウ地方241番道路で消息を断った同級生がいた記憶がある」と知り合いに話していたことが分かりました。男性から同意を得た上でヒアリングを実施し、その記憶に間違いは無いとの証言を得ました。男性によると同級生は女の子で、シンオウへ旅に出たまま失踪、その後行方不明のまま葬儀が行われたとのことでした。該当するトレーナーの洗い出しが進められています。


シンオウ地方在住のおよそ30,000人に対する無作為の聞き取り調査の結果では、3,419人から241番道路を通過したことがあるとの回答が得られました。どのような経路で通過したかという質問の結果は、統計的に有意な結果が一切見られない著しく矛盾したものとなりました。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1234] #92678 「ポケモン屋敷の怪文書」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/02(Thu) 20:39:54   62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#92678

Subject Name:
ポケモン屋敷の怪文書

Registration Date:
1999-05-16

Precaution Level:
Level 1(潜在的 Level 3 または Level 4)


Handling Instructions:
これまでに発見された文書はすべて電子化され、案件別サーバに暗号化した上で保管しています。案件を担当することになった局員は、電子化された文書を自由に閲覧することができます。文書の原本及び電子版に異常な点は見られません。必要であれば電子版の紙媒体への複写を請求することもできますが、媒体の持ち出しに際しては通常の情報持ち出し管理規定が適用されます。

文書で示された研究が実際に行われていたかは意見が分かれています。裁定委員会では、本件は脆弱な根拠に基づいた単なる粗悪な怪文書の一種であり、記載されたような研究は行われていなかった可能性が高いと推定しています。よって、現在の警戒レベルは「1」(異常性はあるが危険性は認められない)としています。

しかしながら、仮に文書に記載されていたような研究が実際に行われており、かつその成果が第三者の手に渡っていると判断せざるを得ない場合、警戒レベルは最低でも「3」と評価され、状況によっては「4」への再分類が行われる可能性も否定できません。警戒レベルの再分類が決定された場合、研究成果を奪取するための体制を速やかに構築しなければなりません。研究成果と思しきものが流出していないかの監視が継続しています。

本件に関連して、1998年初頭に発生したグレン島の噴火についての調査が進められています。噴火はこれまで偶発的に起きた自然災害と考えられていましたが、本件で取り扱う各種文書が流出したことにより、人為的に起こされた可能性が惹起されました。噴火を発生させた可能性のある個人または組織についてこれまでに集められた情報は、案件別サーバのサブディレクトリに保管しています。これらは案件担当者のみが必要に応じて参照することが可能です。


Subject Details:
案件#92678は、1998年10月頃にパソコン通信の一部フォーラムとスレッドフロート型の匿名掲示板に大量拡散された合わせて14本の怪文書と、そこに記載された真偽不明の「研究成果」に関する一連の案件です。

怪文書の概要は、かつてグレンタウンに存在した「ポケモン屋敷」と呼ばれる研究施設で行われていた非合法の研究を告発するものとなっています。文体から、14の怪文書はすべて同一人物によって記述されたものと断定されています。文書そのものは異常性の無い文字の羅列で、安全に閲覧することができます。閲覧したことによる身体的/精神的な影響も見受けられません。

この施設は一般に携帯獣「ミュウツー」の研究が行われていたことで知られています。この「ミュウツー」は、既に絶滅したと考えられている携帯獣の「ミュウ」の遺伝子をベースとして、人為的に改良を加えた携帯獣を産み出すという名目でプロジェクトが進められ、最終的にミュウとは別個の携帯獣を生み出すという成果を得ました。しかしながら、ミュウツーは開発者のコントロールを離れて暴走、最終的にポケモン屋敷から脱走して行方を眩ましたとされています。このエピソードは報道機関などでも紹介され、広範に知られているものです。

文書執筆者の主張によると、ポケモン屋敷では「ミュウツー」プロジェクトとは別のプロジェクトが極秘裏に遂行されていたとのことです。文書では一般の認識と異なり「ミュウツー」プロジェクトは完全な成功を収め、ミュウツーについても人の手を離れて暴走するようなことはあり得なかったと記載されています。

上記に加えてこの「ミュウツー」プロジェクトについては、公にこそされていませんでしたがあくまで合法的な研究であり、出資者として「ホウエン地方に籍を置く大企業」(名称は伏せられていますが、これはホウエン地方カナズミシティに本拠地を持つ「デボンコーポレーション」と推定されます)やポケモンリーグ関係者が名を連ねていたとの記載もあります。同時期に行われたシルフカンパニーによる「ポリゴン」プロジェクトとの関連性も示唆されており、いずれにせよ最終的に得られた成果を世間に向けて公表することが予定されていたことが窺えます。

この文書では、後述するもう一つのプロジェクトでの「致命的な失敗」を隠蔽すべく、研究者と出資者、及びミュウツーが共謀して「ミュウツーの暴走」というカバーストーリーを偽装したというのが真相だとしています。

ポケモン屋敷で行われていたというもう一つのプロジェクトについて、文書では「M2計画」と呼称されています。由来について、文書では情報管理や運用の観点から、知識の無い関係者に「ミュウツー」プロジェクトと意図的に混同させる目的があったとしています。「ミュウツー」プロジェクト自体は「M計画」と呼ばれ、名称こそ類似していますが指揮系統は明確に区別されていました。

執筆者によれば、「M2計画」は「M計画」で得られた成果を基に、以下のような目論見をもってプロジェクトが進められていたとしています:

・人体の欠損部位を携帯獣の部位で補うことを初めとした医療技術への転用
・携帯獣の持つ能力の人体への移植
・人間と携帯獣間の共通言語の構築による意思疎通の容易化
・量産可能な生体兵器としての可能性の模索

当初「M2計画」は順調に推移していましたが、最終段階である人体を用いた臨床試験で想定していたような成果が得られず、被験者が次々に死亡するという事態を引き起こしました。さらに文書では、被験者は医学的に見て完全に死亡している状態でしたが、意識を喪失したまま研究所内を徘徊していたとの記載も見られます。杜撰な管理体制により、死亡したとされる被験者の一部が行方不明になったケースも確認されているとのことです。

これ以上のプロジェクト続行が不可能と判断した出資者(文書では「当時暗躍していた国際的な犯罪シンジケート」と記載されています)の判断で、上記の「ミュウツーの暴走」というカバーストーリーが適用され研究所は破棄されたとしています。その後、「M計画」及び「M2計画」の実情を知ったある著名人(文書ではグレンジムリーダーのカツラ氏を示唆する文言が見られますが、確定はされていません)がすべてを公にしようと考えたために、関係者が証拠隠滅を行うべくグレン島の火山を噴火させてポケモン屋敷を完全に破壊したと主張しています。

文書の記載がどの程度正確なのかは明らかになっていません。「ミュウツー」プロジェクトが本当に成功していたのか、また合法的なものであったのか、そして文書に記載されている「M2計画」と呼ばれる別のプロジェクトが実際に進められていたのかは未だ判断が分かれています。管理局の見解として、この怪文書そのものが何らかの情報霍乱の意図を持って拡散された可能性も示されています。


[1999-08-13 Update]
以下は案件担当者の判断により、カントー地方トキワシティ第三支局に在籍する局員が作成した個人日報から転記したものです。

1997年12月に重大な欠陥があるとして市場から回収されたポケモンリーグ監修の電子端末「スタンダードポケモン図鑑'97 カントー地方版」について、初期生産分の一部に注目すべきデータが含まれていることが判明しました。データは「ミュウツー」に関する詳細な特徴(複数のカラー写真/平均的な身長・体重/足跡/鳴き声のサンプル等)そのものであり、現時点までにこのようなデータが公表された記録はありません。データは通常はアクセスできないようロックされていますが、端末に改造を加えればロックを解除するためのソフトウェアをインストールすることが可能です。

この端末は非ポケモントレーナーを含む一般利用者向けに開発された携帯獣図鑑で、認定者に配布される正式なバージョンの携帯獣図鑑の機能制限版となっています。スタンダード版は各地方に生息する携帯獣を概ね収録し、それらの情報を任意に参照することが可能ですが、希少な携帯獣(カントー地方及びカロス地方に生息している「サンダー」「ファイヤー」「フリーザー」等)や公式に実在することが認められていない携帯獣(シンオウ地方及びジョウト地方にて民間伝承レベルで存在が示唆される「アルセウス」等)については収録されておらず、一般的な知識を読み物として紹介するに留まっています。

同端末にミュウツーの完全なデータが含まれていた理由は不明です。読み物としてではなく、実用向けのデータが用意されている点に注意すべきです。96年版以前にはこのようなデータは含まれていませんでしたが、97年版にミュウツーのデータが存在する領域は不自然な空き領域となっています。なお、この空き領域は92年版から一貫して存在しています。

不具合が改善されたという97年版の後期生産分、及び98年版以降については、ミュウツーの詳細なデータは存在しません。92年版から96年版と同様に、空き領域としてすべてのデータが「0」で埋められています。ミュウツーについては、読み物のページに一般的に知られているエピソードが簡潔に紹介されているのみです。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1235] #142790 「置き換えられた記憶」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/03(Fri) 21:07:25   78clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#142790

Subject Name:
置き換えられた記憶

Registration Date:
2015-04-02

Precaution Level:
undefined [審議中/暫定:Level 1]


Handling Instructions:
本件については、各地域の心療内科医から月次でレポートを受領することになっています。受領したレポートは案件別サーバに保管され、本案件に関するセキュリティクリアランスを保有する局員のみが内容を参照することができます。レポートには個人情報、または機微情報に該当する内容が含まれるため、特別な理由が無い限り複写は許可されません。紙媒体への複写が必要な場合、様式F-142790に所定の内容を記入し、ワークフローを回付してください。

現時点では本件について言及した受診者について特別な対応は必要ないと考えられていますが、提示された仮説のうち一部のものが立証された場合において、監視を含む個別対応が必要になる可能性があります。これまでのところいずれの仮説についても正しいことは証明されていませんが、同時に覆すだけの根拠も存在しません。現状を踏まえ、新たな仮説を提示することは広く歓迎されています。

警戒レベルについては現在も審議が続けられており、具体的な設定値については意見が分かれています。しかしながら、警戒レベルを設定しないまま案件に対応することは困難なため、現状は暫定的にレベル「1」(異常性はあるが危険性は低い)を設定しています。この警戒レベル設定は事前の予告なしに変更される可能性があります。


Subject Details:
案件#142790は、ここ数年(遅くとも2010年頃から)各地で見られるようになったある種の記憶改変現象と、それに掛かる一連の案件です。本案件の実態については不明な点が非常に多く、この概要は不正確である虞があります。

これまでのところ、この事象は概ね8歳から14歳頃にかけての少年または少女にのみ発生しています。対象がかつて訪れたことのある場所について再訪したり別の形で目にしたりした際、一様に「ここは自分の知っている場所ではない」と発言することで事象が明らかとなります(事象#142790-1)。記憶の中にある風景と現実の風景が著しく乖離し、記憶に混乱を来します。対象はその時の出来事、例えば食事をしたことや、何かを購入したことなどは鮮明に思い出すことができ、この点については対象と行動を共にしていた者の証言とも一致します。

対象が語る当時の記憶の最大の特徴として、記憶にある風景の中には携帯獣が一切登場しません。そればかりか、携帯獣の写真や携帯獣をモチーフとしたキャラクターなども例外なく出現しません。これまでに得られた情報を総合する限りでは、対象の記憶においては携帯獣の概念そのものが存在しないと考えられます。対象が訪れた場所にいかに大勢の携帯獣が存在していようと、決してその姿を表すことはありません。

おそらくこれに関連する事象が対象に発生します(事象#142790-2)。対象がしばしば携帯獣の存在を認識できず、姿を見ることも声を聞くこともできなくなります。精密検査で視覚や聴覚に異常が無いことが確認されていても、この事象は無関係に発生します。現在のところすべての対象でこれは一時的なもので、長くとも十時間ほどで再び携帯獣を認識できるようになります。対象は携帯獣を認識できなかった際の出来事を正確に記憶できず、往々にして「眠っていた」「夢を見ていた」と答えます。

事象#142790-1及び事象#142790-2について説明するために、局員からいくつかの仮説が提示されました:


仮説1:単純な記憶の混濁
ごく単純に記憶が混濁し、携帯獣に関する情報が欠落したという説。この仮説は最初期に提起されたものですが、ヒアリングを重ねるに連れて携帯獣以外の記憶は差異はあれどそれなりに整合性が取れており、携帯獣に関する記憶のみが欠落する理由が見当たらないため、仮説としては適当でないとの判断が大勢を占めています。しかしながらこの仮説の提起は、仮説2及び仮説3が提起される契機となりました。

仮説2:携帯獣の存在しない異常な領域が存在する
実際に携帯獣が完全に排除され、かつあらゆる場所からランダムに接続される異常な領域が存在するという説。事象#142790-2はここを訪れた際の副作用により認知機能に異常をきたしていると解釈されます。この仮説は事象#142790-1及び事象#142790-2の双方を説明できますが、対象と行動を共にしていた人物(主に両親や祖父母)に影響が現れないことの根拠が不足しています。可能性として、一定以下の年齢の人間にのみ影響を及ぼすことが考えられます。

仮説3:何らかの特異な事象により記憶が置き換えられた
対象は携帯獣のいる場所で行動していたが、何らかの事象の影響を受けて記憶からその情報が欠落したという説。仮説2と同様、特異な事象の影響を受けて事象#142790-2が発生するようになったというものです。これは今現在もっとも有力であると考えられている仮説です。記憶に影響が出るトリガーとなる事象を明らかにするため、これまでに収集されたレポートから対象の行動履歴を解析する作業が続けられています。


管理局では、本案件に関するさらなる仮説の提起を歓迎しています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1236] 確認 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/03(Fri) 21:08:45   51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Confirmation Message:
この付帯資料は非公式なものです。当資料について、案件管理局はこれまで一切の見解を示していませんし、恐らくこれから何らかの見解が示されることもありません。

以上を理解したうえで、かつ同意できる場合は、案件#142790にかかる付帯資料0を閲覧するための一時的なセキュリティクリアランスがあなたのアカウントに付与されます。閲覧終了後は自動的にセキュリティクリアランスが削除されます。

続行しますか?(Y/N)


  [No.1237] #142790付帯資料0 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/03(Fri) 21:10:32   53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Appendix 0:
以下は、かつてカロス地方ミアレシティ第六支局に在籍していたアレクシア・レンフロ主任研究員が提起した、案件#142790に関する仮説の一つです。


仮説0:子供たちが見ているものが真実であり、置き換えられているのは我々の記憶である
端的に言い表すなら、この仮説は案件報告書の本文に記載した仮説3を反転させたものです。対象が見たという「携帯獣のいない街」こそが言わば真の姿であり、何らかの理由によって我々――携帯獣の存在を知覚できる者すべての記憶が入れ替えられているという可能性を提起するものです。

この仮説では、通常我々が目にしている携帯獣は実在せず、それに付随するすべての情報や物体は存在しないという立場を取ります。我々は本来存在しないものと共に暮らしているという、ある種の集団催眠に掛かった状態にあるというものです。正確には、催眠によって偽装された知覚をほぼすべての人間が共有していると言うべきです。その催眠が一時的に外れたのが、携帯獣のいない風景を目にしたという子供たちということです。

仮説の立証は困難か、または不可能です。一般的な論証法において、携帯獣は間違いなく実在しているとせざるを得ず、存在しないという結論を導き出すことはできません。しかしながら、入力となる我々の「認知」及び「記憶」そのものが歪められている、即ち「携帯獣は実在する」という無意識の前提が我々すべてに存在している場合、あらゆる論証法は脆弱な根拠しか持ちえず、適切な解を得ることは不可能になります。

もしこの仮説が正しい場合、実在しないものは携帯獣のみであると判断することは極めて困難です。我々の記憶/認知そのものが信頼できない以上、すべての存在の実在を疑わざるを得ません。先述した通りこの仮説は検証することができませんが、反証もまた不可能に近いと言えます。


アレクシア主任研究員はこの仮説を提出して数日後、案件管理局を退職しています。現在の所在については不明です。


  [No.1238] #107063 「量産型食用カモネギ」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/04(Sat) 19:43:34   60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#107063

Subject Name:
量産型食用カモネギ

Registration Date:
2003-12-06

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
対象となるカモネギの変異体を発見した場合は速やかに確保し、急を要する状況でなければ市販されている標準的なモンスターボールに収容した上で、カントー地方ヤマブキシティにある管理局のバイオリサーチセンターまで輸送してください。対象はこれまでのところ明確な攻撃の意志を見せたことが無いため、モンスターボールへの収容は容易です。また前述の通り市販品のモンスターボールで対応することが可能なため、管理局保有の対有異常性携帯獣用の専用ボールを使用する必要はありません。ただし、手元にボールのストックが無い場合や確保に緊急を要する場合は、特に許可を得ず専用ボールを使用しても構いません。

2005年現在、本案件で取り扱うカモネギの変異体はほぼ根絶されていると見られています。管理局による広報活動の結果からか、生産元/製造元による市場への流通はほぼ停止しています。現状では、過去にカモネギが流通した実績のある市場をターゲットとして、残された在庫が放出されていないかの監視が主要な取り組み方針になっています。管理局が保守している一覧にリストアップされた掲示板やブログを巡回し、「カモネギの安売り」といったキーワードで変異体が販売されていないかを確かめてください。

バイオリサーチセンターに在籍する局員は、対象となるカモネギとの接触時にレベル1対バイオハザード用スーツの着用が義務付けられます。確保されたカモネギは、これまでのところモンスターボール外で72時間以上生存することができておらず、生きている個体の研究活動を行う場合は事前に必要な手続きを済ませておく必要があります。死亡した個体のサンプルは既に十分確保できているため、死体は通常の廃棄物処理手順に沿って処分してください。

政府機関と連携し、このカモネギを生産/製造していた「アムリタ・ファウンデーション」関係者とのコンタクトの試みを継続してください。必要に応じ、非致死性の武器を用いた制圧・確保、及び期限を設けない拘留も認められています。


Subject Details:
案件#107063は、通常の個体とは顕著な違いを見せる異常なカモネギの個体群と、それに掛かる一連の案件です。非異常性のカモネギは本案件の取扱対象ではありません。

通常、このカモネギは途上国や貧困国に「新鮮な食肉の提供」という形で大量に持ち込まれ、無償かまたはそれに近い極端な安価で市民に配布/販売されます。初期の段階では先進国での出現は認められませんでしたが、末期には在庫処分という形式をとってしばしば辺境の都市で販売が確認されています。いずれの場合も、提供されるカモネギの特徴は一貫しており、そして一貫して異常です。

カモネギは一見したところ通常の個体と相違していないように見えますが、自発的に動くことがほぼありません。最小限の生命活動を除いては、身体機能そのものを停止させていることが分かりました。視覚や聴覚は機能しているようですが、何らかの指示や呼びかけに応答することはほとんどありません。食事や睡眠といった基本的な生命活動さえ行わないため、静止状態となるモンスターボールに収容していない限り、72時間以内に栄養失調または脱水症状で衰弱死します。

基本的に指示命令に応答しないことは先述した通りですが、わずかながら例外もあります。例外の一つは「戻れ」という指示で、この指示を受けた個体は速やかに何らかの形で「戻ろう」とします。戻る先は、自分に紐付くモンスターボールがあればそれを最優先し、なければ直近で住処や戻るべき場所と想定される場所になります。

もう一つの例外は「準備しろ」というものです。「準備しろ」という命令を受けたカモネギは保持しているクキを使い、自分自身の首を切断して自殺します。この時躊躇などはまったく見られず、自殺は常に一回で確実に成功します。自殺してから3分以内に、カモネギからすべての羽が抜け落ちます。この段階で、「準備しろ」という命令に対するカモネギの行動は完了したと見られています。

通常のカモネギと同様に、このカモネギも食肉に適した身体構造を持ちます。先述した「準備しろ」という命令に対する自殺と抜羽は、おそらくカモネギの生体を食材とするための「準備」を指すものと推定されます。しかしながら後述する理由により、このカモネギを食べることは絶対に避けるべきです。

死亡したカモネギの細胞を分析したところ、依存性のある麻薬物質が含まれていることが発覚しました。これは異常性の無いカモネギの個体にも微量に含まれているものですが、異常性のある個体の含有量は通常のおよそ1200倍と極めて多量です。この物質が含まれる食物や飲料を長期に渡って大量に摂取し続けた場合、最終的に重度の依存症に陥る虞があることが分かっていますが、本案件で取り扱うカモネギの場合、わずか1kgほどの摂食でほぼ回復不能な依存症に陥ります。

これまでに実施されたカモネギの配布イベントを追跡し、配布に際して主導的な立場にある「アムリタ・ファウンデーション」という組織の存在を突き止めました。アムリタ・ファウンデーションは、声明によると「世界のあらゆる地域への食糧供給による人道的支援」を目的とする非営利団体です。慈善団体を自称していますが、その活動内容には不明瞭な点が多々あり、実態としては人道支援を装った非合法の営利行為が目的と見られています。

アムリタ・ファウンデーションが異常なカモネギをどのような手段で確保しているのかは不明ですが、その特異な性質上、カモネギは工業的な手法で「製造」されているか、或いは何らかの方法で不法にデジタルコピーされた個体を実体化しているものと考えられています。

本案件で危惧すべきは、カモネギの異常個体が齎す重篤な依存症そのものに加え、異常性の無いカモネギが乱獲されていることです。カモネギは元々携帯獣の中でも希少な食肉可能な種として知られていましたが、本案件で依存症を容易に誘発する異常個体が拡散されたことによって、カモネギの肉の需要が急激に高まりました。結果としてカモネギが乱獲され、生息数を激減させるに至っています。

管理局では、2002年より各国の政府機関と連携したアムリタ・ファウンデーションの活動に対する告発キャンペーンを繰り返し実施し、各地域における異常個体の配布を未然に阻止する状況を作り出すことに成功しました。これに伴いカモネギを用いた利益創出が困難になり、同団体によるカモネギの異常個体の生産及び拡散は既に停止されたものと見られます。管理局では原状回復の施策として異常性の無い個体を積極的に保護すると共に、優秀なポケモンブリーダーと個別契約を結び、通常個体の繁殖活動を支援しています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1239] #122416 「私は元気だよ」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/05(Sun) 19:25:56   53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#122416

Subject Name:
私は元気だよ

Registration Date:
2008-10-17

Precaution Level:
Level 1


Handling Instructions:
各地のポケモンセンターから月次で報告される統計情報から、直近で半年以上レポートが提出されておらず、かつレポート提出休止申請も出されていないトレーナーIDを抽出してください。抽出されたトレーナーIDの一覧を様式F-122416に沿って編集した上で送付元のポケモンセンターへ返送し、同時に追跡調査のための特例的な個人情報取得を行いたい旨の依頼を行ってください。この依頼に際しては、社団法人ポケモンセンター管理協会が定める個人情報の二次利用規約に都度同意する必要があります。

取得した個人情報からトレーナーの元居住地を割り出し、居住地で生活する近親者にコンタクトを取ってください。コンタクトに際しては「トレーナーと連絡が取れないとの第三者からの通報があった」というカバーストーリーが使用できます。適切な手順で同意を得た上で、ここ最近トレーナーから連絡が無かったかを確認してください。これまで実施してきた調査の統計から、半年が経過した時点で異常なメールまたはインスタントメッセージが送付されている確率は76%に達しています。近親者からメールまたはインスタントメッセージが届いていなかった場合、受信後速やかに最寄りのポケモンセンターへ申し出るよう伝えます。ポケモンセンターへ申出があった場合、担当者から案件管理局へ通報が行われます。

上記のいずれの場合においても、許可を得た上でメール及びインスタントメッセージをコピーしてください。メールの場合はヘッダを解析し、送信元を調査した上で逆引きを行ってください。これまでのところ逆引きで正常な結果が得られたことはありませんが、仮に異常な結果であってもそのまま保存してください。インスタントメッセージの場合は送信元の解析が困難なため、現状ではメッセージを保存するのみとします。

担当者の判断で、メールまたはメッセージの送信者であるとされるトレーナーにコンタクトを取ることが許可されています。現状においては、送信時のトレーナーの状況について統計的に有意な結果は出ていません。


Subject Details:
案件#122416は、近親者の中に長期に渡って他者に連絡を取っていないポケモントレーナーがいる人間(以下「受信者」と表記)に当てて、連絡のないポケモントレーナーの名義でメール、または受信者が使用しているソーシャルネットワーキングツールに宛ててインスタントメッセージ(以下総称して「メッセージ」と表記)が届けられる事象と、それに掛かる一連の案件です。

この事象は受信者の元へ現在遠方にいるトレーナーの名義で、後述するメッセージが届けられることにより発生します。メッセージの内容に多少の違いこそありますが、概ね「しばらく連絡していなくて申し訳ない。私は元気にしている。心配しないでほしい」というものです。メッセージはトレーナーが送信した他のメッセージと比較しても違和感の無い筆致やスタイルで書かれており、場合によっては本人や家族しか知り得ない情報にも言及するために、ほとんどの受信者がメッセージは本物であると信じます。

メッセージの一例は下記の通りです。このメッセージは、かつてジョウト地方キキョウシティ在住で、現在はポケモントレーナーとして活動中の少女の名義で、約9ヶ月の音信不通期間を経て前触れ無く母親に宛てて送信されたものです:


 件名:久しぶりです

 本文:
 お母さんへ

 しばらくメールできなくてごめんなさい。
 今はホウエンのムロタウンにいます。ジムでリーダーにトレーニングしてもらってます。
 キョロちゃんもタママちゃんも元気いっぱいです。
 XXX(送信者の妹。個人名に付き非開示)ちゃんも元気にしてますか。
 ぜんそくで大変だと思うけど、応援してるって伝えてください。
 おみやげ持ってかえるから、楽しみにしててね。
 私は元気です。心配しないでください。

 XXX(送信者)より。

 (注釈:文中の「キョロちゃん」はジグザグマの、「タママちゃん」はアメタマのニックネーム)


しかしながらこれまでの調査で、類似したメッセージが実際に本人から送られたケースはほとんどありませんでした。わずかに見つかったケースも、そのすべてで異常性の無い、偶然条件を満たしたことで抽出されたエラーケースであったことが分かっています。メールの場合は実際に本人から送られたものと決定的な相違があり、本来中継されるはずのメールサーバに転送ログが残っておらず、実際の送信元に到達できません。そしてインスタントメッセージの場合とも共通する点として、何度返信を試みても相手からの応答がありません。返信は必ず成功しメッセージが届いた旨の通知がなされますが、どれほど返事を要求しても決して応答が返ってくることはありません。

メッセージ、特にメールの送信元を突き止める試みは、メールサーバのドメイン名やIPアドレスが実在しない、または矛盾した結果になるという形でいずれも成果を得られていません。インスタントメッセージに至ってはデータを解析しても矛盾した情報すら得られないために、調査が難航しています。後述しますが、メッセージについて送信者とされる人物がこれまでのところ本件に関わったケースは見つかっておらず、送信した記録も残っていません。

案件対応の初期においては、メッセージはトレーナーを拉致または殺害した未知の個人及び組織が、犯行の発覚を遅らせるための撹乱目的で送信したものという説が有力でしたが、調査の過程で送信元とされるトレーナーが無事に発見されるケースが相次ぎ、この仮説は一旦撤回せざるを得なくなりました。該当するトレーナーは単にフィールドワーク等で多忙であったり、或いは近親者と意図的に距離を置いているといった当たり障りの無い事情しか持たず、近親者に上述したようなメッセージが送られていることについてまったく関知していませんでした。

ただし本案件を全体として俯瞰したときに、メッセージの送信者とされるポケモントレーナーのうち、行方不明者や失踪者が占める割合は実に78.4%に及ぶことも留意しなければなりません。このことから、何らかの条件(本稿執筆時点では、1:トレーナーに提出が義務付けられている「ポケモンレポート」が半年以上提出されていない/2:ポケモンレポート提出の一時休止申請が出されていない が最有力条件と考えられています)を満たした場合、受信者に向けて自動的にメッセージが送信されているという可能性が提起されました。

メッセージはどのような存在から送信されているのか、いかなる意図を持ってメッセージが送付されているのか、そして受信者を選ぶ基準はどのようなものか、いずれも現時点では不明なままです。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1240] #142453 「捻くれた自撮り棒」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/06(Mon) 19:46:29   53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#142453

Subject Name:
捻くれた自撮り棒

Registration Date:
2015-02-22

Precaution Level:
Level 3


Handling Instructions:
小売店に対し、対象となる製品が入荷されていた場合は速やかに案件管理局へ申し出るよう通達しています。製品には重大な欠陥があり、欠陥を改修したものと交換するという名目で異常性の無い製品への交換が進められています。現在市場に流通している製品の約90%は異常性が無いものですが、呼びかけに応じなかった、または呼びかけがあったことを認識していなかった一部の小売店で異常性のある製品の販売が継続されています。担当者を増員し、製品の個別回収を試みています。

対象製品を使用して撮影された写真を発見した場合、速やかに標準的な手順によるアクセス遮断を申請してください。遮断に先立って写真を保存し、異常性のある画像を格納するための専用サーバへ移動させることも併せて行ってください。一部の画像は人体に認識異常を伴う情報災害をもたらすことが分かっていますが、これは汎用的な情報災害防止装置を備えた閲覧用端末を使用することで無害なレベルまで影響を低減させることが可能です。画像の閲覧を希望する場合、様式F-142453-3に沿って必要事項を記入し、ワークフローを回付して上席の承認を得てください。承認が下りれば、閲覧用端末の貸し出しと画像へのアクセス権付与が行われます。


Subject Details:
案件#142453は、1:ある写真撮影用の補助機器、2:スマートフォンを機器と組み合わせて特定の条件を満たす写真を撮影した場合に発生する特異な事象、3:その事象が起きている中で撮影された異常な写真、そしてそれらの機器・事象・写真に掛かる一連の案件です。

対象となる補助機器は、一見したところ異常な点の見られないセルフィースティックです(機器#142453)。セルフィースティックは一般的に「自撮り棒」「セルカ棒」と呼称される、主に撮影者自身を被写体とするための棒状の器具です。先端にカメラまたはカメラ機能付き携帯デバイスを装着することで、セルフ・ポートレートを手軽に撮影することを目的としています。

機器#142453はサンワダイレクト社が製造・販売しているセルフィースティックのモデル「200-CAM023」に酷似していますが、本来刻印されている製造元の名称がありません。また、正常なモデルには存在しない未知のダイアルが備え付けられています。機器#142453を解体して確認しても、ダイアルの機構そのものには異常は見当たらず、また他の機能との関連性もありません。このように、機器#142453のダイアルそのものは物理的には意味の無い仕組みです。

ダイアルを任意の位置まで回し、カメラ機能付きスマートフォンを機器#142453に取り付けることにより、事前の準備が完了します。取り付けるスマートフォンの機種や型番は問われません。元となった「200-CAM023」が装着可能な機種であれば、どのようなものでも使用できます。事前準備を終えて通常の手順で自分自身を撮影することで、本案件の中核となる特異な事象(事象#142453)が発生します。

事象#142453は、撮影した写真の被写体が本来の姿ではなく、何らかの携帯獣として写真に記録される現象です。写真撮影時に被写体そのものには一切の影響が見られず、また継続調査においても異常な点はまったく発現しません。さらに、このスマートフォンを取り外して再度撮影を試みても、異常性の無い写真が撮影されます。機器を使用しない・正常な機器に取り付ける・別の撮影者に撮影してもらう等、機器#142453を使用しない限りにおいて、一貫して正常な写真が撮影されます。撮影者の証言と管理局での実験結果から、写真に影響を与えているのは機器#142453であると断定されました。

機器#142453のダイアルを操作することで、写真における被写体の姿は著しく変貌します。ダイアルは初期状態(それ以上戻すことができない状態をこう表記します)一段階回すごとに「カチッ」というクリック音を発するため、クリック音を基準にダイアルを調整し撮影実験を行いました。

結果は以下の通りです:


ダイアル:1/被写体:局員A/撮影回数:1
被写体は携帯獣の「サイドン」として撮影されました。

ダイアル:1/被写体:局員A/撮影回数:2
1度目と同様、被写体は携帯獣の「サイドン」として撮影されました。

ダイアル:1/被写体:局員A/撮影回数:3
これまでと同様、被写体は携帯獣の「サイドン」として撮影されました。


その後、撮影は計30回に渡って試行されましたが、被写体は一貫してサイドンとして撮影され続けました。このことから、撮影回数による写真への影響は無いとの判断がなされました。

上記に続けて、被写体を変更した際の影響について実験が行われました。


ダイアル:1/被写体:局員B
被写体は携帯獣の「サイドン」として撮影されました。

ダイアル:1/被写体:局員C
被写体は携帯獣の「サイドン」として撮影されました。

ダイアル:1/被写体:局員Cの実子
被写体は携帯獣の「サイドン」として撮影されました。


計30人の、人種や性別、年齢の異なる被写体を撮影しました。被写体毎に多少の差異は見られるものの、撮影結果は一貫してサイドンとなりました。上記の結果と合わせ、機器#142453を使用した撮影結果に影響を及ぼすのは、機器#142453に存在するダイアルのみと考えられます。

続いて、ダイアルを変更した際の写真への影響について実験が行われました。被写体はすべて局員A、撮影回数は1回です。


ダイアル:4
被写体は携帯獣の「ピッピ」として撮影されました。

ダイアル:11
被写体は携帯獣の「ベロリンガ」として撮影されました。

ダイアル:17
被写体は携帯獣の「カラカラ」として撮影されました。

ダイアル:20
被写体は携帯獣の「ウィンディ」として撮影されました。写真からは被写体が機器#142453を保持しておらず、機器#142453が浮遊しているように見えます。これはウィンディが四足歩行であり、機器#142453を持ったまま写真を撮影することが難しいためと推定されます。

ダイアル:29
被写体は携帯獣の「カイロス」として撮影されました。

ダイアル:31
このダイアルに設定して撮影を試みた場合、スマートフォンに原因不明のエラーが発生し、強制的にシャットダウンされます。スマートフォンの機種を変更して撮影テストが繰り返されましたが、テストで使用した16機種すべてで同様の事象が発生したため、撮影は断念されました。スマートフォンを検査したところ、カメラのセンサーでハードウェア障害が発生した形跡が残されていましたが、障害が発生した理由は不明です。

ダイアル:32
ダイアル31と同様の事象が発生しました。スマートフォンはいずれも写真の撮影に失敗しました。

ダイアル:33
事前の予想に反し、被写体は携帯獣の「ガーディ」として撮影されました。実験は続行されます。

ダイアル:38
被写体は携帯獣の「ユンゲラー」として撮影されました。

ダイアル:50
ダイアル31及び32と同様の事象が発生しました。

ダイアル:51
被写体は携帯獣の「ブーバー」として撮影されました。

ダイアル:52
ダイアル31などと同様の事象が発生しました。

ダイアル:53
被写体は携帯獣の「エレブー」として撮影されました。

ダイアル:54
被写体は携帯獣の「レアコイル」として撮影されました。

ダイアル:61
ダイアル31などと同様の事象が発生しました。


その後、ダイアルが「190」に達するまで、ダイアルを1ずつ変更しての撮影テストが繰り返し行われました。撮影の結果は、携帯獣が撮影されるパターンが151、撮影に失敗するパターンが39でした。

ダイアル190に至るまでに撮影された携帯獣はすべてカントー地方版の携帯獣図鑑に収録されているもので、他の地方の図鑑にのみ収録されている携帯獣は一切出現しませんでした。ダイアル190の設定時に「ウツボット」が撮影されたことでカントー地方版の携帯獣図鑑に収録されているすべての携帯獣が出現したため、当初の推定ではダイアル191以降に設定することで他地方の携帯獣が撮影されるものと考えられていました。


ダイアル:191
撮影された写真を目撃した局員4名が即時の緊張状態に陥りその場に昏倒したことで、実験は直ちに中止されました。4名のうち1名は軽度の記憶障害を起こしましたが、後遺症は残りませんでした。全員の回復を待ってヒアリングを実施したところ、概ね「何か得体の知れないものが写っていた」「見た限りでは、モザイク状の物体が写っていた」との回答が得られました。画像を専用の閲覧装置を使用して視認したところ、局員が証言した通りの詳細不明の物体が撮影されていました。以後の実験においては、画像の閲覧に専用端末を使用することが義務付けられます。

ダイアル:192-200
ダイアル191と類似した風貌の、しかし明確に異なる謎の物体を収めた写真が撮影されました。写真はすべてダイアル191と同じ情報災害の性質を示します。撮影された写真の特性を鑑み、警戒レベルを「3」(中程度の異常性及び危険性)に設定しました。

ダイアルが200に達した時点でダイアルをこれ以上回せなくなったため、このセッションにおける実験は終了しました。


[2015-03-02 Update]
別の実験セッションが設けられ、ダイアルを回さない状態での撮影実験が試みられました。結果はダイアル31などと同様で、撮影に失敗します。なお、この製品の初期出荷状態においては、ダイアルは「1」に設定されています。


[2015-03-02 Update 2]
ダイアルを「1」にした状態で、複数の人間を撮影する実験が試みられました。被写体はすべて「サイドン」として撮影されました。以前個別実験を実施したときと同様に、それぞれの個体にわずかながら差異が見られます。


[2015-03-02 Update 3]
ダイアルを「1」にした状態で、携帯獣に自分を撮影させる実験が試みられました。被写体となる携帯獣には、管理局で局員として働くサーナイトが選ばれました。

事前の予想に大幅に反し、この実験は被写体が未知の人間として撮影されるという結果に終わりました。撮影が可能なダイアルを選び、計30回に渡って写真の撮影が行われましたが、それらはいずれも異なる未知の人間を撮影するという結果になりました。

これまでのところ、撮影された人間そのものに異常性は見受けられません。過去の実験で撮影された被写体との関連性も無いことが判明しています。追加の実験により、被写体となった携帯獣の種類に拠らず、ダイアルの設定によって被写体の姿形が変化することも明らかになっています。


[2015-03-02 Update 4]
人間と携帯獣が同時に被写体となった場合の撮影実験が行われました。実験結果を鑑み、機器#142453を用いたあらゆる実験が無期限に禁止されることが即座に決定されました。本件と関連資産を時間/次元に掛かる案件を取り扱う部門へ移管することが検討されています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1241] #131013 「*いわのなかにいる*」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/07(Tue) 20:43:36   50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#131013

Subject Name:
*いわのなかにいる*

Registration Date:
2011-07-09

Precaution Level:
Level 4


Handling Instructions:
所定のキーワードによる検索を日々行い、検索結果にリストアップされたサイトのアクセス遮断を申請してください。対象の拡大スピードは早く、現在は日次での対処が必要なレベルになっています。一般の個人が対象に言及していた場合、監視対象のリストに加えてください。個人がフェーズ2へ移行したことが示唆された場合、直ちに場所を特定して任意同行を求め、管理局が制定した完全な治療プロセスを経た上で社会復帰させてください。フェーズ2の段階であれば、元通り社会復帰できることが分かっています。

管理局を含む各種機関によってインターネット上での広告活動が積極的に妨害されていることを認識しているためか、近年は新聞の折り込み広告としての挿入や、街頭でのビラ配布などのアナログ的な拡散活動が度々目撃されるようになっています。これらを目撃した場合、速やかに中止させてください。特に街頭での広報活動は無差別な対象の拡大・拡散をもたらし、時間が経過する毎に事態の収拾が困難になります。必要に応じて非致死性の武器を使用した制圧も許可されています。

これまでの調査で、本件に「ユニティー・サイエンス」と名乗る団体が関与している疑いが持たれています。本件担当者及び本件資料を閲覧するセキュリティクリアランスを保有する局員がユニティー・サイエンスと何らかの関係があると断定できた者との接触に成功した場合、上席の承認を得ることなく拘束・拘留することが許可されています。確保に成功した人員の取り扱いについては、管理局規則第83条に従ってください。


Subject Details:
案件#131013は、デジタル/アナログの双方から展開される住居に関する異常な広告と、適切な知識を持たない状態で該当する広告を目撃した際に発生する認識異常、及びそれらに掛かる一連の案件です。

事象のトリガーとなる広告は、後述する認識異常を起こし、事象の「フェーズ4」に入っている状態の人間数名が明るい笑顔を見せている写真に、概ね以下のようなメッセージを添えて展開されます:


 憧れのマイホームを手に入れたい、けれどローンが重くてとても背負えない…
 大丈夫。あなたでも背負える、あなただけのマイホームを手に入れるチャンスがあります!
 まずは 0120-XX-XXXX ユニティー・ハウジングまでお電話を! 資料の請求は無料です


記載されている電話番号は、広告が配布される都度法則無く変更されます。これまでのところ、同一の番号が異なる配布タイミングの広告で流用された記録はありません。新しい電話番号の出現と同時に、過去の電話番号は不通になります。

広告に掲載されている写真を情報災害低減機構を搭載した機器で確認すると、携帯獣である「イワパレス」の成体が背負うような、巨大な四角い岩を背負っている人間の姿が見えます。視認できる限りでは、人間は岩と一体化し、四肢と顔のみを外へ出しているように見受けられます。表情からは苦痛などのネガティブな感情はまったく読み取れません。

この広告が異常だという正確な知識を持たず、広告にそのまま曝露してしまった場合、ほとんどの人は広告に展開されている光景を「魅力的なもの」「素敵なもの」だという印象を抱き、可能な限り早く自分もこのような状態になりたい(彼らは一様に「あんなマイホームが欲しい」と口にします)と思うようになります。現時点ではまだ具体的な行動を起こしていません。管理局ではこの状態を「フェーズ1」と設定します。

フェーズ1の状態が一定期間続くと、今度は具体的な行動を起こし始めます。多くのケースにおける最初の行動は、広告に記載されている電話番号に入電し、「ユニティー・ハウジング」と名乗る団体から資料を請求することです。資料を入手した対象は多くの場合一日中資料を閲覧しつづけ、イワパレスのような状態になることをますます強く願うようになります。現在の心境を他人に話したり、blogなどのコミュニケーションツールで発信することも少なくありません。この状態は「フェーズ2」と呼称します。広告を直接視認していない周囲の人間の認知には影響を及ぼさないため、多くの場合異変を感じた周囲が説得に乗り出す、或いは当局へ申し出ることで、これ以上の進行を食い止めることに成功しています。

フェーズ2に入った対象に何らかの処置を行わずに放置していると、恐らく100%の確率で対象は「ユニティー・ハウジング」とより具体的な接触に乗り出します。先の電話番号を通じて「マイホームが欲しい」とユニティー・ハウジング関係者に伝え、ユニティー・ハウジングは対象にアポイントメントを取ります。対象はこの時いかなる犠牲を払っても「マイホームを手に入れたい」という心理状態にあるため、説得してこれを止めることはできません。通常アポイントメントは当日中かどんなに遅くとも翌日の午前中に設定され、対象は指定された場所へ「住宅相談会へ行く」と口にして向かいます。この状態は「フェーズ3」と呼称します。

対象はその後元の住居へは戻らず、各地方で確認されている野生のイワパレス及びイシズマイが生息している場所で、イワパレスのように岩と一体化している状態で発見されます。この段階の対象は会話こそ可能ですが、背負っている「マイホーム」に何ら不満や違和感を抱いておらず大変満足しており、さらに自発的かそうでないかを問わず、その場を離れることを極端に嫌悪します。対象がどのようにして岩と一体化しているのかは不明ですが、少なくとも岩に感覚がないことは分かっています。この状態は「フェーズ4」となり、これまで確認されている中では最後の段階になります。

フェーズ4状態の対象を効果的に移動させるためには、「今より広い庭のある空き地がある」「勤務先により近い空き地がある」など、現在の場所よりも一般的に住居として魅力的だと考えられている「空き地」があると伝えなければなりません。移動先が実際の条件を満たしている必要はありません。現在はこの手続きに基づき、227体のフェーズ4に到達した対象が管理局所有の隔離地に収容されています。しかしながら、支局に寄せられている情報から、未だ発見されていないフェーズ4対象者が相当数存在していると推定されています。対象者を捜索する試みが続けられています。

これまでのところ、フェーズ3/4に到達した対象を社会復帰させる手立ては見つかっていません。あらゆる形による対象への異常性認識の試みは、著しい認知の歪みによってすべて徒労に終わっています。フェーズ4状態の対象を回復させる方法は存在するか、またフェーズ4以降のさらなる段階が存在するかについて、収容した対象の観察が続けられています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1242] #136949 「カラカラの近代化改修」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/08(Wed) 20:32:49   56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#136949

Subject Name:
カラカラの近代化改修

Registration Date:
2013-05-26

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
後述する条件を満たすカラカラを発見した、あるいは発見したという申し出を受けた局員は、有異常性携帯獣向けに調整された専用のモンスターボールを使用して、速やかに対象を捕獲してください。捕獲したカラカラは、当局が定める標準的な手続きに沿ってオーレ地方フェナスシティ支局まで移送してください。オーレ地方フェナスシティ支局以外に在籍する局員の担当はここまでとなります。

オーレ地方フェナスシティ支局に在籍する局員は、別の支局から移送されたカラカラを手順F-136949に沿って収容・保全してください。対象のカラカラはこれまでのところ攻撃性がとても低く、通常の個体と比較しても危険性は低いと見なされています。局員はカラカラと信頼感を醸成するよう努め、彼らが所有している装備品を研究のために貸し出すことを促してください。彼らと適切な形で接すれば、装備品を友好的に借り受けることはさほど難しくないことが分かっています。

上記の手続きを経て一時的に装備品を入手することに成功した場合、速やかに様式F-136949に沿って装備品の性質を記録してください。


Subject Details:
案件#136949は、一定の特徴を持ったカラカラの異常な個体群と、それに掛かる一連の案件です。一般的に知られているカラカラの個体群は、本案件の管理対象ではありません。

2011年頃から、本案件で取り扱う異質な特徴を持つカラカラが不特定多数の地域で目撃されるようになりました。目撃された地域に規則性は見当たらず、異常性の無いカラカラが生息している地域とほぼ同様の分布を見せています。年月を経るにつれて、徐々に個体数が増加していることが認められます。その一方で非特異個体の生息数は極端な増減を示しておらず、正常と推定される値の範囲内で推移しています。これまでのところ、特異個体の増加との相関性は見られません。

特異個体の持つ最大の特徴は、通常のカラカラが装備・携帯している頭蓋骨及び骨棍棒に代わって、黒または白のフルフェイスヘルメットと鉄パイプを所持していることです。観測された中に、どちらか一方のみが骨由来の装備というパターンは確認されていません。両方が骨由来の装備(正常個体の場合)であるか、もしくは両方がそうでないか(異常個体の場合)のパターンのみが確認されています。

装備しているフルフェイスヘルメットと鉄パイプの性質は個体により大きく分かれています。以下は当局が捕獲に成功した個体について、各々が装備していたアイテムについて記述した資料の抜粋です:


・特異個体#136949-05
フルフェイスヘルメットはマルシン工業社製のモデル「AGV K3-SV(カラーバリエーション:マットブラック)」に類似していますが、製造元に関する情報は黒塗りにされているか、または刻印がヤスリのようなもので削られた形で潰されています。実際のモデルとは細部に違いが見られますが、手改造の痕跡は見当たりません。鉄パイプは全体がひどく錆び付いていて、長さは約30cmです。

・特異個体#136949-14
フルフェイスヘルメットはアライ社製のモデル「RAPIDE-IR(カラーバリエーション:グラスホワイト)」とほぼ同様です。過去の個体同様、製造元に関する情報は得られていません。鉄パイプは真新しいもので、長さが1mに達しています。長さゆえにこの個体は武器を適切に扱うことができず、保護された時点ではかなりの衰弱が見られました。現在は局員の支援により、良好な健康状態を維持しています。

・特異個体#136949-22
フルフェイスヘルメットは外装こそヤマハ社製のモデル「YJ-15 ZENITH」と一致している点が多々見受けられますが、内部の構造には相当の差異が確認できます。同社がこのヘルメットと同型の製品を製造していた記録はありません。所持していた鉄パイプは先端がカーブしているタイプのもので、形状を活かして木の実を収穫するなど、通常個体のカラカラよりも知能が発達している様子が見受けられました。

・特異個体#136949-25
フルフェイスヘルメットはシンプソン社製のモデル「Model30(カラーバリエーション:マットブラック)」と完全に同型ですが、製造元として「ROCKY」という未知のメーカーが刻印または記載されています。保護した際に鉄パイプに乾いていない血が付着しており、DNA鑑定の結果から携帯獣の「フリーザー」のものと矛盾無く一致することが判明しました。局が各方面に照会したところ、直近で死亡した、または行方不明になっているフリーザーの個体は存在しないという結果が得られています。


特異個体は正常な個体に比べて攻撃性が低いことは先述した通りですが、それとは対照的に社交性は高くなっており、特異個体のみで数体から十数体ほどの小規模な群れを作って生活していたケースが複数目撃されています。野生のものは正常な個体と交流することは無いようですが、保護した個体に互いが同族であることを適切に教育すると、正常な個体ともとても良好な関係を築くことができます。明らかな風貌の違いにもかかわらず、正常な個体は異常個体を同族と見なしているようです。

正常な個体と特異個体の生物学的な相違は見当たりません。携帯獣向けのデバイスは特異個体を例外なく「カラカラ」と正常に認識し、モンスターボールを使用すれば問題なく捕獲することができます。装備しているもの、そして攻撃性の低さと社交性の高さを除けば、正常な個体と特異個体に大きな差異はありません。

カラカラの特異個体がどのようにして装備を入手しているのかは分かっていません。装備そのものに不審な点が多々見受けられることから、正常なカラカラに対して人為的に手が加えられた個体群である可能性も提起されています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1243] #118412 「1 + 1 を 3 に する」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/09(Thu) 21:15:30   48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#118412

Subject Name:
1 + 1 を 3 に する

Registration Date:
2007-07-11

Precaution Level:
Level 5


Handling Instructions:
クローラーがアプリケーションを発見したことを通知してきた場合、速やかに一覧#118412に記載しているISPへ緊急通報を出し、利用者のアクセスを完全に遮断するようにしてください。アクセス遮断の手続きと同時に、管理局名義でアプリケーションの配布停止を促す警告を行い、従わない場合は警察機関の窓口にすべての情報を提出した上で、機関と連携して物理的な制圧に乗り出してください。少なくとも現時点では、本案件で対処すべきアプリケーションプログラムはインターネット上で配布されていないことが確認できています。

アプリケーションプログラムによって生成されたと思しき携帯獣は可能であれば速やかに捕獲・隔離し、他の携帯獣と接触させることがないようにしてください。これまで発生した事案では、捕獲が不可能になる特性を持つものも少なからず確認されています。対処が困難な場合、致死性の武器を用いた制圧も許可されます。捕獲した個体の生死に関わらず、対象はデータ化してバイオリサーチセンターへ移送してください。データ化に際しては、必ずネットワークから切り離された端末を使用してください。決してネットワークに参加している端末で作業をしてはなりません。

上記と合わせ、対象のアプリケーションプログラムの解析と、開発者の捜索が並行して行われています。これまでのところ開発者に関する有力な手がかりはありませんが、発生する事象の性質から、管理局と敵対的な姿勢を取っている複数の団体が関与している疑いがあります。


Subject Details:
案件#118412は、ある雑誌に付録として添付されていたCD-ROMの一部ロットに収録された異常なアプリケーションプログラムと、そのアプリケーションプログラムを使用することで生成される特異な携帯獣、及びそれらに掛かる一連の案件です。

1998年に有限会社ベクターデザイン社(現・株式会社ベクター)が発行した「PACK for WIN LIGHT」という書籍には、付録としてMicrosoft Windows向けのフリーウェア・シェアウェアを多数収録したCD-ROMが5枚付属しています。5枚のディスクのうち4枚目のディスクに、書籍及び付属しているCD-ROM検索ユーティリティに言及・記載の無い隠し属性のディレクトリ「PLUS」が存在し、その中に「PLUS113.lzh」というLHA形式のアーカイブファイルが収められています。

これまで接収したCD-ROMは全部で108セットですが、そのうちの21セットに該当するファイルが存在していました。存在したのはいずれもディスク4で、他のディスクは管理局が正常と認めるディスクと一切の差異が見られません。ディスク4にも含まれている個体と含まれていない個体がありますが、どのような基準で収録/未収録が分かれたのかは不明です。当時ベクターデザイン社に在籍していた元職員からヒアリングを行ったところ、CD-ROMの内容を途中で差し替えたようなことは無く、またコスト的にも困難でまず実施していないとの回答が得られました。

現在のベクター社が運営するオンラインソフトライブラリ「Vector」では該当するアプリケーションは公開されておらず、またこれまでに一度でも公開されたという記録は見つかりませんでした。これらの事実から、管理局ではアプリケーションプログラムを書籍の出版時点では存在しておらず、流通後に外部から何者かが無作為に挿入したものと判断しました。

ディスク4の異常個体から入手できる「PLUS113.lzh」は標準的なLHAアーカイブユーティリティで展開でき、展開すると「PLUS.EXE」と「PLUS.DOC」という二つのファイルが生成されます。タイムスタンプは「PLUS.EXE」が1997-05-04 13:25、「PLUS.DOC」が1997-05-04 19:31です。このうち「PLUS.DOC」はアプリケーションプログラムの概要を記載したもので、拡張子は一般的にMicrosoft Wordの古いバージョンが使用する「.doc」ですが、中身はシフトJISのプレーンテキストです。これは当時存在したドキュメントファイルに付与するファイル名の慣習によるものです。

展開される「PLUS.DOC」の記載によると、「PLUS.EXE」の動作環境はWindows 95、システム要件として32MB以上のメモリ領域が要求されます。アプリケーションの名称は「1 + 1 を 3 に する」とあり、「PLUS.EXE」を実際に起動することで、ウィンドウタイトルに同じテキストが表示されることが確認できます。用途は「ジョークソフト」だけ書かれています。具体的な使用方法については記載がありません。これまでの検証で、アプリケーションはWindows Vistaまでの全バージョンのWindows環境(32bit/64bitのバージョンが存在する場合は両方の環境で)で完全に動作することが分かっています。互換性のサポートは必要としていません。

実際に「PLUS.EXE」を起動すると、二つの縦長の空白と、「3 にする」「0 にする」という二つのボタンが取り付けられただけの粗雑なインターフェイスをしたウィンドウが表示されます。ウィンドウはアイコンのドロップを受け付けており、任意のアイコンをそれぞれの空白へドロップすることができます。ドロップ可能なアイコンは実体があるものだけでなく、システムアイコンを含むあらゆるアイコンをドロップできます。アイコンを両方の空白へドロップしない限り、「3 にする」ボタンは有効になりません。「0 にする」を押下すると、アイコンのドロップを取り消すことができます。両方の空白にアイコンをドロップした状態になると「3 にする」が有効になり、ボタンの押下が可能になります。

押下するとすぐにアイコンが消失し「3 にする」ボタンが非活性化されますが、これはドロップされたアイコンの実体には何ら影響を及ぼしません。同時に「PLUS.EXE」と同一のディレクトリに、「3.img」というおよそ4.5GBの巨大なファイルが生成されます。生成中にハードディスクドライブの容量が不足した場合、容量の許す限りの大きさで「3.img」を生成します。生成に掛かる時間は一瞬で、どのようなプロセスを経てファイルを出力しているのかは不明です。

出力されたファイルを解析したところ、モンスターボールから携帯獣のデータを読み込んでダンプした際に生成される標準的な形式のイメージファイルと、構成が完全に一致することが判明しました。このことはつまり、「PLUS.EXE」が完全な携帯獣を生成する機能を持つということです。どのような携帯獣が生成されるかは不明です。

案件管理局の倫理規定により、携帯獣の生成実験は承認されません。上記の検証過程で生成した携帯獣はデータの状態のまま復号せず、厳重な保護を施したサーバに保管されています。アプリケーションプログラムの回収と使用の未然防止に向けた取り組みが続けられています。


[2011-06-23 Update]
2011-06-02の夕刻から2011-06-03の早朝に掛けて、明らかに異常な携帯獣を大量に使役する正体不明の集団が、ホウエン地方ミナモシティ第二支局を襲撃するという事件が発生しました。第二支局はセンターへ応援を要請、最寄りのホウエン地方トクサネシティ第一支局に駐留していた特殊機動部隊ベータ-エメラルドの出動が緊急で承認され、約10時間後に鎮圧が終了しました。襲撃に際して多数の局員が負傷、市民の保護と避難誘導に当たっていた局員2名が殉職しました。市民に死者は出ませんでしたが、数名が軽い怪我を負っています。いずれも現在は全快しています。

鎮圧時に襲撃者のうち4名がその場で射殺され、1名が捕縛されました。管理局による尋問により、襲撃者が案件#118412で対応中のアプリケーションプログラムを使用し、襲撃で使用した携帯獣を生成したことが発覚しました。身辺調査によりアプリケーションと「生成メモ」と記載されたテキストファイル群を入手、接収しました。対象は「ネクタール飲料株式会社」と名乗る団体から襲撃依頼を請けたと供述していますが、そのような団体は今のところ確認できていません。管理局は証拠と共に対象を警察機関へ引き渡しています。

発見された生成メモの写しの一部は下記の通りです。メモは膨大な量の巨大なテキストファイルに分かれており、これらはごく部分的な抜粋に過ぎません:


[ケース1]
ファイル1: explorer.exe
ファイル2: calc.exe
ポケモンの特徴:
色が反転して、普通の1.5倍の大きさになったマーイーカ。水を使った攻撃がほとんど効かなくなる。代わりに物理攻撃に弱くなる。モンスターボールには入る。時々指示に従わずに「スパーク」のような放電をする。時々頭に付いてる帽子みたいなのが取れてることがある。30分くらい側にいると乗り物酔いしたみたいになる。

[ケース6]
ファイル1: readme.txt(空ファイル)
ファイル2: readme.txt(「A」と一文字だけ書いた)
ポケモンの特徴:
全身鋼になったヌメラ。大きさは普通のものより少し小さい。移動すると跡が残って、そこから同じ特徴を持った別のヌメラが出てくる。最初のヌメラはモンスターボールに入る。後から出てきたのは入らない。炎に弱くて溶けてなくなる。図鑑で見るとメタモンと表示される。俺たちを敵だと思ってる。

[ケース8]
ファイル1: NTUSER.DAT
ファイル2: 新しいビットマップ イメージ.bmp
ポケモンの特徴:
バタフリーの見た目をしたモルフォン。翅の模様がアーボックの顔を歪ませたような形になってる。人を見つけると血を吸おうとして暴れ回る。火であぶってもダメージにならない。スーパーボールにだけ入る。ファイル1が更新されるせいで同じのを複数作れない。ファイル2の中身を変えると模様が変わることがある。変わらないこともある。

[ケース13]
ファイル1: normal.dot
ファイル2: Book1.csv
ポケモンの特徴:
目が充血して羽から血を流してる大きなペラップ。声を出せない。口から血まみれのアンノーンの死体を吐いて攻撃する。アンノーンに触るとポケモンが泡を吹いて気絶する。モンスターボールに入ったが出せない。外にいると2時間くらいで死ぬ。後で調査したらファイル1がウイルス感染してた。

[ケース15]
ファイル1: .htaccess
ファイル2: jdbgmgr.exe
ポケモンの特徴:
単眼のリングマ。目が月の輪の真ん中に付いてて、閉じたのを見たことが無い。腕がゴムみたいに伸びて骨が無い。口からヘドロの塊を出す。ヘドロが地面に付くとヒメグマの形になる。ヒメグマは見た目は普通だけど必ず足が折れてる。ヘドロに触れたポケモンはヘドロになる。人間が触るとヘドロが消える。ルアーボールじゃないと入らない。回復させようとすると機械がフリーズして再起動する。

[ケース22]
ファイル1: cygwin1.dll
ファイル2: UNLHA32.DLL
ポケモンの特徴:
レアコイルでできたレアコイル。大きな雷を落とせるし、超音波も使える。電磁波も範囲が広い。とても使える。時々鶏のささ身をあげないとダメ。一度に1kgあげる。困ったらとにかく大量にやればどうにかなる。側にいると携帯電話に人の影が映ることがある。誰が映っているのかはわからない。キタハマが夢の中に出てきたって言ってた。テンノウジの持ってたゲームがこいつのせいでおかしくなったので処分した。

[ケース26]
ファイル1: AutoRun.inf
ファイル2: command.com
ポケモンの特徴:
見た目はよく分からない。スミノエは赤いスピアーに見える、タカツキは水玉模様のグレイシアに見える、俺は首が五つあるドードーに見える。どうやら空を飛べるみたいだ。エアームドみたいな鋼の羽がよく抜ける。羽に「キボウ ハ イタミ」ってびっしり彫ってある。モンスターボールに入れると全員コケがびっしり生えたライチュウに見えるようになった。どこにも見当たらないのに羽が抜けつづけてる。


比較的安全、かつ完全な再現が可能と推定されるケースを複数選び、事前に倫理委員会に電子的安楽死の承認を得て特例的に実験を行ったところ、すべてのケースでメモに書かれた通りの異常な携帯獣が生成されました。メモの内容は、憶測や事実誤認こそ混じっていますが概ね事実です。

条件を完全に一致させない限り異なる携帯獣が生成され、生成される携帯獣のパターンがまったく推測できず、かつ非常に危険な性質を持つ携帯獣が事実上無限に存在し、それらをあまりにも安易に生成できてしまうため、生成元のアプリケーションプログラムと生成された携帯獣を一括し、警戒レベルを「最大限の警戒が必要」な「5」と設定しました。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムは、現在公開準備中です。準備が完了し次第、本稿を閲覧可能なセキュリティクリアランスを持つすべてのアカウントにアイテムが公開されます。


  [No.1244] #114355 「女工キャタピーと夕和紡績常磐工場」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/10(Fri) 21:05:54   51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#114355

Subject Name:
女工キャタピーと夕和紡績常磐工場

Registration Date:
2006-03-29

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
本案件で取扱対象となるキャタピーの個体群は決してモンスターボールに収容せず、常に外へ解放しておくようにしてください。新たにキャタピーを収容した支局は、速やかにジョウト地方ヒワダタウン第二支局への移送手続きを実施してください。移送に際しては対携帯獣用の移送手順では無く、対人用の移送手順を適用することを欠かさないようにしてください。従わない場合は、管理局の倫理委員会の定める罰則規定に沿って処罰される可能性があります。

ジョウト地方ヒワダタウン第二支局に所属する局員は、受け入れたキャタピーを標準的な対人収容室へ移動させてください。対象から申し出があった場合には、支局内にある庭園を散歩させることを許可します。同じくカウンセリングの申し出があった場合も、支局に常駐するカウンセラーが対応に当たります。収容した対象同士の交流は、局員の監視の下であれば自由に行わせて構いません。丁重に取り扱っている限り、対象が脱走する可能性は無いと見られています。

食事は一日三回、管理局が小児収容対象向けに定めた献立のものを、分量を1/4にして配給してください。食事は事前に申請を受けた人数分だけ、支局に隣接する給食センターで調理します。決して携帯獣向けの食事を与えてはいけません。従わない場合は、管理局の倫理委員会の定める罰則規定に沿って処罰される可能性があります。

可能であれば対象から手順F-114355に沿ったヒアリングを実施し、対象が勤務していた紡績工場についての情報を収集することに努めてください。これまでのところ実際に紡績工場が存在するか、また通常の手順でアクセスが可能かは不明ですが、得られた情報に矛盾する点は見当たりません。ヒアリングに際しては対象の意思を尊重し、発言を強制するようなことがあってはなりません。従わない場合は、管理局の倫理委員会の定める罰則規定に沿って処罰される可能性があります。


Subject Details:
案件#114355は、かつて「夕和紡績常磐工場」なる未知の工場に勤務していたという特異なキャタピーの個体群と、彼らが勤務していたという工場の「夕和紡績常磐工場」、及びそれらに掛かる一連の案件です。

2005年の11月中旬頃、カントー地方トキワシティ第五支局にて勤務する局員から「フィールドワーク中、三角巾とエプロンを着用している負傷したキャタピーを保護した」との連絡がありました。局員がキャタピーを第五支局まで緊急搬送した後、必要な処置を施す過程でキャタピーの持つ特異性が明らかになり、案件としての立ち上げが決定されました。

本案件で保護対象となるキャタピーは、発見時には必ず三角巾とエプロンを着用していることを除けば外見こそ通常の個体と明確な差異はありませんが、通常の個体と比較して知能が飛躍的に発達しており、人語による発話・対話が可能です。会話レベルは非常に流暢なもので、強いヒワダ訛りが見られます。対話に際してはこちらが標準語を用いても問題なく受け答えが可能です。知能レベルは個体により若干上下しますが、概ね十代前半の人間の子供と同程度です。

最初期に保護された個体は当初非常に警戒心が強く、管理局による説得には相応の労力と時間を必要としました。しかしながら、対話の過程でこの種のキャタピーの異常個体群に関する様々な貴重な情報を得ることに成功しています。以下はキャタピーを保護した局員(以下「局員A」と表記)が実施した第6回目のヒアリングについて、録音した音声から局員Aの許可を得てテキストへ書き起こしたものです:


---------- 録音開始 ----------

対象#114355-1:
あっ、[局員A]さんや。こんにちは。

局員A:
こんにちは、[局員Aが対象#114355-1に付けた愛称]ちゃん。昨日はよく眠れた?

対象#114355-1:
うん。なんか、はじめてぐっすり寝れた気ぃする。朝もお昼もちゃんとしたご飯食べさしてもろたし、ほんまにおおきにな。

局員A:
こちらこそ、ごめんなさいね。キャタピーだからポケモンのための食事を与えればいいって、みんなそんな風に思い込んでたわ。私も含めてね。あなたが言ってくれたおかげで、こっちも助かったの。

対象#114355-1:
うちらこないな見てくれやけど、モノノケのご飯は合わへんのやわ。ぜいたく言うて堪忍な。

局員A:
いいのよ、気にしないで。必要な手続きは済ませたから、今日からはきちんとした食事を提供できるわ。それと、昨日お願いされた引越しの件だけど、来週にはヒワダへ行けることになるわ。私も付き添うから、安心してちょうだいね。

対象#114355-1:
ほんま? うち、ヒワダへ行けるん?

局員A:
ええ。ずっと行きたかったって、そう話してくれたわよね。私も見に行ってみて、[愛称]ちゃんならきっと気に入ると思ったわ。山と緑に囲まれた、空気のおいしい町よ。

対象#114355-1:
うれしいわあ。うちの好きやったフミコお姉ちゃんがそこ行ったことあって、ごっついええ場所やって教えてもろたから、ずっと行ってみたかったんよ。行けたらうち、フミコお姉ちゃんのお墓も作ったるねん。

局員A:
そうね……私にも手伝わせて。それとね、他にも[愛称]ちゃんの友達が見つかったら、会わせてくれるそうよ。さっき上司が承認してくれたの。

対象#114355-1:
[局員A]さん。[局員A]さんの「上司」って、監督のことなん? ここは監督のこと「上司」って呼ぶん?

局員A:
立場は近いけれど、少し違うわ。[愛称]ちゃんの言う「監督」って、どんな人だったの?

対象#114355-1:
えっと、[局員A]さん……今、監督ここにおれへん? どっかで見とったりせえへん? あの望遠鏡で見てたりせん?
(※注釈1:対象の言う「望遠鏡」とは、収容室に取り付けられた監視カメラのこと)

局員A:
大丈夫、見ているのは守衛さんよ。[愛称]ちゃんがまた急に苦しくなったりしたときに、すぐ駆けつけられるようにするためのものなの。

対象#114355-1:
そっか……堪忍な、[局員A]さん。それで……せや。あのな、監督めっちゃ怖い人やねん。みんなめっちゃ怖がっとった。普段は工場(こうば)に全然出て来うへんで、なんか箱から声出して、皆手ぇ抜いたらあかん、勝手に休んだらあかんってずっと叫んどってん。

局員A:
あなたたち女工が工場で働くのを、どこかで監視していたのね。

対象#114355-1:
せやねん。えっとな、それでな、昨日[局員A]さんから訊かれたことやねんけど……。

局員A:
[愛称]ちゃんがどこから来たか、ということについてね。

対象#114355-1:
うん。うち思い出したねんけどな、なんか最初目ぇ覚めたんが、工場の中にあった医務室を大っきくして、それから布団の数増やしたみたいな場所やってん。そこで触覚になんか付けられて、この辺(追記:個体は首筋を強調していた)から薬も入れられとった。もっと前のことは全然覚えてへんけど、でも、緑がいっぱいある場所におった気ぃする。

局員A:
なるほど……よく思い出してくれたわ。ありがとう。

対象#114355-1:
ううん。うち今働いてへんし、それやのにご飯食べさしてもらってるから……いつもやったらこの時間、うち工場で糸紡いどったんやなあ。うち、ほんまに休んでてええんかな。

局員A:
ええ、たっぷり休んで、食事をしっかり食べてくれれば、それでいいのよ。それと……もう一度確認するけれど、[愛称]ちゃんは工場で糸を吐いて、それを紡ぐって仕事をしていたのよね?

対象#114355-1:
せやで。うちと同じような子がずらーって並んで、みんな糸吐いとってん。それで言われた通りに巻いたりとかして、出来上がったら箱へ入れていくんよ。朝の7時から夜の10時までやって、休憩は一日二回で30分やったわ。みんなしんどいしんどい言うとった。うちもしんどかった。

局員A:
本当に大変だったわね。よく逃げてきたわ。

対象#114355-1:
前も言うたけど、うち仕事しとる時急に胸痛なって、糸に血ぃ混ざってもうてん。糸は白ぅにせんとあかん、血ぃ混ざったらあかんって言われとったねんけど、我慢できひんかって。

局員A:
それで、監督に見つかったの?

対象#114355-1:
うん。別の部屋呼ばれて、棒みたいなのんでめっちゃ叩かれてん。何べんも叩かれて、あんまり叩かれるから、最後の方痛いんか痛ないんかよう分からんかった。せやけどこのままやったら死んでまう思て、部屋の鍵開けたまま出て行ったん見て逃げたんよ。そしたらな、知らん間に木ぃいっぱい生えてるとこに出て、それで[局員A]さんに拾ってもろてん。

局員A:
……危ないところだったけれど、助かってよかったわ。しばらくは私たちと一緒にいることになるけれど、そんな扱いはしないし、私がさせないわ。この間は[局員B]がつまらないことをして怖がらせちゃって、本当にごめんなさい。
(※注釈:局員Bは4日前、事前に同意を得ること無く対象#114355-1をモンスターボールへ収容しようとして、上司である局員Aから厳重注意を受けている)

対象#114355-1:
うちも暴れてごめんな、[局員A]さん。みんなと全然違う見てくれやから、うちのことヘンや思うの分かるし、多分いっしょにおるん嫌やと思ったからやろうけど、でもな、あんな狭いとこ嫌やねん。怖いねん。外に出しとってほしいねん。

局員A:
[局員B]にはきつく言っておいたわ。あなたの個人的な理由で動くのはやめなさい、収容違反よ、って。ずいぶん反省してたみたい。

対象#114355-1:
おおきにな、[局員A]さん……えっと、なんか思い出したら、また話するな。もしかしたら、[局員A]さんらの役に立つかも知れんし……。

局員A:
無理しなくていいわ。今はゆっくり体を休めた方がいいもの。

対象#114355-1:
うん……あっ、ありがとう。

局員A:
どうかしたの? [愛称]ちゃん。なんだかちょっとそわそわしてるけれど。

対象#114355-1:
あのな、今何時やろって思て。もうご飯食べてだいぶ経つし、1時になったら、うち工場へ戻……あっ。

局員A:
ああ……。いいのよ、[愛称]ちゃん。これからは工場へは戻らなくていいの。安心して。

対象#114355-1:
せやった。うち、もう戻らへんでええんや。もう1時になる前に、工場まで戻らんでええんや。

---------- 録音終了 ----------


管理局ではこれまでに、13体のキャタピーの特異個体を収容しています。キャタピーは全員♀で、最初期に保護された個体(対象#114355-1)とほぼ同様の特徴を持ちます。対象#114355-1は個体群の中でも比較的年長に入るようであり、後に保護された個体の多くは対象#114355-1を「お姉ちゃん」または「姉ちゃん」と呼んでいます。いずれの個体も現在の収容状況について高い満足度を示しており、当局に対して協力的な姿勢を見せています。

キャタピーの特異個体群が証言する「夕和紡績常磐工場」なる工場は2006-03-20現在も未確認のままですが、彼女たちの証言は一貫していて矛盾したところが無く、同じ事柄について語った場合はすべての証言が一致します。

夕和紡績常磐工場はカントー地方トキワシティ近辺に存在すると推定される巨大な紡績工場で、敷地内に宿舎や娯楽施設、医療機関も備えているとのことです。工場内は幾つものセクションに分けられ、それぞれで製糸に掛かる作業を分担して実施していたようです。彼女たちがいたのは製糸の工程におけるもっとも初期の工程を担うセクションで、吐き出した糸に最低限の加工を施して次のセクションへ回付していたと思われます。証言によると、同じ境遇のキャタピーが少なくとも千名近く働いており、過酷な労働環境故に死亡した個体も少なくないとのことです。逃亡に成功した個体は、対象#114355-1のように懲罰を受けている最中に抜け出したか、夜間の消灯後に脱走した者がほとんどです。

これまでのところ、「夕和紡績」なる製糸会社が存在している、あるいは存在した記録は見つかっていません。キャタピーの異常個体群をどのようにして確保しているのかも不明です。保護した女工たちの証言を組み合わせて確認した限りでは、通常の個体に何らかの方法で高い知性と知能を持たせた可能性が濃厚ですが、彼女たちがかつて別の携帯獣であったか、もしくは一般的な人間であった可能性も現状では否定できません。加えて別の女工の証言は、一般にも名の知られている大手衣料メーカーや総合商社が、何らかの形で夕和紡績と取引を持っている可能性を示唆しています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1245] #125729 「マトリョーシカ・タマゴ」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/11(Sat) 15:14:01   42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#125729

Subject Name:
マトリョーシカ・タマゴ

Registration Date:
2009-11-04

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
ポケモントレーナー向けのソーシャルネットワークや掲示板を定期的に巡回し、異常な性質のタマゴについての言及が無いかを確認してください。本案件で取り扱う性質のタマゴが発見された場合、対象のトレーナーを特定してコンタクトを取り、タマゴを接収してください。併せて、出産した携帯獣の精密検査を実施します。過去に実施した精密検査の全結果は、案件別サーバの関連資料ディレクトリに格納されています。案件担当者は資料を自由に閲覧することができます。

接収したタマゴは、ジョウト地方43番道路よりアクセス可能な管理局のバイオリサーチセンターへ移送します。センターの職員はタマゴの様子を日々観察し、何らかの変化が見られた場合はレポートへ記録してください。これに加えて、タマゴ内部の超音波検査の結果/体温の推移等のデータが、一定時間毎に自動的に取得され蓄積されます。現状ではこれ以上の対応は必要ありません。

保管しているタマゴから異常な生物が孵化する可能性を鑑み、タマゴを配置する台座には例外なく小規模な可塑性爆薬をセットします。孵化に伴うバイオハザード発生が憂慮される場合、遠隔操作による速やかな爆破処理を実施してください。爆破に際して承認を得る必要はありませんが、みだりな処理が行われたと判断された場合は、管理局が定める規定により懲罰を受ける可能性があります。


Subject Details:
案件#125729は、携帯獣が出産した特異なタマゴと、それに掛かる一連の案件です。

2009年7月頃、ホウエン地方キンセツシティにあるポケモンセンターから管理局に「明らかに異常な性質のタマゴが発見された」という通報がありました。局員が駆けつけて事情を確認したところ、ホウエン地方カイナシティに籍を置くトレーナーが自身が育成している雄のオオタチと雌のマッスグマのつがいが持っていたタマゴを孵化させた際に、タマゴに異常があることを発見したとのことでした。トレーナーから同意を得てタマゴを回収し、オオタチとマッスグマの精密検査を行うことが決定されました。

異常なタマゴは外見上一般的なものと区別を付けることができませんが、外殻を割って現れるのは携帯獣ではなく、新しい別のタマゴであるという特徴があります。通常、孵化の時期を迎えたタマゴは、内部の携帯獣の運動に伴って外殻が破壊されます。本案件で取り扱うタマゴについても同様のプロセスを経て外殻が破壊されますが、中から出てくるのは携帯獣ではなく、ほぼ同じサイズのタマゴになります。

一般的に実施されるタマゴ内部への検査の結果は、対象のタマゴが無精卵であることを示しています。しかしながら、孵化の直前に行ったチェックでは、内部から何らかの生物が発していると思われるバイタルサインが確認されました。この時も超音波検査やX線写真撮影による検査結果は一貫して無精卵のそれと同一であり、携帯獣を含む生物が存在している可能性は示されませんでした。

タマゴから孵化したタマゴも、性質は先のタマゴと同様です。一般的な孵化のプロセスを経て、中からまた新たなタマゴが出現します。当局が収容している個体については、これまでのところ元のタマゴから明確に性質が変化した個体は存在していません。また、複数回の孵化を経て、何らかの正常な生物、あるいは異常な生命体が孵化したという記録もありません。収容中のタマゴは、いずれもほぼ同一タマゴを孵化するサイクルを一貫して繰り返しています。

案件立ち上げ当初は、初めてタマゴを出産したと思われるオオタチ・マッスグマのつがいについて、一方または双方に何らかの原因があるという仮説が有力だと考えられていました。しかしながら、情報学的スキャンを含む管理局標準の精密検査では一切の異常が見つからず、さらに後日同じつがいが複数回出産したタマゴからは、いずれも異常性の無い正常なジグザグマが孵化したことが確認されため、親の個体に原因を見出すことが困難になりました。

さらに、最初のタマゴの回収から一ヶ月以内に、各地域で合わせて26個の同様の性質を持つタマゴが回収されました。すべての親個体に上記と同様の精密検査を行いましたが、やはり何らかの問題、あるいは一貫した特徴を発見することはできませんでした。親個体の種族は完全にバラバラで、タマゴについても同種族間で産まれたものと異種族間で産まれたものがほぼ半数ずつ存在しています。親に原因があるとする仮説はまだ撤回こそされていませんが、得られた物証はこの仮説の根拠が脆弱であることを示しています。

現在もっとも有力であると考えられている仮説は、タマゴから孵化するのは「携帯獣のタマゴに酷似した特徴と性質を持つ未知の生物」であるというものです。孵化を繰り返すのは、代謝機能の活発化による老廃物の排泄と解釈されています。この仮説に基づいた調査が進められていますが、このタマゴに似た生物がどのような経緯で誕生するのかは今も不明なままです。


[2010-01-20 Update]
個体#125729-6について、定期的に撮影されるX線写真を整理していた局員が、タマゴ内部に何らかの生物と思しき影が写り込んでいることを報告しました。対象の個体を撮影したすべての写真が再チェックされましたが、影が写っていた写真は一枚のみで、その他の写真には同様の影は見当たりませんでした。個体#125729-6の定期検査の間隔を早めることが決定されました。

[2010-06-08 Update]
個体#125729-17について、複数の職員から「個体から呻くような声が聞こえる」との報告が寄せられました。対象の完全な検査が行われましたが、これまでと同様に、タマゴ内部に生物が存在するという証跡は得られませんでした。現在も24時間体制での監視が続けられています。

[2010-11-29 Update]
個体#125729-2について、2010-07-03に発生した孵化イベント以降、新たに現れるタマゴにわずかながら質量の増大とサイズの拡大が見られることが判明しました。これらの変化は孵化を経るごとに繰り返されています。個体#125729-2の監視を強化することが決定されました。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1247] #95092 「「みち」の駅」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/12(Sun) 19:27:50   45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#95092

Subject Name:
「みち」の駅

Registration Date:
2000-02-19

Precaution Level:
Level 1(2006-08-20以前)→Level 4(2006-08-21以降)


Handling Instructions:
ポケモンセンターや管理局の拠点に対して、ポケモントレーナーから「元居た場所と違う場所に居た」あるいは「異常な『道の駅』に入った」といった通報があった場合、トレーナーから事情をヒアリングして該当する「道の駅」が発生したポイントを特定すると共に、局員による物理的なアクセスを試みてください。通報があったトレーナー自身から申し出があった場合も、アクセスに際して同行させてはいけません。トレーナーには「あなたに対してのみ再度同じ事象が発生し、まったく別の場所へ移動してしまう可能性がある」と正確な情報を伝え、申し出を謝絶してください。

これまで集められた「道の駅」に関する情報は、本案件に携わらない局員も含めたすべての局員が参照・利用可能です。トレーナーが利用するソーシャルネットワークサービスや匿名掲示板からも情報が収集されています。「道の駅」に関する何らかの情報を持っている局員は、情報の既出・未出に関わらず、案件担当者への積極的な提供が奨励されています。当該ロケーションに関する情報は未だ大きく不足しているため、早急に実態の解明を進める必要があります。


Subject Details:
案件#95092は、単独または少数で活動中のポケモントレーナーのみが進入できると推定される未知の施設と、それに掛かる一連の案件です。

対象は、国土交通省が主体となって全国で展開されている道路施設「道の駅」に類似した、あるいはそれをイメージさせるような形態を伴い、未知の条件によって前触れ無く出現します。出現するポイントはランダムですが、拠点間の距離が10km以上あり、かつその間に自由に利用可能な休憩のための施設が存在しないことが条件と推定されています。出現するための具体的な方法については現状では不明です。

出現条件を満たした状態でトレーナーが中へ進入すると、特段異常の無い一般的な人間の職員と、同じく異常性の見受けられない携帯獣の職員が働いている光景を目にすることになります。トレーナーが入ってきたことを確認した職員は彼らを大いに歓迎し、自分たちが働く「道の駅」で休んでいくよう勧めます。この勧誘行為はやや積極的ではありますが異常な性質は持っておらず、この段階で自ら施設を退出することもできます。施設を利用しないと伝えた場合、職員たちは残念そうな様子を見せますが、またいつでも来訪して欲しいと口にし、トレーナーを丁重に送り出します。施設を利用することなくそのまま退出した場合、後述する転移現象は発生せず、トレーナーは元々いた場所へ通常どおり戻ることになります。

職員たちの勧誘を受けて施設を利用することを決めたトレーナーは、ほぼ全員が施設に高い満足度を示します。食事は安価で味がよく、休憩スペースはとても広く取られており、出現した地域に矛盾無く対応した土産物や特産品を、通常の店舗よりもはるかに安価で購入することができます。これまでのところ、ここで供される食事や販売されている品物については、異常性は無いと考えられています。ただし、これらをどのようにして入荷しているのかは不明です。

施設には全域に無線ネットワークが整備されており、無料で利用することができます。回線品質は高く良好な通信が行えますが、この時利用者が外部に対して発信したすべての情報は記録されません。利用者が能動的に行った掲示板やソーシャルネットワークへの投稿が実際には反映されないばかりか、サーバへのアクセス記録さえもまったく残りません。利用者のWebブラウザ等には閲覧履歴が残りますが、サーバが保管しているログとの照合結果は100%一致しません。

通常の「道の駅」とは異なり、この施設にはカプセルホテルのような小規模な宿泊施設も備えられています。トレーナーはこれも安価で利用することができ、また他のサービス同様高く評価します。宿泊すると翌日の朝食が無償で供され、さらに施設によっては出発前に昼食を用意して利用者に持参させるところも見受けられます。これらについても、一貫して異常性は見受けられません。

施設の利用が済んでトレーナーが退出するタイミングになると、施設の職員たちが数名見送りに訪れます。彼らはまた施設を利用してほしいこと、何か足りないことがあるなら次回までに改善しておくということ、そして、これは後述する転移現象と関連があると思われますが、トレーナーに対して「里帰り」をするよう積極的に促します。両親を含む家族に顔を見せた方がいいこと、旅の途中で不幸に見舞われたら家族が悲しむことなどを伝え、里帰りをするよう穏やかに、しかし繰り返し利用者に伝えます。

見送りを受けたトレーナーが施設から退出すると、自分が元々入ってきた道ではなく、まったく別の道に転移していることに気付きます。これまで確認されたすべてのケースで、トレーナーたちは彼ら自身が「故郷」だと考えている場所につながる道へ出現していました。多くの場合トレーナーはこの時施設で言われた「里帰り」という言葉を思い出して自宅へ帰りたいという考えを強くし、施設で購入した土産物を持ってそのまま帰宅します。トレーナーの帰郷をもって、一連の事象は終了するものと考えられています。

トレーナーへの聞き取り調査では、彼らについて明確な異常は見つかりませんでしたが、注目すべき事象が一件観測されています。相当数のトレーナーがそのまま旅行を中断して学業へ戻ったり、あるいは就職のための準備を始めたりするなどして、地元に生活基盤を築こうとします。その試みは例外なく成功し、以後彼らが再び旅行へ出ることはなくなります。また、彼らはその後極端に大きな成功を収めた例こそありませんが、地元で堅実な仕事に着き、安定した家庭を持つというライフスタイルを獲得することが知られています。

当局が実施したヒアリングでは、幾人かの元トレーナーから「『里帰り』と聞いて急に地元へ戻りたくなった、地元で暮らしたくなった」という回答が得られています。管理局の心理分析官によれば、これは施設とその職員が齎した直接的な情報災害ではなく、彼らが自らそう考えるに至った自然な心の動きであると分析されています。ただし、施設での出来事がそのためのトリガーになった可能性は高いとしています。

利用の有無に関わらず、一度施設から退出した場合、その時点では再度施設へ戻ることはできません。道を戻っても施設は完全に消失しており、痕跡すら残りません。ただしある程度の期間を置くと再出現し、前回と同様に進入することが可能になります。消滅と再出現に関する詳細な条件は明らかになっていません。

職員についての情報は不足しており調査が難航していますが、ヒアリングを繰り返す中で複数名のトレーナーから、1993年に死亡したある女性と判断できる情報が寄せられました。女性はかつて配偶者と子供がいましたが、いずれもポケモントレーナーとしての旅行中に自己で死亡しています。施設で確認された対象は調理師として勤務しており、気立てが優しくおおらかな性格をしていたとの証言を得ています。また、トレーナーの去り際に「里帰り」を勧める職員として比較的高い頻度で現れているようです。

上記以外にも、既に死亡が確認されている者や行方不明者として届け出られている者が数十名近く、この施設で働いているところを確認されています。対象は人間に止まらず、携帯獣にも及んでいます。得られた証跡がごく少数のため参考情報に止まりますが、対象の近親者が旅行中に亡くなっている、もしくは対象の近親者が地元以外の場所で死亡しているケースが多数見つかっています。対象が本人なのか、それとも本人を模した別の存在なのかは分かっていません。


[2006-08-21 Update]
2006年に入って、転移現象についての通報が昨年を上回るペースで寄せられています。局員の一人がこれまで集められた証言を元に未登録の「道の駅」の出現ポイントをプロットしたところ、2004年時点で作成された出現地点一覧よりも大きく出現ポイントの間隔が狭まっていることが分かりました。案件#95092で取り扱う施設は、これまで相応の異常性こそあれど危険性は低い案件だと考えられていましたが、ある局員はこの施設が齎す懸念について指摘しました。

局員による指摘の概要は「施設がより多く出現することで、トレーナーが旅行を中止して帰郷し、結果として旅行を完遂するトレーナーが減少するのではないか」というものです。統計情報を確認したところ、ここ数年でポケモントレーナーの母数自体は一貫して増加しているにもかかわらず、ポケモンリーグ認定ジムのバッジをすべて集めたトレーナーの数が統計的に不自然なレベルで減少していることが分かりました。案件#95092で扱う施設の出現がさらに増加すれば、この影響はより大きくなるものと推定されます。

案件#95092で扱う施設、及びそこに勤務する職員がいかなる意図を持った存在なのかについては、現在も判断が分かれています。しかしながら、現状を放置しつづけた場合、最終的にポケモントレーナーが他の地域へ移動する事自体が困難になると予測されています。それに付随する事象についても多数の意見がありますが、いずれも地域及び国家に対して深刻な影響を齎すものであることは一致しています。一例としては、地域の孤立・ポケモントレーナー志望者の減少・観光資源への依存度が高い地域の衰退・野生の携帯獣の過剰増加等です。

対処の困難さと社会全体に与える影響の大きさを鑑み、案件担当者は案件#95092のレベルを3段階引き上げ「4」とすることを提起し、裁定委員会もそれを承認しました。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1248] #136823 「ルチアのブルーリボン現象」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/13(Mon) 20:13:19   42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#136823

Subject Name:
ルチアのブルーリボン現象

Registration Date:
2013-05-11

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
2013年10月時点で、事象#136823-1の中心になった製品と製品の由来となった個人そのものには異常性が無いと判明したため、現在は事象#136823がどのようにして発生するかを突き止めることが案件対応の主軸となっています。これまでに回収された製品のサンプルは、ホウエン地方サイユウシティ第一支局の第二低異常性取得物保管庫のブロック2-Fに保管しています。案件担当者はレベル3以上のセキュリティクリアランスを持つ拠点監督者に承認を得ることで、製品を持ち出すことが可能です。

現段階においては、匿名掲示板やソーシャルネットワークサービスへの投稿を逐次監視し、事象#136823が発生しているかを情況証拠から判断することが可能です。しかしながらこれまでのところ、事象#136823を事前に観測するための方法は見つかっていません。事象#136823は人為的に起こされている可能性もありますが、明確に断定できるだけの証跡は未だ得られていない状態です。案件担当者は事象#136823が激化することによる人的・物的被害を未然に防止する活動を展開すると共に、事象#136823の起源となった疑いのある存在の捜索を継続してください。

事象#136823の収束後の動きに注意を払ってください。事象#136823が終了するまでに製品を処分しきれなかった個人または団体の中に、事象#136823と何らかの関わりを持つ者が含まれている可能性があります。必要に応じて捜査機関と連携し、事象#136823との関連を追及してください。


Subject Details:
案件#136823は、未知の原理によって前触れ無く引き起こされる極端な購買活動を喚起する事象(事象#136823)と、それに掛かる一連の案件です。

当局が初めて事象#136823を観測したのは、2012年の末頃から2013年初頭に掛けてです。ホウエン地方各地で定期的に催されている競技会「ポケモンコンテストライブ!」にて高い人気を誇るコーディネーターの一人「ルチア」氏が当時着用していた、競技会向け衣装を構成するコンポーネントの一つである「ブルーリボン」のレプリカを、ルチア氏と契約を結んでいる企業の一つがファン向けのグッズ「ルチアのブルーリボン」として販売したことが事象の発端となりました。

当初はルチア氏の熱烈なファンが購入する程度で、一般的なファンアイテムの域を出ませんでした。しかしながら日を追うに連れて徐々にリボンに関する話が広まり、4日後にはミニブログサービス「Twitter」で関連するツイートが20万件を突破、発売から一週間後には販売元から累計販売数が100万本を突破したことが報じられました。最終累計販売数は約341万本で、この種のファンアイテムとしては異例の売上を達成したことで話題となっています。

リボンは「手首に結びつける」というありふれた着用方法でしたが、長さを多く取ることで余裕を作り、その上で「同じリボンを結べば端同士で結び合うことができる。つまり、ルチア氏と結びつきが得られる」と宣伝されていました。一般的にはこのことが人気を喚起したと分析されていますが、過去にも類似した方向性を持つファンアイテムは多数販売されており、「ルチアのブルーリボン」のみが爆発的な需要を得たことの根拠としては脆弱なものです。当局は何らかの異常な事象によってリボンの需要が引き起こされたものと判断し、案件の立ち上げを決定しました。購買活動の活発化を齎した事象は、事象#136823という名称が付与されました。

案件立ち上げ直後は、製品である「ルチアのブルーリボン」そのものに異常性があるとの見方が示されていました。しかしながら、回収した300本以上のサンプルすべてについて一切の異常が見出されなかったため、製品自体に特異な性質は無いとの結論に達しました。さらに、製品の販売元やルチア氏本人に対してもヒアリングを実施しましたが、いずれも異常性はありませんでした。「ルチアのブルーリボン」の驚異的な売上は関係者にとっても完全に想定の範囲外で、対象の一人からは「どれだけ多くとも10万本前後の売上と予想していた」との証言が得られました。その後の調査によっても、製造元の事象への関与は認められませんでした。

その後2014年初頭にルチア氏が競技用衣装をリニューアルし、該当するリボンは衣装から取り除かれました。それまでには「ルチアのブルーリボン」の人気も完全に収束しており、大きな混乱は見られませんでした。さらにほとんどのファンはこの件についてまったく話題にもせず、ごく一部でリボンがかつて爆発的に売れたことが懐古的に言及された程度に留まりました。

この「ルチアのブルーリボン」については、後に別の業界関係者がいわゆるステルスマーケティングを仕掛けたことが明らかになりました。これにより、事象#136823は単に人為的に作られた需要である可能性が一時的に浮上しましたが、追加の調査で実際の宣伝効果はほぼ無視できるレベルに過ぎなかったことが判明しました。一般的な広告活動のみで、1,000円の値が付いたごくありふれたリボンが300万本を超える売り上げを達成するとは到底考えられず、原因は不明ですが何らかの異常現象が発生していた、あるいは関与していた可能性が濃厚です。


[2015-04-06 Update]
局員からの報告により、事象#136823とほぼ同様の事象が発生している可能性が提起されました。案件担当者の確認により、報告通り類似の事象が発生しているとの結論に至りました。

これに伴い、かつて「事象#136823」と呼ばれていた事象は「事象#136823-1」と改名され、2015-04-05に発生が確認された事象は「事象#136823-2」と命名されました。旧名である「事象#136823」は、案件#136823で扱う異常な事象全般を指す名称に位置付けが変更されます。事象#136823-2の起源についての調査が行われています。

案件担当者から、過去に事象#136823と思われる現象が発生していないかについて、追加の調査を行う提案が出されました。提案は現在裁定委員会による承認を待っている状態です。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1249] #97520 「ボナンザ・ビンゴ・カード」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/14(Tue) 21:41:43   43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#97520

Subject Name:
ボナンザ・ビンゴ・カード

Registration Date:
2000-11-26

Precaution Level:
Level 3


Handling Instructions:
不審な画像が添付されたHTMLメールを受信したという報告があった場合、該当するメールのコピーを取得した上で、オリジナルは削除するよう指示してください。メールそのものは通常の処理で安全に削除が可能です。取得したメールのコピーは標準的な暗号化を施した上で、案件別サーバに保管します。

案件の性質を鑑み、本案件の担当者にはトレーナーライセンスを所持していない局員が選出される特別条項が制定されました。案件担当者がやむを得ずトレーナーライセンスを取得する必要が生じた場合、速やかに後任の担当者への引き継ぎを実施してください。引き継ぎが完了してセキュリティクリアランスが完全に剥奪されるまで、以前の案件担当者は決して携帯獣を捕獲してはいけません。

メールの送信元である「ボナンザ・アライアンス」にコンタクトを取る試みを続けてください。これまでに得られた送信元の情報に付いては、案件別サーバのサブディレクトリに格納しています。案件担当者及び案件担当者の裁量でアクセス権が付与された局員は、すべての情報を自由に参照することができます。


Subject Details:
案件#97520は、ある一定の条件を満たした対象へ無差別に送信される不審なメールと、それに掛かる一連の案件です。

メールは直近一年以内に一体以上野生の携帯獣を捕獲した実績のあるポケモントレーナーを対象にし、彼らが通常使用しているメールアドレスへ向けて送信されます。送信されるメールは常にHTMLメールであり、以下のような文面とともに、必ず「ビンゴカード」のJPEG形式画像が添付されています。


 ビッグバン・ビンゴ・ボナンザ!
 ナンバーを揃えて穴を開ければ、ステキなボーナスをプレゼント!
 ルールはカンタン!ナンバーと同じポケモンちゃんをゲットしてくるだけ!
 さあキミも、レッツ・ボナンザ!

 [5 x 5のビンゴカードの画像]

 ※このメールは将来有望なトレーナーの皆様へ向けて、ボナンザ・アライアンスが特別にお送りするものです。


添付されている「ビンゴカード」の画像そのものは、特異な性質が見られない正常なJPEG形式の画像です。ビンゴカードは中央に初めから穴が開いているタイプのもののみが確認されています。メールに記載されているヘッダには矛盾した所の無い送信者情報が記載されていますが、送信者へのコンタクトにはこれまでのところ一度も成功していません。メールへの返信は行えますが、さらなる返信が行われることはありません。

受信したトレーナーがメールに記載された指示に従って「ビンゴカード」に記載された番号に対応する全国図鑑番号の携帯獣(例:カードに書かれた番号が「16」の場合、全国図鑑番号No.016の「ポッポ」が対応します)の捕獲に成功すると、翌日にまったく同じ文面で、対応する番号が空欄になった状態の「ビンゴカード」が添付されたメールが届きます。「ビンゴカード」に同一の番号が複数あった場合、対応するすべての番号が空欄になります。前日に別々の番号に対応する携帯獣を二体以上捕獲していた場合、捕獲に成功した分の番号がすべて空欄になります。

これを繰り返し、縦・横・斜めのいずれかで空欄の列を作る、すなわちビンゴを達成すると、以下のようなメールが届けられます。


 ビッグバン・ビンゴ・ボナンザ!
 おめでとう!ビンゴ達成だ!クール!ワンダフル!
 キミの所へステキな賞品が届くぞ!ワクワクして待っていてくれ!
 おっと、ビンゴ・ゲームはまだまだ続くぞ!別のビンゴを狙うんだ!
 さあキミも、レッツ・ボナンザ!

 [5 x 5のビンゴカードの画像]

 ※このメールは将来有望なトレーナーの皆様へ向けて、ボナンザ・アライアンスが特別にお送りするものです。


メールを受信した翌日の十六時ごろ、メールの送信元と同じ「ボナンザ・アライアンス」の名義で、トレーナー宛に「賞品」が届けられます。賞品はランダムで一貫していませんが、総じてトレーナーが「その時欲しいと思っていたもの・必要としていたもの」が選ばれているようです。一例としては、現金一万円・ハイパーボール10個セット・一ヶ月分の携帯食料・携帯型音楽プレイヤー・数冊の書籍・旅行のペアチケットなどです。

一定期間内にビンゴが達成できなかった場合、「ビンゴカード」が新しいものに差し替えられ、それまでの成績は一旦リセットされます。新しいカードの受信後は、既に捕獲している携帯獣の番号が新しい方のカードに存在していたとしてもも、改めて捕獲しなければ穴は開きません。カードが切り替わる正確なタイミングは不明ですが、これまでの統計では概ね三カ月程度で入れ替えが発生しています。

送付される「賞品」は概ね特筆すべき点のないありきたりなものですが、一部に注目すべきものも含まれています。これまで製作された記録のない技能が記録された携帯獣向け汎用的技能習得装置(一般に「技マシン」と呼称されているデバイス)や、著名なアーティストのこれまでにリリースされた記録のないベストアルバム、未知の地域の詳細な情報が含まれた地図などが「賞品」として届けられた事例があります。これらは個別の品物単体として見れば異常性は無いものばかりですが、送付元である「ボナンザ・アライアンス」がどのようにして入手、あるいは製作しているのかは不明です。

これまでのところ、メールの受信・保存/遮断・破棄、ビンゴゲームへの参加/不参加、ビンゴの達成/不達成、賞品を受け取る/受け取らないのいずれにもよらず、関係した者が何らかの被害や影響を受けた記録はありません。しかしながら、主催者である「ボナンザ・アライアンス」がどのようにして受信者の個人情報を得ているのかが不明であり、意図せぬ形での情報漏洩が発生する可能性があることから、当局では非常勤の局員も含めた全局員に対し、メールの破棄とビンゴゲームへの不参加を徹底するよう通達を出しました。案件担当者にはより一段のセキュリティ遵守が求められるため、ビンゴゲームに参加する資格を持たないと推測される、トレーナーライセンスの未所持者のみが選ばれる特別条項が制定されました。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1250] #111900 「留守番をしていた貴方へ」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/15(Wed) 20:03:07   47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#111900

Subject Name:
留守番をしていた貴方へ

Registration Date:
2005-06-17

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
対象は現在までのところ、アナログ/紙媒体の広告にのみ出現しています。各地の支局に在籍している副担当者は、新聞の折り込み広告やポストに投函されるフライヤーを日々確認してください。不審な勧誘の広告を発見した副担当者は速やかに案件担当者へ連絡を取り、広告の実物を郵送してください。案件の主担当者及び副担当者として選ばれるのは、かつて少なくとも半年以上ポケモントレーナーとして各地を旅行した経験のある局員に限定されます。

成人しており、かつレポート提出履歴が一年に満たないポケモントレーナーについて、各地のポケモンセンターから月次で統計情報が送付されます。副担当者は主担当者の主導の下、対象となるトレーナーへの接触を試みてください。トレーナーへの接触に成功した場合、彼らが旅行を始めた動機について、同意を得た上で確認を取ってください。ヒアリングを実施する局員には、本案件の主担当者及び副担当者と同様の要件が求められます。要件を満たさない局員は決してヒアリングに参加してはいけません。

旅行を始めたポケモントレーナーをかつて所属していたコミュニティへ戻すための方法はまだ見つかっていません。対象には家族や友人に定期的に連絡を取り、また目的を終えれば速やかに元の場所へ戻るよう繰り返し伝えていますが、どの程度の効果があるのかは未だ検証待ちの段階です。


Subject Details:
案件#111900は、ある特定の条件を満たす人間に対して強い暗示の効果を持った不審な広告と、それに掛かる一連の案件です。

事象が観測され始めたのは2004年中旬頃からで、各地の警察機関に「配偶者や親類、友人が突然姿を消した」という形で顕在化しました。初期は一般的な失踪事件または誘拐事件と考えられ、警察当局が通常の捜査を展開していましたが、その過程で異常性のあるオブジェクトが事件に関与していることが判明し、当局への引き渡しが行われました。当局では対象を案件#111900と定義し、改めて調査を実施しました。

この事象のトリガーになるのは、新聞の折り込み広告やポストへ投函されるフライヤーという形で配布される「留守番をしていた貴方へ」という出所不明の広告です。広告は一般的な方法によって制作及び印刷されたもので、紙質や印刷品質は通常の広告と何ら変わりありません。特定の条件を満たさない者は、広告を視認しても一切の影響が現れません。広告は通常、以下のようなキャッチコピーを伴っています:


 留守番をしていた貴方へ!
 安定した家庭、安定した仕事、安定した人生……貴方の人生は「安定」に縛られていませんか?
 貴方の心は、家で留守番をしていたあの時のままではありませんか?
 他のみんなみたいに外の世界を見てみたかった――その思いを眠らせていませんか?

 大丈夫!私たちにお任せください!
 もう貴方は「安定」に縛られなくていいんです!今すぐ憧れのポケモントレーナーになりましょう!
 私たちが、貴方の心のトビラを開けるお手伝いをいたします。
 心躍る冒険の旅へ、ご連絡は今すぐ 0210-XXX-XXXX まで!


広告の制作元・制作者は表記されておらず、どのような個人あるいは団体が広告を制作しているのかは不明です。広告には連絡先として、配布の都度変更されるフリーダイヤルの番号が記載されています。当局の案件担当者による連絡の試みは、これまでのところすべての番号で未使用状態である旨のメッセージが流れるのみで、失敗に終わっています。

上記サンプルの文面より、この広告が想定している顧客のターゲットは「かつてトレーナーになりたいという考えを持っていたが、何らかの理由、特に経済的な理由や両親の教育方針により断念せざるを得なかった成人」と推定されます。これは、広告を視認したことにより起きる事象の発生条件とも完全に合致します。現時点では、広告がターゲットとしている顧客の条件がそのまま事象の発生条件であるとほぼ確定しています。

条件を満たした個人が広告を視認すると、個人がそれまでにどのような社会的地位、あるいは金銭的な財産を得ているかに関わらず、それらを投げ打ってでも「ポケモントレーナーになりたい」という強烈な欲求を抱くことになります(事象#111900)。対象はほぼ間を置かずに広告に記載されている電話番号へ連絡を入れ、そのまま行方を眩ませます。この段階で、対象は失踪者とみなされます(失踪者#111900)。失踪者#111900が再度発見されるまでの期間は多少の幅がありますが、概ね三週間から四週間後になります。

発見された失踪者#111900は健康状態こそ良好で、これまでの記憶も保持していますが、ヒアリングの際は必ず「ポケモントレーナーとして旅行を満喫している」といったニュアンスの回答に終始します。失踪者#111900を従来の生活へ戻す試みは、失踪者#111900がそれに一切の興味を示さないという結果に終わり、すべての事案で失敗しています。

以下は当局が失踪者#111900-653と認定したトレーナーに実施したヒアリングを、担当者の許可を得て一部をテキストに書き起こしたものです:


---------- 記録開始 ----------

局員A:
恐れ入りますが、[失踪者#111900-653の本名]さんには6歳の息子さんがいると伺っています。

失踪者#111900-653:
ええ。それは知ってるわ。今は母が面倒を見てくれているはずよ。

局員B:
当人が貴女に面会したいと言っています。一度ご自宅へ戻られてはいかがでしょうか?

失踪者#111900-653:
それもいいかも知れないわ。でも……やっぱり冒険の方が大事よ。新しい場所と出会いが私を待ってるの。外の世界がこんなに素敵だなんて思わなかった。

局員B:
ですが……質問を変えましょう。貴女が旅行を始めた経緯を教えてください。

失踪者#111900-653:
チラシを見たの。「留守番をしていた貴方へ」って題名の。それを見てすぐにピンと来たわ、これは私のことだって。

局員A:
[失踪者#111900-653の本名]さんは、どうしてそのようにお思いに?

失踪者#111900-653:
私が子供の頃だったわ。父と母は私にちゃんとした仕事に就いてほしいって、そんなことばかり言って。家と学校と学習塾をただただ往復する毎日だったの。とても狭い世界で生きていたわ。

局員A:
ご両親は、貴女にトレーナーにはなって欲しくなかったということでしょうか。

失踪者#111900-653:
そうね。どっちも親がトレーナーで苦労したって言ってたから、私には同じ轍を踏んでほしくなかったに違いないわ。

局員B:
トレーナーとして成功できなかった方が、成人されて生活に苦労する事例は多数あります。恐らくご両親もそのような経験をされたのでしょう。

失踪者#111900-653:
そうかもね。でもだからって、私の人生を縛る権利なんてどこにも無い、そうでしょう?

局員B:
貴女の仰りたいことは理解できます。しかしながら――

失踪者#111900-653:
私は私の思うように生きたいだけ。みんながポケモンを追いかけて洞窟を探検している間に、真っ白なノートを相手に留守番をしてるのは、もう耐えられないの。

局員A:
[失踪者#111900-653の本名]さんは、それでトレーナーになりたいと?

失踪者#111900-653:
ええ、間違いないわ。

局員A及び局員B:
(沈黙)

失踪者#111900-653:
オタチは身を守ることの大切さを教えてくれた。マグマッグは火の有難さと怖さを教えてくれた。ソーナンスはやられたらやり返さなきゃいけないことを教えてくれた。レディバは仲間を作ることの意味を教えてくれた。ポケモンが教えてくれたものは数えきれないほどあるわ。

局員A及び局員B:
(沈黙)

失踪者#111900-653:
塾のテキストは、何も教えてはくれなかったわ。

---------- 記録終了 ----------


当局では、失踪者#111900を元の生活に復帰させるための試みを現在も続けています。


[2015-02-16 Update]
案件対応に際して、対象の誤認は避けなければならないことは周知の事実です。しかしながら、本案件はその性質上、対応がかなり難しいこともまた承知しています。以下は先日、イッシュ地方ライモンシティ第三支局で発生した誤認事案です。参考資料として、案件に携わる局員に展開します。

直近の統計情報の中に、案件報告書に記載された条件を満たすイッシュ地方ライモンシティを訪れた直後の女性トレーナーがいることが分かりました。対象の女性はこれまでに失踪者として登録されていないトレーナーであり、新たな失踪者である可能性があったため、局員がヒアリングに乗り出しました。

対象の女性は、バオップから進化を遂げた直後のバオッキーのみを連れていました。携帯獣を一体のみ、或いは少数しか同行させないのは、事象#111900が発生した対象の顕著な特徴の一つです。そのため当初局員は女性を失踪者であると判断していましたが、後に女性は家族(男児一名/ウィンディと同行、女児一名/アチャモと同行)と共にイッシュ地方各地を旅行中であったことが判明しました。局員は女性と家族に謝罪し、本件は誤認事案として記録されました。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1259] #125204 「不気味なフワンテガス」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/16(Thu) 19:52:34   61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#125204

Subject Name:
不気味なフワンテガス

Registration Date:
2009-10-04

Precaution Level:
Level 3


Handling Instructions:
各地域で開催されるイベントを監視し、不審な「風船売り」の屋台や露店、あるいは売り子が存在していないかを確認してください。それらが確認できた場合はイベントの監督者と連携して速やかに退去させ、販売物を撤去させてください。退去させた後は販売者に任意同行を求め、どのような経緯で「風船」を販売するようになったかを尋問してください。

市民から不審な風船、またはフワンテについての届出がなされることがあります。対象が活性化していなければ担当局員が風船を接収し、活性化していた場合は最寄りの拠点に駐在している対異常携帯獣捕獲チームと共に捕獲を試みてください。フワンテの性質はケース毎に大きく異なっているため、対応に当たる局員はレベル3対バイオハザード用スーツを着用することが義務付けられます。

接収した風船を使用して実験を行う際には、少なくとも3名以上のレベル4セキュリティクリアランスを持つ拠点監督者に承認を得た上で、例外なくレベル3対バイオハザード用スーツを着用して実施しなければなりません。実験の結果生成された異常なフワンテは特徴を記録した後、案件別サーバ4号機にへデータ化して隔離してください。案件別サーバ4号機はネットワークから完全に切り離された状態を保ちます。いかなる理由があろうと、管理局ネットワークへの参加は認められません。


Subject Details:
案件#125204は、一般的な風船を特異な性質を持つフワンテに変化させる未知のガス状物質(物質#125204)と、物質#125204によって生み出された異常なフワンテ(生体#125204)、及びそれらに掛かる一連の案件です。

異常なフワンテである生体#125204が確認された最古のケースは、1995年にジョウト地方キキョウシティで催された夏の祭事会場にて「びっくり風船」の名前で販売されていたというものです。目撃者の証言では、風船売りの屋台で膨らませた状態のフワンテが一体500円で販売されており、数名がそれを購入したとのことでした。事案を確認した局員により購入者の捜索が行われましたが、最終的に誰一人として発見することができませんでした。当時この事案は案件ではなく、異常事案の一つとして管理されていました。

案件化が検討されるようになったのは、2009年4月末頃のことです。過去に発生した案件化されていない異常事案を棚卸していた際に、祭事会場に出現する「風船売り」に関する事案が各地で散発的に発生していたことが判明しました。当時の担当者を召集してヒアリングとミーティングを実施し、それらは同一の事案であることが確かめられました。この段階で、当局は事案を統合して案件化することを決定しました。

これまでの事案記録から抜粋されたフワンテの出現イベントは、下記の通りです:


事案#125204-03:
2000年6月1日、ジョウト地方コガネシティの商業施設である「コガネデパート」屋上にて発生した事案。ピクシーの着ぐるみを着用した未知の人物が、フワンテ化させた風船を家族連れに向けて配布していた。ピクシーの近くに置かれたカセットデッキからは「ふしぎな風船をプレゼント!」といった宣伝文句が繰り返し流されていた。デパート職員から通報を受けた当局の機動部隊ベータ-オブシディアンが屋上を制圧、フワンテ化した風船は配布されたものも含めすべて接収したが、ピクシーの着ぐるみを着用していた未知の人物は消失していた。

事案#125204-09:
2004年10月12日、カントー地方クチバシティに近年建設された商業施設「ららぽーとクチバ」の屋外ステージにて発生した事案。事前に予定されていなかった詳細不明のコンサートライブが無許可で実施され、施設職員が制止に当たるという事件が発生した。当日非番で施設を訪れていた警察官が異常なフワンテを配布しようとしている不審な人物を目撃し、クチバシティ第四支局へ緊急通報がなされる。クチバシティ第四支局から局員が急行すると共に第三支局へ応援要請が行われ、機動部隊ベータ-ダイアモンドが出動。施設職員と連携し、市民の避難誘導と対象の鎮圧に乗り出した。コンサートを敢行した対象は全員拿捕されたが、いずれも極度の譫妄状態で一切の対話ができず、最終的に全員が四時間以内に自然死した。フワンテを配布しようとしていた人物は発見されなかった。


上記を含むいくつかの事案では、風船を膨らませる際に使用していた物質#125204を接収することに成功しました。当局では複数の安全のための施策を執り行った上で、実際に風船をフワンテとして活性化させる実験を行いました。風船はいずれも市販されている異常性の無いものを使用しています。以下はその結果の抜粋です:


[生体#125204-01]
ケース内容:
1997年7月、カントー地方シオンタウンにて祭事中に接収された物質#125204を用いて活性化。

活性化結果:
正常な個体のおよそ0.8倍のサイズを持つ異常個体が活性化。空中でしばらく静止していたが、活性化から77分7秒後、一切の前触れなく破裂して消滅。破裂時に携帯獣の技能の一つである「ねこにこばん」で使用される擬似貨幣が大量に飛散した。局員による観察では、浮遊している最中にそれらの物体が生成されている様子は確認できなかった。貨幣は副産物#125204-01-01から164とネーミングの上保管。


[生体#125204-02]
ケース内容:
2006年9月、シンオウ地方クロガネシティにて、廃墟となった小屋から接収された物質#125204を用いて活性化。

活性化結果:
正常な個体とほぼ同一のサイズを持つ異常個体が活性化。活性化した直後、綿のような物体を紐の先端から大量に排出し、物体は最終的にピカチュウに酷似した形状になった。完成後に個体は浮上。その後2時間の静止を経て着陸し、未知の原理による消滅により非活性化。ピカチュウに酷似した物体はそのまま残された。物体を副産物#125204-02-01として保管。


[生体#125204-03]
ケース内容:
1998年3月、カントー地方マサラタウンにて、宛先不明により郵便局で保管されていた小包より接収した物質#125204を用いて活性化。

活性化結果:
正常な個体の1.4倍のサイズを持ち、目が単眼となった異常個体が活性化。対象は3時間に渡って実験チャンバー内を浮遊した後、排泄口から一本のVHSビデオテープを排出し非活性化。VHSビデオテープを再生したところ、生体#125204-03がチャンバー内を浮遊していた際に撮影したと思しき映像が記録されていたが、映像には実験に参加していなかった未知の人物が頻繁に映り込んでいた。念のため、実験を行った拠点のセキュリティ監査を実施。異常は検知されず。


[生体#125204-04]
ケース内容:
2000年11月、ジョウト地方アサギシティにて、祭事中に接収した物質#125204を用いて活性化。

活性化結果:
正常な個体の約1/2のサイズで、両面に顔を持つ特異個体が活性化。表面から年老いた男性の、裏面から小学校四年生程度の女児の声で、内容のまったく同じ支離滅裂な演説を行う。演説が32回に渡って繰り返された後、男性と女児がありふれたパブと思しき飲食店で飲酒しながら会話をしているようなやりとりを行い、最終的に二人が入水自殺したことを示唆するやりとりをした段階で非活性化。男性と女児の声は特に加工された形跡はなく、自然なものだった。


物質#125204が一般的な風船をどのようにして生体#125204に変化させているのかは未だ分かっていません。しかしながら一つ明らかになっていることとして、回収されたタイミングが同一の物質#125204はすべて同じフワンテを生成しています。そのため物質#125204には幾つかのバリエーション、またはバージョンが存在すると推定されます。これまでのところ、異なるタイミングで回収された物質#125204同士で同一の異常性を示すフワンテを生成するものは存在していません。

携帯獣図鑑は生成されたフワンテを例外なく「フワンテ」と認識し、当局が対有異常性携帯獣用に開発したモンスターボールであれば、対象を安全に捕獲することができます。ただし、デコードの際に一部の特異性が失われてしまうケースが数件確認されています。

いくつかの生体#125204は、生体#125204-03のようにそれ自体が異常なアイテムを生成する能力を持っています。これまでに起票された案件及び報告された事案の中に、生体#125204が関与しているケースが無いかの精査が進められています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1260] #140775 「ルナトーン/ソルロックの変異体」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/17(Fri) 22:14:39   53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#140775

Subject Name:
ルナトーン/ソルロックの変異体

Registration Date:
2014-08-18

Precaution Level:
Level 1


Handling Instructions:
フィールドワーク中に一般的でない形態のルナトーン(変異体#140775-01)またはソルロック(変異体#140775-02)を発見した、あるいは市民からそれらについての申し出があった場合、標準的な携帯獣の捕獲手順に従って対象を捕獲してください。捕獲には通常のモンスターボールが使用できます。捕獲した個体は手順F-140775に沿ってワークフローを回付し、ホウエン地方トクサネシティ第一支局まで移送してください。ホウエン地方トクサネシティ第一支局に勤務する局員は、各地の支局から移送された個体を支局内のリサーチセンターへ移動させてください。以後は、担当する局員がルナトーン及びソルロックの収容に当たります。

ホウエン地方トクサネシティ第一支局にて変異体#140775-01及び変異体#140775-02の収容を担当する局員は、通常のルナトーン及びソルロックと同様の手順で対象の収容に当たってください。現状ではそれ以上の対応は必要ありません。変異体#140775-01及び変異体#140775-02に何らかの変調や異常が確認できた場合は、直ちに拠点監督官へ報告してください。拠点監督官は変異体#140775-01及び変異体#140775-02に関して何らかの対応が必要だと判断した場合は、速やかに管理局中央統括部へ報告してください。

市民から変異体#140775-01及び変異体#140775-02について「見覚えがある」「どこかで見た」というような証言が得られた場合、正式なヒアリングの機会を設け、対象から詳細な説明を受けてください。説明を受ける際は許可を得て会話を録音し、録音した内容を文書に転記してください。作成された文書は、案件別サーバのヒアリング結果ディレクトリに格納します。担当者はテキストの書き起こしを確認し、継続的なヒアリングが必要かを判断してください。


Subject Details:
案件#140775は、共に通常とは異なる形状をしたルナトーン(変異体#140775-01)及びソルロック(変異体#140775-02)と、それに掛かる一連の案件です。

2014年初旬頃から、いくつかの地域で「機械的なパーツが取り付けられたような奇妙な形状をした、暗い灰色のルナトーン/ソルロックを見つけた」という通報がされるようになりました。局員が対象を収容して調査したところ、それらの変異体は外観こそ異なっていますが、通常のルナトーン及びソルロックと同様の性質を持っていることが分かりました。

変異体#140775-01及び変異体#140775-02はいずれも同じ色彩・形状をしており、目に当たる部分にのみ種族毎の差異が見られます。外観が通常の個体と大きく異なっていることを除けば、変異体#140775-01及び変異体#140775-02は異常性のないルナトーン及びソルロックとなんら違いはありません。習得する技能や身体能力についても、通常の個体と明確な差異は確認できません。

携帯獣に関係するデバイスは、変異体#140775-01及び変異体#140775-02を問題なくルナトーン及びソルロックと認識します。異常性の無いルナトーンの個体は変異体#140775-01を、ソルロックの個体は変異体#140775-02をそれぞれ同族と認識します。これらの事実から、変異体#140775-01及び変異体#140775-02は未知の理由によりフォルムチェンジを遂げたルナトーン及びソルロックと推定されます。

本校執筆時点において、変異体#140775-01及び変異体#140775-02がどのような原理で通常個体とは異なるフォルムを得たのかは分かっていません。関係する局員の間では、個体ごとに異なるフォルムを持つパッチール、複数のフォルムが確認されているアンノーン、電子機器を認識させることでフォルムを変化させるロトムのいずれかと同様の事象であるとの仮説が有力視されています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1261] #103925 「異常放送天体」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/17(Fri) 22:20:14   65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

この案件資料は、管理局が定める機密情報を含んでいます。参照するためには、例外なく6名以上のレベル6セキュリティクリアランスを持つ局員から承認を得なければなりません。閲覧に際しては、GPS機能付きの情報漏洩防止デバイスを装備しなければなりません。参照が承認され閲覧がスケジュールされた時点で、局員は管理局が定める情報漏洩防止プロトコルに同意したものと見なされます。閲覧が完了するまで、局員は一切の外出が禁じられます。

本資料を閲覧した局員が、退職・降格・解雇等によりセキュリティクリアランスが剥奪されることが決定した場合は、プロトコルUXに基づくレベル6記憶処理を併せて受けることになります。プロトコルUXに対して何らかの身体的アレルギー反応があると認められた局員には、本資料を閲覧する権限は付与されません。

以下は資料の本文です:



Subject ID:
#103925

Subject Name:
異常放送天体

Registration Date:
2002-12-07

Precaution Level:
Level 6


Handling Instructions:
これまでのところ、天体#103925を完全に収容または破壊するための方法は見つかっていません。現在の案件対応方針は、天体#103925の一般への暴露を避けることに焦点が置かれています。案件担当者は関連団体と連携し、天体#103925の完全な秘匿に努めてください。案件担当者には、必要な場合に当局が保有する機動部隊を自己の判断に基づいて出動させる権限が付与されます。


Subject Details:
案件#103925は、太陽と月の間に存在している未知の天体(天体#103925)と、それに掛かる一連の案件です。

対象は1999年末頃、異常な案件を調査している当局とは別の団体(以下団体A)からの情報提供と協力依頼により、その存在が明らかになりました。団体Aは当局で管理している一部の案件に関与している疑義が持たれていたため、当初提供された情報の信憑性が疑問視されていましたが、その後の当局独自の調査により、天体#103925が捏造や情報操作の類ではなく、かつ非常に特異な存在であることが明らかになりました。これにより、当局は天体#103925と関連する事象を案件として立ち上げ、団体Aと協同して対応することを決定しました。

天体#103925は月と太陽の間に存在していますが、通常の方法では視認することができません。団体Aが考案した方法(後に手順M-103925として整備)により、その存在を確認することができます。対象は月と同等かまたはそれより若干大きな天体と推測されていますが、具体的な規模に付いては現在も意見が分かれています。

この天体#103925は通常の天体ではなく、極めて高度な技術で人為的に建造された何らかの施設であると推測されています。これまで幾度と無く実施された大規模な調査においても、このような施設が建造されたことを示唆する証跡はまったく見つかっていません。現在、天体#103925は人間以外の知的生命体によって造られたものという仮説が最有力視されています。

本稿執筆時点までに4回、天体#103925から解読不能の電波が放送されていることが確認されています。この放送を妨害するための試みは、これまで使用したすべての電子機器が原因不明の故障・破損・ソフトウェアエラーの発生により本来の機能を発揮できず、完全に失敗しています。加えて当局と団体Aの共同調査により、放送とほぼ同時に何らかの世界的なイベントが発生していることが確認されました。


・放送#103925-01
1999年11月に観測された放送です。放送から一週間以内に、野生のものを含むすべてのレアコイルの個体に変化が確認されました。レアコイルはそれまで物理攻撃に対して明確な耐性を持っていませんでしたが、放送後は多数の物理攻撃に対して極端な耐性を示すようになりました。同時に、それまで保持していた平均的な耐火性能が失われていることが判明しました。

・放送#103925-02
2002年11月に観測された放送です。この放送の直後、それまで存在の痕跡すら見つかっていなかった「!」及び「?」のフォルムをしたアンノーンが各地域で大量に発見されました。いずれの個体も、フォルムを除いた従来の個体との差異は見つかっていません。当局の調査で、放送以前には存在していなかった「?」及び「!」のフォルムのアンノーンが古い資料に出現していることが確認されました。事前に取得された複製とは明らかな差異を示しています。

・放送#103925-03
2008年9月に観測された放送です。放送の翌日、それまで電化製品を制御する程度の能力しか持たないと考えられていた携帯獣であるロトムに、制御可能な電化製品と未知の原理で融合し、自身の能力を書き換えるという行動パターンが新たに観測されました。放送#103925-03以前にはこのような行動は一切確認されておらず、また発現の兆候も観測されていませんでした。

・放送#103925-04
2013年5月に観測された放送です。放送から3日後、イッシュ地方を中心に活動していた犯罪シンジケートにかつて在籍しており、身の危険を感じて当局への保護を求めてきた元構成員から、それまであらゆる手段を用いても復元・再生できなかった古生代の携帯獣「ゲノセクト」が前触れなしに再生したという情報が提供されました。当局は安全のため元構成員を別の地域へ移送するとともに、現在もヒアリングを重ねています。


いずれも放送とイベントにいかなる因果関係があるのかは不明ですが、すべてのイベントが放送から短期間の間に発生していること、そしてすべてのイベントが携帯獣に関するものであることに注意を払うべきです。このことから、天体#103925は未知の原理に基づく異常な放送により、地球に生息しているあらゆる携帯獣に何らかの重大な変化を及ぼす存在である可能性があります。加えて放送#103925-02の事象は、携帯獣に関連する資料にまで影響を与える可能性も示唆しています。

天体#103925の具体的な性質が掴めないこと、天体#103925からの放送が携帯獣にどのような影響を与えるかが未知数であること、そして放送を妨害する方法が確立されていないために、一般市民への情報の公開は予測不可能なレベルの混乱をもたらす虞があります。このことから当局では、レベル5以下の全局員に対し、天体#103925の存在を秘匿する方針を決定しました。


[2014-07-11 Update]
2014年初旬頃より、ルナトーン及びソルロックの変異体が発見されるという報告が相次ぎました。局員が捕獲した変異体のサンプルを確認したところ、すべての変異体が天体#103925をデフォルメしたフォルムになっていることが明らかになりました。直ちにすべてのレベル6局員が召集され、対応を協議しました。この協議の結果、案件#140775「ルナトーン/ソルロックの変異体」を起票することが提案・承認されました。これに基づきレベル5以下の全局員は、ルナトーン及びソルロックの変異体は単純にフォルムが異なる正常な携帯獣として取り扱うことになっています。

ルナトーン及びソルロックの一部個体が天体#103925の姿を模し始めた理由は明らかではありません。しかしながら興味深い学説として、ルナトーン及びソルロックが現在のフォルムに至るまでに、人類が天体――特に太陽と月をどのような形で認識していたかということを読み取り、その形状に自らを変異させたという説が提唱されています。この説はこれまでのところ明確な反証が無く、学会でも有力な仮説として扱われていることが分かっています。この仮説に基づくならば、本来秘匿されるべき天体#103925に関する情報が意図せぬ形で流出している可能性が生じます。

いかなる経緯で変異体#140775-01及び変異体#140775-02が出現したのかについて、現在も調査が進められています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1262] #92223 「せかいでもっともうつくしいもの」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/18(Sat) 21:37:51   52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#92223

Subject Name:
せかいでもっともうつくしいもの

Registration Date:
1999-03-24

Precaution Level:
Level 3


Handling Instructions:
オブジェクト#92223は移動させることが極端に困難か、または現実的ではないと判断されたため、オブジェクト#92223を囲む形で第24武装収容拠点が建設されました。オブジェクト#92223の性質上、いかなる理由があろうと武装収容拠点の敷地内に携帯獣を進入させてはなりません。武装収容拠点にあるオブジェクト#92223収容フロアでは、常にレベル4対バイオハザード用スーツの着用が義務付けられます。8時間の3交代体制で、常に4名の武装した局員が警備に当たります。オブジェクト#92223それ自体は収容開始から風化や劣化の兆候を一切見せていないため、これ以上の保全措置は必要ありません。

一般的な重機や火器を使用したオブジェクト#92223の破壊は不可能であるとの結論が出されています。案件担当者が破壊による案件終了提案を出す場合、過去に同一の、または類似した破壊メソッドが失敗に終わっていないことを事前に必ず確認してください。同一のメソッドによる案件終了提案は、メソッドを採用するに当たってより強い根拠が求められます。オブジェクト#92223の性質上、携帯獣を使用した破壊提案はいかなる形であっても通常認められません。


Subject Details:
案件#92223は、カントー地方タマムシシティ北部に存在する異常なオブジェクト(オブジェクト#92223)と、それに掛かる一連の案件です。

1998年10月24日14時過ぎから18時頃にかけて、カントー地方に位置する複数の主要都市(タマムシシティ/ヤマブキシティ/セキチクシティ)にて、ポケモンセンター/警察の緊急チャネル/管理局の窓口に「側にいたはずのポケモンがいなくなった」という市民からの通報が殺到するという事案が発生しました。当局は関係各局と連携して情報収集を行い、その過程で複数の携帯獣が本来のトレーナーの元を離れてタマムシシティ北部方面へ向かっていたことを突き止めました。何らかの異常事案の発生が憂慮されたため、最寄りの拠点であるタマムシシティ第十五支局から複数の局員、及び機動部隊デルタ-エメラルドが出動しました。

局員と機動部隊デルタ-エメラルドがタマムシシティ北部を捜索中、複数の携帯獣の骨格が融合した未知のオブジェクトを発見しました。局員は直ちに周辺一体を隔離、その過程で近隣に生息する野生のニャースがオブジェクトに接触した際に後述する異常な事象が発生したため、すべての局員と市民に対しオブジェクトの半径5m以内に近付くことを禁じる命令が出されました。その後オブジェクトの隔離作業が完了し、案件#92223が起票、オブジェクトに対しオブジェクト#92223という識別名が付与されました。

収容されたオブジェクト#92223は、確認した限りで221体186種の携帯獣と、1体の人間(14歳前後の女性と推測)の骨格が有機的に融合して一つになった由来不明の物体です。女性の骨格を中心として、彼女に寄り添うかのように大量の携帯獣の骨格が結合しています。オブジェクトを構成する骨格は外見上本来の生体由来のものとほぼ同一に見えますが、後述する性質から実際の材質は判明していません。骨格同士の結合はあたかもそれらが元々一つの生体であったかのように継ぎ目無く行われており、それぞれを分離させることは不可能です。

オブジェクト#92223の特異な性質は、接触した生体を瞬時に骨格化させ、自身に取り込むというものです。生体の骨格化は十秒以内に完了し、その間対象の生体は意識を喪失しているように見えます。一体化した骨格はオブジェクト#92223とまったく同じ性質を持ち、接触した生体を同じく骨格化させます。オブジェクト#92223はそれ自体が単一の骨格にしてオブジェクトであり、他の生体をオブジェクト#92223に変質させる性質があると結論付けることができます。

何らかの理由により、オブジェクト#92223は近隣の携帯獣に働きかけ、自身に接触するよう促すことができるようです。オブジェクト発見の契機となった通報は、この性質により携帯獣がオブジェクト#92223に引き寄せられたためと考えられています。この効果は遮蔽物を設けることでほぼ無効化することができると分かったため、第24武装収容拠点の周囲をコンクリートの壁で覆うという対策が取られました。対策は効果的に作用し、携帯獣を招き寄せる性質については現状完全に無力化されています。

これまでのところ、オブジェクト#92223は物理的な攻撃に対して極端に高い耐性を示しています。重火器や銃器を用いた破壊の試みは、一切のダメージを与えられず失敗するという結果に終わっています。爆発物を用いた破壊実験時に得られた証跡により、オブジェクト#92223は自身に与えられたエネルギーを吸収、または中和している可能性が浮上しました。このことは、オブジェクト#92223を物理的に損壊することが事実上不可能であることを示唆しています。

管理局では、オブジェクト#92223の中心に存在する女性の骨格は、かつてカントー地方ヤマブキシティ在住で現在行方不明となっている14歳の少女(失踪者#92223)であるとの見解を持っています。証跡の一つとして、失踪者#92223の部屋からオブジェクトの性質を示唆するような書き置きが見つかっています。以下はその写しです:


 せかいでもっともうつくしいもの それはみんながひとつになること
 せかいでもっともうつくしいもの それはだれにもきずつけられない
 
 ひとつになれば だれもあらそわなくていい
 ひとつになれば だれもきずつかなくていい

 だからわたしは ひとつになりたい
 だからわたしは ひとつになるんだ


失踪者#92223が如何にしてオブジェクト#92223を作り上げたか、あるいは自らをオブジェクト#92223に変貌させたかは不明です。失踪者#92223が書き置きのような考えに至った経緯も分かっていません。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1263] #124633 「ズバットの大量死」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/19(Sun) 18:29:33   48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#124633

Subject Name:
ズバットの大量死

Registration Date:
2009-06-30

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
事案#124633がズバットの生息域で発生していないかを当局で監視すると共に、市民やトレーナーからの申し出を確実に記録するようにしてください。前兆と判断できうる申し出、例えばズバットの個体数の顕著な現象などについても、できる限り詳細なヒアリングを行い、現状把握に努めてください。

ズバットの個体数を安定させるための試みが続けられています。当局で繁殖させたズバットは、成体になった段階で親個体の生息域へ戻してください。これまでのところ、当局の管理下で事案#124633が発生した記録はありません。しかしながら、当局が繁殖させたズバットが事案#124633によって死亡したケースは複数確認されています。個体数安定化を担当するチームからは、繁殖させたズバットにGPS機能付きの個体識別タグを装備させ、当局の手を離れた後の状況を観察する提案が出されています。

市民やトレーナーからヒアリングを行った結果、事案#124633に関与している疑いのある不審な人物(参考人#124633)が度々目撃されていることが分かっています。参考人#124633の捜索チームに割り当てられた人員は、ズバットの生息域近辺で発見した不審な人物に例外なくヒアリングを試みてください。参考人#124633であると判断した場合、手順M-124633に従って対象に任意同行を求め、最寄りの拠点でヒアリングを実施してください。


Subject Details:
案件#124633は、携帯獣である「ズバット」が不明な原因により大量に死亡する複数の事案(事案#124633)と、それに掛かる一連の案件です。

事案#124633が初めて報告されたのは、2007年7月下旬のことです。カントー地方ハナダシティ北西部に位置する山岳地帯の洞窟にて、付近を散策中のトレーナーから「ズバットが大量に死亡している」という通報がありました。局員が現場へ向かい確認したところ、ズバットの死体が大量に散乱している状態でした。何らかの感染症が発生している疑いが生じたため、駆けつけた局員の判断でその場を隔離、トレーナーを含む初期発見者全員が完全な検疫を受けました。検疫の結果、すべての対象者の健康状態に一切の問題が見られないことが分かったため、翌日全員が解放されました。

カントー地方ヤマブキシティにあるバイオリサーチセンターから収容チームが派遣され、死亡したズバットの全個体が収容されました。収容された個体は全132体で、いずれも一切の外傷が見られませんでした。死因の調査のため、サンプリングされた10個体が解剖されました。解剖の結果、死亡した個体はいずれも急性の心筋梗塞を起こしており、それが直接の死因となった可能性が高いとの判断が下されました。しかしながら、解剖された個体はいずれも良好な健康状態にあったことが示されており、心筋梗塞を誘発させる原因となるような要素は何一つ見つかりませんでした。

当初この事案は未解決事案とされ、半年ほど事案一覧上で管理される状態が続いていましたが、その後ジョウト地方ヒワダタウン南東部に存在する洞窟でもほぼ同一の事案が発生、同じく168体のズバットが極端に密集した状態で死亡しているのが発見されました。カントー地方と同様に隔離と検疫、事後調査が行われ、詳細不明の事案として記録されていました。半期ごとの案件棚卸に際して両者の類似性が指摘され、検討の結果単独案件として起票することが決定しました。

カントー地方の事案もジョウト地方の事案も、法医学的な死因は急性心筋梗塞との見解で一致を見ていますが、急性心筋梗塞を齎した要因については明らかになっていません。また、どちらの事案に関しても一度に100体を越えるズバットが大量死した理由は不明なままです。ズバットの健康状態には問題は見られなかったほか、すべての個体について外傷は一切発見されませんでした。

興味深い点として、事案が発生した近隣に生息しているズバットを除いた他の携帯獣については、個体数の顕著な減少や不審な大量死は確認されていません。この事から当局では、ズバットに対しての急性心筋梗塞を誘発する未知の要因が存在するか、悪意を持った未知の個人/団体がズバットを未知の方法で大量に殺害しているかのいずれかが事案#124633の原因との見方を示しています。


[2010-07-06 Update]
同様の事案が、ホウエン地方ムロタウン北部に存在する洞窟でも発生しました(事案#124633-27として記録)。この事案の通報に際して、ムロタウンのジムに所属する複数のトレーナーから「洞窟周辺でサングラスをかけた不審な人物を目撃した」との証言が寄せられました。人物が目撃された翌日に事案#124633-27が発生したため、何らかの関連性が指摘されています。同様の特徴を持つ人物が、事案#124633-6、事案#124633-11、事案#124633-12、事案#124633-19、事案#124633-22でも目撃されています。

これを以て当局では対象を参考人#124633と認定し、現在も行方を追っています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1264] #133637 「特筆性の無い人物」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/20(Mon) 20:34:50   56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#133637

Subject Name:
特筆性の無い人物

Registration Date:
2012-05-07

Precaution Level:
Level 1


Handling Instructions:
Wikipedia日本語版の標準名前空間に本案件で取り扱う異常なページが作成されていることを確認した、または記事作成の通報があった場合、速やかに記事を保全してください。保全の際は記事本文とノートのすべての履歴を確保すると共に、記事内でWikimedia Commonsにアップロードされた各種メディアファイル(写真/画像/音声/映像等)が使用されている場合はそれらも併せて確保しなければなりません。事象がフェーズ4に入ると数日以内にすべての履歴とメディアファイルが完全に消失するため、作業は速やかに行う必要があります。

記事の消失を妨害する試みは一定の効果があることが分かっています。案件担当者はリストL-133637に記載されたWikipedia日本語版の管理者またはビューロクラットにコンタクトを取り、削除依頼の審議ページ凍結と対象記事の全保護を依頼してください。過去の傾向からこれらの措置をとった場合も一週間以上の削除妨害は困難なため、いずれにせよ証跡は速やかに保全しなければなりません。保全が完了したあとは、消失フェーズの完遂により記事が削除されることを確認してください。記事の削除確認を持って、事案記録を終了します。

保全した履歴から投稿者及び削除審議参加者のIPアドレスを抽出し、所有者を記録してください。これまでのところ統計的に有意な結果は見られませんが、いくつかの記録は複数のIPアドレスを特定の個人が使い分けていることを示しています。データの解析を通じて何らかの知見が得られた場合、案件担当者へ報告することが奨励されています。


Subject Details:
案件#133637は、インターネット百科事典サイトの「Wikipedia」日本語版に投稿される不審な記事、及び記事の投稿と同時に発生する特定の事案と、それに掛かる一連の案件です。

2011年11月頃、Wikipedia日本語版の管理者の一人から「通常では起こり得ない動きをした記事が見つかった」との通報が寄せられました。局員が管理者とコンタクトを取り、該当する記事についての詳細をヒアリングしました。その後、別の管理者及び一部のベテラン利用者からも同様の通報がなされ、同サイトにおける事案発生が確定的との判断が下されました。これをもって当局は事案群を取りまとめ単一の案件として起票、担当者が割り当てられました。発生した一連の事象については、事象#133637と命名されました。

事象#133637は、ほとんど名前の知られていないポケモントレーナーに関する異様なまでに詳細な人物記事が、前触れ無くWikipedia日本語版に投稿されることで開始されます。投稿された記事はWikipedia日本語版における一般的なポケモントレーナーの記事のスタイル(詳細及び最新のスタイルについては、Wikipedia日本語版に存在するプロジェクトの一つである「プロジェクト: ポケモントレーナー」を参照してください)に完全に準拠しており、ベテランの利用者によって執筆が行われたことが伺われる体裁になっています。しかしながら、この時記事の投稿者は該当するトレーナーの記事作成以外の一切の編集履歴・活動履歴を持ちません。また、記事ごとにまったく異なる名義の未知のアカウントが出現します。

記事の内容は個人の略歴に始まり、携帯獣同士の戦いにおける戦績や旅行の経路について事細かに記述されます。記事は恐らく本人や非常に近しい人物しか知り得ないような個人的な内容にまで踏み込み、時としてプライバシーの侵害に当たるような内容(個人の嗜好・性癖・犯罪歴・病歴・血縁関係・人間関係・信仰する宗教・思想信条等)にも言及されます。いくつかのサンプルを調査した結果、これらはいずれも正確なものであるとの裏付けが取れています。記載内容には多数の出典が付与されますが、出典として用いられる資料はほとんどの場合実在しないものです。このような記事が作成された段階を、本稿では「フェーズ1」とします。

記事の作成から概ね72時間以内に、記事に対して削除依頼が提出されます。削除依頼は、Wikipedia日本語版で規定された通常の手順に形式的に沿う形で行われます。依頼に先立って記事の初稿執筆者のノートページに記事内容についての問い合わせと、削除依頼の提出予告が書き込まれます。作成後に更新が行われた場合、更新者のノートページに対しても同様の書き込みが行われます。事前連絡を行ってから8時間以内に削除依頼が提出され、記事の削除審議が開始されます。削除依頼の準備が行われている段階を「フェーズ2」、実際に削除審議が開始された段階を「フェーズ3」とします。

削除依頼では、それまでの投稿履歴が無い未知の利用者が複数出現し、その全員が記事の削除に賛成票を投じます。利用者群の特徴的な動きとして、削除の根拠に挙げるのが常に「ケース E: 百科事典的でない記事」であることです。また、ケースEに該当していることを指摘すると共に、非常に高い頻度で「特筆性が無い」または「著名性が無い」との理由を掲示します。

これまでに確認された、対象記事の削除審議におけるコメントの一例は下記の通りです:


・特筆性無し。即時削除にも反対しません。速やかな削除を希望します
・特筆性の無い記事。今後の発展も見込めないですし、削除が妥当でしょう
・特筆性の無い一般人。Wikipediaは人物名鑑ではありません
・著名でない人物の記事。ポケモントレーナーなんて星の数ほどいます
・特筆性の無い一般人に関する記事。有名になってから出直してください
・著名とは到底言えないただのトレーナーの記事。速やかな削除を求めます
・特筆性の無い人物の記事。このレベルの人を記事にしていたらキリがありません
・削除が妥当。このトレーナーには特筆性がまったくありません
・削除に賛成します。特筆性の無い記事はWikipediaに相応しくありません
・ケースE。特筆性が無いことを確認。削除しても問題ないでしょう


記事には往々にして「ケース B: 法的問題がある場合」の一つである「ケース B-2:プライバシー問題に関して」による削除が行われるべき内容が含まれていますが、削除審議の場においてケースB-2の適用を求める意見は一切出されません。削除に賛成するアカウントは、常にケースEによる削除を希望します。これまで観測された事例で、ケースEまたは暗黙的にケースEと取れるもの以外の意見が出された例はまったく存在しません。

このような審議が概ね48時間ほど行われた後、管理者または削除者の権限を持つ未知の利用者が出現し、対象記事の削除と削除審議の凍結を行います。利用者はWikipedia日本語版のシステムによって管理者または削除者の権限が付与された履歴が無いにも関わらず、履歴を含めた記事の全内容を削除することが可能です。本来記録されるはずの削除ログは残らず、システム上からは削除の記録を追跡することができません。そして記事の削除から概ね168時間以内に、対象記事の削除審議ページと、一連の事象に関与したすべての未知の利用者の個人ページ及びノートページが一斉に消失します。記事が削除された段階を「フェーズ4」、最終的に証跡がすべて消失した段階を「フェーズ5」とします。フェーズ5に到達した時点で、事象#133637は終了するものと推測されています。

当局とWikipedia日本語版の管理者が連携し、事象#133637に対しシステムの機能を用いて幾度となく妨害を行ってきました。しかしながら、それらには事象の進行を遅らせる効果こそありましたが、最終的なフェーズ5への到達を防ぐことには寄与しませんでした。


・初稿執筆者への注意/警告
一貫して無視されます。利用者のノートページも、記事のノートページも同様の結果に終わります。未知のアカウントへのあらゆる対話は完全に無視されることが分かっています。

・対象記事の削除
正規の管理者が記事の即時削除を実行しましたが、原因不明のシステムエラー(対象となる記事は存在しない旨のメッセージが表示される)により完遂できませんでした。記事には正常にアクセスが可能なままです。

・対象記事の編集
編集内容が記事の体裁を損なうもので無ければ、初稿執筆者及びそれに類するアカウントは編集を受け入れます。破壊的な編集、特に大規模な削除を伴う編集が行われた場合は、初稿執筆者が記事をリバートします。

・対象記事の白紙化
記事の白紙化後、平均して5分以内に初稿執筆者及びそれに類するアカウントによってリバートされます。リバート時に記事の要約は付けられません。白紙化した版へのリバートは、元の版へのリバートを招くのみです。

・対象記事の全保護
保護から数時間後に管理者権限を持つ未知のアカウントが出現し、予告無しに保護が解除されます。保護を実行する度に、未知のアカウントが一定の時間を置いて保護を解除します。保護を繰り返すことにより、ある程度の期間保護の状態を保つことが可能です。しかしながら、フェーズ4に到達すると削除が優先されてしまい、保護に失敗します。

・初稿執筆者の投稿ブロック
投稿ブロック後に別のアカウントが出現し、以降の初稿執筆者の作業を代行します。このアカウントも既知のアカウントとは一致しません。以後、アカウントをブロックする毎に別の新たなアカウントが出現します。

・初稿執筆者の使用するプロバイダに対する広域ブロック(逆引きが可能な場合)
異なるアクセスポイントから接続する同種のアカウントが出現します。広域ブロックを実行する度にアクセスポイントが著しく変動します。

・削除依頼ページの編集/白紙化/保護
記事に対する各種処理と同様の結果になります。

・削除依頼者の投稿ブロック
初稿執筆者への投稿ブロックと同様、別のアカウントが出現して作業を代行します。

・正規の管理者による削除依頼の即時終了
ページの凍結が管理者権限を持つ未知のアカウントによって解除されると共に、正規の管理者へ短期ブロックが行われます。これは別の管理者の手で解除することが可能です。

・削除された記事の管理者権限による復帰
対象の記事をarchiveテーブルから探し出すことができず、復帰に失敗します。


これまで記事作成の対象となったポケモントレーナーは、一切の例外なく全員が行方不明者として届出がされている人物であることが分かっています。Wikipedia日本語版における事象#133637が対象トレーナーの失踪と何らかの関係があるのか、あるいは行方不明者に対してある種機械的に事象#133637が発生しているのかは分かっていません。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1265] #140867 「かつてデデンネだったライチュウ」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/21(Tue) 22:21:20   50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#140867

Subject Name:
かつてデデンネだったライチュウ

Registration Date:
2014-08-22

Precaution Level:
Level 1


Handling Instructions:
デデンネ及びライチュウの生息地として知られる地域に在籍している局員は、特異個体#140867と同種の事例が存在していないかを継続的に調査してください。ライチュウを帯同させているトレーナーを目撃した場合、適切な形で許可を得た上で、ライチュウがピカチュウから進化したか、あるいはライチュウの状態で捕獲したかを確認してください。いずれでもないとの回答が得られた場合、対象の個体の精密検査を実施してください。

野生の特異個体#140867を発見した、または特異個体#140867と推定される個体を発見した場合は、捕獲の上カントー地方トキワシティ第四支局へ移送してください。支局ではこれまでに十数体の特異個体#140867を収容・保護しています。特異個体#140867の収容担当者に割り当てられた局員は、異常性の無いライチュウと同様の手順で特異個体#140867の保護に当たってください。これまでのところ、特異個体#140867特有の措置は必要ないものと見られています。

特異個体#140867のような通常と異なる系譜を辿って進化を遂げた疑義のある携帯獣を発見した場合、別の案件としての起票を検討してください。現在までに確認された疑義のある携帯獣の一覧については、暫定としてこの案件の関連資料に位置付けられているリストL-140867-1を参照してください。


Subject Details:
案件#140867は、通常とは異なる進化の系譜を辿ったことが確認されているライチュウの特異個体(特異個体#140867)と、それに掛かる一連の案件です。一般的に知られている系譜であるピカチュウから進化した個体は、本案件の取扱対象外です。

特異個体#140867が初めて確認されたのは、2014年6月頃のことです。ポケモンセンターから当局へ「デデンネがライチュウに進化したのを見たとの申し出があった」という通報が寄せられ、対応した局員がポケモンセンターへ照会を行いました。ポケモンセンターの仲介を通じて申し出たトレーナーとの接触に成功し、ライチュウの実在が確かめられました。その後トレーナーからの申し出により、対象のライチュウは当局にて引き取ることが決定されました。

引き取ったライチュウの精密検査を実施したところ、通常の個体には見られないデータのパターンが確認されました。パターンは本来デデンネが持っているものと酷似しており、トレーナーから得られた「デデンネから進化したライチュウ」という証言と合致するものです。この結果に基づき標準的な耐性確認テストを実施したところ、事前に想定された通り、局員の使役するミニリュウの攻撃を一切受け付けませんでした。この事から、当該個体は標準的なデデンネと同等の属性耐性を持っていると結論付けられ、管理用として「特異個体#140867-1」という名称が与えられました。

各種モンスターボールや携帯獣図鑑などのデバイスは、対象の個体を一貫してライチュウとして認識します。ただし、携帯獣の持つ種族属性を分析・表示する機能を持つ機器の場合、通常表示されることが期待される「電気」に加え、デデンネの標準的な個体が持っている第二属性である「フェアリー」という分析結果が表示されます。これは先に挙げた耐性確認テストの結果とも矛盾無く一致するものです。

特異個体#140867-1は外見上一般的なライチュウと明確な区別が付かず、習得可能な技能も一般的な個体に準じます。生活様式や食性、性格に関しても、一般的なライチュウの範疇を出るものではありません。観察可能な数少ない差異として、通常の個体では学習できないとされている前歯を使った協力な打撃攻撃(ポケモンリーグ協会の公式資料では「いかりのまえば」(原文ママ)と呼称される技能)を習得しています。これはデデンネの一部個体に習得が確認されている技能です。

当局による特異個体#140867-1の収容後、デデンネまたはライチュウの生息域で同様の事例が相次いで報告され、これまでのところ通報があった全個体の収容に成功しています。収容された個体はいずれも通常個体と比較して外見的な相違は見受けられず、特異個体#140867-1と同様の属性及び一部習得技能の差異のみが確認できています。当局によるデデンネがライチュウへ進化を遂げる事象の観測そのものはできていませんが、報告の多さから遠からず観測事例を得られるという期待を持っています。


[2015-03-21 Update]
特異個体#140867と類似した事例が各地域から報告されています。報告されたすべての事案の一覧は、リストL-140867-1を参照してください。以下はリストL-140867-1の抜粋です。これらは将来的に事案と案件に分類されることになっているため、識別コードとして「U(unclassified)」を付与しています:

・事案#140867-U-3
野生のラブカスがママンボウに進化したという目撃情報。これまでにそのような進化の系譜は確認されていない。ママンボウの個体は速やかにその場を離れ、現在は行方不明。

・事案#140867-U-4
炎の石に偶発的に接触したニンフィアがブースターに進化したというトレーナーからの申出。ブースターからはニンフィア特有のデータパターンが検出された。現在も定期的なヒアリングを実施中。ブースターの健康状態は至って良好。

・事案#140867-U-6
♂のビークイン。個体そのものに明確な差異は見られないが、検証に使用したあらゆるデバイスが当該個体を「♂のビークイン」と判定する。通常、ビークインは♀のミツハニーからしか進化しないことで知られている。他とはやや毛色の異なる事案のため、別途案件として起票することが提案されている。

・事案#140867-U-9
トランセルからサナギを破って進化を遂げたところを目撃されたモルフォン。トレーナーにより捕獲されたのち、当局へ引き渡される。バタフリーとモルフォンの種族的近似から通常個体との明確な差異を見出せず調査が難航していたが、本来体内で生成されるモルフォン由来の毒性物質が生成されていないことが判明した。

・事案#140867-U-11
ニョロボンがニョロトノに進化したとのインターネット上の掲示板への書き込み。投稿者のIPアドレスが公衆回線のもの(ポケモンセンターに割り当てられたIPアドレス群の内の一つと判明)だったため情報の信憑性は低いが、1960年代に出版された出所の明らかな、かつ著名な書籍に類似した記述があるため、参考事案として記録。

・事案#140867-U-16
サナギラスから進化したと推定されるフォレトス個体。ジョウト地方ヒワダタウン西部に位置する森林地帯で捕獲。通常致命的な弱点になりうる炎に対して種族的に異常なほどの高い耐性を示し、本来無効化できないはずの電気属性の攻撃をすべて無効化した。その他調査により得られた特徴から、進化元はサナギラスと推測される。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1266] #89668 「ピーちゃんを探しています」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/22(Wed) 20:20:36   56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#89668

Subject Name:
ピーちゃんを探しています

Registration Date:
1998-06-01

Precaution Level:
Level 3


Handling Instructions:
これまでに「ピーちゃん」と認定された個体(個体#89668)は各々のモンスターボールに収容し、担当者は一般的な携帯獣向けの生育マニュアルに沿って保護に当たってください。個体#89668への呼びかけの際は、必ず「ピーちゃん」と呼びかけてください。実験目的で無い限り、個体#89668同士の接触・交流は認められていません。案件担当者が実験を行う場合は様式F-89668-2に沿って実験計画を作成し、事前に上長からの承認を得てください。承認を得ない実験は、当局の定める罰則規則に沿った処罰を受ける可能性があります。

事象#89668を引き起こす要因となったポスター(媒体#89668)は、風雨によって破壊された、または紛失した6枚を除いてすべて回収し、カントー地方ニビシティ第二支局に隣接する第五中異常性取得物保管庫のブロック4-Dに保管しています。事象#89668の原因である情報災害の効果は依然として有効であるため、取扱に際して対象を直接視認してはいけません。曇り加工を施した専用のヘルメットを着用の上、事前に上長の承認を得る必要があります。媒体#89668を電子化したものについては、特異な性質が失われていることが分かっています。媒体#89668の閲覧が必要な場合、専用端末から電子化した版にアクセスしてください。

媒体#89668の制作者(参考人#89668)と定期的なヒアリングを実施することが取り決められています。参考人#89668に対応する局員は事前に資料を十分読み込み、標準的な方法でヒアリングを実施してください。特段の異常が無ければ、規定の質問を終えた段階でヒアリングを終了して構いません。


Subject Details:
案件#89668は、視認した人間に対して認知機能の異常を生じさせる紙媒体のポスターと、それに掛かる一連の案件です。

1997年末頃から1998年初頭にかけて、主としてトキワシティ北部から中部にかけて、以下のような「探しています」のポスター(媒体#89668)が多数貼付されたことが事案のきっかけとなりました。


 ピーちゃんを探しています

 12月4日のお昼頃、お散歩中にはぐれてしまい、行方が分からなくなりました。
 まだ子供のピカチュウです。尻尾の黒い部分が少しだけ大きいのが特徴です。
 ピーちゃん、と呼ぶと返事をしてくれます。チーズが大好きです。
 体が弱いので心配しています。見かけた方保護された方はご連絡ください。
 電話番号 XX-XXXX-XXXX [ポスター作成者である参考人#89668の名前] まで


媒体#89668には上記のような文面と、自宅で撮影された「ピーちゃん」という名前のピカチュウの写真が掲載されています。ピカチュウは正面を向いた状態で撮影されており、この写真そのものに異常性はありません。文章に記載されている通り小柄で未成熟なことが伺え、尻尾の黒い部分がやや大きくなっているのが分かります。

異常性が顕在化するのは、人間が媒体#89668を5秒以上直接視認した場合です。このとき媒体#89668に書かれた文章を明確に理解できない(視覚的に文字が読めない/内容が理解できない/日本語を習得していない等)場合、後述する事象#89668は発生しません。文章を理解できる能力があり、かつ媒体#89668を5秒以上視認した場合、事象#89668が発生します。

事象#89668は、媒体#89668を見た人物がその後最も早いタイミングで目撃した野生の携帯獣を「ピーちゃん」と誤認識する事です。対象がピカチュウでなかったとしても一切関係なく、誤認識は発生します。この時ほとんどの人物は「ピーちゃん」を参考人#89668の元へ届けようと考えます。注意すべきは、この時の動機は個々人によって大きく差異があることです。ある人物は「ピーちゃんが可哀想だから」と情緒的な理由を口にし、別の人物は「お礼がもらえると思ったから」と金銭的な理由を口にします。この動機は個々人の本来的な考え方に依拠するもの、すなわち当人にとって自然な情動であると考えられます。

この時もう一つの効果として、「ピーちゃん」であると誤認識された携帯獣自身も、自分自身を「ピーちゃん」だと誤認識するというものがあります。結果、人物からの「ピーちゃん」という呼びかけに従順に反応し、名前を呼んだ人物の元まで向かって行きます。以後、携帯獣は永続的に自分自身を「ピーちゃん」であると認識し続けます。

恐らくあらゆる携帯獣が事象#89668によって「ピーちゃん」と誤認識され得るものと考えられます。これまでに確認された事例としては、ディグダの穴へ進入した折に遭遇したダグトリオを「ピーちゃん」と誤認したもの、望遠鏡で観察したオニドリルを「ピーちゃん」と誤認したもの、ポスターを視認した後ジョウト地方フスベシティまで移動し、その際目撃した野生のエアームドを「ピーちゃん」と誤認したもの、近隣の池で釣り上げたニョロゾを「ピーちゃん」と誤認した例などがあります。

ポスターの制作者である参考人#89668から、「ピーちゃんでないポケモンをピーちゃんだと主張して譲らない人がたくさん来ている。助けてほしい」と警察に緊急通報が行われました。通報内容から異常事案の発生を察知したオペレータが当局に連絡し、警察とともに参考人#89668の元へ急行しました。局員が駆けつけた時点で10歳から68歳の男女総勢47名が玄関口で言い争いをしており、いずれも帯同させている携帯獣が「ピーちゃん」だと主張していました。携帯獣同士も自分自身が唯一の「ピーちゃん」であると認識していたためか互いに攻撃的な姿勢を見せ、危険な状態となっていました。局員は警官とともに対応に当たり、およそ6時間後に事態の収集が完了しました。この段階で局員は原因がポスターにあると推測、視認しないよう周囲に警戒を呼びかけ、応援の局員と共に回収を行いました。

後に行われた参考人#89668へのヒアリングにおいて、参考人#89668は媒体#89668に一切の細工をした記憶は無いとのことでした。ポリグラフテストの結果は、この証言の信憑性が高いことを示しています。参考人#89668がこれまで作成してきた文書や図画には何ら異常性が認められないことから、媒体#89668は参考人#89668が意図的に作り出したものではないとの見方が大勢を占めています。

通報に際して捕獲された携帯獣は、自分自身を「ピーちゃん」であると誤認している事を除けばいたって正常な個体であるため、識別のため個体#89668-1から個体#89668-47と管理用の名称を設定し、全員を隔離して保護しています。個体#89668-1から個体#89668-47を帯同させていた人物らは、個体を「ピーちゃん」だと認識している事を除けば他に異常は見られなかったため、翌日には全員を解放しました。

参考人#89668が捜索していた本来の「ピーちゃん」は、現在に至るまで未だ行方不明のままです。収容された47体の携帯獣の中に本来の「ピーちゃん」、及びピカチュウは含まれていませんでした。


[1999-07-21 Update]
局員の一人がポスターを安全管理手順に沿って閲覧していた際に、ポスターの隅に小さなスタンプが押されていることを発見しました。解像度の都合で内容を視認することが困難だったため、上長に申請の上さらに高い解像度でのスキャンが行われました。スキャンした結果スタンプが鮮明に視認可能となり、以下のようなテキストが押印されていることが分かりました。


 "善意" is so beautiful.


参考人#89668にヒアリングを実施したところ、このようなスタンプを押した記憶は無いとのことでした。事象#89668との関連性と、スタンプを押した個人あるいは組織についての調査が進められています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1267] #109108 「ドーブルのメッセージ」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/23(Thu) 22:11:32   62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#109108

Subject Name:
ドーブルのメッセージ

Registration Date:
2004-07-29

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
個体#109108が記述したメッセージはすべて写真として記録し、インデックスのためテキスト化した情報を付けて案件別サーバに保管してください。写真やテキストには何ら異常は認められないため、案件担当者は自由に閲覧する権限が付与されています。必要に応じて複製することも認められています。これまでに記録されたメッセージの一覧については、リストL-109108を参照してください。

これまでのところ、個体#109108そのものには何ら異常は認められません。保護担当者は、異常性の無いドーブル個体と同様の取り扱いを実施してください。個体#109108がスケッチをするためのキャンバスを要求した場合は、要求に沿ってキャンバスを提供してください。キャンバスのストックは、個体#109108が収容されているジョウト地方エンジュシティ第四支局の備品倉庫にあります。ストックが少なくなった場合、標準的な消耗品補充手順に従って購入してください。


Subject Details:
案件#109108は、あるドーブル個体(個体#109108)が不定期に記述するメッセージ群と、それに掛かる一連の案件です。

2003年10月頃、ジョウト地方キキョウシティ南西部に位置する、一般に「アルフの遺跡」と呼ばれている遺跡群にて、遺跡を管理している団体に宛てて観光客から「遺跡に落書きをしているドーブルがいる」という連絡がなされました。落書きを確認した職員は内容に不審な点を覚え、当局の窓口に通報しました。職員は局員が到着するまでにドーブル(後に個体#109108と認定)を捕獲し、落書きを複数の写真に収めました。これらは後に局員に引き渡され、案件の初期研究において有用な資料となりました。

個体#109108は外見上一切の特異な点が見られない、解剖学的に正常な♂のドーブル個体です。身長や体重は平均的な成体のドーブルのそれとほぼ同等であり、視覚や聴覚などの感覚機能にも何ら異常は見られません。当局の定める標準的な手順に基づく精密検査及びデータ化した状態での完全スキャンもすべてパスしています。性格は友好的で、保護に当たっている担当局員たちとは良好な関係を築いています。後述するこの個体特有のある行動を除けば、個体#109108は完全に正常なドーブルと言うことができます。

概ね一週間に一度か二度程度の頻度で、個体#109108は通常のスケッチ行動とは明確な差異がある異常なスケッチ行動(動作#109108)を取ります。動作#109108は一見したところ通常のスケッチ行動と同じに見えますが、書かれるものが絵ではなくテキストによるメッセージ(メッセージ#109108)であるという点で決定的に異なります。メッセージ#109108は多種多様な言語で記述され、時として未知の言語や意味が不明瞭な単語が使用されます。内容はいずれも強い不安や恐怖を想起させる、総じて「何者かが助けを求めているような」と形容される文面です。

メッセージ#109108の内容と個体#109108の心理状態や健康状態は一切関連しないことが分かっています。収容初期は個体#109108がメッセージ#109108を通して自ら抱える苦痛を訴えているものと考えられていましたが、詳細な検査により個体#109108には何ら問題が無いことが判明し、その仮説は覆されました。メッセージ#109108を記述する前後、及び記述している最中についても、個体#109108は一貫して平静を保っています。このため、個体#109108がメッセージ#109108を書き付ける意図は不明なままです。

収容初期に実施された複数の実験により、個体#109108には一般的なドーブルと同程度の識字能力しか持たないことが明らかになりました。これにより、個体#109108は何らかの明確な意志を持ってメッセージ#109108を書き付けているのではなく、ある種の「図形」として文字を捉え、その集合としての「絵画」としてメッセージを「描いて」いるものと推測されます。メッセージがどのような理由で個体#109108に認識される(個体#109108が未知の存在からメッセージ#109108を受け取っている/個体#109108が自発的にメッセージを思い浮かべている等)のかは分かっていません。

以下はこれまでに記録されたメッセージ(和訳済)の抜粋です:


[メッセージ#109108-1]
記録日時:2008/11/12(個体#109108の発見時)
使用言語:日本語
記載内容:「助けてください」

[メッセージ#109108-2]
記録日時:2003/11/20
使用言語:アルファベットをキリル文字に置換した英語
記載内容:「ここから出してくれ」

[メッセージ#109108-3]
記録日時:2003/11/22
使用言語:鏡写しにしたハングル文字
記載内容:「血が止まらないんだ」

[メッセージ#109108-4]
記録日時:2003/11/28
使用言語:不明。既知のいかなる言語体系と一致せず
記載内容:解読不能

[メッセージ#109108-5]
記録日時:2003/12/06
使用言語:未知の文字で記載されているが、構文は英語と完全に一致する未知の言語
記載内容:「ここはどこなんだ。何も見えない」
補遺(2009/02/15追記):
使用された文字は、2008年にエレクトロニック・アーツ社から発売されたビデオゲームである「Dead Space」の作中で使用された架空文字と判明。ただし、一部の文字にわずかな差異が見られる。

[メッセージ#109108-9]
記録日時:2003/12/28
使用言語:クルド語。書体を90度倒し、縦書きにしたアラビア文字で記述されている
記載内容:「あの子を返してください」

[メッセージ#109108-20]
記録日時:2004/03/10
使用言語:ラテン語を音写し、日本語のひらがなで記載したもの
記載内容:「お母さんどこにいるの」

[メッセージ#109108-25]
記録日時:2004/04/13
使用言語:上下反転し、目の部分がすべて空白になっているアンノーン文字で記述された英語
記載内容:「ひもじい」

[メッセージ#109108-37]
記録日時:2004/07/26
使用言語:現代フランス語の点字
記載内容:「誰か返事をしてください」

[メッセージ#109108-46]
記録日時:2004/11/01
使用言語:簡体字中国語で書かれたUTF-16のテキストをBase64エンコードしたもの
記載内容:「痛い、苦しい」

[メッセージ#109108-52]
記録日時:2004/12/15
使用言語:日本語。極度のカイナ訛りで書かれている
記載内容:「痒い痒い痒い。痒くてかなわない」

[メッセージ#109108-75]
記録日時:2005/04/30
使用言語:8つの記号のみで構成された極めて長大なテキスト。後に難解プログラミング言語の一つと知られる「Brainfuck」のソースコードと判明。コンパイルして実行すると、下記のメッセージが出力される
記載内容:あいつがすぐ隣の街まで来ています。隣の街にいた仲間からもう15時間連絡がありません。あいつの同族も来ているかもしれません。あいつらは空から来て子供たちをさらっていった、だからあいつらのボ
補遺:メッセージは明らかに途中で途切れているように見えるが、これ以上の出力は確認できず。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1268] #128617 「オオタチ通信網」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/24(Fri) 19:50:03   49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#128617

Subject Name:
オオタチ通信網

Registration Date:
2010-10-04

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
対象を収容することは物理的に困難であるため、既存の「通信網」がどのような形で整備されているかを研究する取り組みに焦点が置かれています。新たな進入口#128617を見つけた場合、ポイントをデータベースへ登録してください。これまでに確認されている進入口#128617の一覧については、リストL-128617-1を確認してください。リストL-128617-1は毎日16:00に自動更新されます。

進入口#128617を塞ぐような行為は新たな進入口#128617の形成を誘発してしまうため、推奨されません。当局の敷地内を含む問題のあるポイントに進入口#128617が形成される事案が発生した場合、速やかにリストL-128617-2に掲載されている支局まで連絡してください。連絡が為された場合、当局と雇用契約を結んでいるオオタチの局員が現地へ向かい、該当する進入口#128617を使用しているオオタチに説得と交渉を行います。これまでのところやり取りに際してトラブルが発生した事は無く、問題なく敷地内から退去することが分かっています。

局員は当局が要注意ポイントとして指定した進入口#128617を監視し、該当する進入口#128617を出入りするオオタチの様子に注意を払ってください。不審な荷物を運んでいると判断した場合はその場で呼び止め、荷物の内容について検査するようにしてください。過去の事例において、この検査により未然にいくつかの犯罪を防止することに成功しています。


Subject Details:
案件#128617は、全世界に張り巡らされていると推定されるオオタチのみが通過可能な洞窟(通信網#128617)と、それに掛かる一連の案件です。

少なくとも2002年頃から、遺失物が数日後に極めて離れた地域で発見されるという事案が相次いで発生していました。当初は単なる悪戯行為の類と考えられていましたが、報告される件数が増加するにつれて当局が異常事案の疑義有りと判断し、局員が調査に乗り出しました。その過程で、遺失物の発見に各地域に生息するオオタチが度々関与している事が分かり、追跡調査の結果後に通信網#128617と認定される洞窟が発見されました。

通信網#128617は、その大きさ故にオオタチのみが通行可能な直径30cmから40cm程度の穴(進入口#128617)です。進入口#128617の付近には常に数匹のオオタチが待機しており、荷物(オオタチが持ち運び可能なものに限られます)と大まかな場所を伝えることで、最寄りの進入口#128617まで荷物を輸送します。依頼に基づいて荷物を輸送することもあれば、理由は不明ながらオオタチ自身が荷物を持ち込んで輸送することも確認されています。輸送には恐らくバケツリレー方式が用いられていると推定され、最終目的地に到達するまでに相当数のオオタチの手を介すると考えられています。

2005年7月下旬、カントー地方シオンタウン第三支局に在籍する局員から「支局の敷地内に進入口#128617が作られている」との連絡が寄せられました。支局では当初、進入口#128617を封鎖し、近隣に生息していたオオタチをすべて捕獲するという対処を行いましたが、別の新たな進入口#128617とオオタチの出現という結果を招きました。物理的な封鎖が難しいと判断した局員が上長と相談の上、オオタチと対話が可能な携帯獣の職員についての問い合わせを全支局宛てに投稿しました。これを受けたジョウト地方ヨシノシティ第二支局の局員が、平時は局間便の輸送担当として勤務しているオオタチの局員にこの課題について連携しました。翌日カントー地方シオンタウン第三支局にオオタチの局員が出張し、進入口#128617近辺にいたオオタチと対話、最終的に敷地内から進入口#128617をすべて取り除くことで合意しました。現在の取扱い手順は、この事案を元にして制定されています。

過去に複数回行われた通信網#128617を使用した輸送実験により、恐らくほぼ地球規模で通信網が形成されていると考えられています。実験結果の一例としては、実験セッション27が挙げられます。このセッションではシンオウ地方ミオシティにある進入口#128617-224からホウエン地方フエンタウンにある進入口#128617-386まで、およそ52時間で実験用荷物が輸送されたことが確認されました。

これまで当局が保有する探査用ドローンを用いた内部調査が幾度となく提案され、いくつかの提案においては実際に調査が執り行われました。しかしながら、いずれの実験セッションにおいても通信網#128617の複雑な構造故に調査が難航し、さらに通信網内部に潜んでいるオオタチの敵対行動によってことごとく探査用ドローンを紛失するという結果に終わっています。これ以上の損失を防ぐ意味合いで、探査用ドローンを用いた調査は予め却下されることとなっています。

通信網#128617そのものについては、そのあまりに長大な規模を除けば、オブジェクトそのものに特段の異常性は無いと考えられています。しかしながら、ほぼ全世界的に通信網が形成されていること、どのような経緯で通信網#128617が構築されたのかが一切分かっていないこと、そして実際のところオオタチが通信網#128617をいかなる目的で利用しているのかが不明であることなどから、決して楽観視することはできません。

さらに上記に加えて、通信網#128617を利用した犯罪行為が複数確認されています(盗品の輸送/武器や情報の授受等)。これらは当局以外の個人あるいは組織が通信網#128617の性質を相当程度把握し、明確な悪意を持って利用していることを示していると言えます。この事から、裁定委員会は本案件の警戒レベルを「2」(異常性は低いが、注意が必要)とする結論を下しました。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1269] #117472 「分散ishアーカイブス」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/25(Sat) 20:11:17   46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#117472

Subject Name:
分散ishアーカイブス

Registration Date:
2007-03-24

Precaution Level:
Level 2 [潜在的 Level 4]


Handling Instructions:
この案件のために開発されたクローラーのプログラムが、書庫#117472がインターネット上に新たに出現していないかを常に監視しています。書庫#117472の出現が確認された場合、それが確認済のものであるか否かに関わらずダウンロードを行い、案件担当者に宛てて自動的に所在を通知します。通知を受けた案件担当者は様式F-117472-1に沿ってサイト管理者に書庫#117472の削除を依頼し、速やかな対応が為されない場合は手順M-117472-1によりサイトへのアクセス遮断措置を講じます。

サイト管理者に書庫#117472の投稿者情報を提出するよう通達してください。得られた情報は案件別サーバ#1に保管します。アクセス元については投稿の都度変化していることが分かっていますが、まれに過去と同様の接続情報が得られる場合があります。アクセス元に関する統計情報については、資料D-117472-3を参照してください。資料D-117472-3は月末毎に最新のデータに基づいて更新されることになっています。

収集された書庫#117472は複数の案件別サーバに分散して保存し、三重の暗号化を施します。本案件の案件別サーバは、複数のサーバが同一のネットワークに参加することが無いよう注意を払う必要があります。書庫#117472の一部をサンプルとしてデコード/展開することは認められていますが、特別な理由が無い限り、保管されている書庫#117472を結合することは許可されません。過去に結合実験を行って得られた情報については、資料D-117472-5を参照してください。


Subject Details:
案件#117472は、インターネット上に存在する不特定多数の掲示板やWikiに投稿されるテキスト(書庫#117472)と、それに掛かる一連の案件です。

出現が確認されたのは2006年11月頃のことで、局員の一人が事案の疑義ありとして日報に記録したことにより当局の知るところとなりました。管理局が確認している最古の出現事例は既に使用されなくなって数年が経過したレンタル式の電子掲示板においてで、合計146の書庫#117472が2日から47日のランダムな期間を挟んで投稿されていました。日報を記録した局員が書庫#117472と投稿者情報を保全し、書庫#117472について初期調査を行った段階で異常性が発覚、案件として起票されることが決定しました。

書庫#117472は、「ish」によってエンコードされた分割ファイルの断片です。ishは一定のルールに基づいてバイナリデータとテキストデータを相互変換するためのファイルフォーマット及びソフトウェアの名称であり、どのようなファイルであっても変換することが可能です。簡易的なエラー訂正機能を含んでいるため、かつて通信環境が整っていなかった時代に頻繁に使用されていました。性質上データが制御コードを含まないテキストデータに変換されるため、バイナリファイルに相当するデータをテキストのみやり取りが可能な電子掲示板やその他CMSに書き込むことができるという利点があります。

ish及び互換ソフトウェアを使用して書庫#117472を復元すると、「********.zip」という名称のZIPアーカイブが生成されます(例:000001A3.zip)。「********」には0から9までの数字とAからFまでのアルファベットが入る可能性があります。ネーミングルールから、16進数によりナンバリングされたアーカイブファイルと推測されています。ZIPアーカイブは一般的な形式のもので、展開するとアーカイブファイル名と同様の名前を持つ拡張子の無いファイルが生成されます(例:000001A3)。ファイルサイズが常に4096バイトとなっていることから、巨大なファイルを単純に一定のサイズで分割したものと考えられます。

一つのファイルにおける情報量の少なさ故に、分割元となったファイルが如何なる存在であったかについては当初複数の仮説が提示されていましたが、調査の過程で263の抜けの無い連番ファイルの確保に成功しました。ネットワークから遮断した環境下ですべてのファイルのデコードと展開を行い、ファイル名が若い順に結合して作成された出力ファイルの検証が行われました。

検証の結果、データは何らかの携帯獣、それもこれまでに確認されていない未知の種族のデータを分割したものである可能性が非常に高いことが判明しました(携帯獣#117472)。得られたデータからは携帯獣#117472が何らかの特異な能力を持ち、かつ獰猛な攻撃性を持つ種族であることが示唆されています。断片的な情報であり不正確な点が多々あると考えられますが、僅かながら得られた確証はいずれも人類にとって脅威たりえるものでした。

いくつかの結合結果の分析から、携帯獣#117472はイッシュ地方由来の携帯獣である可能性が示されました。イッシュ地方の支局に在籍する局員に検証結果を送付し、当局と協力関係にある複数の携帯獣学の専門家に解析を依頼しましたが、これまでのところ既知の種族で携帯獣#117472と完全に一致する種族は発見されていません。しかしながら解析の結果はいずれも当局が下した判断と一致するものであり、危険な種族であるということで見解の一致を見ています。

現段階に於いて、書庫#117472がどのような存在によっていかなる目的で作成されたのかはいずれも分かっていません。不特定多数の電子掲示板にishエンコードした書庫#117472を書き込む理由についても同様です。携帯獣#117472が最終的にどのような能力や形態を取るのかについても不明な点が多く、現状では書庫#117472及び携帯獣#117472の存在を隠蔽することに案件対応の主軸となっています。

一般的な携帯獣のデータ量とファイルフォーマットの特性からおよそ390,000個の書庫#117472が存在すると推定されますが、本校執筆時点で当局が収集できているのはそのうちの1%にも満たない2,978個に過ぎません。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1270] #137905 「マイム・ライフ・ライブ」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/26(Sun) 20:42:57   48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#137905

Subject Name:
マイム・ライフ・ライブ

Registration Date:
2013-09-13

Precaution Level:
Level 5


Handling Instructions:
映像#137905の出現を事前に予期することは極めて困難なため、現在は映像#137905がどのような原理で出現するかの研究に案件対応の比重が置かれています。過去に録画された映像#137905には異常性が見受けられないため、案件担当者は研究のために閲覧することが許可されています。ただしその場合、事前に様式F-137905-1に沿って閲覧申請を提出し、閲覧の記録を残さなければなりません。

案件の副担当者として割り当てられた局員はリストL-137905-2に列挙された動画配信サイトを交代で終日巡回し、映像#137905が放送されていないかを監視してください。過去の統計から、放送は日時を問わず前触れなしに開始される事が分かっています。放送を発見した場合は直ちに主担当者へ報告の上、録画を開始してください。報告を受けた主担当者は、警察機関の担当窓口にに事案#137905の発生を連絡してください。放送から24時間以内を基準として発生したすべての不審死事件について、警察機関から概要の報告が行われることになっています。

映像#137905に登場する携帯獣#137905の身体的特徴から、過去に当局が起票したいくつかの案件に関わっている可能性が示されています。映像#137905-49で発生した重大なセキュリティインシデントから、携帯獣#137905が当局の存在を認知している可能性が極めて濃厚です。携帯獣#137905の収容プロトコルについての議論は現在も継続しています。


Subject Details:
案件#137905は、由来不明のバリヤード(携帯獣#137905)が登場するライブ形式の動画(映像#137905)と、それに伴って発生する不審死事件、及びそれらに掛かる一連の案件です。

2013年初頭頃より、当局に「不審なバリヤードが生放送をしている」という通報が幾つか寄せられました。通報を受けた局員は通報の都度映像を録画し、10本ほどの録画映像が取得できた段階で解析を行うスケジュールを設定しました。最新の映像を録画した後数日が経過してから動画を確認したところ、後に携帯獣#137905と認定されるバリヤードがパントマイムで「人間の頭部を引きちぎっている」と形容できる異様な動作をしている映像が収められていました。

携帯獣#137905の動作を見た局員は、映像が放送された当日、頭部が切断された状態で死亡している成人男性が発見されるという事件が起きていたことを思い出しました。過去に録画された映像を再度確認したところ、それらはいずれも何らかの形で人間を殺害していると思しき動作をパントマイムで表現しており、そして同日中に映像で表現されたものとまったく同じ方法で殺害されている人間が発見されるという事件が起きていたことが判明しました。局員は直ちに上長へ過去事案を取りまとめて報告し、その危険性から即日中に案件の立ち上げが決定しました。

上述の通り、映像#137905は携帯獣#137905が何者かを殺害するかのような動作が収録された映像です。映像は「マイム・ライフ・ライブ」(日本語が使用可能なサイトの場合)または「Mime Life Live」(日本語が使用不可能なサイトの場合)というタイトルで出現し、末尾に「#30」のような形式で連番が付与されます。最新の映像に付与された連番から、これまでに計62回の放送が行われたと推定されています。

映像#137905には不気味で崩れた笑みを浮かべるマスクをつけた携帯獣#137905が登場し、背景は必ず特徴の無い白い部屋になっています。放送開始直後に携帯獣#137905は視聴者へ向かって一礼し、パントマイムを開始します。その後、パントマイムを終えた携帯獣#137905は視聴者に向かって一礼し、その後配信が終了するという流れはすべての映像#137905で共通しています。

これまでの検証により、映像#137905は事前に収録したものではなく、リアルタイムに録画され放送されたものであることが分かっています。これまでに出現が確認されたのはいずれもライブ配信のための専用サイト(USTREAM/twitch.tv/TwitCasting等)か、ライブ配信機能を備えた一般的な動画配信サイト(YouTube/ニコニコ動画等)です。放送はランダムなタイミングで開始され、概ね30分以内に終了します。

映像#137905が配信されてから遅くとも24時間以内に、放送されたものと完全に同一の方法で人間が一人殺害されます(事案#137905)。映像の視聴の有無は関連性が無く、映像を視聴できない環境にいた被害者が殺害された事例も複数存在します。被害者は確認された限りで7歳から73歳までの男女で、居住地域や個々人の特徴に一切の法則性が見つかっていません。ただし、いずれも被害者が完全に一人になったタイミングで殺害され、殺害される瞬間を目撃した人物が居ないことが共通しています。

何らかの特異な技術を用いているのか、映像#137905はサーバーの各種ログを始めとする放送の記録がほとんど残しません。このため情報を得るためには、映像#137905を録画する必要があります。またこれまでに数回、当局の介入による映像#137905の配信中断が試みられました。配信を妨害する事自体には成功しましたが、その後の事案#137905の発生を防ぐことはできませんでした。最後まで放送が行われた時と同様に、ランダムな人物が映像#137905で表現された方法によって殺害されています。このため、映像#137905が開始された時点で、事案#137905の発生を止めることは不可能であるという結論が下されています。

携帯獣#137905は視聴者に向けて一礼することと、被害者を殺害するパントマイムのパフォーマンスを除いた一切のアクションを取らず声も発さないため、どのようなパーソナリティを持っているのかは明らかになっていません。また、携帯獣#137905がパントマイムのライブ配信を行う意図についても不明です。


[2014-06-17 Update]
当局による複数回に渡る放送妨害の後、49回目のライブ放送が行われました(映像#137905-49)。当時制定されていた対応プロトコルに基づいて担当者が放送妨害を試み、放送は開始から12分30秒の時点で強制的に打ち切られました。その際携帯獣#137905は「対象の両腕を引きちぎり、引きちぎった両腕で被害者を激しく殴打する」というパフォーマンスを実演している最中でした。

放送妨害が行われた翌日、就業時刻を過ぎても担当者は姿を見せませんでした。不審に感じた局員が担当者の自宅を訪ねたところ、映像#137905-49で表現されたものと同一の方法で殺害されている担当者が発見されました。司法解剖による死亡推定時刻は昨日23時頃で、放送から24時間以内に対象が死亡する事案#137905の条件と合致します。

当局は携帯獣#137905が当局による監視と妨害を把握し、担当者を殺害することで警告を行ったものとの見方を示しています。これに伴い対応プロトコルから放送妨害についての記述が削除され、映像#137905及び携帯獣#137905の起源を探ることに対応の重点が置かれることが決定しました。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1271] #120399 「フワンテにつかまった少女」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/27(Mon) 20:10:36   54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#120399

Subject Name:
フワンテにつかまった少女

Registration Date:
2008-02-26

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
浮遊体#120399が存在している領域は、当局により完全な飛行禁止区域に設定されました。警備員を周辺に展開し、浮遊体#120399に近付こうとする人物がいないかを常に監視してください。浮遊体#120399は静止して動かないため、飛行禁止区域は常に一定の範囲になります。浮遊体#120399の近辺を通過する通常の飛行物、特に空を飛んでいる最中の携帯獣や携帯獣に搭乗したトレーナーが互いに接触することが無いよう警戒を呼びかけてください。

性質上、浮遊体#120399に物理的に近付くことは困難であり、対象のサンプルを得ることは難しいと考えられています。浮遊体#120399に接近する方法については現在も議論と研究が進められており、その状況については月次で更新されるレポートR-120399-2-Mで確認することができます。これまでに実行が試みられ失敗に終わった接触計画に関しては、レポートR-120399-3-Nに計画単位で取りまとめられています。案件担当者はこれらの資料を自由に参照する権限を持ちます。

可能であれば、案件担当者は参考人リストL-120399に列挙された人物について情報収集を行ってください。これまでに得られたいくつかの情報は、浮遊体#120399に関わりがあるとされる複数の人間の存在を示唆しています。特にリストL-120399の第4セクションに取りまとめられた2名の失踪者については、浮遊体#120399そのものと何らかの深い関わりを持っている可能性があります。


Subject Details:
案件#120399は、カントー地方シオンタウンの上空を浮遊している未確認飛行物体(浮遊体#120399)と、それに掛かる一連の案件です。

本案件の中心となる浮遊体#120399が最初に確認されたのは、2008年1月中旬のことでした。カントー地方シオンタウンの中心に位置する住宅街である「シオンニュータウン」上空を飛行していたトレーナーが浮遊体#120399を発見し、その様子を見て「フワンテに捕まった女の子がいる」と救急連絡をしたのが切っ掛けとなりました。当初はフワンテによる子供の連れ去り事案と考えられ、専門に組織された救助隊が出動しました。

救助隊による救出と調査の試みが行われていましたが、その過程で近隣をエアームドに搭乗して飛行していた別のポケモントレーナーとニアミスし、救急隊員一名とトレーナーが軽い怪我を負う事案が発生しました。事案発生時の状況と救助隊による調査の過程で判明した浮遊体#120399の異常な性質から、本件については当局に引き渡す案件だという結論が下されました。通報を受けた局員が現場に駆け付け、初期調査と関係者へのヒアリングを経て案件立ち上げが決定しました。

浮遊体#120399は、一般的なサイズと風貌をした一体のフワンテと、その足に両手を絡める形で帯同している概ね6歳頃の少女と思われる人間です。フワンテと少女は浮遊したまま時折わずかに動く程度で、自発的に移動したり何らかの行動を起こしたりする素振りをほとんど見せません。後述する浮遊体#120399の性質上、フワンテに帯同している少女がどのような人物かを調査する試みは難航しています。浮遊体#120399は風雨/風雪に晒されても影響を受けているようには見受けられず、その場を離れることはありません。

浮遊体#120399が持つ特性として、推定で周囲20m以内に異常空間を作り出すというものが挙げられます。浮遊体#120399が展開するこの空間内では、内部には入り込んだあらゆる飛行者の位置/空間認識能力が狂わされ、浮遊体#120399に接近することが著しく困難になります。実際に浮遊体#120399への接近を試みた救助隊員からは「どれだけ前に進んでも、フワンテが同じ速度で遠ざかっていくように見えた」という証言が得られました。これについては、周囲で様子を観察していた他の救助隊員も同様の発言をしています。

当局が実施した複数回の実験では、あらゆる飛行手段を持ってしても、浮遊体#120399へ接触することは著しく困難かまたは不可能であるという結論が出ています。浮遊体#120399は認識異常を引き起こすだけでなく、実際に空間そのものを変質させている可能性が濃厚です。発見時に生じた救助隊とトレーナーによる衝突事故についても、浮遊体#120399がある程度の意図を持って両者を衝突へ導いた疑義が示されています。

近隣を通過するトレーナーや飛行免許を持った市民にとって浮遊体#120399の効果は移動の妨げになる虞があるため、周囲一体を飛行禁止にする措置が取られました。浮遊体#120399が少なくとも視覚的にはその場からほとんど移動しない(これまでの観測では、移動範囲は概ね半径60cm以内であるとの結果が出ています)ことから、現在の保全プロトコルは有効に機能していると考えられています。

浮遊体#120399の正確な起源については明らかになっていません。フワンテが少女を拘束しているのか、少女が自発的にフワンテに掴まっているのか、或いはフワンテは少女から離れようとしているがそれができないのか、いずれについても根拠の無い仮説のレベルに留まっています。浮遊体#120399の起源を探るための調査は現在も進行中です。

本案件と関連性があると推定される事案が近隣で複数発生しています。注目すべきは浮遊体#120399が存在する「シオンニュータウン」そのもので、当局が調査中の事案に関わっている疑いのある人物が複数居住している他、他の地域と比較して案件/事案の発生頻度が統計的に見て有意なレベルで高いことも判明しています。

中でも特記すべき重大事案として、2007年末頃に6歳から7歳までの少女3名がほぼ同時期に失踪し、翌年始めにその内の1名が変死体で発見されたというものが挙げられます。残る2名の失踪者のうちの1名について、容姿上の特徴から浮遊体#120399を構成する人間部分に該当するのではないかという意見も上がっています。しかしながらこれまでのところ、いかなる形においても両者を明確に関連付ける証跡は得られていません。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1272] #105962 「The Replacement」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/28(Tue) 21:17:24   56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#105962

Subject Name:
The Replacement

Registration Date:
2003-07-31

Precaution Level:
Level 2 (2003-07-31時点) → Level 0 (2003-11-29時点) → Level 3 (2004-02-26制定) → Level 1 (2004-09-19時点) → Level 4 (2005-06-13時点) → Level 1 (2006-03-07時点) → Level 4 (2006-12-22時点) → Level 1 (2007-07-23時点)


Handling Instructions:
症状を訴えてきた市民から詳細なヒアリングを行い、必要に応じて対象の身辺調査を実施してください。これまでのところ、市民から申し出のあった人物が実際にまったく別の存在と入れ替わっていたというケースは確認できていませんが、訴えの内容から事案のすべてが当人の思い込み/思い違いであるとは断言できない状況です。仮に申し出の通りの事案が発生していた場合、直ちに対象に任意同行を求めたの上で、詳細なヒアリングを行う必要があります。

[2003-11-29 Update]
上記の取り扱い手順は廃止されました。本件については、申し出てきた人間の神経衰弱や精神的疲労に由来する妄想・思い込みの類であることが明らかになっています。今後は最小限の担当者のみを置き、申し出てきた人間に対しては当局と契約しているカウンセラーを紹介することで対応してください。

[2004-02-26 Update]
監査の結果、本案件は事前の承認を得ずに警戒レベルが「0」(無力化済)に変更され、取り扱い手順が大幅に変更されていたことが明らかになりました。2003-11-29に制定された取り扱い手順を廃止し、2003-07-31時点の取り扱い手順へロールバックします。警戒レベルの変更に不審な点が見受けられるため、警戒レベルについては従前の「2」ではなく、一段階上昇させた「3」を制定します。

[2004-09-19 Update]
案件の棚卸し及び見直しに伴い、2004-02-26で廃止された取り扱い手順を復活させ、警戒レベルを「1」に再設定します。本案件については既に無力化済という認識ですが、一部の局員から異常性が残存しているとの指摘があったため、最低限の担当者を残して対応を継続します。基本的な案件対応方針については、2003-11-29に制定されたものに順じます。能動的な対応は必要ありません。

[2005-06-13 Update]
局内で発生したセキュリティインシデントに関与していたとして、前任の担当者は解雇の上すべてのセキュリティクリアランスが剥奪されました。これに伴い当該元局員が受け持っていた案件についての見直しが行われ、その過程で本案件の警戒レベルが複数回に渡って変更されていることが明らかになりました。案件とそれに掛かる事案の性質を鑑み、警戒レベルを「4」へ引き上げることを提案します。

[2006-03-07 Update]
複数の事案に対する継続調査とこれまでの実績を勘案して、再度警戒レベルの引き下げを申請します。本案件は過去に数度レベルの引き上げが行われていますが、それらには明確な根拠が無く、他のレベル4案件と比較しても明らかに脅威度は低いと言えるものです。より多くの人員を必要とする案件にリソースを集中させるためにも、適切な警戒レベル設定が行われるべきと主張します。

[2006-12-22 Update]
前任担当者の殉職により案件の再調査を実施しましたが、本案件は同一の担当者による2回のレベル変更、それもすべてがかつて設定したレベルを大幅に引き下げるという不可解な事象が実に3度に渡って発生しています。これは他の案件と比較しても明らかに異常なものです。この事実だけでも本案件を警戒すべきなのは明白であると同時に、甚だしきは局内で事案が発生している虞があるということです。ここに今一度、本案件の警戒レベルを「4」に設定する事を申請します。

[2007-07-23 Update]
当局の対応により、本案件は事実上無効化されました。継続調査の結果は、事案を申し出た人間が例外なく精神的に疲弊していた事実を示しています。当初の見立て通り、当人の思い込みによるものと推定されます。事案が再発した場合に備えて最低限の人員を残し、再度警戒レベルを「1」とすることを提案します。


Subject Details:
案件#105962は、一部の市民が訴えるある種の「違和感」と、それに掛かる一連の案件です。

2003年の4月下旬頃、当局が市役所内に設けている相談窓口に「隣人が別人になっているような気がする」という不安を訴える市民が現れました。窓口担当者がヒアリングを実施し概要を取りまとめた上で、事案発生の可能性有りとして日報に記録しました。翌日当該局員が申し出にあった隣人の元を訪れ、本来の目的を隠して簡単なヒアリングを実施しました。

市民及び局員の証言によると、隣人(参考人#105962)は一見したところそれまでと変わらないように見えましたが、本来記憶しているべきことをまったく記憶していなかったり、あるいは従前好んでいた食物を食べなくなるというように顕著に嗜好が変化するといった事象がごく短期間に確認されました。申し出た市民が違和感を覚えたことにも説得力があると認められるレベルで、参考人#105962は以前と異なっているように見受けられます。

その後、各地の支局からほぼ同様の申し出が多数寄せられました。それらを取り纏めたところ、いずれも参考人#105962と認定された人物の、主に内面について極端な変化が確認されました。何らかの事案が発生している可能性が高いと判断した局員は中央統括部に案件立ち上げを申請、同年7月31日に受理されました。また、この一連の事案については、事案#105962として管理されることが決定しました。

先述した通り、事案#105962は近親者や隣人が参考人#105962の顕著な変化に違和感を持つことで発生が確認されます。参考人#105962そのものが変化したのか、参考人#105962そのものに関係する記憶が改竄されているのか、あるいはそれとは別の、実態を把握することのできない別の事象の波及効果として違和感を覚えるのかは定かではありません。しかしながら、何らかの形で事案#105962が存在している事そのものについては、関係する局員の間で意見の一致を見ています。

これまでのところ、事案#105962の原因については複数の仮説が提起されています。中でも有力な仮説として、以下に述べる仮説#105962-3があります。

[2003-11-29 Update]
本案件の仮説はいずれも不確かな根拠に基づく信憑性の薄いものであり、本稿に残しておく意義はありません。文書の更新に伴い、仮説の一覧を削除しました。過去の版については、リポジトリの履歴から個別に参照することができます。

[2004-02-26 Update]
仮説一覧が前任担当者の独断で削除されていたため、過去の版から復旧させました。仮説はあくまで今後の調査の方向性を指し示すものであり、直近の信憑性に基づいて直ちに削除される類の情報ではないことは明白です。さらなる仮説の提案も奨励されています。

[2004-09-19 Update]
仮説はいずれも不正確であるという裏付けが取れたため、再度本稿から除去しています。不正確な情報を残しておく必要はありません。過去の版が必要になった場合は、文書リポジトリにアクセスして当該版をリクエストしてください。

[2005-06-13 Update]
前任担当者の解雇に伴い、本案件についても全面的な見直しが行われました。報告書から仮説がすべて除去されているのは明らかに不自然であり、何らかの意図を感じると言わざるを得ません。仮説一覧を復旧させ、かつ理由の無い文書の変更を禁止する措置を取りました。この措置は解除されるべきではありません。

[2006-03-07 Update]
長期間案件に動きが見られなかったため、文書の変更禁止措置の解除と、仮説一覧の本文からの除去を再実行しました。本案件は終結フェーズに向けて動くべき案件と認識しており、最終報告書を提出する準備が進められています。

[2006-12-22 Update]
度重なるレベル変更と共に、末尾に付与している仮説一覧についても不審と判断せざるを得ない編集が繰り返されていることが分かりました。看過できるものではありません。文書を現状復旧すると共に、編集時に意図を明確にさせなければなりません。局内で使用するリポジトリ構築用ソフトウェアの更新を要求します。

[2007-07-23 Update]
案件の事実上の無力化成功に伴い、文書の編集禁止措置が解除されました。すべての事案が申し出た人間の思い込みであると確定したため、仮説一覧についても削除しています。これ以上の編集は必要ありません。


Supplementary Items:
本案件には、1件の付帯資料があります。適切なセキュリティクリアランスを持つ局員のみが、付帯資料を参照できます。


  [No.1273] #105962付帯資料1 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/28(Tue) 21:18:59   59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Appeindix 1:
この付帯資料に記載されている事項は、以前は本文に記載されていました。2003-11-24時点で、当時の案件担当者の手により本文から付帯資料へ転記されています。転記と同時に担当者から中央統括部へ「案件担当者は参照不可能に設定して欲しい」との依頼が行われ、要求に沿って案件#105962の担当者は付帯資料1へのアクセスが完全に禁止されるようになりました。本文についても、案件担当者が参照した場合は「付帯資料は存在しない」との偽の文言に置き換えられるようになっています。現在この付帯資料を参照できるのは、レベル5以上のセキュリティクリアランスが割り当てられている局員に限られます。

付帯資料の本文は以下の通りです:



[2003-11-21 Update]
当局が確認している中で最古の事例におけるヒアリングにて、違和感を申し出てきた市民が以下のような証言を残しています。

・”参考人#105962は以前よくメタモンを帯同させていたが、最近はその姿を見ていない。”
・”メタモンが居なくなった時期と参考人#105962の様子が変わったのは、記憶が正しければほぼ同時期だった。”
・”以前、参考人#105962がメタモンを人間に変身させているのを見たことがある。”
・”参考人#105962に直接聞いた話では、メタモンは野に返したとのことだった。”

これらの証言に関して、それぞれの裏付けを取るための調査が行われる予定です。


  [No.1274] #131900 「キリンリキの『けんか別れ』」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/29(Wed) 20:23:09   50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

*前書き*
このお話を執筆するに当たって、以下に列挙する記事/ツイートを原案とさせていただきました。

1)海外の共同創作サイト「SCP Foundation」にて、Tanhony様が投稿された記事である「SCP-1319」。
 → http://www.scp-wiki.net/scp-1319
2)上記1)の記事を、csshow様が日本語に翻訳し、「SCP Foundation 非公式日本語訳wiki」に投稿されたもの。
 → http://scpjapan.wiki.fc2.com/wiki/SCP-1319
3)流れ水(@flumen_aquarium)様が2015年4月27日 17:42に投稿された以下のツイート。
 → https://twitter.com/flumen_aquarium/status/592609863252844544

この場をお借りして、心より感謝申し上げます。








Subject ID:
#131900

Subject Name:
キリンリキの『けんか別れ』

Registration Date:
2011-10-19

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
携帯獣#131900-1及び携帯獣#131900-2は個別の携帯獣として管理し、それぞれに対して個別に養育担当者を割り当ててください。少なくとも4人以上のレベル3セキュリティクリアランスを保持する局員から承認を得ない限り、携帯獣#131900-1と携帯獣#131900-2を引き合わせたり、同一のフロアに収容したりしてはなりません。両者は互いに対して非常に強い敵意を持っているため、予期せぬ事故や収容違反を起こす虞があります。現在は事故防止のため、携帯獣#131900-1はジョウト地方エンジュシティ第四支局に、携帯獣#131900-2はジョウト地方エンジュシティ第二支局へ収容されています。物理的な距離が相応に離れているため、偶発的な接触の可能性は無視できるレベルにまで低下しているものと考えられます。

携帯獣#131900-1は通常のキリンリキと食性が共通するため、十分な量の牧草と果実を日々与えてください。詳細については、基礎資料リポジトリに存在する携帯獣標準養育手順書の番号203「キリンリキ」を参照してください。一日のうち10:00と15:00の2回それぞれ一時間ずつ、収容されているジョウト地方エンジュシティ第四支局の敷地内を散歩させるようにしてください。携帯獣#131900-1の養育を担当する局員は、極力携帯獣#131900-1に接触しないようにしなければなりません。これは携帯獣#131900-1との接触が人体に影響を与えるわけではなく、携帯獣#131900-1の気分次第で接触に不快感を示し、局員に攻撃の意志を見せる可能性があるためです。

携帯獣#131900-2は通常のキリンリキと食性が著しく異なっています。携帯獣#131900-2には一日に3度、新鮮な獣肉または魚肉を500g程度与えてください。携帯獣#131900-2は魚肉よりも獣肉を好みますが、健康管理のため一日に獣肉が与えられる回数は最大でも2度までに制限されています。夜間(夏期は20:00以降、冬季は18:00以降を目安としてください)外出する事を好むため、局員が同伴して支局の敷地内を散歩させてください。携帯獣#131900-2の散歩は概ね30分以内に終了します。携帯獣#131900-1と同じ理由で、携帯獣#131900-2には極力接触しないように振る舞うべきです。興奮した際の攻撃性は携帯獣#131900-1よりも強いものになります。

参考人#131900-1及び参考人#131900-2と定期的にヒアリングのセッションを設け、携帯獣#131900-1と携帯獣#131900-2が現在の状態に至るまでの経緯の確認と、当局によるその後の経過観察結果を報告してください。参考人#131900-1及び参考人#131900-2については両者の関係が改善したことが認められたため、同時にヒアリングを実施することが望ましいです。両者の言い分を分け隔て無くノートへ記録し、ヒアリングの終了後に整理を行います。


Subject Details:
案件#131900は、未知の事象により特異な状態に陥ったキリンリキ(携帯獣#131900)と、それに掛かる一連の案件です。

2011年8月下旬頃、後に参考人#131900-2と認定されるジョウト地方コガネシティ在住の16歳の女性が、最寄りの支局であるジョウト地方コガネシティ第七支局の窓口へ「キリンリキが2つに分裂した」という緊急通報をしてきたことにより、本件は管理局の知るところとなりました。参考人#131900-2からヒアリングを実施していた最中、後に参考人#131900-1と認定される17歳の男性から「2つに分かれたキリンリキに襲われている」という通報があり、当局は2件が明確に関連しあっているものと断定、携帯獣#131900の確保に乗り出しました。延べ10名の人間の局員と6名の携帯獣の局員が動員され、携帯獣#131900は成功裡に捕獲されました。

携帯獣#131900はかつて何ら異常な点の無い正常なキリンリキでしたが、参考人#131900-1及び-2の申し出通り、未知の理由により二体の生命体に分離しています。携帯獣#131900は正常なキリンリキの前半身と同じく後半身に分かれており、黄色い地肌と黒い地肌が重なり合う中心の地点で完全に切断されたような状態になっています。当局では前半身部分を携帯獣#131900-1、後半身部分を携帯獣#131900-2と認定し、異常な携帯獣として収容する事を決定しました。

携帯獣#131900-1は、先述した通りキリンリキの前半身に当たる携帯獣です。後半身が無いため、常に這うようにして移動します。自分の半身が無いことに苦痛や困惑を示している様子はまったく見受けられず、また各種の検査においてもそれらの兆候は見受けられません。一般的なキリンリキが行使できるほとんどの技能を行使することができますが、後半身が物理的に必要になる行動、例えば後ろ脚で身体を支えて前足で地面を揺らすといったものは行使できません。携帯獣向けのデバイスは例外なく対象を「キリンリキ」と認識し、解剖学的に正常なキリンリキ向けに作られた処理を正しく実行する事ができます。

携帯獣#131900-2はキリンリキの後半身、すなわち肌の黒い部分に当たる携帯獣です。携帯獣#131900-1とは異なり、こちらは二本足で立って歩くことができます。半身が無いことに違和感を覚えていないのは携帯獣#131900-1と同様です。キリンリキが行使できる技能のうち、所謂サイコキネシス系に属する技能は行使できませんが、二本の足のみで小規模な地震を起こしたりすることが確認されており、物理的な能力は携帯獣#131900-1を上回っています。各種デバイスは概ね「キリンリキ」と認識しますが、一部のものは認識エラーを起こします。認識エラーを起こすデバイスはいずれも携帯獣の構成について厳密なチェックを行っているものであり、これは正常な動作であることが確かめられています。

かつて同一の存在であったにもかかわらず、携帯獣#131900-1と携帯獣#131900-2は互いに対して非常に強い敵意を抱いています。事案初期に局員が保護のために駆け付けた際は両者が激しく噛み付き合うような状態であり、放置しておけば互いを殺傷しかねない状況でした。保護に当たった局員は携帯獣#131900-1及び-2に対して個別に対応する事を提案、それぞれに数名の局員が当たることで捕獲を成功に導きました。その後現在の収容手順が制定され、地理的に離れた拠点へ個別に収容することでほぼすべての問題が解決されました。

従前の解剖学的に正常なキリンリキだった頃の性格的特徴は、携帯獣#131900-1にも携帯獣#131900-2にもまったく受け継がれていません。参考人#131900-1及び参考人#131900-2の証言によると、携帯獣#131900-1と携帯獣#131900-2に分離する以前のキリンリキは穏やかで知的な性格であり、人に対してなれやすい性質だったとのことですが、携帯獣#131900-1についても携帯獣#131900-2はいずれも気性が荒く攻撃的で、一部の親しい者を除いたほとんどすべての局員に強い警戒心を抱いています。キリンリキが携帯獣#131900-1と携帯獣#131900-2に分離した正確な理由は明らかになっていません。また、分離して尚生存している原理も不明なままです。現在の案件対応方針は、これらの究明に重点が置かれています。

当初参考人#131900-1及び-2は混乱が激しく、経緯について説明することが困難な状態でしたが、後に参考人#131900-2が平静さを取り戻し、現在に至るまでの経緯について局員に語りました。

以下は局員が参考人#131900-2にヒアリングを実施した記録の一部を、局員の許可を得てテキストに書き起こしたものです:


---------- 記録開始 ----------

局員A:
キリンリキの件について、詳しくお聞かせ願えますか。

参考人#131900-2:
あんなことになるなんて、思ってなかった。[携帯獣#131900のかつての愛称] ちゃんが、2つに分かれるなんて……あたしと [参考人#131900-1] がケンカしたせいで、あんなことに……

局員A:
失礼ですが、[参考人#131900-1] さんとはどのような関係ですか。

参考人#131900-2:
兄です。下の方の。

局員A:
ご兄弟であることは理解しました。しかし、「下の方」とはどういうことでしょうか。

参考人#131900-2:
もう一人兄がいたんです。[参考人#131900-1及び-2の兄の名前。個人名に付き秘匿] って名前です。3つ年上…… [参考人#131900-1] から見ると2つ年上で、大学に通ってました。けど……一ヶ月くらい前に、交通事故で死んじゃって。

局員A:
それは……お気の毒に。

参考人#131900-2:
あたしと [参考人#131900-1] が束になっても全然かなわないくらい強いトレーナーで、全国大会でベスト8に残ったこともあるんです。将来はプロになるって言ってて、もういくつかの会社から声も掛かってたんです。そのすぐ後だったから、すごくショックで。

局員A:
もしかして……昨年のジョウトリーグ秋大会で、ヘルガーを破って優勝した、あのキリンリキのトレーナーですか?

参考人#131900-2:
あ――そうです! 知ってたんですね……

局員A:
偶然、あの時の試合を観戦していたのを思い出しました。つかぬことをお伺いしますが、あなたと [参考人#131900-1] さんの間で2つに分かれたキリンリキというのは――。

参考人#131900-2:
そうです。あの時、兄が戦わせていたキリンリキです。兄がまだトレーナーになったばっかりの頃に仲良くなって、それからずっと一緒にいたんです。

局員A:
そういうことだったんですね。では――キリンリキが2つに分かれるまでの経緯を話してくださいますか。

参考人#131900-2:
兄が死んでお葬式が済んでから、兄の持ち物の整理をしてたんです。あまり物を買わない性格だったから、3日くらいでほとんど整理がついて、それで最後に残ったのが、兄の連れてたポケモンで。

局員A:
その中に、あのキリンリキも居たと。

参考人#131900-2:
そうです。あたしも [参考人#131900-1] も、どうしてもキリンリキが欲しかったんです。兄が大切にしてたポケモンですし、すごく強いのも分かってましたし。

局員A:
となると、[参考人#131900-1] さんと取り合いになる。

参考人#131900-2:
[局員A] さんの言う通りです。すごい言い争いになりました。あたしの方が兄に可愛がってもらってたとか、[参考人#131900-1] の方がトレーナーとして目を掛けてもらってたとか。最後の方は、兄が運び込まれた病院に先に着いたのはどっちだったとか、そんな、ホントすごくつまんないことで延々とケンカして。

局員A:
キリンリキは、その様子を見ていたのですか。

参考人#131900-2:
ずっと見てました。寂しそうな目をして、あたしの側へ来たり、[参考人#131900-1] の近くへ寄ったり、どうすればいいのか分からないみたいで。でも、その時のあたしは、とにかくキリンリキが欲しくて。

局員A:
その後、どうなったのですか。

参考人#131900-2:
キリンリキはあたしのだ、キリンリキは俺のだ、って言い合ってた時に、急に……「バリッ」って音がして、キリンリキが2つに分かれたんです。

局員A:
それで、今のような形に?

参考人#131900-2:
はい。どういうこと? っておろおろしてる間に、キリンリキがキリンリキ同士でケンカを始めて、止めようとした [参考人#131900-1] にも噛み付いたりして、もうどうしようもなくなって、それで……

局員A:
我々に通報した、ということですね。

参考人#131900-2:
そうです。その通りです。

---------- 記録終了 ----------


このヒアリングから数週間後、参考人#131900-1にもヒアリングを行う機会が設けられました。このヒアリングは上記の局員とは別の局員が担当しましたが、今回担当した局員は事案の背景について予め理解していました。

以下は局員が参考人#131900-1にヒアリングを実施した記録の一部を、局員の許可を得てテキストに書き起こしたものです:


---------- 記録開始 ----------

局員B:
今回の事案について、何か思うところがあるとのことですが。

参考人#131900-1:
俺、いろいろ考えたんだ。キリンリキがなんで2つに分かれちまったのかってことを。話したからってどうにかなるってわけじゃねえけど、でも、誰かに話したくて。

局員B:
お聞かせ願えますか。

参考人#131900-1:
あのさ、[局員B] さん。「北斗の拳」ってマンガ、知ってるかな。

局員B:
名前は知っています。詳しい内容までは、読んだことがないので分かりかねますが。

参考人#131900-1:
そこにさ、国王やってる親父と、その子供の3人の兄弟が出てくるんだ。だいぶ後半なんだけど。兄弟だけど平等にって言って育てられて、誕生日とかにも一つの物を3つに分けてもらって。イメージできるかな?

局員B:
続けてください。

参考人#131900-1:
3人が大きくなったときに、親父がロバだったか馬だったか、とにかく動物をプレゼントしようとしたんだ。今までみたいに。

参考人#131900-1:
けど、そいつは生き物だから分けられない。取り合いになって無理に分けようとして、それでそいつを死なせちまった。分けられない物を取り合って、結局ダメにしちまったんだ。

局員B:
あなたが仰りたいのは、つまり――。

参考人#131900-1:
分かるだろ? キリンリキは俺と [参考人#131900-2] が取り合ったから、2つに分かれたんだ。バカみたいにつまらないこと言い合って、兄貴が死んだばっかりだってのにケンカして、そんなことしてたから、あいつは2つになっちまったんだ。

局員B:
キリンリキがあの様な状態になったのは、あなた方に原因があると。

参考人#131900-1:
俺にはそうとしか考えられねえんだ。あいつは、キリンリキは、俺たちがケンカしてる目の前で2つに分かれたんだ。

参考人#131900-1:
キリンリキはケンカばっかりしてる俺と [参考人#131900-2] を懲らしめるために2つになったのか、それとも律儀に俺たちの両方に付いていこうとして千切れたのか、今はもうどっちか分からねえ。けどどっちにしろ、俺たちは間違ってた。俺と [参考人#131900-2] は、あんなくだらない言い争いなんてするんじゃなかったんだ。

局員B:
[参考人#131900-2] さんからも、同じ意見を頂いています。私たちが間違っていた、と。

参考人#131900-1:
違いねえ。昨日面と向かって話したんだ。こんなつまらねえケンカは止めよう、天国の兄貴が安心できねえって。遠回りになっちまったけど、俺と [参考人#131900-2] はケンカを止めたんだ。

参考人#131900-1:
けどよ……俺たちが仲直りしても、もう元には戻らねえんだな。

局員B:
元に戻らない、というのは、どういうことですか。

参考人#131900-1:
あいつが――キリンリキが、ああやって「けんか別れ」しちまったってことは、取り返しが付かねえんだな、って。


---------- 記録終了 ----------


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。








*後書き*
このお話を執筆するに当たって、以下に列挙する記事/ツイートを原案とさせていただきました。

1)海外の共同創作サイト「SCP Foundation」にて、Tanhony様が投稿された記事である「SCP-1319」。
 → http://www.scp-wiki.net/scp-1319
2)上記1)の記事を、csshow様が日本語に翻訳し、「SCP Foundation 非公式日本語訳wiki」に投稿されたもの。
 → http://scpjapan.wiki.fc2.com/wiki/SCP-1319
3)流れ水(@flumen_aquarium)様が2015年4月27日 17:42に投稿された以下のツイート。
 → https://twitter.com/flumen_aquarium/status/592609863252844544


  [No.1275] #89244 「おまけ付き自動販売機」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/04/30(Thu) 21:43:52   62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#89244

Subject Name:
おまけ付き自動販売機

Registration Date:
1998-04-13

Precaution Level:
Level 3


Handling Instructions:
機器#89244はホウエン地方フエンタウン第四支局の施錠可能な倉庫へ収容し、他のオブジェクトと最低でも互いに3m以上の距離を置いてください。機器#89244は通電しない限り活性化しないため、常にコンセントが抜かれた状態を保持します。実験目的で機器#89244を活性化して利用する場合は、事前に様式F-89244-1に必要な事項を記入し、ワークフローを回付しなければなりません。実験で得られた物品#89244は内容を解析の上、フエンタウン第四支局に隣接する第五低異常性取得物保管庫のブロック4-Aから5-Fにかけて分類の上保管してください。

機器#89244を用いた実験、特に物品#89244の排出を伴う実験を行う場合、機器#89244の半径50m以内にポケモントレーナー向けに作られたアイテムを、最低でも(実験を行う回数+20)個以上、適度に間を開けて配置してください。実験中にアイテムが一部、またはすべて消失することがありますが、これは機器#89244の正常な挙動です。この性質のため、実験参加者は実験チャンバーに不要なアイテムを持ち込んではなりません。

これまでの実験で機器#89244から得られた物品#89244とその概要の一覧は、リストL-89244-2を参照してください。特別な実験を行う場合を除いて、物品#89244の持ち出しは認められません。ただし一部の物品#89244については、本案件を含む案件対応に際して上長の承認付きで使用が許可される場合があります。使用が特例的に認められている物品については、リストL-89244-2の「特例利用可能」列を参照してください。


Subject Details:
案件#89244は、飲料水とともに特異な性質を持つ様々なアイテムを排出する自動販売機(機器#89244)と、それに掛かる一連の案件です。

機器#89244が初めて発見されたのは、1998年2月12日の事です。旅行中のトレーナーがジョウト地方チョウジタウンの道沿いに置かれていた自動販売機で飲料水を購入したところ、目当ての商品と共に黒いビニールに入れられた不審な製品が排出されたことに気が付きました。トレーナーがその場でビニールを開封したところ、後に物品#89244-1と認定されるアイテムが封入されていたことが判明しました。不審に感じたトレーナーが最寄りのポケモンセンターへ物品を届け出たことにより、本件は当局の知るところとなりました。

局員が機器#89244の所有者を確認したところ、所有者は「自販機を置く契約を交わした記憶はあるが、飲み物以外の物が出てくるとは聞いていない」と回答し、機器#89244についてほとんど知識がないことが明らかになりました。局員が所有者を説得の上機器#89244を接収、代替の自販機を手配しました。この一連の作戦行動により、機器#89244は平和裡に当局の所有物となりました。

機器#89244は、ある飲料水メーカーのロゴが印字された特徴のない自動販売機です。当局の問い合わせと内部調査により、飲料水メーカーは機器#89244の異常性について何ら知識を持っていない事が分かりました。この事から、機器#89244は元々正常な自動販売機だったものを、何者かが後から改造を加えたものと見られています。異常性の無い同一型の機器と比較していくつかの箇所に人為的に手を加えたと思しき点が見受けられるのも、この仮説を補強する一因となっています。

通電され、かつ販売するための飲料水が十分補充されている場合に、機器#89244は活性化します。利用者が飲料水を購入できるだけの硬貨または紙幣を投入し、目的の商品に対応するボタンを押下すると、機器#89244は飲料水と共に黒いビニールに封入したアイテム(物品#89244)を排出します。飲料水についてはあらゆる検査で一切の異常性が認められず、事前に補充された製品をそのまま通常の機構で排出しているに過ぎないことが分かりました。

物品#89244は、機器#89244が排出する未知のアイテム群の総称です。外見は概ね市販されているポケモントレーナー向けのアイテムと一致していますが、性質は既知のものと相違することがほとんどです。機器#89244の内部調査では、物品#89244が物理的に保管されているスペースを見つけることはできませんでした。しかしながら後述する性質より、機器#89244は物品#89244を無尽蔵に排出できるわけではないことが分かっています。

繰り返し行われた実験で、購入する飲料水の種類と排出されるアイテムに相関関係は無いことが明らかになっています。以下はこれまでの実験で排出されたアイテムの抜粋です:


物品#89244-1:
機器#89244の異常性が初めて明らかになった際に回収されたアイテム。外見は一般に「スーパーボール」の名前で知られるモンスターボールの上位機種と完全に一致するが、中に三食分の携帯用非常食が入っていた。非常食を取り出した後は通常通り使用可能だが、捕獲性能はモンスターボールに準じていた。

物品#89244-2:
外装に「まひなおし」とラベリングされているが、実際には解毒作用を持つ医薬品。

物品#89244-3:
汎用的携帯獣技能習得装置(一般に「技マシン」と呼称されているデバイス)。調査により、内部には「たいあたり(ポケモンリーグ公認の名称に拠る)」が記録されていることが分かった。これまで実験したほぼすべての携帯獣が習得できることが判明している。

物品#89244-4:
外見上は一切の差異が見受けられず、少なくとも人間に対しては情報災害の効果も持たないことが分かっているが、野性の携帯獣に投擲すると例外なく恐れをなして逃げていくため繰り返し使用可能なピッピ人形。

物品#89244-5:
一般の自販機で市販されているものと同じラベリングがされた「おいしいみず」。携帯獣に飲ませると、体力の回復効果に加えて一時的に水属性の攻撃に対する強い耐性を得ることが分かった。耐性は概ね1時間ほどで解除される。

物品#89244-6:
かつて放送されていたラジオ番組である「ポケモンの笛」の音色が収録されたオーディオレコーダー。音質はかなり劣化している。再生すると麻痺状態にある携帯獣が健康な状態に回復する。睡眠中の携帯獣を起こす効果は観測できなかった。

物品#89244-11:
通常通り膨らませることができる風船。携帯獣に装備させると、風船そのものに向けて行われた攻撃を完全に回避する性質を持つ。自然に空気が抜けるか、携帯獣が自発的に風船を手放さない限り装備者を浮遊させ続ける効果がある。

物品#89244-18:
デボンコーポレーション社製の特殊用途向けの双眼鏡「デボンスコープ」に酷似した双眼鏡。使用すると、一部の人間が点滅して表示される。点滅にどのような意味があるのか、また点滅する人間の基準が何かは現在調査中。

物品#89244-21:
外見上不審な点が見られない「あなぬけのひも」。使用するといかなる場所からでも使用者の自宅へ帰還することができる繰り返し使用可能かつ、複数の人間が同時に使用可能。過去の事例では、一般に「やぶれたせかい」として知られる異常次元に関わるレベル5事案に巻き込まれて行方不明になった局員2名が、このアイテムを使用して無事に帰還したというものがある。恐らく次元を超えて使用可能と推測。

物品#89244-25:
一見したところ異常性の見受けられない「なみのりメール」50通。メールの用途を口頭で述べる(「お礼状」「近況報告」)と、それに適した定型文が記入される。定型文が記入される原理については不明。

物品#89244-33:
一般に「でんきだま」と呼ばれる黄色い球体に類似したアイテム。ピカチュウ以外の電気属性を持つ携帯獣に持たせると、実測値でおよそ1.25倍ほどあらゆる技の威力が上昇する(電気属性以外の技能も含む)。ピカチュウが所持した場合、何ら効果を発揮しない。


これまでの実験から、機器#89244は「概ね無害で役に立つが、奇妙な性質を持つ」アイテムを排出する傾向があります。明らかに危険なアイテムやそれほどではないにしろ使用者に何らかの害を及ぼすアイテム、あるいはまったく用途不明なアイテムが排出された記録はありません。現状ではアイテムの生成過程が不明であることと、正確な効果が明らかになっていないアイテムが数多く存在することから、機器#89244及び物品#89244を積極的に利用することは避けるべきです。しかしながら一部の局員からは、有用な物品#89244については申し出に応じて貸与すべきとの意見も上がっています。

実験の過程で一時的に機器#89244が応答しなくなり、直後に実験チャンバー内に置かれていたモンスターボールが消失するという事象が発生しました。そしてモンスターボールの消失と共に自販機が稼働を再開し、外見上モンスターボールと一致するインテリアアイテムを排出するという事象が観測されました。この事象から、機器#89244は内部に保持している物品#89244の材料となるアイテムを、未知の方法で周囲から収集していることが判明しました。不慮のアイテム喪失を防ぐため、実験に際して周囲に材料となるダミーのアイテムを配置することが提案されました。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1276] #122654 「15体のパッチール」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/01(Fri) 19:52:40   54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#122654

Subject Name:
15体のパッチール

Registration Date:
2008-11-13

Precaution Level:
Level 1


Handling Instructions:
携帯獣#122654-1から-15は一つの大部屋へ収容し、判別を可能にするために腕にタグ付きのブレスレットを着用させてください。それ以外の取扱いについては、一般的なパッチールと変わるところはありません。携帯獣#122654-1から-15の養育担当に割り当てられた局員は、必要に応じて基礎資料リポジトリに存在する携帯獣標準養育手順書の番号327「パッチール」を参照することができます。携帯獣#122654-1から-15についてはいずれも局員と友好的であるため、収容に際して特段注意すべき所はありません。

収容中に携帯獣#122654-1から-15について何らかの特異な挙動や動きが観察された場合は、直ちに上長に報告の上対策を協議することになっています。ただしこれまでのところ、実際に携帯獣#122654-1から-15が通常個体群と異なる挙動を見せた記録はありません。この手順は緊急事態に備えて制定されたもので、通常手順の中に含まれるものではありません。


Subject Details:
案件#122654は、集団で生活を営む15体のパッチール(携帯獣#122654-1から-15)と、それに掛かる一連の案件です。

2008年10月24日、ホウエン地方フエンタウン近辺でフィールドワーク中の局員が、集団で行動するパッチールの群れを発見しました。当初は特段の異常性の無い通常個体群だと考えられていましたが、群れを観察した局員が後述するある特徴に気付き、異常事案の虞有りとして上長へ報告を行いました。報告を受けた上長は数名の局員を派遣、第一発見者となった局員と共にパッチールの群れを保護しました。パッチールの群れは局員たちに友好的な態度で接し、また彼ら自身が安全な住処を求めていたこともあって速やかに保護に応じました。その後の収容においても問題は無く、現在の状況に満足しているようです。

携帯獣#122654-1から-15は、それぞれの個体は何ら異常性の見られない一般的なパッチールです。しかしながら15体全員について、体の模様が完全に一致しているという他では見られない特徴を持ちます。体表面の精密スキャンを全個体に対して実施し、厳密な相互比較検証を複数回に渡って実施しましたが、検証の結果はいずれもすべての個体が他個体と体の模様が完全一致するというものになりました。

通常パッチールの体表面にできる模様は、人体の指紋のように個体ごとにすべて異なるという認識が一般的ですが、厳密には約 1 / 4,294,967,296 の確率で一致する可能性があるというのが専門家の見解です。しかしながらこれは相当に低い確率であることは言うまでもありません。携帯獣#122654-1から-15については15体すべてが一致しているために、単純な計算では 1/ 4,294,967,296 ^ 15 となり、これは 1 / 3.121749e+144 に相当します。いずれにせよ、通常ではまず起こり得ないことです。

当初考えられたのは、携帯獣#122654-1から-15が何らかの方法、特にデジタル的な方法を用いて複製されたというものです。しかしながら精密検査の結果、個体ごとに多数の相違点があることが判明し、一部の個体については血液型や歯形といった複製した場合に一致すべき箇所が一致していないことも分かりました。データ化した状態のスキャンでも複製された形跡を見つけることができず、得られたデータはいずれも携帯獣#122654-1から-15が自然界で生まれ育った個体群であることを示しています。

携帯獣#122654-1から-15の体表面にできる模様が完全に一致した理由は不明です。また、携帯獣#122654-1から-15がどのようにして現在の群れを形成したのかについても分かっていません。これまでのところこの個体群特有の性質や行動については観察されていませんが、継続的な観察が必要なものと考えられます。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1277] #48238 「カイナ北小学校の火災事件」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/02(Sat) 18:52:12   41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#48238

Subject Name:
カイナ北小学校の火災事件

Registration Date:
1985-04-15

Precaution Level:
Level 4


Handling Instructions:
事案#48238に関するすべての資料は電子化され、本案件専用のサーバに保管されています。案件担当者及び案件担当者から下位のセキュリティクリアランスを割り当てられた局員は、格納された資料を事前申請無しに閲覧する権限を持ちます。資料の持ち出しに関しては、当局が定める標準的な情報管理規約に準じます。原則として、局外に資料を持ち出すことは許可されません。

回収された検体#48238はフエンタウン北部に位置する当局のバイオリサーチセンターへ収容しています。すべての検体#48238は同一の異常性を示しているため、実験を行う際は例外なく書式F-48238-2に沿って必要な事項を記入し、ワークフローを回付する必要があります。施設の保安上の観点から、検体#48238は常に-60℃未満の環境で保管されなければなりません。検体#48238及び収容室に何らかの異常が検知された場合、直ちに武装した警備員が駆け付けることになっています。

事案#48238が発生したカイナ北小学校は、事件調査の名目で現状のまま保持されています。調査を行う場合は書式F-48238-3に沿って必要な事項を記入し、4名以上の拠点監督者から承認を得る必要があります。さらに、調査に際しては最小でも3名以上の局員が参加しなければなりません。これは保安上の措置であると同時に、情報漏洩を防止するものでもあります。違反した場合、当局の定める規約に沿って懲罰を受ける可能性があります。


Subject Details:
案件#48238は、カイナシティ北部にあるカイナ北小学校で発生した大規模な火災事件(事案#48238)と、それに掛かる一連の案件です。

事案#48238が発生したのは、1985年4月4日のことです。この日の午後1時頃、消防に「カイナ北小学校で火災が起きている」という緊急通報が多数寄せられ、消防隊員が現場へ急行しました。消防隊員と地元住民の証言によると、消防隊が駆け付けた時点で既に火災は校舎の全域に広がっており、周囲への延焼も始まっているという重篤な状態でした。およそ4時間後に火が消し止められ、警察と消防による現場検証が行われましたが、その直後に異常性を確認、当局に事案が持ち込まれました。

通報を受けた局員は、一部が現場に駆け付けた保護者や関係者の説得に当たり、残りは消防隊員や警官から事情の説明を受けました。被害の大きさに伴い多くの保護者が現場へ押し寄せており、初期調査に影響を来す恐れがありました。当局は現状保全のため例外的にプロトコルUXに基づく広範な記憶処理を行い、保護者・関係者の全員を最寄りの拠点へ移送しました。加えて事案処理チームに連絡し、死亡した児童に対応する擬似遺骨を作成するよう依頼しました。これをもって事案の初期処理が完了したと判断し、現場から合計483体の検体#48238が運び出され、フエンタウン北部にある当局のバイオリサーチセンターへ移送されました。

検体#48238は、カイナ北小学校及び同校の体育館の焼け跡から発見された、計483体の児童の遺体です。特筆すべき点として、校舎が全焼するほどの大規模な火災に巻き込まれたにもかかわらず、すべての検体#48238について一切の火傷や負傷の形跡が見られません。そればかりか、毛髪や体毛までもが完全に生前の原形を止めています。着用していた衣服や所持していた物品は例外なく焼失していますが、身体そのものには何ら影響を及ぼしていないようです。

もう一つ特筆すべき点として、すべての検体#48238が極めて高い体温を示しています。個々に差はありますが、最低でも300℃を下回るものはなく、高いものでは実に450℃という検査結果が出ています。この体温にもかかわらず、検体#48238その物は先述した通り原形を保ち、発火/溶解することはません。外見上一切の異常な点が見られないにも関わらず、体温だけが明らかに異常なレベルで高くなっているのが検体#48238の特徴になります。

すべての検体#48238の死亡理由は、火災に伴い発生した有毒ガスを吸入したことによる窒息死です。定期的なバイタルサインのチェックにより、検体#48238の生命活動は間違いなく停止していることが確かめられています。しかしながらそれにも関わらず、検体#48238極端に高い体温のためか、またはそれとは異なる未知の理由により、検体#48238は腐敗の兆候を見せていません。本稿執筆時点で収容から丸3ヶ月が経過していますが、すべての検体#48238が収容直後の状態から変化していないことが分かっています。

事案#48238に伴う火災は、検体#48238が何らかの理由により突如として高温になり、それに伴い周囲のものが発火したものと推定されます。検体#48238そのものが一斉に出火元となったため、体育館を含めた校舎が全焼する大火災になったというのが有力な仮説です。警察と消防による現場検証でも明確な出火元を突き止められず、得られた証跡は多数の箇所から一斉に発火したというもので、当局の提唱した仮説を裏付けるものとなっています。

検体#48238の性質により体細胞のサンプル取得は難航しましたが、いくらかの失敗を経て取得に成功し、詳細な解析が行われました。当局による解析の結果は、何らかの理由により体細胞が携帯獣の「ブーバー」のそれに近い構造になっているというものでした。これは検体#48238が非常に高い体温を示していることと、身体には体温の影響が及んでいないことの双方の事実に合致するものです。

後に生存者の一人である教員に対し、ヒアリングを行う機会が設けられました。教員によると、火災当日の給食について教員の間から「味がおかしい」という声が複数上がっていたとのことです。奇妙なことに、児童の中に給食について異常を訴える者はまったくおらず、ほぼ全員が給食を残すことなく食べたことが分かっています。給食を食べた教職員には検体#48238のような異常が見られないことから、児童にのみ異常を齎す何らかの要因が給食にあったと推定されています。当日給食センターで勤務していた従業員全員にヒアリングを行いましたが、これまでのところ不審な点は見つかっていません。

全校生徒が死亡するというあまりの被害の規模の大きさから、遺族の間で原因究明を求める声が強く上がり、当局としても対応に追われました。議論の末、校舎の老朽化と消防設備の不備、そして外部からの放火犯の侵入というカバーストーリーが用いられることが決定しました。しかしながら一部の遺族はこの調査結果に納得しておらず、さらなる調査を要求しています。火災発生直後に当局が調査に乗り出したことから、何らかの証拠隠滅や情報隠蔽が行われているものと考えているようです。現時点では、案件#48238及び事案#48238に関する情報を公開する予定はありません。


[1986-01-24 Update]
一部の局員から、検体#48238を遺族の元に返却すべきとの意見が挙がっています。検体#48238の性質上外部へ持ち出すことは困難ですし、望ましいことではありません。局員はプロフェッショナルとして、対象を不幸にして亡くなった児童の遺骸ではなく、異常性のある危険なオブジェクトとして厳密に扱わなければなりません。よって、この申し出は現在無条件で却下されています。繰り返し申し出るようなことがあれば、規律違反として処罰の対象になります。

しかしながら実際問題として、生前の面影を色濃く残した多数の幼い児童が、冷凍庫のような場所で全裸にされ服も着せられずに無造作に横たえられているという光景は、精神衛生上決して好ましいものではないことも十分承知しています。我々は冷徹なプロフェッショナルであると同時に、血の通った人間でもあることを忘れてはなりません。特に同年代の子供を持つ局員にとっては、本案件に関わることそのものが苦痛であったとしても何ら不思議なことではありません。

他の案件に携わる局員についても同様ですが、すべての局員はいつでもカウンセリングを受ける権利を持っています。精神的に疲弊していると感じたとき、現在の職務に嫌悪感や虚無感、無力感を感じるようなことがあれば、速やかにカウンセリングを受けるべきです。上司は局員の状態をよく観察し、彼らが誇りを持って職務に携われるよう配慮しなければなりません。そしてそれは、自身についてもまた同様です。

局員が精神に変調/不調を来したことで、重大な収容違反を発生させた、あるいはその寸前に達したような事例はいくつもあります。それに比較すれば、局員に長めの休暇を与えてリフレッシュを促したり、報奨や賞賛で彼ら/彼女らの労をねぎらうようなことは、とてつもなく安いコストであることが理解できるでしょう。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1278] #115481 「行き倒れたトレーナー」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/03(Sun) 19:48:06   46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#115481

Subject Name:
行き倒れたトレーナー

Registration Date:
2006-08-06

Precaution Level:
Level 3


Handling Instructions:
生体#115481は当局の保持する施設/装備では物理的な収容が困難であるため、現在は収容方法の確立に案件対応の重点が置かれています。これまでのところ生体#115481は人類に対して一切の攻撃性及び敵対心を見せていませんが、それとは無関係に収容手順は早急に制定されるべきです。現在、収容手順候補P-115481-22-RCが検証プロセスに入っています。検証プロセスをクリアした場合、P-115481-22-RCの内容が正式な取り扱い手順に反映されます。

市民やトレーナーから生体#115481、または生体#115481が擬態していると思しきトレーナーについて通報があった場合、通報者を安全な場所まで移動させ、局員が生体#115481の確保に向かいます。通常、生体#115481は人間に対して友好的であり、局員が素性を正した上で同行を求めた場合は問題なくこちらの指示に従うことが分かっています。局員は生体#115481を徒に刺激しないよう注意しつつ、最寄りの拠点まで同行を求めてください。

拠点への同行を求める場合も、拠点で生体#115481にヒアリングを実施する場合も、決して携帯獣を帯同させてはいけません。生体#115481の持つ特異な性質から、携帯獣の局員が在籍している拠点には生体#115481を進入させてはなりません。やむを得ず進入させる場合は事前に連絡し、すべての携帯獣の局員が退去したことを確認してから実施してください。


Subject Details:
案件#115481は、人間の子供に酷似した姿を持つ未知の生命体(生体#115481)と、それに掛かる一連の案件です。

生体#115481が初めて当局の知るところとなったのは、2006年7月上旬のことです。カントー地方セキチクシティ近辺の道路を散策していた市民が混乱した様子で当局に緊急通報を行い、その中で「トレーナーがポケモンを食べているのを見た」と証言したことで当局の注意を引きました。駆け付けた局員が市民から事情を聞いたとおろ、市民は18番道路の散策中、ポケモントレーナーと思しき人物が携帯獣を「異様な様子で」摂食している光景を目にし、当局へ連絡したとのことでした。

最寄りの拠点で装備を整えた局員が証言にあった現場へ向かうと、そこには概ね12歳頃に見える、一般的なポケモントレーナーの服装をした少女が倒れていました。局員が警戒しながら呼び掛けると、少女はすぐさま体を起こし「ご心配をお掛けしてすみません。もしよろしければ、最寄りの休憩所まで連れて行っていただけませんか?」と応答しました。局員は同行した別の局員と相談した上で、少女を一旦18番道路側のゲート付近まで連れていくことにしました。

少女を椅子に座らせ休ませる形にしてから局員が通報者に確認を取り、通報者に少女の風貌を確認させました。通報者は狼狽した様子で「間違いない」と繰り返し、この少女が通報にあった「ポケモンを食べていたトレーナー」であることが確認できました。安全のため通報者を帰宅させ、局員は少女に最寄りの拠点までの任意同行を求めました。少女は素直に任意同行に応じ、さらに「後ですべてお話しします」と付け加え、自らの性質について説明する旨を約束しました。

拠点内にある収容室でヒアリングが行われ、少女は事前の約束通り自身の持つ特異性について詳細な説明を行いました。その結果局員は少女が一般的な人間ではないことを確信、さらに案件として起票する必要があると判断し、拠点監督者と短い協議を行った後直ちに案件立ち上げを行いました。この時点で、少女と類似する特徴を持った生命体が生体#115481と分類され、少女自身は生体#115481-1として分類されました。生体#115481-1自身が語った自らの特徴と、当局が実施した調査により、生体#115481の特徴がある程度判明しました。

この初期情報に基づき各地域で調査が行われ、1ヶ月の間に新たに2体の生体#115481が確認されました(生体#115481-2及び生体#115481-3)。それぞれに任意同行を求め最寄りの拠点へ移送し、個別にヒアリングを実施しました。ヒアリングから得られた情報により、生体#115481の生態に関する詳細が明らかとなりました。

生体#115481は、概ね6歳から16歳頃までの明確な特徴を持たない少年少女に酷似した風貌を持つ、由来不明の未知の生命体です。出現する際は必ず衣服を身に纏っているように見えますが、これは実際には身体と一体化しており、分離させることはできません。ただし、衣服に相当する部分を含む身体全体について、生体#115481の意志に沿ってある程度変形/変色/変質させることができます。どのような状態にまで変化させられるかは明確ではありませんが、生体#115481-1の証言によれば「人間の子供のように見える姿」であればどのような形にもなり得るとのことです。この性質により、生体#115481には一般的な意味での性別は存在しません。また生体#115481自身も、いずれも「私には性別というものがありません」と語っています。

生体#115481は人間の口に相当する器官で発声や呼吸を行いますが、飲食物を摂取する場合は当該器官を使用せず、およそ60cmに渡って開くことのできる「獣の入り口」と生体#115481が呼んでいる器官で摂食活動を行います。この「獣の入り口」は生体#115481のどのような場所にも出現させることができ、身体に裂け目ができる形で出現します。「獣の入り口」は小型の携帯獣ならそのまま飲み込むことができ、ある程度大型の携帯獣であっても内部に引きずり込むことで最終的に全身を摂食します。生体#115481の内部は外見から推測できる以上の容量を持っているか、または未知の空間へ接続されています。具体的な内部の構造は明らかになっていません。これまでの記録では、生体#115481がその時取っていた姿の4倍以上の大きさを持つイワークを、尻尾から引きずり込む形で30秒前後で摂食したというものがあります。

先述した性質から、生体#115481は不定形生物と考えられます。しかしながら変身できる対象は限られているようで、人間の子供以外の姿、例えば成人に達した人間や携帯獣の姿は取ることができません。これは生体#115481が意識的に拒否しているのではなく、そのような機能を持たないことに起因するようです。その代わりとして、人間の子供をイメージさせる風貌であればどのような人物であっても瞬時に変身することが可能です。変身は少なくとも0.016秒以内には完了し、ハイスピードカメラを用いても変身プロセスを捉えることはできませんでした。生体#115481はこの能力を、後述する彼らの食性に利用していることが分かっています。

生体#115481は人間の子供、特に一般的なポケモントレーナーの風貌をした子供の姿に擬態します。擬態した状態で主に道端や山岳地帯にて待ち伏せを行い、接近してきた携帯獣を捕食する性質を持ちます。待ち伏せを行う際、あたかも行き倒れて動けなくなったような状態を装うのが特徴です。「人間の子供」と判断できる範囲内で様々な姿に擬態することが分かっていますが、彼らは特に幼い少女に擬態することを好んでいるようです。これは生体#115481の嗜好ではなく、より弱く見える存在に擬態することにより、獲物となる携帯獣をおびき寄せることが容易になるという観点からとのことです。

彼らが擬態している際に携帯獣ではなく人間が接近すると、人間から声を掛けられるか否かに関わらず必ず起き上がり、「最寄りの休憩所まで連れていって欲しい」と依頼します。人間が依頼に従って休憩所へ連れて行くと、一礼して「もう大丈夫です」と言い、それ以上接触を求めません。依頼を断ってその場へ放置された場合、生体#115481はそのまま行き倒れた状態に戻ります。こうして携帯獣を捕食しつつ、各地を特に目的も無く彷徨っているようです。

基本的に、生体#115481は自分自身を捕食しようとしてきた携帯獣を返り討ちにする形で捕食しますが、生体#115481-3から得られた証言によると「別の目的で近寄ってきた携帯獣も捕食する」とのことです。彼らの言う「別の目的」が何かは明確ではありませんが、いずれにせよ外見に拠らずいかなる携帯獣であっても捕食する獰猛さを持つことに変わりはありません。これまでのところ人間が捕食された、あるいは襲撃を受けた記録は存在せず、彼ら自身も「人間を襲うことは考えにも及ばない」「ましてや捕食することはあり得ない」と語っています。現状では人類に対する敵対心は持っていないと推定されますが、完全に安全であるとは断言できません。


[2006-09-17 Update]
収容中の生体#115481-1に依頼し、生体組織のサンプルを入手することに成功しました。サンプルを解析したところ、生物学的な構成がヒトに極めて近いことが明らかになりました。これは生体#115481がヒトに近似した存在であるか、あるいはヒト由来の生命体であることを示唆しています。今後さらなる研究が必要と推測されます。


[2006-10-02 Update]
生体#115481-1を収容していたカントー地方セキチクシティ第十支局にて、重大な収容違反が発生しました。当直の警備員が午前2時頃に確認したところ、生体#115481-1が収容室から消失していたことが分かりました。直ちに近隣一帯の捜索が行われましたが、生体#115481-1を発見することはできませんでした。収容室からは「しばらくの間お世話になりました。またケダモノを狩る旅に出ます」と書かれた書き置きが発見されたため、生体#115481-1は自発的に収容を破ったものと思われます。

後に収容室に取り付けられた監視カメラの映像を確認したところ、生体#115481-1がどのようにして収容を破ったかが明らかになりました。腹部に「獣の入り口」を開けた生体#115481-1は、自身の体を折り曲げるようにして「獣の入り口」へ頭部を挿入し、そのまま全身を「獣の入り口」へ飲み込ませました。全身が収まると同時に「獣の入り口」が閉じ、生体#115481-1は完全に消失しました。このことから、生体#115481が持つ「獣の入り口」はある種の異空間へ通じており、生体#115481はそこを自由に出入りすることができるものと考えられます。


[2006-10-05 Update]
生体#115481-1と同様の手順により、生体#115481-2及び生体#115481-3も収容室から消失しました。以後の行方は分かっていません。生体#115481-2及び生体#115481-3についても生体#115481-1と同様の書き置きを残しています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1279] #96561 「共用プリンター無断利用」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/04(Mon) 22:52:37   51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#96561

Subject Name:
共用プリンター無断利用

Registration Date:
2000-08-07

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
シンオウ地方ミオシティにあるポケモンセンターから、日次で不審な印刷物の出力がなかったかの報告が行われることになっています。担当者は報告内容を確認し、印刷物#96561に該当すると判断した場合は原本を送付するよう連絡してください。受領した印刷物#96561は管理局標準の手順でスキャンして電子化した上で、原本は拠点内の書庫4-Dにある青色のバインダーに綴じて保管してください。これまでのところ、印刷物#96561そのものに情報災害やその他の異常効果があった事例は確認されていません。

印刷物#96561の中には、全体で76ページと推定されるページ番号が付与されているものがあります(印刷物#96561-23)。印刷物#96561-23については他のものとは別の赤色のバインダーへ綴じ、ページ番号順にソートして保管してください。また、印刷物#96561-23が送付されてきた場合は、案件担当者は上長にその旨を報告してください。その際、発見された印刷物#96561-23のページ番号を併せて報告してください。


Subject Details:
案件#96561は、ポケモンセンターに設置された公衆端末に接続された共用プリンターから出力される不審な印刷物(印刷物#96561)と、それに掛かる一連の案件です。

2000年6月頃、シンオウ地方ミオシティにあるポケモンセンターに在籍する職員から「プリンターの利用履歴に無い奇妙な印刷物が残置されていた」という通報が寄せられました。局員が現場へ向かい確認したところ、後に印刷物#96561-1と指定される明らかに不審な印刷物がプリンターの排紙トレイに残されていました。センターの職員に了解を得た上でプリンターと印刷物を回収し、最寄りの拠点へ持ち込んで調査を行いました。

この段階において、当事案はプリンターに何らかの原因があると考えられていましたが(資料R-96561-initial参照)、局内で実施したテストでは異常な印刷物は出力されず、機器の調査を行っても特に不審な点は見受けられませんでした。初期調査が終了して一週間ほどが経過した後、先に通報があったシンオウ地方ミオシティのポケモンセンターより「別のプリンターからも異常な印刷物が出力された」との情報が寄せられました。この時点で担当者は本事案を案件化することを提案し、4日後に本部が案件立ち上げを承認しました。

現時点までに行われた調査で、シンオウ地方ミオシティに構築されたローカルエリアネットワークには何ら異常が無く、不審な印刷物が悪意あるソフトウェアによる異常な挙動ではないことが確かめられています。端末/プリンター/サーバ等のすべての機器が正常に稼働しているにもかかわらず、概ね2日から5日の間を空けて、サーバ上に履歴の無い不審な印刷物が出力され続けています。これらの印刷物は総称して印刷物#96561と指定され、それぞれナンバリングが行われています。

以下は、これまでに確認された印刷物#96561の一覧です:


印刷物#96561-1:
本件が初めて確認された際に残されていた印刷物。横向き。1ページ。シンオウ地方ミオシティの解像度の低い航空写真のように見えるが、中心に詳細不明の巨大な穴が形成されている。穴の周囲の建造物が薙ぎ倒されていることから、当局の見立てでは隕石の落下に伴う大規模災害が発生したものと考えられている。これまでのところ、シンオウ地方ミオシティに隕石が落下したという記録は存在しない。

印刷物#96561-2:
恐らくは女性のトレーナーによって「ニコラス」と名付けられたプラスルの生育日記の抜粋。縦向き。4ページ。一日に付き一行で書かれ、日付→改行→本文→改行→日付……のサイクルが繰り返されている。初期は特に問題が無いように見受けられるが、一週間を過ぎた辺りからニコラスの知性が急激に向上し、最終的にエスペラント語由来と思われる未知の言語を話すようになったことが端的に綴られている。最後の行はニコラスが脱走/失踪したことを示唆している。

印刷物#96561-3:
ほとんどが空白で、中心に10ポイント程度の小さな文字で「ソースはここにある」とだけ記載された文書。縦向き。1ページ。

印刷物#96561-4:
任天堂が1999年にリリースしたNINTENDO64専用ビデオゲームである「ニンテンドウオールスター!大乱闘スマッシュブラザーズ」の攻略サイトと思しきウェブサイトの一部。縦向き。3ページ。本文は本作未登場のキャラクターである「カメック」(スーパーマリオシリーズに登場する敵キャラクター)についての詳細な攻略で占められ、貼り付けられた画像は少なくとも6体のキャラクターが同時に戦闘を繰り広げている。開発元はこのような仕様は一切無いと明言しており、徹底的な捜索においてもこの印刷物にあるような仕様を実現する海賊版の存在は確認されていない。

印刷物#96561-5:
すべて異なるフォントで「ピカチュウ」または「Pikachu」と327回綴られたドキュメント。縦向き。1ページ。いくつかについて、極端にマイナーなものか、または実在しないフォントが使用されている。

印刷物#96561-6:
Microsoft社のワードプロセッサソフトウェアである「Microsoft Word」で書かれたと思しき「電球依存症の治療に関する一考察」という文書のタイトルページ。横向き。1ページ。目次及び本文は印刷されず。少なくとも現時点において「電球依存症」なる依存症が正式に確認または報告された事例は存在しない。

印刷物#96561-7:
差出人が「戸塚 泰敏」、宛先が「Hiroki Matsumoto」と記載されたメール。縦向き。2ページ。本文は一般的なビジネスメールのように見えるが、「カモネギの販路拡大」「ガベージゼリー計画」など、アムリタ・ファウンデーションが関わっている疑いの濃い事案についての記載が随所に見られる。本文から「Hiroki Matsumoto」はアムリタ・ファウンデーションの関係者であり、「戸塚 泰敏」はアムリタ・ファウンデーションから依頼を受けて商品を拡散する役目を担っている下請け会社の職員と推測されている。

印刷物#96561-8:
解像度の低い写真。横向き。1ページ。写真は一般的な喫茶店の店内を撮影したスナップ写真のように見えるが、隅に置かれた時計は「1」から「12」ではなく「1」から「17」の時刻を指すようになっている。このため、写真が撮影された場所または世界においては、24時間制ではなく34時間制が用いられている可能性がある。そのような時刻の制度を採用している国や地域は存在しない。

印刷物#96561-9:
筒井康隆の短篇作品「農協月へ行く」の一部。縦向き。2ページ。本来強い訛りが見られる登場人物の台詞がすべて標準語に書き直され、本文は正仮名遣いにされている。2ページ目はページ全体の約半分に達したところで唐突に途切れている。

印刷物#96561-10:
装飾の無い短いメモ書きのテキストファイルがそのまま印刷されたもの。縦向き。1ページ。メモには「ポリゴン:30コ」「カイロス:25コ」「技マシン15:60コ」「冷んやりバッジ:12コ」と書かれている。内容からカントー地方タマムシシティに存在するゲームコーナーの景品交換所の商品入荷に関するメモと推測されるが、同所で「冷んやりバッジ」なる景品が交換対象になった記録は存在しない。

印刷物#96561-11:
カントー地方ヤマブキシティ発のリニアの7月20日分の乗車券をスキャンしたもの。縦向き。1ページ。出発はカントー地方ヤマブキシティ駅であり正常だが、行き先がホウエン地方ミナモシティと思われる場所(厳密には「ミ■モシテ■駅」と一部が黒塗りになっているため、ミナモシティではない可能性も残されている)になっている。ホウエン地方ミナモシティ駅行きのダイヤは実在せず、「ホウエン地方ミナモシティ駅」そのものが実在しない。

印刷物#96561-12:
何者かによる企業の内部告発のような文書。縦向き。2ページ。文書が途中から始まっており、固有名詞と思われる箇所はすべて黒塗りにされているため具体的な内容には不明瞭な点が多い。大筋としては、大衆薬として販売されている医薬品に重大な欠陥があり、重篤な携帯獣アレルギーを引き起こさせる可能性があるにも拘らず、警告を無視して販売を続けているという旨のもの。文面からは、どの医薬品企業に対する内部告発なのかを読み取ることはできず。

印刷物#96561-13:
子供の手形が5つ押されたものをスキャンしたもの。横向き。1ページ。スキャンはかなり高い解像度で行われており、手形を鮮明に読み取ることができる。手形はいずれも案件#48238(「カイナ北小学校の火災事件」)で検体#48238となった児童のものであることが判明。手形が取られたのは火災事件発生と同年と推定されているが、児童が手形を取るような出来事はこれまでに確認されていない。

印刷物#96561-14:
未知のスーパーマーケット「デイリーライフ」が頒布したと思われるチラシの縮小版。2ページ。横向き。1ページ目は日用品の広告であり目立った異常性は見られないものの、記載されている商品はいずれも実在しない(いずれも実在している商品とわずかに仕様が異なっている)。2ページ目は食料品の広告だが、本来国内法で販売が禁止されているオムナイトやイーブイといった希少な携帯獣の食肉を安価で販売するとの表記がある。

印刷物#96561-15:
ヒトカゲのお面を印刷したものだが、額に第三の瞳が追加されている。下部に付けられた説明には第三の瞳に関する言及は存在しない。縦向き。1ページ。

印刷物#96561-16:
クリフォード・ストール著「インターネットはからっぽの洞窟」の邦訳版と、エミリー・ブロンテ著「嵐が丘」の邦訳版(岩波書店刊行版)が、共に途中から一段落毎に交互に転記されている文書。3ページ。横向き/縦書き。双方の文書は原版から所々表記が変更されているが、大筋の内容に変化は見られない。両者は互いに一切干渉せず、あくまで交互に文章が転記されるに留まっている。

印刷物#96561-17:
ヘッダ情報によると、「登録地域:ホウエン地方キンセツシティ/トレーナーID:48964/登録名:タカハシ トモミ」なるポケモントレーナーのポケモンレポート。日付は1985年6月12日から6月14日にかけてのもの。3ページ。縦向き。地理的にはシンホウ地方ミオシテイ(原文ママ。正確には「シンオウ地方ミオシティ」と推測)近辺にいるはずだが、一週間に渡って一人の人間も目撃していない旨が乱雑な筆致で記載されている。レポートの最後には「誰か助けてください」と書かれている。該当するトレーナーは実在するが、現在はジョウト地方ヒワダタウンに在住。印刷物の内容についてヒアリングを実施したところ、「ちょうどその頃に、人が誰もいない街を彷徨う怖い夢を見た気がする」との回答が得られた。本人は至って健康で、特段の問題は見られず。

印刷物#96561-18:
印刷物#96561-17と同一の文面のレポートだが、執筆者の情報が「登録地域:ヒガシノ地方ムラサキシティ/トレーナーID:11111/登録名:アサクラ ナオコ」に変化している。地域やトレーナーはすべて実在しないことを確認済。

印刷物#96561-19:
表題に「サーバーをサーバと書くべき2,675の理由」と記載された文書。1ページ。縦向き。内容は「短音表記とすることで資源が節約できる」というものを言い回しや文体、例示を変えて説明を繰り返しているもの。これまでのところ、同名の文書が見つかったという報告は得られていない。

印刷物#96561-20:
何らかのソフトウェアをインストールした際に、インストーラが記録として出力したログと思われる英語が使用された文書。5ページ。横向き(一般的にこの種のドキュメントは縦向きで出力されるが、この印刷物は横向きにされていた)。内容から対象のソフトウェアはid Software社が発売した「Quake II」と推定されているが、本来の製品には含まれない多数のファイルがインストール対象として記録されている。また、インストール先として8345文字に渡る極めて長大なパスが指定されている。この長さのパスをサポートしているファイルシステムに対応するOS向けの「Quake II」は、現状では存在しない。

印刷物#96561-21:
ish形式によりテキストへエンコードされた未知のファイル。2ページ。縦向き。デコードすると、包丁で刺殺されたニドラン(♂)と思しき存在が横たわる極めて画質の悪いJPEGファイルが得られる。画像の解析から撮影場所はカントー地方セキエイ高原付近と思われるが、近隣でニドラン(♂)がこのような形で殺害された事件は確認されていない。

印刷物#96561-22:
電子掲示板の書き込みをテキストファイルへ保存したもの。7ページ。縦向き。電子掲示板は、携帯獣と未成年の少年少女による性行為を収めた違法なポルノビデオに関する情報交換の場所として使用されていたと考えられる。該当する掲示板は発見できなかったが、書き込みにあったビデオについてはすべて実在することが判明。撮影・販売していた業者に本件について尋問を行った後、警察機関へ引き渡し済み。近く起訴される予定。

印刷物#96561-23:
当局の書式に完全に準拠した、未知の案件である案件#161088(「はめつのねがい」と名付けられている)に関する詳細な報告書。全76ページ。縦向き。これまでに21回に渡って個別に印刷され、毎回1ページから2ページが得られている。現在の総取得ページ数は37ページ。基礎情報によると、登録日時は2020-09-27、警戒レベルは「7」とされている。この警戒レベルは現時点では完全に存在しないものである。概要は欠落部分があるため厳密には定かではないが、未知の理由により携帯獣の「ジラーチ」が地球に攻撃を仕掛け、既に全人類の9割が死滅したことが記載されている。取扱い方法には当局を存続させ事態を収拾させるための手続きが記載されていると思われるが、これまでのところ取扱い方法部分は一度も印刷されたことが無い。

印刷物#96561-24:
アニメ「ポケットモンスター」の第1シーズン第31話「ディグダがいっぱい!」の台本の一部を英訳し、カプコン社が1999年5月にリリースした対戦格闘型アクションゲーム「ストリートファイターIII 3rd STRIKE -Fight for the Future-」に登場するキャラクターの一人である「トゥエルヴ」が作中で使用する架空言語(アルファベット及び「!」「?」に相当する文字を独自のルールで2進数の数値に置換したもの)で記述したもの。3ページ。横向き。英語圏で放送されたものとは内容が異なっており、原本に忠実な訳になっている。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1280] #83280 「落とし物の多い地下通路」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/05(Tue) 20:18:49   47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#83280

Subject Name:
落とし物の多い地下通路

Registration Date:
1996-05-23

Precaution Level:
Level 3


Handling Instructions:
通路#83280は、本稿執筆時点で「建築時にアスベストが使用されていたことが判明した」というカバーストーリーに基づき、両方の入り口を三重に施錠した頑丈な鉄扉で封鎖しています。鉄扉は定期的にメンテナンスし、不正に解錠されていないことを確認してください。通路#83280の入り口を封鎖している状態が常に保たれていれば、それ以上の保全は必要ありません。鉄扉が破られていることが確認された場合、直ちに再封鎖を行ってください。その際、鉄扉に装着されたすべての鍵を交換しなければなりません。

1996-05-17に発生したインシデントを鑑み、通路#83280でのあらゆる実験は一切禁止されています。過去に行われた実験セッションでの結果については、実験記録-83280を参照してください。実験記録-83280は、本案件に携わる局員のみが参照することができます。適切なセキュリティクリアランスを保持しない局員に情報を開示した場合、当局の定める罰則規定に基づき懲罰を受ける可能性があります。


Subject Details:
案件#83280は、カントー地方シオンタウンとタマムシシティの間を結ぶ旧地下通路(通路#83280)で発生する特異な事象と、それに掛かる一連の案件です。

1995年8月頃から年末に掛けて、通路#83280を通過した多数の市民及びポケモントレーナーから、内容は様々ですが概ね「ここに落ちているはずのない私物を拾得した」という申出が寄せられました。当局が調査に向かったところ、申出にあった通りの異常な事象が発生することが確認できました。この結果を受け、当局は地下通路を封鎖。代替として隣接する新たな地下通路を建設し、交通には支障が出ないよう手配しました。新しく建設した地下通路では、通路#83280で発生する異常な事象は確認されていません。

通路#83280は、外見上特に異常が見受けられない一般的な地下通路です。内部には一定の間隔で蛍光灯が設置されており、歩行者と自転車がそれぞれ通るべき道が床に引かれたラインによって区別されています。それ以外には、特徴と呼ぶべきところは何もありません。後述する条件を満たさずに通路#83280を通過した場合、シオンタウン側から入った場合もタマムシシティ側から入った場合も、問題なく目的地まで到着することができます。その際、事象#83280と名付けられた異常な事象は発生しません。

事象#83280は、通路#83280である特定の条件を満たした場合に発生する特異な事象です。完全な条件は明らかになっていませんが、市民やトレーナーからの申出、及び局員による実地調査により、概ね正確であると推定される条件が分かっています。条件は下記の通りです。

 1.シオンタウン側から進入する
 2.タマムシシティ側入口付近で立ち止まっている人間がいない
 3.通路半ばに達するまでに、4.の条件を満たす
 4.過去に「何かを失った」と感じた出来事の記憶を振り返る

上記の条件を満たすと、通路#83280の出口付近に、拾得物#83280が出現します。

拾得物#83280は、事象#83280により出現する由来不明のオブジェクトです。拾得物#83280そのものは概ね異常の無い物品または製品ですが、物理的に通路#83280には存在し得ないものであることに異常性があります。これまでに確認された拾得物#83280は、いずれも条件4に深く関連するアイテムであることが分かっています。原理は不明ですが、通路#83280あるいは通路#83280内の未知の存在により拾得者の記憶が読み取られ、それに基づいて拾得物#83280が出現しているものと考えられています。

市民からの申出と局員による実験により、拾得物#83280はいずれも拾得者にとって不快なもの、あるいは精神的な苦痛をもたらすものであることが分かりました。これらは拾得者の過去の記憶に基づくもので、拾得物#83280そのものに情報災害を含む何らかの異常性があるわけではありません。

以下はこれまでに発見された拾得物#83280の一覧と、拾得者からヒアリングした拾得物#83280に関するエピソードの抜粋です:


拾得者:カントー地方シオンタウン在住の27歳の男性
拾得物#83280:記入済みの履歴書
拾得物に関するエピソード:
男性は拾得物#83280を一読し、履歴書が求職活動中の面接で面接官に破り捨てられたものと完全に一致すると証言しました。

拾得者:カントー地方タマムシシティ在住の8歳の少女
拾得物#83280:尻尾の千切れたピカチュウのぬいぐるみ
拾得物に関するエピソード:
ぬいぐるみは少女が友人から借り受けたもので、一人で遊んでいた最中に尻尾が千切れてしまったために友人と諍いを起こして仲違いしてしまったこと、ぬいぐるみはゴミとして処分したことが明らかになりました。

拾得者:カントー地方ハナダシティ在住の16歳の少女
拾得物#83280:微かに腐敗の始まった生卵
拾得物に関するエピソード:
志望していた高校の受験前日、消費期限の過ぎた卵を使用した料理を口にしたことで激しい食中毒の症状を呈し、最終的に試験に失敗したとのことです。

拾得者:カントー地方を旅行中の11歳の男子トレーナー
拾得物#83280:改造されたエアガン
拾得物に関するエピソード:
拾得者は明らかに狼狽した様子を見せており正確なエピソードを話せない状態でしたが、後の調査でトレーナーは旅行に出る以前、エアガンの誤射で近所に住む当時五歳の少女を失明させたことが明らかになりました。

拾得者:ジョウト地方コガネシティ在住の67歳の男性
拾得物#83280:古い口紅
拾得物に関するエピソード:
30年近く前、男性と不倫関係にあった女性が愛用していたものです。女性は堕胎手術の失敗で既に死亡しています。

拾得者:ホウエン地方ヒワマキシティ在住の32歳の男性
拾得物#83280:丸められた縦長の紙。数式が多数書き込まれている
拾得物に関するエピソード:
中学生の頃、試験中にカンニングをするために持ち込んだものの、教師に発見され厳しい叱責を受けた記憶があると語っています。男性はこの違反行為で内申点を大きく下げられ、志望していた高校へ進学することができなかったとのことです。

拾得者:ジョウト地方ヒワダタウン在住の23歳の男性
拾得物#83280:空になった殺虫スプレーの缶
拾得物に関するエピソード:
かつて同級生が大切にしていたレディバを、嫉妬心から殺虫スプレーを用いて殺傷したと語りました。同級生とはその後疎遠になり、優秀なポケモントレーナーである別の男性と結婚したとのことです。

拾得者:カントー地方セキチクシティ在住の14歳の少年
拾得物#83280:水に濡れた漫画の単行本
拾得物に関するエピソード:
少年は数年前にこの書籍を万引きし、両親や教師からひどく叱責されたと語りました。以後、両親とはほとんど交流が持てず、両親は弟にばかり目を掛けているとも語っています。

拾得者:カントー地方シオンタウン在住の17歳の少女
拾得物#83280:使用済の女性用避妊具
拾得物に関するエピソード:
二年前に同級生と初めて性行為に及んだ際に使用したもので、その後同級生とは破局したとのことです。破局の理由は、少女が妊娠したことによる堕胎の是非を巡る意見の相違であると口にしました。

拾得者:ホウエン地方カイナシティ在住の65歳の女性
拾得物#83280:酷く破損した懐中時計
拾得物に関するエピソード:
女性は詳細を語ることを拒絶しましたが、断片的に得られた情報から、女性が過去何らかの理由で見捨てざるを得なかった親友の所持品であると推測されています。

拾得者:ホウエン地方キンセツシティ在住の55歳の男性
拾得物#83280:箱詰めされた保存の効く食料品各種と、子供の筆跡で書かれた手紙
拾得物に関するエピソード:
不正な会計処理を行ったことで懲戒解雇処分となった男性の元部下の家族から送られてきたもので、処分できずに会社に放置したままになっていたとのことです。

拾得者:カントー地方シオンタウン在住の13歳の少年
拾得物#83280:泥にまみれたサッカーボール
拾得物に関するエピソード:
少年は8歳のころ公園でこのサッカーボールを用いて遊んでいた際、誤って車道に飛び出したことで交通事故に遭遇しました。以後、少年は車椅子を使用して生活しています。

拾得者:カントー地方を旅行中の12歳の女子トレーナー
拾得物#83280:ガラガラが所持している太い骨棍棒
拾得物に関するエピソード:
金銭目的でカラカラ及びガラガラを狩猟し、その過程で入手した特に質の良い骨棍棒です。しかしながら、取得直後にガラガラが育てていたと思しき幼いカラカラが現れ、良心の呵責を覚えたトレーナーは骨棍棒を放棄してその場を立ち去ったとのことです。

拾得者:カントー地方シオンタウン在住の35歳の男性
拾得物#83280:大量の血液が付着した大型レンチ
拾得物に関するエピソード:
男性は拾得物について語ることを一切拒否しました。血液はヒトのものであることが明らかになっています。

拾得者:ホウエン地方トウカシティ第三支局に在籍する女性局員
拾得物#83280:便箋に入れられた手紙
拾得物に関するエピソード:
局員がかつて恋愛感情を抱いていた相手に渡そうとしたものであることが分かりました。相手は手紙の受け取りを拒否し、以後局員との接触を避けるようになったとのことです。

拾得者:カントー地方グレンタウン第二支局に在籍する男性局員
拾得物#83280:破損したモンスターボール
拾得物に関するエピソード:
局員がポケモントレーナーとしてシンオウ地方を旅行していた際、いわゆる「やぶれたせかい」に掛かる特異な事案に巻き込まれて消失したヒコザルが入っていたボールです。局員は、ボールは亡骸の代わりとして間違いなく墓地へ埋葬したと語っています。

拾得者:カントー地方トキワシティ第五支局に在籍する男性局員
拾得物#83280:使い込まれた小学生用の竹刀
拾得物に関するエピソード:
小学生の頃、地元の剣道教室に通っていた際に使用していたものです。局員は当時一つ年上の少女に想いを寄せており、彼女と親しくしたいという思いから剣道教室へ通い始めました。二年が経過する頃には少女とも親しく交流するようになったとのことですが、後に少女を含む一家が惨殺されるという事件が発生しました。その際の第一発見者となったのが局員で、その際ある猟奇的な光景を目撃してしまったことにより、以後竹刀を手に取ることができなくなったとのことです。

拾得者:ジョウト地方アサギシティ第七支局に在籍する女性局員
拾得物#83280:明治製菓製の板チョコレート
拾得物に関するエピソード:
かつて生活していた児童養護施設にて、後に複数の児童に対する強制わいせつ罪により逮捕された男性の元職員の一人から渡されたものです。渡される前後のエピソードについては語りたがらず、ヒアリングを担当した局員もこれを了承しました。

拾得者:カントー地方タマムシシティ第三支局に在籍する女性局員
拾得物#83280:古い編み針
拾得物に関するエピソード:
幼い頃慕っており、また可愛がって貰っていた局員の母方の祖母が愛用していたものであることが確かめられました。局員はタマムシシティへ移住してから数回祖母から連絡を受けていましたが、多忙のためいずれも回答せずに先送りし、結果として祖母が亡くなるまで再び会うことはありませんでした。

拾得者:シンオウ地方ミオシティ第四支局に在籍する男性局員
拾得物#83280:プラスチックのキーホルダーが付いた家屋の鍵
拾得物に関するエピソード:
局員がかつて家族と共に住んでいたマンションの鍵です。彼はある時この鍵を持っていくのを忘れたためそのまま遊びに出かけ、結果として家の中に侵入していた窃盗犯と対面せずに済みましたが、代わりに後から帰宅した彼の妹が犠牲になりました。


拾得物#83280の傾向から、事象#83280に関与している存在(恐らくは通路#83280そのもの)は非常に高い知性を持ち、かつ少なからぬ悪意を持っていると推測されています。この状況を鑑み、拾得物#83280を出現させる実験は慎重に行われるべきです。


[1996-05-18 Update]
1996-05-17未明、地元の若者グループが鉄扉を破り、カントー地方シオンタウン側から通路#83280に侵入するというセキュリティインシデントが発生しました。明朝5時の定期巡回でインシデントに気付いた警備員が最寄りの拠点へ緊急通報を行い、非致死性の武装した局員5名が現場へ急行しました。

局員が通路#83280内部へ進入したところ、不法に侵入したと思しき3人の若者が死亡しているのが発見されました。2名は両腕を切断され、残る1名はさらに胴体を切断されています。いずれも出血多量が直接の死因になったものと推定されます。辺りに凶器となり得るようなものは見当たりませんでしたが、局員の一人が携帯獣の「ストライク」由来の足跡が残されているのを発見しました。

その後の身元調査の過程で、胴体を切断された若者はかつてストライクを使役していたことが分かりました。ある時ふとしたことが切っ掛けでストライクと仲違いし、彼はストライクをデータ化した状態で物理的に抹消したとのことです。この一件で彼はトレーナー免許を剥奪されています。

この事から、局員の一人が「通路#83280が事象#83280を起こし、拾得物#83280としてストライクを発現させたのではないか」という仮説を提起しました。若者たちが殺害された状況を鑑みても有力な仮説であり、またこの仮説を覆すような証跡はこれまでのところ発見されていません。

以上より当局では、通路#83280は事象#83280を通し、拾得物#83280として生体をも出現させ得る能力を持っているという結論に達しました。これは今まで考えられていた案件#83280の性質から大きく逸脱するものです。通路#83280におけるすべての実験は無期限に禁止され、通路#83280の警備を強化することが決定しました。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1281] #136245 「擬獣人のクラブ」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/06(Wed) 19:49:04   53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#136245

Subject Name:
擬獣人のクラブ

Registration Date:
2013-03-05

Precaution Level:
Level 3


Handling Instructions:
新たな被験者#136245が発見された場合、最寄りの拠点で簡単なヒアリングと健康状態のチェック、必要であれば治療や栄養補給を実施した上で、ホウエン地方ハジツゲタウン第二支局まで移送してください。ホウエン地方ハジツゲタウン第二支局以外に在籍する局員については、これ以上の対応は必要ありません。必要であれば、ホウエン地方ハジツゲタウン第二支局から被験者#136245の取扱いに関する詳細な情報を送付してもらうことが可能です。

ホウエン地方ハジツゲタウン第二支局に在籍する局員は、支局へ移送された被験者#136245を個別の収容室へ移動させ、以後は人型異常体向けの標準収容手順に沿った取扱いと、定期的なヒアリングを実施してください。被験者#136245から何らかの要求を受けた場合は、上席と協議の上承認/却下を判断してください。要求は、それが極度に高額なものであったり、収容違反の危険性をもたらすものであったり、局内の風紀を乱すようなものであったりしなければ、被験者#136245のストレス軽減という観点からも基本的に承認することが望ましいです。

被験者#136245が家族と面会したい旨を伝えてきた場合は、ホウエン地方ハジツゲタウン第三支局へ一時的に移送した上で面会を行います。ホウエン地方ハジツゲタウン第三支局は公共施設として位置付けられており、局内限の情報は一切保持されないことが保証されています。ホウエン地方ハジツゲタウン第三支局に在籍する局員は被験体#136245からヒアリングした家族の情報を元に連絡を取り、面会をセッティングしてください。面会に際しては面会希望者全員に機密条項の遵守を求め、違反した場合は当局によって拘束されることへの同意書の記入を求めてください。ただし、案件#136245及び被験者#136245そのものについては既に広範に対しその存在が知れ渡っているため、例えば家族が被験者#136245として案件管理局に収容されているといった情報は、準公開情報として被験者#136245と家族にその扱いを委ねています。

面会の機会を設ける性質上、あらゆる案件について被験者#136245に情報がもたらされることはあってはならず、また案件対応の過程で収容/入手したオブジェクトとの交差試験は禁止されています。被験者#136245の治療に明らかに有効であるとの判断が下されない限り、あらゆる種類の交差試験は却下されることになっています。

現状では、被験者#136245を完全に治療するための技術は確立されていません。過去に報告された事例から、一般的な外科手術での治療は困難だと見られています。仮に何らかの方法で治療に成功し、社会復帰が見込めると判断された場合は、被験体#136245にプロトコルUXに基づく高度記憶処理を行い、家族の元へ送還する手順が定められています。


Subject Details:
案件#136245は、携帯獣の身体の一部を未知の方法で移植された人間(被験者#136245)と、それに掛かる一連の案件です。

被験者#136245が初めて確認されたのは、2012年11月上旬頃のことです。ホウエン地方ハジツゲタウン第二支局の敷地内に「イーブイの耳と尻尾を生やした」と形容できる容姿をした12〜13歳の少年が助けを求めて駆け込んできたことで、当局の知るところとなりました。警備員が少年を制止するとともに保護し、局内にある医務室へ移動させました。応対に当たった局員は少年がひどく衰弱していることに気づき、応急処置と点滴による栄養補給を実施、2日後にはいくらかの回復が見られたため、容体を見ながらのヒアリングが行われました。

少年によると、彼はポケモントレーナーとしてシンオウ地方を旅行中、詳細不明の集団の手によって誘拐されました。再び意識を取り戻した際には、既にイーブイの耳と尻尾が体に付いていたとのことです。その時の様子から、少年は外科的な手術によりイーブイの身体パーツが移植されたものと推定されています。その後少年は目隠しされた状態で別の場所へ移され、他の同境遇の少年少女らと共に、後述する「クラブ」で働かされることになりました。

数日前まで少年が働いていた「クラブ」では、少年と同じように携帯獣の身体の一部が移植された人々が多数所属していました。少年と同い年かその±5歳程度までの少年少女が多数を占めていましたが、成人の男性/女性も少なからず働いていたとのことです。「クラブ」には連日多くの人が訪れ、気に入ったメンバーを指名して遊興に耽るといった光景が繰り広げられていました。少年を指名する者も何名かおり、彼らに種々のサービスを供していたようです。

この段階で局員は本件を重大事案と認識、概要を取りまとめて中央統括部へ送付しました。中央統括部もこれを承認、局員を案件担当者として割り当てました。事案は案件#136245と指定、少年は被験者#136245-1と指定されました。初期収容手順が整備され、立地上の利点からホウエン地方ハジツゲタウン第二支局を案件対応の中核拠点とすることを決定しました。

その後3週間以内に、被験体#136245-2から-5と指定される少年及び少女4名が保護を求めてホウエン地方ハジツゲタウン第二支局を次々に訪れ、全員が適切な手順により保護されました。保護された被験体#136245-2から-5の特徴については下記の通りです。


被験体#136245-2:
15歳の少女。「クラブ」で1年程度働いていた。極度の近視で、眼鏡を手放すことができない。ライチュウの耳と尻尾を移植されている。発電の能力は観測されておらず、移植された部分以外には携帯獣由来の特徴は見られない。

被験体#136245-3:
10歳の少年。およそ半年前、家族から捜索願が出された児童と特徴が一致。ザングースの耳と尻尾が移植されている。精神的にかなり疲弊しており、これまでのところヒアリングが実施できていない。

被験体#136245-4:
12歳の少女。被験体#136245と同様に、旅行中に誘拐され手術が施されたことが判明。マリルの耳と尻尾が移植されている。尻尾には感覚が無いとのこと。元々水泳が苦手で、移植手術後もそれに変化は見られないという。

被験体#136245-5:
14歳の少女。これまで確認された中でもっとも長く「クラブ」におり、約2年半ほど働いていた。ピクシーの耳と尻尾、及び翼が移植されている。ピクシーのような極端な聴力の向上は確認されていない。


被験体#136245の特徴として、移植されているのは耳と尻尾の二部位であることがほとんどですが、時折被験体#136245-5のように他の部位が移植されるケースがあるようです。全員に共通しているのは、携帯獣が持つ固有の能力はまったく移植されていないということです。あくまで外見的な整形を目的として部位が移植されているように見受けられます。ただし移植された部位にも痛覚などの感覚はあることから、単に外科手術で接合しただけではないということは分かっています。

当局が被験体#136245を保護し始めた時期とほぼ同時期に、別の地域でも被験体#136245が「クラブ」から脱走する事案が発生しました。多くは当局や警察機関の手で保護されましたが、一部が脱走後にメディアへ本件を告発、結果として週刊誌やタブロイド紙で「クラブ」及び被験体#136245が写真付きで取り上げられる事態となりました。これに伴い案件#136245及び被験体#136245は公のものとなり、当局も情報規制を一部解除する対応を実施しました。

保護した被験体#136245からヒアリングを実施し、彼らが働かされていた「クラブ」についての情報が集められました。担当者の指示で専門のチームが編成され、さらなる調査が行われる予定です。


[2013-02-13 Update]
2013年2月9日、武装した10名ほどの男が、ホウエン地方ハジツゲタウン第二支局を襲撃するセキュリティインシデントが発生しました。被験体#136245-1から-5を除いて同拠点には異常なオブジェクトは収容されておらず、被験体#136245-1から-5の奪還あるいは口封じが目的と推察されました。事前にこのような事態を想定していた案件担当者は、速やかに最寄りの拠点に駐留していた機動部隊イプシロン-トパーズに出動を要請、わずかな損害で全員を鎮圧しました。武装解除の後徹底した尋問が行われ、襲撃が「クラブ」の運営団体の指示によるものであることが明らかになりました。

クラブの運営団体は「マルシアス・エンターテインメント」と名乗る未知の組織で、世界各地で同種の「クラブ」を運営しているとのことです。正確な規模は明らかではありませんが、その活動範囲の広さから相応の大きさを持つ組織であると推定されています。当局では各国の警察機関と連携し、「マルシアス・エンターテインメント」への捜査を進めていく方針を固めました。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1282] #122259 「あるホーロー看板」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/07(Thu) 22:27:41   50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#122259

Subject Name:
あるホーロー看板

Registration Date:
2008-09-28

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
確認できた看板#122259は随時撤去し、できる限り人目に付かないよう注意を払ってください。対象は違法な広告であるという情報を各種メディアを用いて拡散しているため、市民から「看板が取り付けられている」という旨の通報がなされることがあります。通報を受けた場合は速やかに出動し、看板を取り外してください。看板そのものには異常な特性は無いため、取り外しに際して特に準備は必要ありません。

看板に記載されている電話番号への架電実験は禁止されています。過去に発生した事案を収集・整理することに止め、新たな実験は行わないようにしてください。これまでに確認された電話番号については、未だすべて有効であることが分かっています。新たな電話番号が判明した場合、あらゆる手段を講じて所有者を調査してください。電話番号の所有者が、本案件の中核を担っている可能性が濃厚です。


Subject Details:
案件#122259は、主にジョウト地方及びカントー地方を中心に多数確認されている不審なホーロー看板(看板#122259)と、そこに記載された電話番号へ架電した際に発生する特異な事象、及びそれらに掛かる一連の案件です。

看板#122259が初めて確認されたのは、案件#120602(「拡張される地図と現実」)について、Google Inc.が提供する地図情報サービスである「Google Maps(グーグル マップ)」を用いて調査を行っていた時のことです。設置されて少なくとも二十年以上が経過しているように見受けられるにもかかわらず、記載された電話番号が近年利用が本格化したIP電話のもの(050-XXXX-XXXX)であったために、当局の注意を引きました。

看板#122259は、赤と白の2色のみで構成されたホーロー看板です。上半分は赤地に白文字で「タニヤマ」というコーポレートネームと思われるロゴが記載され、下半分は白地に赤文字で、先述したIP電話の「050」から始まる電話番号と共に「ポケット金融・振込ローン」なるキャッチコピーが記載されています。看板自体には異常な特性は無いと考えられますが、設置されたと推定される年代にはIP電話サービスは存在しておらず、顕著な矛盾が見られます。

その後、局員が看板#122259に記載された電話番号へ架電する実験が数回行われました。局員が架電したところ、記載通り「タニヤマ」と名乗る自動音声による応答がありました。この時点で電話番号が有効であり、何らかのサービス(恐らくは金融・融資に関するサービス)を提供していることは確定しましたが、自動音声は「お電話ありがとうございます。タニヤマ事務センターです。現在電話がつながりにくくなっております。そのまましばらくお待ち下さい」と繰り返すのみで、それ以上の応答は得られませんでした。

しかしながら、当局による実験終了後からほどなくして、各地から「ホーロー看板に書かれた番号に電話を掛けたら、連れていたポケモンがいなくなった、消失した」と要約できる通報が多数寄せられました。受付担当者によるヒアリングにより、それらがいずれも看板#122259に記載された電話番号へ架電したことによる事案であることが判明しました。当局は明らかに異常な事案と断定、直ちに案件立ち上げを行いました。

第一通報から3週間以内に受けた通報により、その時点で看板#122259は最低でも全国79箇所に設置されていることが分かり、直後に実施された全国緊急調査により、実に3574枚もの看板#122259が発見されました。これは当局が把握している分のみであり、看板#122259の完全な総数ではないことに注意してください。発見された看板#122259はほぼすべてが過去の時点では存在していなかったものであることが確認されていますが、いずれの看板#122259も設置から二十年前後が経過したような老朽化の状態を見せており、その場所に長らく取り付けられていたもののように見受けられることで共通しています。

市民からの通報により、当局の実験では判明しなかった看板#122259に関する特異な性質が明らかになりました。記載された電話番号に架電する際、架電者が捕獲した携帯獣が近く(推定で5メートルから6メートル以内)にいた場合、該当する携帯獣が消失します。さらに携帯獣の消失後二時間以内に、架電者が開設している預金口座(複数の口座を持っている場合、もっとも利用頻度の高い口座)に対し、未知の送金者からランダムな金額が振り込まれます。この事象は、管理局により事象#122259と命名されました。

事象#122259の条件を満たした場合、連絡先である「タニヤマ事務センター」の自動音声は「お電話ありがとうございます。ただいま融資の審査を行っております。電話を切らず、そのままお待ち下さい」と応答します。その後2分から4分の間を置いて「大変お待たせいたしました。お客様の審査が完了しました。これより送金手続きに入らせていただきます」と応答し、その直後に事象#122259が発生、携帯獣が消失します。この時、二度目の自動音声のフレーズが完了するまでに電話を切断しても、事象#122259の発生を止めることはできないことが分かっています。架電した時点で事象#122259の発生が予約され、以後の処理はすべて自動的に行われているものと推定されます。

携帯獣の消失後に架電者の預金口座へ振り込まれる金額は事案の都度変動しますが、統計情報からある程度の法則性が存在することが判明しています。概ね、携帯獣が戦闘に関する技術や能力に秀でているほど、そして架電者と携帯獣の関係が長く続いているほど高額になる傾向があるようです。これ以上の具体的な金額の決定方法については、サンプルが不足しているため判明していません。

看板#122259はどのような手段を用いて設置されたのか、「タニヤマ」と名乗る団体がいかなる方法で事象#122259を発生させているのか、消失した携帯獣はどのようになったのかはいずれもすべて不明なままです。一連の事案から、「タニヤマ」が何らかの目的に基づいて携帯獣を収集している可能性が指摘されたため、局内における携帯獣を連れた状態での架電実験は無期限に禁止されることになりました。現在、本案件の中心となる「タニヤマ」に関する情報を得るための調査が行われています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1283] #73665 「大破したスクールバス」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/08(Fri) 22:00:44   62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#73665

Subject Name:
大破したスクールバス

Registration Date:
1993-05-06

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
車両#73665はシンオウ地方トバリシティ第三支局に隣接する中異常性取得物保管庫に、乗員#73665-1から-2、及び乗客#73665-1から-26の遺体はシンオウ地方ハクタイシティ近辺にあるバイオリサーチセンターにそれぞれ保管されています。いずれも損壊が非常に激しいため、明確な理由が無い場合は保護状態を解かれるべきではありません。これらから得られた情報については、案件別サーバに保管された資料を参照してください。資料を参照するに当たっては、適切なセキュリティクリアランスを保持していなければなりません。

現状では事案#73620(この名称は「事案#73665」への変更が提案されています)が再発していないことから、これ以上の対応は不要です。また事案#73620の性質上、事前に何らかの備えをしておくことが困難であるとも推定されています。事案#73620と推定される事案が再発した場合は、さらなる調査と対応手順の確立が行われることになっています。その際の参考資料としては、案件別サーバに保管された「案件#73665取扱い手順候補詳細」が利用できます。


Subject Details:
案件#73665は、大破炎上した中型のスクールバス(車両#73665)とその乗員2名(乗員#73665)及び乗客26名(乗客#73665)の遺体、そしてそれらに掛かる一連の案件です。

1993年5月1日午前7時40分頃、シンオウ地方トバリシティ西部の道路にて、自動車6台が絡む大規模な交通事故(事案#73620)が発生、消防と救急が緊急出動しました。事故現場は見通しの良い直線道路で、事故当時交通量はさほど多くありませんでした。事故車両のうち5台は単なる衝突であり、運転者や同乗者も総じて軽い怪我を負ったのみでしたが、残る中型バス1台は例外的に大破炎上しており、消防隊による消火活動が行われました。火は1時間ほどで消し止められ、交通封鎖の解除のため事故車両はすべて移動させられました。

警察が事故原因について調査していた最中、著しく損傷した中型バスと、バスに乗車していた28名について不審な点が多数見つかりました。協議の結果、1993年5月6日をもって本件を案件管理局へ移管することが決定されました。当局は即時の案件立ち上げを決定、事故車両を車両#73665、乗員乗客の遺体をそれぞれ乗員#73665及び乗客#73665と指定し、関連する資料の引き渡しを受けました。以後、本件は案件#73665として、当局の管轄に置かれることとなりました。

本案件の起点となった事案#73620について目撃者及び事故車両の運転者/同乗者にヒアリングを実施し、その過程で事案#73620は単なる車両事故ではなかったことが判明しました。多少の差異(位置に関する証言など。これらは各人の記憶の不正確さに起因するもので、異常なものではありません)が見受けられますが、いずれにせよ「車道に火の玉のようになったバス(車両#73665)が突然出現した」という点で一致を見ています。いくつかの証言、特に間近で車両#73665を目撃した数名の運転手から得られた証言は、車両#73665は未知の理由により道路上へ出現したことを裏付けるものとなっています。

車両#73665は、事案#73620によって激しく損傷した中型バスです。これまでの調査で得られた情報から、バスはスクールバスとして運用されていたものと判明しています。フロント部分が著しく破壊され、全体が黒く焼け焦げほぼ原型を留めていません。損壊の激しさから調査にやや時間を要しましたが、車両の種類や事故原因については大筋で明らかになりました。車両は既知の中型バスと一見類似していますが、完全に一致するものは見当たりません。また、エンジン部分に一般的なバス車両には見られない多数の相違が確認されています。これらはバスの移動性能及び燃料効率の向上に寄与していたものと考えられています。車体側面には「[判別不能]hool attached to[判別不能]niv.」との記載が見られることから、何某かの大学付属の高校で使用されていたものと思われます。しかしながら市内に大学付属の高校は存在せず、また各地域における調査でも、スクールバスが突如として消失したといった事案が発生した記録は存在しませんでした。

乗員#73665-1及び-2と、乗客#73665-1から-26は、車両#73665に乗車中に死亡した乗員及び乗客です。乗員#73665は車両前方の運転席付近で、乗客#73665は車両中央部から後方にかけて発見されました。いずれの遺体も損傷が激しく、得られた情報はごく限られたものです。しかしながら、それらの情報はいずれも乗員#73665及び乗客#73665のほぼ全員が特異な存在であることを示唆するものです。


乗員#73665-1:
バスの運転手と思われる遺体。40代前半の成人男性。乗員・乗客の中で2名のみ見つかった人間のうちの一人。衝突時のショックで死亡したものと推定される。右足は切断されていたが、車のアクセル部分に置かれていたことが判明。事故の瞬間までアクセルを深く踏み込み、かなりのスピードを出していたと推測されている。火傷の状態から衣服は着用していなかったものと思われる。

乗員#73665-2:
バスの添乗員、または教員と思われる遺体。20代後半の成人女性。骨格から腕が四本存在することが確実視されており、得られた体組織からは対象がカイリキーと同じ種族であることを示唆する情報が得られた。焼け跡からはこの乗員が身に着けていたと推定される衣服の残骸が見つかっている。

乗客#73665-1:
乗員乗客の中でも特に遺体の損傷が激しく、特徴の識別は困難。しかしながら、遺体の骨格からこの乗客はリザードであった可能性が示唆されている。この乗客が発見された付近は周囲と比較しても一段と燃え方が激しく、車両火災の原因となったのではないかと推測されている。

乗客#73665-3:
周辺に残された大量の毛髪とその特徴から、身長が160cm程度の♀のエルフーンであったことがほぼ確実視されている。遺体の状態から衣服を身に着けていた可能性が非常に高い。衣服は一般的な女子用の制服であったと思われる。

乗客#73665-9:
恐らくは♀のルカリオであったと思われる遺体。他の乗客と同様、このルカリオも衣服を着用していた形跡が見られる。

乗客#73665-11:
♂のピクシーと推定される遺体。衣服を着用していた形跡が見られるのは他の乗客と同様。付近には僅かに原形を留めたノートが落ちており、取得物#73665-11-1として保管されている。内容に関する調査及び研究は現在保留中。

乗客#73665-15:
いくつかの可能性が示唆されているが、特徴的な牙の形状から♂のグランブルであると見られる遺体。

乗客#73665-26:
2名の人間のうちの一人。15歳頃の少女と推定される。乗員#73665-1と同様、衣服は着用していなかったものと思われる。


乗員及び乗客の状態から、車両#73665は事故を起こして大破炎上した状態でシンオウ地方トバリシティに出現したものと考えられています。つまり、車両#73665は出現した時点で既に著しく損壊していたということです。現場の不自然な状況からも、車両#73665が大破した事故とシンオウ地方トバリシティで発生した事故とは区別して考えるべきという意見が多数を占めています。

車両#73665/乗員#73665-1及び-2/乗客#73665-1から-26についての素性はこれまでのところ一切分かっていません。携帯獣が衣服を着用し、人間が衣服を着用していなかった理由についても不明です。車両#73665が突然出現した理由も含め、現在も調査が進められています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1284] #98516 「姿無き携帯獣」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/09(Sat) 20:24:47   65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#98516

Subject Name:
姿無き携帯獣

Registration Date:
2001-03-21

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
携帯獣#98516は特有のデータパターンを持つため、すべてのポケモンセンターに専用の通知用ソフトウェアをインストールすることで対応しています。ソフトウェアから携帯獣#98516発見の連絡を受けた、またはポケモンセンターで勤務するサービスエンジニアから携帯獣#98516に関わると思われる「原因不明のシステム障害」あるいは「起源不明のデータ」などの問い合わせがあった場合は、最寄りの拠点から局員を派遣してください。局員はサービスエンジニアに本案件の概要を説明し、携帯獣#98516を接収します。接収に当たっては、拠点ごとに一台ずつ配備している専用端末を使用してください。

接収した携帯獣#98516は案件別サーバに構築した仮想ボックスへ保管します。仮想ボックス内は携帯獣#98516が快適だと考える環境に調整されているため、基本的にはこれ以上の対応は必要ありません。仮想ボックス内で何らかの異常を検知した場合は、担当する局員全員に監視センターから通知のメールが届けられます。メールを受信した局員は端末からサーバへログインし、エラーログとインシデントログの確認、及び必要であればハードウェアの検査を行ってください。過去の収容において、携帯獣#98516が意図せずハードウェア障害を発生させた事例が確認されているためです。


Subject Details:
案件#98516は、特異な性質を持つ未知の種族の携帯獣(携帯獣#98516)と、それに掛かる一連の案件です。

携帯獣#98516が確認された最古の事例は、2000年9月中旬のことです。ジョウト地方タンバシティにあるポケモンセンターにおいて、利用者の一人が「預けた覚えの無い奇妙なポケモンがボックスにいる」と申し出てきました。状況を確認したセンターの職員とエンジニアは携帯獣に異常性があると判断、最寄りの支局であるタンバシティ第二支局へ緊急通報を行いました。この時職員は「システム障害」として全端末の利用を一時停止させ、管理センターへ連絡を入れてトレーナーのボックスが存在する仮想サーバをシステムから切り離させる措置を取りました。この事は携帯獣#98516の封じ込めに大きく貢献し、適切な初動対応として後に当局から表彰されました。

携帯獣#98516は、この事案で接収された携帯獣です。種族情報は破損しているか認識できないため、システム上読み取ることができません。携帯獣を管理するために開発されたソフトウェアを多数テストしましたが、それらは携帯獣#98516を認識しないか明らかに誤った携帯獣と認識し、多くの場合はハングアップします。例外的にポケモンセンターで使用されるリカバリーマシンは携帯獣#98516を処理することができ、「未知の携帯獣」向けのもっとも汎用的な回復処理を選択して実行します。この処理により、携帯獣#98516の回復は正常に完了しているように見受けられます。

その異常性に反し、一般的な携帯獣と生態に大きな違いは無いようです。携帯獣の身体能力を視覚化する処理は正常に実行でき、携帯獣#98516の能力はほぼ明らかになっています。初期の事案で接収された携帯獣#98516の総合レベルは「36」と判定され、俊敏性は劣りますが防御能力に秀でており、物理攻撃よりも特殊攻撃を得意とします。能力値のパターンは既知のどの総合レベル36の携帯獣の平均とも一致しません。性別はすべてのデバイスで一貫して「♀」と判定されます。このことから、携帯獣#98516は性別を持つ種族であると考えられています。

携帯獣#98516が持つ最大の特徴は、姿形に関する情報を一切持っていないことです。このため、一般的なビューアでは携帯獣#98516を参照できず、ハングアップするか破損したモデル(表示用情報でないデータを強制的に読み込んだことによるもので、携帯獣#98516の実際の容姿とは無関係)を表示させます。データ化した状態でのスキャンでは、携帯獣#98516が一般的な携帯獣に比べて60%近くサイズが小さいことが判明しました。またこの時の結果で、姿形に関する情報が欠落していることを除外すれば、携帯獣#98516は携帯獣としての要件を完全に満たしていることも分かりました。

姿形に関する情報を持たないためか、携帯獣#98516は実体化することができません。ボックスからモンスターボールへ移動することはできますが、モンスターボールの外へ出ることはできません。携帯獣を外へ開放するコマンドは常に失敗し、決して成功することはありません。自動記録されるエラーログを参照すると、下記のメッセージが確認できます:


・致命的なエラー: 予期しないリソースの終端が検出されました
・致命的なエラー: ライブラリはリソースをロードできませんでした
・致命的なエラー: モデル構築処理を続行できません。プロセスを終了します


上記は通常テスト用のダミーデータか、または外的要因により破損した携帯獣のデータでのみ発生するエラーで、モンスターボールの基幹プロセスの一つが停止する非常に深刻なものです。

ジョウト地方タンバシティのポケモンセンターで携帯獣#98516が初めて確認されてから、これまでに同種と確定された未知の種族の携帯獣を7体収容しています。いずれも姿形を持たないことを除けば携帯獣としての要件を満たしており、完全スキャンで同一の種族であると認められています。携帯獣#98516の性質についてさらなる調査を行う計画は、現在裁定委員会による承認を待っている状態です。


[2001-08-30 Update]
局員が携帯獣#98516が収容されている仮想ボックスを確認したところ、前日と比較してボックス使用率がおよそ7%上昇していることに気付きました。障害連絡を行った上で調査を行い、本来23体が収容されているはずの仮想ボックスに、合計で25体の携帯獣が収容されていることが判明しました。増加した2体分のデータが隔離され、仮想ボックスへの完全なスキャンが行われました。スキャンの結果からは、特に異常な点は見受けられませんでした。

隔離された2体分のデータを精査したところ、携帯獣のタマゴとデータパターンがほぼ一致するという結果が得られました。携帯獣#98516がボックス内で繁殖活動を行った結果と考えられています。このタマゴについても姿形に関する情報が完全に欠落しており、携帯獣#98516と同一の異常特性があることが確認されました。携帯獣#98516と共に、何らかの変化を見せないかの監視が続けられています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1285] #73571 「おしゃべりバチュル」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/10(Sun) 20:32:02   57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#73571

Subject Name:
おしゃべりバチュル

Registration Date:
1993-04-25

Precaution Level:
Level 1


Handling Instructions:
発見した携帯獣#73571は基本的に同一の部屋へ収容し、監視カメラを使用して常に様子を観察してください。部屋には個体の数と同じだけの電話線を引いた上で一般的な家庭用電話機を設置し、自動音声によるランダムに様々な音声番組を流し続けてください。音声番組はどのようなものでも構いませんが、携帯獣#73571はポップミュージックの番組を特に好む傾向にあります。携帯獣#73571の食事が完了したことを確認したら、担当局員は受話器を元の位置へ戻してください。収容中の個体はいずれもおとなしく反抗の意志を少しも示していないため、現状以上のセキュリティ対策は必要ありません。

携帯獣#73571の性質のため、電話機は受信のみ可能な改造が施されています。過去に携帯獣#73571が通常の電話回線を使用したことで拠点内に小規模な混乱が発生した事案があるため、携帯獣#73571に局内の通常回線を使用させないようにする必要があります。拠点内で固定電話を使用して不審な長時間の電話をしている局員を見つけた場合、携帯獣#73571が収容違反を起こしていないか直ちに確認してください。


Subject Details:
案件#73571は、一般的な個体とは異なる特性を持つバチュル(携帯獣#73571)と、それに掛かる一連の案件です。

当局が携帯獣#73571の存在を確認したのは、1993年2月上旬に当局の電話窓口へ寄せられた「母親がこちらの連絡していない時間帯に『息子と話をしていた』と言っている」という通報によってです。局員が通報者を伴ってジョウト地方ヒワダタウン在住の母親の元へ向かい、双方からヒアリングを実施しました。母親の口ぶりはしっかりしており、認知症などの兆候が見られなかったことから、何者かが実際に母親へ電話を掛けたものと考えられました。後の調査で電話の発信元は通報者の電話であることが分かり、通報者の電話機を監視する措置が取られました。

通報者の電話機を監視して3日後、一体のバチュルがどこからともなく現れました。バチュルが下から受話器を押し上げて発信状態にすると、前脚を操作して電話帳に登録されていた通報者の母親の電話へダイヤルする様子が確認されました。バチュルは通話口に口から伸びた触手のような器官を挿入すると、以後じっとして動かなくなりました。この段階で母親の家に待機していた局員が母親に確認すると、母親は「確かに孫の声だ」と応えました。代理で応答した局員は、電話機を通して母親の孫に当たる人物が話しかけていることを確認しました。通報者の家で待機していた局員がバチュルを捕獲すると、母親の孫に当たる人物の声は聞こえなくなりました。局員は一連の事案を案件として登録、裁定委員会は案件立ち上げを承認しました。

携帯獣#73571は、電気エネルギーではなく電話機へ送られてくる音声信号を主食とするバチュルです。食性が異なること以外には、一般的なバチュルと外見的にも内面的にも、後述する一点を除いて大きな違いはありません。身長や体重、身体能力についてもほぼ同じですが、受話器を持ち上げる必要があるためか、同じ総合レベルの一般的なバチュルの個体に比べてやや筋力が発達しているようです。ただし、あくまで一般的なバチュル個体と比較した結果であり、バチュル本来の非力さを補うものではありません。

音声信号を主食とする食性から、携帯獣#73571には特異な能力が備わっています。架電先の相手が「長く話をしたいと考える人物」の音声信号を精巧に再現することができ、論理的で矛盾の無い会話を行うことができます。これは携帯獣#73571が一般的なバチュル個体と異なり、大きく発達した知能を持っていることを示しています。会話は音声信号を直接電話回線へ流すことへ行われるため、外部へ音として現れることはありません。

長く会話を行うことで可能な限り多くの食料を得るため、携帯獣#73571は相手が喜んで話したがるような会話を展開します。ある事案では、中学生の少女に対して事故で亡くなった友人を装って電話を掛け、3時間以上に渡って会話を行ったという記録が存在します。この時通話相手になった少女が不審に思った形跡は無く、通話後は高い満足感を示していました。この件は少女の母親から当局へ通報され、局員は食事を終えて休んでいたバチュルを捕獲することに成功しました。担当局員と母親の間に持たれた協議により、少女には本件について秘匿することで合意しました。

携帯獣#73571が音声信号をエネルギー源としている理由は不明ですが、信号を得るための方法自体は一般的なバチュルが電気エネルギーを摂取するものとほぼ同じであることが分かっています。携帯獣#73571がどのように会話を行っているのか、また会話の相手にどのようにしてなりすましているのかは現在調査中です。


[1993-11-12 Update]
携帯獣#73571の模範的な収容姿勢と、特性として持つ高度な会話技術を鑑み、携帯獣#73571を用いたカウンセリングが提案されました。携帯獣#73571を収容している拠点では一人一日一時間を限度として、専用回線を使用して携帯獣#73571に電話を掛けることが許可されます。通話内容については記録されず、どのような会話でも自由に行うことができます。携帯獣#73571には事前に教育を行い、通話相手と近しい人物(家族/友人/恋人等)にはなりすまさず、善意の第三者として振る舞うよう伝えました。すべての携帯獣#73571個体は、この通達を忠実に守っています。

相手を喜ばせ、また気持ちを落ち着かせる会話を得意とする携帯獣#73571とのやり取りは、局員のストレス軽減に大きく寄与しました。士気と職務効率の顕著な向上が確認され、ほとんどの局員がこのカウンセリングに高い満足度を示しています。携帯獣#73571についても主食となる音声信号を安定して得られることを歓迎しており、また一部の個体についてはこの職務そのものに満足感を持っているとの結果が得られました。携帯獣#73571を正規の局員として雇用すべきという意見が提出され、裁定委員会は前向きな検討を行うとの回答を示しました。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1286] #99983 「YOU ARE PIKACHU」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/11(Mon) 20:15:46   49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#99983

Subject Name:
YOU ARE PIKACHU

Registration Date:
2001-09-07

Precaution Level:
Level 3


Handling Instructions:
接収したロムカートリッジ#99983は、カントー地方ヤマブキシティ第七支局の中異常性取得物にある耐火性の金庫に保管します。これまでに12本のロムカートリッジ#99983を収容しており、いずれも同一の異常特性を示すことが確かめられています。金庫へのアクセスコードの払い出しを求める場合は、書式F-99983に必要な事項を記入してワークフローを回付してください。アクセスコードは申請ごとに都度変更される運用になっています。

ロムカートリッジ#99983の元となったビデオゲームの特性上、一般的なエミュレータ上での動作は異常特性を引き起こさないことが確認されています。しかしながら、ロムイメージを何らかの方法を用いて実機にて稼働させた場合はオリジナルのロムカートリッジ#99983と同様に事象#99983が発生するため、発見されたロムイメージは速やかにアクセス遮断の手続きを取るべきです。アクセス遮断については当局の定める標準的な手続きが利用できます。


Subject Details:
案件#99983は、異常な性質を持つNINTENDO64用ゲームソフト「ピカチュウげんきでちゅう」のロムカートリッジ(ロムカートリッジ#99983)と、ロムカートリッジ#99983によって引き起こされる事象(事象#99983)、及びそれらに掛かる一連の案件です。

本案件が立ち上げられたきっかけは、2000年4月になされた「友人の言動がおかしくなった」という児童からの通報を受けてのものです。局員が通報者の元へ向かいヒアリングを行ったところ、通報者の友人である10歳の少年が数日前から携帯獣である「ピカチュウ」の鳴き声のような発声を繰り返し、会話がまったく成り立たなくなっているとのことでした。その後少年の両親にヒアリングを実施し、数日前から明らかに異常な言動を繰り返していることが判明、少年は当局の定める病院へ保護入院の措置が取られ、異常をもたらした原因について調査が行われました。

少年宅への家宅捜索の結果、自室からNINTENDO64に挿入されたままの状態の「ピカチュウげんきでちゅう」のカートリッジが発見されました。少年の症状から何らかの関連性が疑われ、両親の許可を得てカートリッジが接収されました。この他数本のNINTENDO64向けカートリッジが見つかりましたが、それらはいずれもピカチュウが一切登場しないものであり、また少年に異常が見られる前後に起動された形跡が無いことから、本件との関係は無いものと判断されています。

接収したカートリッジをNINTENDO64実機へ挿入して起動したところ、通常表示されるタイトルスクリーンではなく、帽子を目深に被った少年(目撃した局員の証言では、これはビデオゲーム「ポケットモンスター」シリーズの主人公であるポケモントレーナーに酷似した姿とのことです)が表示されました。明確に異常な挙動を示したことが確認されたため、実験担当者は即座にNINTENDO64本体の電源を切り、実験を強制的に終了しました。担当者は案件立ち上げの申請を行うと共に、通報者及び両親にさらなるヒアリングを行うことを決定しました。

このヒアリングの実施に前後して、カントー地方のみで計6件のほぼ同一の通報が成され、それぞれでカートリッジの接収とプレイヤーの保護入院措置が取られました。各事案の関係者からヒアリングを実施し、一連の事案について多くの情報を得ることに成功しました。以下はすべての情報を総合した、当局による事案#99983の詳解です。

ロムカートリッジ#99983は、外見上異常性の無い製品と同様に見える「ピカチュウげんきでちゅう」のカートリッジです。このオブジェクトの異常な性質は、対応機種であるNINTENDO64に挿入され、電源が投入された際に発生します。実験担当者が目撃した通り、通常表示されるタイトルスクリーンの代わりに由来不明の未知の少年(キャラクター#99983)が出現し、プレイヤーと相対する形になります。キャラクター#99983は赤い帽子を目深に被っており、表情を読み取ることができません。プレイヤーがコントローラを手にすると、画面に表示されたキャラクター#99983が動作を開始します。

キャラクター#99983はプレイヤーに対し「ピカチュウ、元気にしていたかい?」と抑揚の無い機械音声で訊ねます。プレイヤーがNINTENDO64本体に装着したNINTENDO64 VRS(音声認識システムを実現するNINTENDO64向け周辺機器。「ピカチュウげんきでちゅう」のほぼすべての機能はこの周辺機器を介さなければアクセスできません)を通して何らかの反応を返すと、反応の種類に拠らず次段で述べる事象#99983が開始されます。

事象#99983は、キャラクター#99983と対話したプレイヤーが、自分自身を携帯獣の「ピカチュウ」であると認識してしまう強度の情報災害です。事象#99983が開始された直後から、プレイヤーは一般的な人間の発話が行えなくなります。代わりに、映像作品やビデオゲームにおけるデフォルメ的表現である「ピカ」「チュウ」といったピカチュウの鳴き声を表現するオノマトペのみを発声するようになります。この時、プレイヤーは自分の状態を異常であると認識していないように見えます。

ゲームに登場するキャラクター#99983は機械音声でプレイヤーと対話し、異常性の無い「ピカチュウげんきでちゅう」のプレイヤーが一般的にゲーム画面のピカチュウに対して行うコミュニケーションに類似した頼み事や命令を行います。プレイヤー#99983によるコミュニケーション中、画面構成が変化を見せることは無く、一貫してキャラクター#99983のみが映し出され続けます。これまでに確認されたキャラクター#99983のボイスパターンの抜粋は以下の通りです:


・ピカチュウ(呼びかける)
・おどって
・はしって
・でんきショックだ
・10まんボルトだ
・こっちへきて
・うたって
・でんきねずみ
・かわいい


これらの音声を受けたプレイヤーは、異常性の無い「ピカチュウげんきでちゅう」に登場するピカチュウに酷似した反応を返します。このうち「でんきショックだ」「10まんボルトだ」は、プレイヤーが発電の能力を持たないため失敗します。このことから、事象#99983は対象をピカチュウであると認識させるに止まり、ピカチュウそのものに身体構造や能力を置き換える能力は持っていないことが分かります。

プレイヤーの情報災害の深度はプレイ時間が長期化する事に深くなっていき、ヒアリングではおよそ6時間のプレイで回復不能な認知障害を負うことが確認されました。深度が低い状態であれば、プレイヤー以外の人間がNINTENDO64本体の電源を落とすことで、事象#99983から回復させることが可能です。ただしその場合も、完全な回復に至るまでの時間はプレイ時間に比して相当に長いことが明らかになっています。

案件の立ち上げ後、量販店やゲームショップから可能な限りの「ピカチュウげんきでちゅう」が回収され、さらに製造元と連携し「重大な症状を引き起こす可能性がある」として既に販売された製品に付いても回収が行われました。回収された全カートリッジを検査し、さらに5本のカートリッジ#99983が発見されました。これにより、計12本のカートリッジ#99983が当局の管理下に置かれることになりました。これまでのところ、さらなるカートリッジ#99983が発見されたという報告はありません。

異常性の無い「ピカチュウげんきでちゅう」とカートリッジ#99983の関連性は不明です。両者のロムイメージをダンプして比較した結果は、事前の予想に反して完全一致しています。製造番号についても偏りは見られず、カートリッジ#99983が改造を受けた形跡も見当たりません。カートリッジ#99983の起源を辿る調査は、発売から2年近くの時間が経過していることもあって困難なものとなっています。


[2001-12-24 Update]
昨年発売された英語圏版「ピカチュウげんきでちゅう」(ローカライズタイトル:「Hey You, Pikachu!」)についても、これまでに3本のカートリッジ#99983が発見されています。製造工程や流通経路からは、異常性の無い製品との明確な差異を見出すことができていません。製品の回収が開始されました。


[2002-01-21 Update]
英語圏版のカートリッジ#99983の回収作業中、プレイヤーがキャラクター#99983に話しかけられ事象#99983が発生している最中の現場に局員が突入しました。その直後キャラクター#99983が「KILL THEM(あいつらを殺せ)」とプレイヤーに命じ、錯乱したプレイヤーが局員に襲いかかるという事案が発生しました。局員は自己の判断に基づき拳銃でNINTENDO64本体とカートリッジ#99983を破壊、プレイヤーに携帯式の鎮静剤を投与して事態を収拾しました。プレイヤーの回復を待って行われたヒアリングでは、プレイヤーから当時の記憶が完全に欠落していることが分かりました。

この事案での出来事から、カートリッジ#99983またはキャラクター#99983は画面の外での出来事を認識できる可能性が示されました。カートリッジ#99983の起動を無期限に禁止することが決定されました。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1287] #102428 「廃棄された月面ポケモンセンター」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/12(Tue) 19:45:40   47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#102428

Subject Name:
廃棄された月面ポケモンセンター

Registration Date:
2002-06-17

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
施設#102428は通常の手段では物理的なアクセスがほぼ不可能な位置に存在し、また天体観測によっても発見することが極めて困難であるため、現状以上の保護措置は必要ありません。ホウエン地方トクサネシティ第三支局に所属する本案件担当の局員は、月面に配備した監視用ドローンから送られてくる情報を日々収集・整理し、異常が無いかを確認してください。施設#102428内の探索結果については、資料R-102428-13に取りまとめられています。


Subject Details:
案件#102428は、月面に存在するポケモンセンターに類似した由来不明の施設(施設#102428)と、それに掛かる一連の案件です。

本案件の中核に位置付けられる施設#102428が発見されたのは、当局とトクサネ宇宙開発事務局が連携して打ち上げた月面探査機「かとれあ」の運用開始直後のことでした。月面にこれまで確認されていなかった施設が確認され、速やかに調査を行うことが決定されました。「かとれあ」を経由して探査用ドローンを展開して一次調査が行われ、その特異性から案件の立ち上げが決定されました。

施設#102428は、月面のポイント276にて発見された、恐らくかつてポケモンセンターだったと推定される未知の施設です。外装は各地に存在する一般的なポケモンセンターとほぼ同様であり、随所にポケモンセンター特有の意匠が見られます。付近に設置された看板には「ポケモンセンター月面第壱支局」と書かれています。これは地球に存在する特異性の無いポケモンセンターの命名規則とほぼ一致するものですが、唯一漢数字の「一」ではなく「壱」が使用されている点で異なっています。

内部についても一般的なポケモンセンターと概ね一致する間取りとなっており、長年放置されたことによる経年劣化の兆候こそ見られますが、ほとんどの設備や備品がそのまま残されています。確認されたのは植木10本、小型椅子20個、大型椅子6個、1990年代後半に見られたモデルのデスクトップコンピュータ10台(業務用2台、利用者用8台)、標準的なリカバリーマシン、未知のベンダーのロゴが描かれた自動販売機3台、広報やチラシを積載したカタログラック2台などです。デスクトップコンピュータに付いては、利用者向けに用意された8台分はいずれも電源が入っておらず、現在は稼働していません。残る2台については現在確認中です。

探査用ドローンの機能不足のために、施設#102428の全貌に付いては未だ明らかになっていません。しかしながらこれまでに数十回に渡って行われた調査により、この施設が明らかにポケモンセンターとしての機能を提供していたこと、何らかの理由によりかなりの長期間(推定で200年ほど)放置されていたこと、そして内部に残された備品が放置された期間と比べて経年劣化のペースが著しく遅いことなどが判明しました。

これまでに月面にポケモンセンターが建設された記録は無く、また現時点においては将来的に建設するという計画も存在していません。施設#102428の由来と建設された背景、そして廃棄されるに至った経緯についての調査が行われています。


[2003-03-14 Update]
月面探査機「かとれあ」に搭載したアイテム転送装置を使用し、現地に最新式の多機能ドローンを送り込みました。このドローンは従来機よりも行動範囲が広く、より精細な操作が可能です。すべての準備が整ったところで、24回目となる施設#102428の探査が実施されました。

探査セッション24において、これまで詳細が明らかになっていなかった業務用のデスクトップコンピュータ2台が存在するポイントへの進入が行われました。セッション中にドローンが端末の1台に接続されているマウスに誤って接触した際、スクリーンのロックが解除されパスワードの入力を求める画面が表示されました。これは施設#102428で発見された設備/備品の中で、唯一稼働が確認されたものになります。

端末のパスワードを解読してログインを試みる提案がなされましたが、物理的な試行の困難さから現在は保留された状態になっています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1288] #119356 「気の利くプラスル」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/13(Wed) 20:00:59   46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#119356

Subject Name:
気の利くプラスル

Registration Date:
2007-10-28

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
携帯獣#119356から入手したアイテム#119356については、各支局にある低異常性拾得物保管庫へ他のアイテムと分類して保存してください。これまで回収されたアイテム#119356については概ね異常性の見られない一般的な製品であることが分かっていますが、念のため回収の都度標準的な検査を実施するようにしてください。過去に数件、一般に入手困難か実在しないと推定されるアイテムが回収されたケースが存在します。

これまでのところ、携帯獣#119356そのものを捕獲する試みは成功していません。過去の事例を参照し、携帯獣#119356を捕獲するための方法を考案することが奨励されています。何らかの方策を考案した局員は、案件担当者に直接コンタクトを取ってください。


Subject Details:
案件#119356は、一部地域のプラスルが見せる特異な行動と、それに掛かる一連の案件です。

本件を当局が知るところとなったのは、個人が開設したインターネット上のブログサイトにて「携帯電話の充電が切れて困っていたら、その場を通りがかったプラスルが充電池を投げ渡してくれた」と要約されるエントリーを投稿していたことがきっかけです。投稿者が充電池を確認したところ、所持している携帯電話のモデルに適合するものであり、また取り替えたところ最大まで充電されていたことが判明しました。投稿者曰く「非常に助かった」と結ばれていました。

当初は単なる小規模な事案と考えられていましたが、当該記事を契機として「同じような経験をした」「プラスルから充電池を渡された」と証言する市民が多数現れ、最終的に写真週刊誌などにも取り上げられるほどの話題となりました。加えて、事案の発生がホウエン地方キンセツシティ周辺に集中していたことも、当局の注意を引きました。規模が大きくなるにつれて、本件は案件として管理する必要があるとの提言がなされ、案件の立ち上げが決定されました。立ち上げ担当者となった局員は実際にプラスルから充電池を渡されたことがあり、個人的にも調査を進めていたことを付記します。

案件#119356は、ホウエン地方キンセツシティ近隣にて、交換可能な充電池を動力源とする機器を所有し、かつ対象機器のバッテリー残量が空になるかそれに近い状態となった場合に発生するようです。条件を満たすと近場の草むらからプラスル(以下携帯獣#119356)が出現し、対象者が携帯獣#119356を認識した直後、最大まで充電済みの充電池(以下アイテム#119356)を投げ渡します。アイテム#119356を渡すと携帯獣#119356は直ちにその場から立ち去り、それ以上のアクションを起こすことはありません(ごくまれに、投げ渡した相手に手を振る、ウインクをするといった仕草が見られます)。

携帯獣#119356の移動速度はかなり速いようで、後を追いかけても姿を見つけることはできません。この性質のため、携帯獣#119356を捕獲する試みはこれまでのところすべて失敗しています。複数の局員が同時にモンスターボールを投擲したり、出現と同時に捕獲行動に出るといった対策が試みられましたが、それらは携帯獣#119356にすべて回避されるという結果に終わっています。携帯獣#119356を捕獲することができないのは単に携帯獣#119356の身体能力が極端に秀でているためなのか、あるいは何らかの小規模な現実改変能力を有しているためなのかは定かではありません。

携帯獣#119356が投げ渡すアイテム#119356の範囲は非常に広く、一般に「充電池」と認識されるものの大半をカバーしているように見受けられます。以下はこれまでに回収された、または確認が取れたアイテム#119356の一覧です:


・フルに充電された単1/単2/単3/単4/単5型のニッケル水素充電池
・合計46機種の携帯電話向け充電池
・合計105機種のノート型パーソナルコンピュータ向け充電池
・近年発売された合計3機種の携帯ゲーム機向け専用充電池
・合計78機種のデジタルカメラ向け専用充電池
・電子ゲーム用ボタン電池に対応する充電池(※)
・電池式腕時計の交換用充電池(※)


一覧中で「※」の付いたものは、製品としての品質には問題が無く正常に使用可能なものですが、一般に市販されておらず、またこれまでに同一の製品が開発された記録もないアイテムです。

携帯獣#119356がこれらのアイテム#119356をどのようにして入手しているのかは分かっていません。また、対象者が使用している機器に対応する充電池をどのように判別しているのかについても同様です。現在の案件#119356への対応方針は、主に携帯獣#119356の性質を明らかにすることに焦点が当てられています。


[2008-03-30 Update]
2008-03-26、携帯獣#119356が軽自動車向けのバッテリーを投げ渡してきたという報告がなされました。バッテリーは最大まで充電されていました。携帯獣#119356が所持しているアイテム#119356の範囲について、今一度の見直しが必要になる可能性が指摘されています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1289] #126629 「ホーホーのコレクション」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/14(Thu) 20:25:48   43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#126629

Subject Name:
ホーホーのコレクション

Registration Date:
2010-02-16

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
これまでに捕獲した携帯獣#126629は、いずれも本来の生育環境に近いジョウト地方ヨシノシティ第三支局に収容されています。携帯獣#126629の生育担当に割り当てられた局員は、必要に応じて基礎資料リポジトリに存在する携帯獣標準養育手順書の番号163「ホーホー」を参照することができます。

すべての携帯獣#126629は、不定期に種々の物品であるアイテム#126629を出現させます。これらは収得しないまま時間が経過すると事実上消失してしまうため、必ず回収する必要があります。回収したアイテム#126629はナンバリングし、どの携帯獣#126629がいつ出現させたかを記録してください。アイテム#126629に何らかの異常性が見られるケースも多々あるため、異常性検査も欠かさず実施しなければなりません。

携帯獣#126629の一覧についてはリストL-126629-1を、アイテム#126629の一覧についてはリストL-126629-2をそれぞれ参照してください。


Subject Details:
案件#126629は、特異なホーホー個体群(携帯獣#126629)と、そのホーホーが不定期に出現させる様々な物品(アイテム#126629)、及びそれらに掛かる一連の案件です。

携帯獣#126629が初めて確認されたのは、2009-01-30のことです。ジョウト地方ヨシノシティ近隣でフィールドワークをしていた局員が、足に携帯音楽プレイヤーのストラップを引っ掛けたホーホーを発見しました。当初は悪質な悪戯/虐待の類と考えられ、局員によって足から携帯音楽プレイヤーが外されました。携帯音楽プレイヤーは拾得物として回収され、ヨシノシティ第三支局に隣接する低異常性拾得物保管庫へ未分類アイテムとして保管されました。

翌日同じ局員がフィールドワークを実施していたところ、今度は紐付きのメモ帳が引っ掛けられているホーホーが発見されました。不審に思った局員がホーホーを保護した上でメモを回収し、いかなる人物がホーホーの足に物品を結びつけるという行為を繰り返しているかを調査するため、その場で張り込む判断を下しました。

しかしながら、張り込み開始からわずか2時間後に、ホーホーが瞬時に足を入れ替えたと思しき(実際に入れ替えるシーンを目撃することはできず)仕草を見せ、それまで一切ホーホーへ近づいた人間がいなかったにもかかわらず、今度は腕時計がホーホーの足に引っ掛けられているのを発見しました。局員はホーホー自身が携帯音楽プレイヤー/メモ帳/腕時計を出現させていると判断、ホーホーを保護して最寄りの拠点へ移送しました。移送後に行われた初期調査によりこのホーホーの生態がある程度判明、案件#126629が起票され、ホーホーは携帯獣#126629と分類されました。

案件立ち上げに当たって各支局に類似の事案が発生していないか調査を依頼したところ、ジョウト地方を中心にホーホーの生息地近隣で類似の事案が複数確認されていたことが明らかとなりました。一部の事案ではホーホーが捕獲され、低異常性物品としてアイテムが回収されていたことも分かりました。案件担当者は各地の局員とテレビ会議を実施して情報を収集、これまでに集められたすべての資産をジョウト地方ヨシノシティ第三支局へ譲渡の上集積することで全員の合意を得ました。

収集された資料の再検証と生態調査により明らかになった携帯獣#126629の特異性は、12時間ごとに様々な物品であるアイテム#126629を、自身の足に引っ掛けた状態で出現させるというものです。アイテムは回収されなければ12時間後の足を入れ替えるタイミングで未知の原理によりホーホーの体へ吸い込まれるような形で消失し、新たなアイテムと交換されます。足を入れ替えた際に出現するアイテム#126629は、それ以前のアイテム#126629と関連する場合と一切の関連性を持たない場合のいずれのパターンも存在します。

出現するアイテム#126629について、これまでのところ明確な由来は判明していませんが、一部のアイテム#126629を調査した結果から、アイテム#126629が旅行中に何らかの理由で失踪したポケモントレーナーの所持品であった可能性が示唆されています。以下はこれまでに確認されたアイテム#126629を列挙したリストであるリストL-126629-2からの抜粋です:


アイテム#126629-7:
案件担当者が捕獲したホーホーである携帯獣#126629-3が出現させた携帯音楽プレイヤー。Sony社製の「WalkMan」の2005年夏モデル。内部にセットされたMDの解析結果から、2006年頃まで使用されていたものと推測されている。

アイテム#126629-25:
携帯獣#126629-2が出現させたA5サイズのノートパッド。中にはおよそ60日分の日誌が綴られているが、2日から180日のランダムな間を空けて日誌が記録されている。後半は遺書のような文体となっており、一部が未完。所有者は2000-09頃に行方不明になった13歳の男子トレーナーである可能性が示されている。

アイテム#126629-41:
携帯獣#126629-6が出現させたニンテンドーDSの初期モデル。ゲームカードが挿入されているが、本来カードに貼り付けられているパッケージのシールが剥がされている。本体に電源を投入しゲームを起動すると、黒い画面に白い文字で「You made me die.(お前が私を死なせた)」と表示される。それ以上の動きは見られない。

アイテム#126629-63:
携帯獣#126629-3が出現させた折りたたみ式の携帯電話。挿入されていたSDカードに数十枚の写真が保存されており、いずれも風景写真となっている。風景には異常が無いように見えるが、いずれも既知の場所とは合致しない何らかの矛盾点が存在する(本来地理的に「コガネデパート」が存在すべき場所に、未知の高層マンションが建設されている等)。また、写真はいずれもAdobe Photoshop形式で保存されていた。

アイテム#126629-109:
携帯獣#126629-9が出現させたマスタリング処理済みのCD-R。内部には低品質の音声ファイルが大量に保存されている。音声は様々な家族間の会話を録音したもので、これまでのところ何らかの法則性があるようには見受けられないという判断が成されている。ただし注目すべき点として、相当数の会話に「ユニティー」から始まる種々の組織名と思しき単語が混ざっている。

アイテム#126629-126:
携帯獣#126629-7が出現させた普通自動車の運転免許証。所有者について照会したところ実在し、現在も生存していることが判明。所有者は現在ホウエン地方フエンタウン在住であり、名前と顔写真を除いたほぼすべての情報が矛盾している。免許証についても紛失した形跡は無く、当局の照会でも存在が確認された。


アイテム#126629の特異性から、局員の一部から携帯獣#126629の性質について「異次元/異空間と言うべき場所からランダムに物品を取り出しているのではないか」という仮説が提唱されています。仮説は現在検証プロセスに入っています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1290] #112771 「人間化する団地」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/15(Fri) 21:06:55   51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#112771

Subject Name:
人間化する団地

Registration Date:
2005-09-26

Precaution Level:
Level 3


Handling Instructions:
エリア#112771と指定された区域内には一切の市民及び携帯獣を立ち入らせず、市民に対しては建造物が老朽化して危険である旨を伝えて退去させてください。制止を無視して立ち入ろうとした者は拘束し、侵入しようとした理由について尋問してください。何らかの認識障害が見られたり、情報災害を受けた形跡があった場合、速やかに最寄りの拠点へ移送の上プロトコルUXに基づくレベル3記憶整理処理を受けさせてください。

敷地内に居住している者は例外なくナンバリングし、住民#112771として管理します。これまでのところ総計281名の住民#112771が確認されていますが、これは予告無しに増加する可能性があります。住民#112771を装った局員は4ヶ月に一度「町内会」を開催し、新たな居住者が出現していないかを確かめてください。前回調査時に存在しなかった居住者が確認された場合は、例外なく住民#112771としてカウントしてください。


Subject Details:
案件#112771は、異常な性質を持つ廃棄された住宅団地(エリア#112771)とそこに居住する住民(住民#112771)、及びそれらに掛かる一連の案件です。

カントー地方ハナダシティに存在するエリア#112771は、かつて40年ほど前に「ハナダ北ニュータウン」としてカントー住宅公団(現:都市再生機構)により開発された住宅団地ですが、建物の老朽化と居住者の高齢化が進み、6年ほど前に全住民が退去または転居しました。これに伴い建物の取り壊しと土地の再開発が決定されましたが、都市再生機構による調査で現在も居住者がいることが発覚、その後の追加調査により明らかな異常性が認められたことから、当局に対応を依頼してきました。当局は都市再生機構の担当者と協議の上、ハナダ北ニュータウン全域を当局が管理することで合意しました。これに追随する形で案件#112771が立ち上げられ、ハナダ北ニュータウンはエリア#112771として再定義されました。

旧ハナダ北ニュータウン・現エリア#112771の特性は、敷地内に野生の携帯獣が進入することで発現します。個体によりある程度差は見られますが、概ね6時間程度エリア#112771に留まり続けることで、携帯獣は自分自身がエリア#112771の住民であるという認識を抱くようになります。この時点で携帯獣は住民#112771へと変化し、空いている部屋を自発的に探して「入居」します。以後、携帯獣は死亡するまでエリア#112771の住民として振る舞い続けます。この現象は人間及びトレーナーが使役する携帯獣にはまったく発現せず、該当する人間/携帯獣は本来の意識と性質を保ったままエリア#112771内で概ね安全に活動することが可能です。

住民#112771は、エリア#112771に居住している携帯獣の総称です。現時点で住民#112771-1から住民#112771-218までの218名が居住しており、住宅管理者に扮した局員が作成した「住民名簿」によって識別/管理されています。住民#112771は外見上特段の異常性が無い携帯獣に見受けられますが、その生態は本来の種族と明らかに合致せず、端的に言えば様々な人間の生活様式に酷似しています。

以下は、住民#112771を列挙したリストであるリストL-112771-3から抜粋した居住者と各々の特徴です:


住民#112771-3:
やや体格の大きな♂のサンド。同じ部屋に居住している♀のクラブ(住民#112771-4と識別)と夫婦の関係にある。平日は毎朝6:50頃になると一般的な会社員向けのカバンを持ち、家を出て「出勤」する様子が観察できる。出勤後に追跡を行うと、エリア#112771の敷地内と敷地外の境界地点で消失する。その後概ね19:20頃か、もしくは23:30頃のどちらかのタイミングで再出現し、居住している部屋へ戻る。23:30頃に再出現した場合は必ず泥酔しており、19:20頃に出現した場合と比べて帰宅するまでに時間を要する傾向にある。休日になると、概ね60%ほどの確率で一般的なタイプのゴルフバッグを持ち、駐車場に停められている車に乗ってどこかへ外出する。この場合も、敷地外へ出た時点で車ごと消失する。残りは35%ほどの確率で外出せず、5%ほどの確率で住民#112771-4及び♂のケムッソ(住民#112771-5と識別)を伴って外出する。外出先は不明であるが、住民#112771-5が住民#112771-3と住民#112771-5の実子として届け出られていることから、小規模な家族旅行と推察される。

住民#112771-17:
一般的な体格だが、色素の薄い♀のオーベム。同居者として♀のポポッコ(住民#112771-18と識別)がいる。平日は8:10頃になると手提げ鞄を持って外出し、他の外出する住民#112771と同様に敷地外へ出た直後に消失する。再出現するのは概ね18:50頃で、ほとんどの場合エリア#112771から徒歩5分ほどの位置に存在する食品スーパーのものと一致するビニール袋を追加の所持品として携えて戻ってくる。ビニール袋の中身は、遠くからの観察では食料品及び日用品で占められている。休日になると敷地内にいる他の住民#112771(いずれも♀の個体)と寄り集まり、複数の携帯獣の言語と日本語が入り混じった特異な言語で世間話をすることが多い。

住民#112771-18:
住民#112771-17の実子の役割を果たしている♀のポポッコ。平日は7:30頃に徒歩10分程度の距離にある中学校のものとデザイン的に一致する(サイズや形状はポポッコのそれに合わせられている)制服を着用し、中学校のある方面へ向かって歩いていくことが確認されている。16:30頃に再出現し、制服と同様中学校のものとデザイン的に一致するジャージを着用し、同様のジャージを着用したラルトス(住民#112771-112と識別)やジグザグマ(住民#112771-68と識別)と共に帰宅してくる。所持品から、いずれもテニス部に所属しているものと思われる。休日になると住民#112771-17と共に買い物へ出たり、住民#112771-112と共にエリア#112771内でニンテンドーDSで遊んでいる姿が目撃される。

住民#112771-27:
小柄な♂のトゲピー。母親の役目を担っているのは♀のサニーゴ(住民#112771-26と識別)。朝8:00頃になると住民#112771-26を伴って北門付近へ移動し、敷地内で前触れ無く出現する幼稚園バスと思しき車両に乗り込む姿が度々見かけられる。バスには住民#112771-78と特定されたパチリスが乗り込んでおり、運転手としての役割を果たしている。住民#112771-78の背丈でどのようにしてバスを運転しているのかは不明。父親は長らく確認されていなかったが、観測開始から185日後、予兆無く出現したケーシィ(住民#112771-78と識別)が父親の役割を果たしているものと判明。

住民#112771-39:
相当に年老いた♀のラクライ。同居人は確認されていない。3日に一度ほど、椅子として腰掛けることが可能なキャリーバッグを押して買い物へ出る姿が確認されている。一週間に一度火曜日になると、未知の場所からゴローン(住民#112771-209と識別)の運転するワンボックスカーが現れ、この住民を載せてどこかへ向かうことが分かっている。車体に記されたテキストから、自動車で15分ほどの場所にある老人ホームが運用している車両と特徴が一致することが判明。同日中に帰宅していることから、デイケアサービスを受けているものと推測されている。これまでのところ、家族と推定される住民#112771が確認された事例は存在しない。

住民#112771-44:
まだ幼いナゾノクサ。数か月前まで、兄弟と思しきズバット(住民#112771-45と識別)及びソーナノ(住民#112771-46)と識別と共に敷地内にある駐車場で遊んでいる光景が目撃されていたが、最近は住民#112771-45及び-46の姿が見られなかった。局員が住民#112771-44の居室を訪問すると、死亡から2週間程度が経過したと思われる住民#112771-45及び-46の腐乱死体が発見された。司法解剖から、死因は栄養失調による餓死と断定。住民#112771-44の行方は分かっていない。この居室には両親或いは後見人に相当する住民は確認されていない。


エリア#112771に居住する住民#112771に共通する特徴として、野生の携帯獣及び一般的な人間を「人間」と見なし、親の居る携帯獣を「ペット」のような存在として認識するというものがあります。そのため住民#112771は理論上携帯獣を使役できる携帯獣である可能性が示唆されていますが、エリア#112771は全域が「ペット飼育禁止」に指定されているため(ハナダ北ニュータウンがエリア#112771に変貌する以前から存在した規定です)に、これまでのところ条件を満たす住民#112771は発見されていません。

エリア#112771が実際に携帯獣に対してどのような効果をもたらしているのかは不明な点が多々あります。また、外出する住民#112771が消失している間どこに存在しているのか、消失中にどのような活動をしているのかについても分かっていません。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1291] #121577 「チャックの付いたガルーラ」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/16(Sat) 19:46:46   39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#121577

Subject Name:
チャックの付いたガルーラ

Registration Date:
2008-07-11

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
携帯獣#121577-1及び-2は、捕獲された場所の近郊にあるカントー地方セキチクシティ第三支局にて収容されています。収容に当たっては一般的なガルーラと同じ対応をすればほぼ問題は生じませんが、後述する以下の追加対応を必要に応じて取ることで、収容の安全性と効率を高められることが分かっています。

対応に当たる局員を含むすべての在籍局員は、携帯獣#121577-1及び-2に対して安全のために保護されている旨の発言(※例1を参照)を不定期に行うようにしてください。また、収容フロア(平原を模しています)を通過する際は、携帯獣#121577-1及び-2を野生のガルーラとして珍しがるような発言(※例2を参照)をするよう心掛けてください。

※例1:「あなたは希少な野生動物として保護されています」
※例2:「珍しいな、野生のガルーラがいるなんて」


Subject Details:
案件#121577は、ある一点において明確な異常性を持つ一組のガルーラの親子(携帯獣#121577-1及び-2)と、それに掛かる一連の案件です。

カントー地方セキチクシティ北部にある自然公園「サファリゾーン」にて、中を散策していた旅行者の家族が近くの休憩所にいた監視員に「変わったガルーラを見掛けた」との通報を行いました。通報の内容を受けた監視員は、詳細をセンターへ報告しました。センター側で異常事案発生の虞有りとの判断が下され、監視員にガルーラの保護を要請すると共に、当局へ通報がなされました。捕獲されたガルーラは、当局に引き渡され、携帯獣#121577-1及び-2として分類されました。

携帯獣#121577-1及び-2は、外見上特に不審な点の見当たらない一般的な体格のガルーラの親子です。親個体が携帯獣#121577-1、子個体が携帯獣#121577-2と指定されています。身体能力や知能についても、これまでのところ通常個体と明確な差は見つかっていません。技能や各種特性等についても同様です。後述するある一点を除いては、携帯獣#121577-1及び-2に異常な点はありません。

通常個体と携帯獣#121577-1及び-2の間に存在する唯一の相違点は、携帯獣#121577-1及び-2の首筋から背中に掛けて、外見上チャックのように見える由来不明の器具が取り付けられていることです。チャックは両個体の尻尾の付近にまで及び、そこ終端を迎えて途切れています。当初旅行者から通報がなされたのも、旅行者の一人が携帯獣#121577-1の背面にこのチャックのような器具を見つけたためでした。

器具の詳細な性質については不明です。初期調査でチャックを操作、具体的には中を開こうとした局員は携帯獣#121577-1の執拗な攻撃を受け、全治一ヶ月の重傷を負いました。以後数回に渡り、自然な睡眠中や麻酔によって意識を失わせた状態での操作が試みられましたが、それらはいずれも携帯獣#121577-1の即時の覚醒と強硬な反撃を誘発させ、手酷い失敗に終わっています。

初期調査に際して行われたX線検査では、内部に何らかの未知の生体が存在する可能性が示唆されましたが、その後同じ検査を行う毎に異常性のある結果(内部が空洞になっている/内部に人間らしき影が見つかる/内部に羽毛のようなものが詰まっている/内部に未知の球体が詰まっている)と異常性の無い結果(一般的なガルーラの臓器と骨格が撮影される)が不規則に現れ、統一的な見解は得られていません。携帯獣#121577-1及び-2の詳細について、さらなる調査が実施される予定です。


[2008-11-27 Update]
複数回に渡る内部調査の試みにより、携帯獣#121577-1及び-2は非常に強いストレスを感じているとの診断結果がなされました。担当局員は、これ以上携帯獣#121577-1及び-2を刺激するのは管理的にも、また倫理的にも問題があると判断し、少なくとも携帯獣#121577-1及び-2が関知しうる範囲では、彼女たちを一般的なガルーラ個体として扱うことが決定されました。それに伴い、カントー地方セキチクシティ第三支局に所属する局員に対し、携帯獣#121577-1及び-2向けの対応方針が通達されました。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1292] #139468 「ピカピカネーム」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/17(Sun) 19:56:18   48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#139468

Subject Name:
ピカピカネーム

Registration Date:
2014-03-13

Precaution Level:
Level 0 または Level 5 [審議中]


Handling Instructions:
1993年以降に対象地域内で提出されたすべての出生届を確認し、条件を満たす名前を抽出してください。情報は個人情報に当たるため、データを保管するサーバはネットワークからオフラインの状態に保っておかなければなりません。本稿執筆時点において、データ検証作業は1995年8月時点提出分までが完了しています。得られた情報はデータマイニングチームに連携され、統計的に有意な結果が存在するかの確認が行われます。

本案件を案件として管理すべきかは意見が分かれています。局員は自身の思想信条に基づき自由に発言することが認められていますが、少なくとも現状において本案件は標準的なレベル5案件として取り扱わなければならず、無力化/無効化された案件ではありません。案件担当者はこのことを認識し、適切な姿勢で職務に当たることが求められます。ただし、本案件が実際には当局にて管理すべきものではないという十分な証跡が得られたと判断できた場合には、担当者の判断で案件の取り下げ及び無力化/無効化宣言を行うことができます。


Subject Details:
案件#139468は、推定では1993年頃を境に増加し始めたある特定の条件を満たす人物の名前と、それに掛かる一連の案件です。

この事象について案件化が提起されたのは、当局が設置している内部者向けの案件通報窓口を通してです。通報者は同僚との会話の中で「最近変わった名前の子供が増えた」という話題になり、個人的に興味を持って小規模な調査を実施したところ、事案として報告すべきという結論に至りました。結果を取りまとめた上で正式に文書化して報告し、最終的に案件として管理されることが決定しました。

本案件が管理対象とする人物名の条件は、「読み仮名として携帯獣の名称が振られている」というものです。市民の間では、こうした名前を「ピカピカネーム」と呼称する傾向にあります。局員による初期調査の結果は、少なくとも1996年頃から条件を満たす名前を付けられた市民が急激に増加していることを示しています。その後さらなる調査が行われ、先述した条件を満たす名前が増加し始めたと思われる出来事が1993年に発生しており、一部で話題となっていたことが明らかになりました。調査を行った局員と同僚数名は、この出来事が本案件の契機となった可能性を指摘しています。

以下は、調査の過程で抽出された条件を満たす名前について抜粋したものです:


1.本来の由来に沿ったもの
・綺麗華(きれいはな)
・麒力(きりんりき)
・小風来(こふうらい)
・雪女子(ゆきめのこ)

2.単純な当て字になっているもの
・王部無(おうべむ)
・安能雲(あんのうん)
・服凛(ぷくりん)
・真璃瑠(まりる)

3.軽度の意訳や言い換えになっているもの
・幸運(らっきー)
・夜涙(だーくらい)
・南瓜精(ぱんぷじん)
・九尾(きゅうこん)

4.明確に本来の読みからかけ離れたもの、重度の意訳になっているもの
・海神(るぎあ)
・次元(ぱるきあ)
・電妖(ででんね)
・波導(るかりお)


厳密な調査結果を待つ必要がありますが、局員を対象としたヒアリングでは年月が経過するにつれて1.の割合が減少し、残る2.から4.までのパターンが増加してる傾向にあるとの結果が得られています。しかしながら現状でも1.のパターンに当てはまる名前は少なくなく、またいずれにしても携帯獣の名称と一致する読み仮名が設定されているという点では共通しています。

この傾向がどのような意味を持っているのかについては、局員からいくつかの可能性が提起されています。中でももっとも有力な仮説と考えられているのが、何らかの個人/団体が特定の意図を持って人名の読みとして携帯獣の名前を用いることを広めているというものです。最終的な目的については定かではありませんが、局員の一部からは、人類と携帯獣の同一化を図っているのではないかという意見が出されています。

現状では、本案件に対して当局が起こすことのできるアクションは限られていると言わざるを得ません。いかなる理由で携帯獣の名前を読み仮名として定める事例が増加したのかが定かではなく、事象を止めるための方策が打ち出せないためです。局内でもいくつかの提案はされていますが、いずれも様々なコスト的問題により実現には至っていません。これにより現在の案件対応方針は、統計情報に基づいて新たな知見を得ることに焦点が当てられています。

本案件については、人物の名前を端緒とした人類の諸文化に対する携帯獣の侵襲が、考えられ得る最悪のシナリオとして想定されています。シナリオが現実のものとなった場合、最終的にはあらゆる文化の変質または喪失という結末に至ることとなります。シナリオの進行を阻止するための方策について、現在も検討が進められています。


[2014-08-07 Update]
一部の局員から、本案件に関して「単なる子供の名前に対する考え方や嗜好の変化であり、殊更に騒ぎ立てるのは市民の持つ自由を侵害することになりかねないのではないか」という意見が出されました。過去に見られなかった名前が出現することは当然のことであり、携帯獣の名前を読み仮名として割り当てることを取り立てて異常/奇異なものとして見るべきではないという趣旨の意見です。裁定委員会はこの意見を尊重し、調査活動を超える活動――具体的なものとしては、条件を満たす名前が付けられた新生児について、行政機関における出生届の不受理を促進するといった活動については、明確に禁止するという声明を発表しました。


[2015-03-27 Update]
当局の人事部門における採用担当者が、上席に対して「大賢樹(だいけんき)」という名前の男子大学生が、新卒採用のフォームを通して当局への採用希望を提出したことを報告しました。当該学生については通常のフローに沿って選考を実施する予定ですが、すべての局員は当該学生の採用/不採用に関わらず、本案件の取扱いについてより一層の慎重さが求められます。少なくとも「案件管理局が携帯獣のような名前を持つ人物を調べている」というような、誤解を招きかねない発言は慎むべきです。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1295] #86211 「マリルが流す油」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/18(Mon) 19:44:10   53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#86211

Subject Name:
マリルが流す油

Registration Date:
1997-04-27

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
オブジェクト#86211は、ホウエン地方トクサネシティ第一支局にある大収容室に収容されています。案件担当者は日々オブジェクト#86211の状態を観察し、詳細についてレポートを記述するようにしてください。3日に1度(1997-03-01時点で「5日に1度」から改訂)清掃担当者が収容室を清掃し、収容室に堆積した分泌物#86211を回収してください。分泌物#86211は鋼鉄製のタンクに保管し、必要に応じて拠点内の燃料として使用することができます。分泌物#86211は引火しやすいため、不用意に火気へ近付けるような行為は避けてください。


Subject Details:
案件#86211は、自然死したマリルの遺体のように見える物体(オブジェクト#86211)とそこから分泌される油のような液体(分泌物#86211)、及びそれらに掛かる一連の案件です。

1996年12月16日、周辺海域で漁に従事していた海女のひとりが、海面に浮かぶマリルの遺体を発見しました。遺体の周辺に油のように見える液体が浮かんでいたことから、当初マリルは船舶から漏洩した燃料を摂取したことによって中毒死したものと考えられていました。その後、発見者である海女はマリルの遺体を海岸へ移動させ、ポケモンセンターへ引き取りを要請しました。要請を受けて駆けつけたポケモンセンターの職員が通常の手順に沿ってマリルを検分したところいくつかの不審な点が見つかり、当局の窓口担当者へ通報しました。局員はマリルを回収しトクサネシティ第一支局へ移送、その後の観察といくつかの実験を経て、案件の立ち上げが決定されました。以後、マリルの遺体はオブジェクト#86211として管理されることとなりました。

オブジェクト#86211は、外見上♂のマリルの遺体のように見える由来不明の物体です。身長/体重については平均的なマリル個体と矛盾のない範囲にありますが、携帯獣向けのデバイスはこれまでのテストにおいて例外なくオブジェクト#86211を「コリンク」と判定しています。データ化による完全スキャンは、未知の原因により対象の符号化が必ず失敗に終わるために未だ実施できていません。各種デバイスがオブジェクト#86211をコリンクと判定する理由については、現在も正確な原理が判明していません。生体サンプルを取得しての検査は、後述する特性により不可能と推定されています。

オブジェクト#86211の顕著な異常特性のひとつとして、マリルの尻尾に相当する球体から、常に油のような液体である分泌物#86211が滲み出ていることです。分泌物は1時間につきおよそ0.06リットル(1997-02-28までは、1時間に付きおよそ0.035リットルでした)分泌され、そのペースは多少の上下こそ見られますが概ね一定です。これは本来の異常性のないマリルの尻尾に充填されている液体と類似した性質を持ちますが、相違点として可燃性で極めて引火しやすく、高いエネルギーを持っていることが分かっています。

分泌物#86211の特異な性質は、オブジェクト#86211を驚異的な速度で修復するというものです。当局の実験では、生体サンプル取得のためにオブジェクト#86211の右脚を切除したところ、周辺の分泌物#86211が切断面付近に集中し、およそ20分で完全に元の状態まで修復したという事象が記録されています。この時、切除された右脚は直ちに分泌物#86211へ変化し始め、こちらは約7分で完全に分泌物#86211へ変貌を遂げました。切除したサンプルが極めて短時間で分泌物#86211へ変質してしまうという性質から、オブジェクト#86211の生体サンプルを得ることには成功していません。

採取した分泌物#86211が高いエネルギーを持つことから、支局では熱源としての利用可能性を実験中です。この実験を通してある程度の安全性を確保できた場合は、ホウエン地方トクサネシティ内の各支局においても同様の実験を行う計画が策定されています。


[1998-03-01 Update]
収容室を確認した担当者が、オブジェクト#86211が分泌する分泌物#86211の量が明らかに増加していることを指摘しました。これは1997-03-01にも確認された事象です。清掃のペースについては「3日に一度」から変更はありませんが、オブジェクト#86211の状態についてはより注意深く観察する必要があります。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1296] #127596 「記憶の中のオーベム」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/19(Tue) 20:08:57   54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#127596

Subject Name:
記憶の中のオーベム

Registration Date:
2010-06-08

Precaution Level:
Level 4


Handling Instructions:
事象の性質上、本案件の担当者は実務担当者ではなく、人事部門の担当者から選出される特別規定が制定されています。警戒レベルは「レベル4」ですが、例外的にすべての情報が局員に対して開示されています。すべての局員はこの報告書をはじめとする関連資料を熟読し、後述する矛盾した記憶が存在しないかを自発的にチェックしなければなりません。

本案件の概要に述べるような症状を報告してきた、あるいは自らの記憶の整合性について矛盾や不安を申し出てきた局員は、可能な限り配置転換を行い、その後の経過を観察します。配置転換に当たっては上席及び人事部門と相談の上、受け入れられるならば他地方へ転籍することが望ましいです。人事異動及び転籍後、最低でも1年間は継続的なヒアリングを実施しなければなりません。

[2014-12-22 Update]
ホウエン地方においても同様の事案が発生したことが確認されました。ホウエン地方は本案件を理由とする転籍先として不適切との意見が出され、案件担当者はこれを受理しました。2014-12-23以降、ホウエン地方はイッシュ地方と同様の扱いとなります。


Subject Details:
案件#127596は、イッシュ地方に在籍している局員にのみ確認されるある種の記憶障害と、それに掛かる一連の案件です。

記憶障害と思しき事象が初めて確認されたのは、2010年2月上旬に実施された、イッシュ地方に在籍する局員を対象とした人事部門による定期的なヒアリングにおいてで、複数の局員が後述する矛盾した記憶について悩んでいると証言しました。事態を重く見た人事部門は委細を取りまとめて当局上層部へ報告、これに基づいて案件の立ち上げが行われました。案件の性質から通常とは異なる体制での対応が必要との判断がなされ、案件担当者は人事部門から選抜、案件に関するすべての情報を全局員に開示することを定めました。

局員が報告した記憶障害は、いずれも「オーベムに記憶を弄られたような気がする」というものです。局員は個々人の活動中に何らかの形でオーベムと遭遇し、対象の持つ特殊能力によって記憶操作を受けた可能性があると証言しています。局員の多くは現場で活動するフィールドワーカーであり、勤務中にオーベムと接触することは可能性としてあり得ないことではありません。各人により様々ですが、中でも目立つのが「あの時の記憶は偽の記憶ではないか」という強い猜疑心を抱くことです。

第三者が記憶操作を受けたとされる日付の局員の行動について調査したところ、完全には一日の行動内容を把握できなかった局員も一部存在しますが、ほぼ全員が特に問題なく過ごしていたことが分かりました。これは業務中に限らず、家族のいる局員については同位を得た上で家族からもヒアリングを行っています。ほとんどの局員が実際にはオーベムと接触しておらず、記憶操作を受けた形跡も見当たりません。調査した中には、終日支局内で事務作業に当たっていた局員も含まれていました。

しかしながら、別の局員から「周囲の人間も含めて記憶操作を受けているのではないか」という可能性が提起されました。関係する全員がオーベムにより偽の記憶を共有させられ、実際には大規模な記憶操作が行われているにもかかわらず、それを認識することが困難なのではないかというものです。オーベム個体の持つ能力にもよりますが、先の局員が証言したような大規模な記憶操作も決して不可能なことではありません。

別の局員からは異なる観点として、実際には記憶操作などはまったく行われていないか行われていてもごく部分的なものであるが、一部の局員に「オーベムに記憶を操作された」という偽の記憶を埋め込むことで、実際には行われていない記憶操作がさも行われたかのように偽装しているというものが挙げられました。オーベムに関する断片的な記憶を埋め込むことで、真の記憶と偽の記憶の区別を付けられないようにしているということです。

この案件に関する意見は大きく分かれています。記憶操作は行われたのか否か、行われたとしてどの程度の規模だったのか、この事象を発生させているのはどのような個人/団体か、何より現時点で当局の局員にのみこの事象が見られるのはなぜか、様々な意見や仮説が出されていますが、各人の記憶を信頼することが難しい関係から、仮説の検証は極めて困難です。当局と敵対的な関係にある個人や団体は多数存在しますが、そのいずれかが関わっているのかも定かではありません。


[2012-05-22 Update]
別案件の担当者の主導により行われた、要注意団体の一つである「アムリタ・ファウンデーション」のイッシュ地方に存在する拠点への突入作戦により押収された資料から、アムリタ・ファウンデーション内部でも案件#127596とほぼ同じ事象が発生していたことが明らかになりました。資料からはアムリタ・ファウンデーションが対応に相当苦慮していたことが伺え、案件#127596が少なくともアムリタ・ファウンデーションが主導して展開した作戦ではないこと、そして当局のみがターゲットとされているわけではないことが確認されました。


[2014-12-07 Update]
ホウエン地方シダケタウン第二支局に、黒服にサングラスを着用した不審な男と、明確に被験者#136245(案件#136245「擬獣人のクラブ」参照)と分かる児童12名が現れ、当局に保護を求めて来ました。担当局員が手順に沿ってホウエン地方ハジツゲタウン第二支局へ移送した後ヒアリングを実施したところ、男は「マルシアス・エンターテインメント」で「クラブ」の構成員として働いていましたが、ある時「オーベムによる記憶操作を受けた」という記憶が突如として蘇り、身の危険を感じてクラブ内にいた被験者#136245全員を伴って局に出頭したとのことです。さらなる調査が行われることになっています。


[2014-12-19 Update]
7日に発生したインシデントを受け、対応手順の改訂が行われました。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1297] #95879 「サニーゴの報復」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/20(Wed) 21:53:25   40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#95879

Subject Name:
サニーゴの報復

Registration Date:
2000-05-20

Precaution Level:
Level 4


Handling Instructions:
事象#95879の発生条件が満たされたことを確認した場合は、可能な限りの資源を投じて対象#95879を保護するよう努めてください。案件担当者は、対象#95879を保護するためであればどのような資源の利用申請であっても認められることになっています。これまで発生した事象#95879においては、いずれも最終的に対象#95879の保護に失敗し、対象#95879の死亡という結末に至っています。一度でも対象#95879の保護に成功した場合は、その際に執られた措置及び利用された資源について、可能な限り詳細に記録してください。

確認されたすべての事象#95879において、携帯獣#95879群への攻撃は事実上意味を成さないことが分かっています。案件担当者は携帯獣#95879群への攻撃を避け、対象#95879を保護することに注力してください。携帯獣#95879群へ攻撃を加えた場合、攻撃者が対象#95879と共に携帯獣#95879群による侵襲を受ける虞があります。必要以上の損失/損害を避けるためにも、携帯獣#95879群に対する攻撃、特に武器を用いた攻撃は行わないでください。


Subject Details:
案件#95879は、特定の条件を満たした場合に発生する異常な事象(事象#95879)と、その際に出現する共通した特徴を持つ大量のサニーゴ(携帯獣#95879)、及びそれらに掛かる一連の案件です。

本案件を当局が知るところとなったのは、1999年5月下旬に発生した大手新聞記者の不審死事件について警察機関と共同で捜査を行っていた最中のことです。全身に幾つもの切り傷が刻まれ、さらに死亡後も執拗に殴打した形跡が見られるという被害者の異常な死亡状況から、当初はリベラル的な新聞社の方針と対立する過激な思想の持ち主による猟奇殺人事件との見立てがなされました。捜査は警察機関の手に委ねられ、当局は必要に応じて協力する形となりました。

しかしながら翌年4月下旬、別の大手新聞社の男性社員がカントー地方セキチクシティ第六支局へ出頭し「同業者がサニーゴに殺された、次は自分の番だ」と錯乱した様子で訴え出てきました。局員が男性を保護して事情を聴取したところ、男性は昨年死亡した新聞記者と個人的な交流があり、死亡する一ヶ月ほど前から「あちこちでサニーゴを見掛けるようになった」「サニーゴが自分を監視しているような気がする」と訴えていたことが明らかになりました。その後この男性も最近になってサニーゴを目撃するようになり、身の危険を感じて当局へ保護を申し出たとのことです。局員は上席と協議の上、男性を拠点内にある高セキュリティの収容室へ匿うことを決定しました。

1999年5月15日までは大きな動きは見られませんでしたが、5月16日になって拠点の敷地内でサニーゴが散発的に確認される事案が複数発生、その都度敷地外へ退避させる措置が執られました。しかしながらサニーゴの数は時間を追うごとに増加し、どこから侵入しているのかも定かでないため対症療法的な方策しか採ることができず、5月18日夕刻時点で拠点内にはおよそ240体のサニーゴが出現している状態になりました。

この時出現したすべてのサニーゴは局員には見向きもせず、男性が収容されているフロアを目指し続けていました。男性を別の場所へ移動させる試みもなされましたが、拠点全体がサニーゴに包囲されている状態であり、脱出は既に困難な情勢でした。襲撃者であるサニーゴは携帯獣の局員による攻撃や銃火器を使用した攻撃により一時的に足止めをすることはできましたが、どれだけ負傷してもサニーゴは意に介さず前進し続け、完全に停止させることはできませんでした。最終的には男性のいる収容室へ180体ものサニーゴが一斉に押し寄せるという事態になりました。20名以上の局員による抵抗をすべてはね除け、最終的にサニーゴの集団は男性を惨殺しました。

1999年5月のインシデントを受け、事故調査委員会が設置されました。委員会による調査により、この事象が当局にて管理すべき異常事案に当たるとの結論が出され、正式な案件化が提起されました。また調査の過程で類似した事案についてもさらなる追求が行われ、当局が関与するかなり以前から事案が発生していることが判明しました。調査委員会により事象及びサニーゴについての異常特性が改めて整理され、文書としてまとめられました。

事象#95879は、過去一年以内に発生した虚偽報道に深く関わる、あるいは直接関与した人物(対象#95879)に対して、概ね翌年の4月下旬から5月下旬にかけて発生する原理不明の異常な事象です。「虚偽報道」の範囲は正確には分かっていませんが、現時点では「明確な意図に基づく虚偽の報道」が該当すると考えられています。結果として誤報となった場合に事象#95879の発生条件を満たすのかは、事例の少なさから明らかになっていません。

事象#95879の概要は、後述する異常な特性を持つサニーゴ(携帯獣#95879)が大量に出現し、対象#95879を集団で暴行して死に至らしめるというものです。携帯獣#95879は4月下旬に入ったタイミングから徐々に対象#95879の周囲に出現しはじめ、5月中旬までその状態を継続します。これまでの調査で、概ね5月16日頃から携帯獣#95879が攻撃を開始し、5月18日から19日に掛けて攻撃が激化し対象#95879を殺害するに至るという流れがあることが分かっています。対象#95879の殺傷に際しては本来のサニーゴ由来の技能はほとんど使用されず、単純な殴打や切創を伴う打撃が用いられることが大きな特徴です。

携帯獣#95879は、異常な特性を持ったサニーゴです。この個体群の特徴として、角の一部が破損している、水晶体が白濁している、身体の一部が変色している、あるいは四肢に異常があるなど、身体に何らかの欠損または汚損が必ず見られます。携帯獣図鑑などのデバイスは携帯獣#95879を例外なく「サニーゴ」と認識しますが、概ね温厚で穏やかな性質を持つ通常個体とは大きく異なり、携帯獣#95879はとても敵対的です。対象#95879を殺傷することのみを目的としているようであり、それ以外の存在にはほとんど興味を示しません。対象#95879を殺傷するに辺り邪魔であると判断した場合は、対象#95879に対してほどではありませんが、積極的に攻撃を仕掛けてきます。

こちらからの攻撃で携帯獣#95879にダメージを与えることは不可能ではありませんが、一般的な個体と比較して異常と言うべきレベルで高い耐久力を持ち、さらにサニーゴ由来の自己再生能力を持つために、駆逐/殲滅は現実的な選択肢ではありません。最終的に対象#95879の死亡が確認された時点で携帯獣#95879の目的は達せられるものと想定され、その後速やかにその場から撤退します。この時捕獲された個体についても24時間以内に必ず消失し、行方を追跡することはできません。

何らかの未知の原理により、携帯獣#95879は少なくとも地球上のあらゆる場所に移動、または出現できる可能性があります。1999年5月のインシデントでは、携帯獣#95879が外部から拠点へ侵入した形跡がほとんど見られないにも関わらず、最終的にのべ268体の携帯獣#95879が確認されました。このことから局員の間では、携帯獣#95879は異次元/異空間と呼ぶべき領域を移動し、任意の場所へ出現できるとの見方が示されています。

事象#95879及び携帯獣#95879が確認された最古の事例は、1990年4月のことです。それ以前に事象#95879及び携帯獣#95879が関与していると推定される事件は、これまでのところ一切確認されていません。調査委員会では、傷付き汚れたサニーゴが多数出現するという特徴的な事象から、1989年4月から5月にかけて大きく取り上げられた虚偽報道事件が事象#95879の起源になったのではないかという仮説を提唱しています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1298] #114954 「ふぞろいの玉子たち」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/21(Thu) 20:37:05   46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#114954

Subject Name:
ふぞろいの玉子たち

Registration Date:
2006-06-06

Precaution Level:
Level 3


Handling Instructions:
集団#114954と思しき集団が確認された場合、速やかに最寄りの拠点へ移動させてください。こちらの指示に従わない場合は、非致死性の武器を用いて制圧することも認められています。一般的なタマタマと同程度の技能を行使する可能性があることが分かっているため、対応にあたっては主に超能力系統の攻撃に耐性を持つ携帯獣を帯同させることが望ましいと言えます。拠点へ移動させたあとは、集団#114954の構成に応じて対人用/対携帯獣用の標準移送手順に沿ってカントー地方タマムシシティ第七支局へ移送してください。

カントー地方タマムシシティ第七支局へ所属する局員は、集団#114954の性質に応じて適切な給餌を行ってください。集団#114954の統率者は日々変化するため、給餌の都度確認を取る必要があります。判断が付かない場合、独断で行動せず上席に相談の上対応を協議してください。


Subject Details:
案件#114954は、ある特異な性質を持って活動する集団(集団#114954)と、それに掛かる一連の案件です。

2006年の2月中旬頃、ジョウト地方エンジュシティにあるポケモンセンターへ、旅行で現地を訪れていたトレーナーから「奇妙な集団が街を歩いている」との申し出がありました。センターの職員が現場へ向かったところ、後述する性質を持つ異常な集団が街を彷徨っているのが発見されました。異常性があると判断した職員が当局へ通報し、駆け付けた局員により集団が確保されました。この時、集団は特に抵抗の意志を見せませんでした。

当初この事案は単発の事案として取り扱われ、対応の優先度は低く見積もられていましたが、その後ある程度の間を置いて同一の性質を持つ集団が複数発見されました。一部の局員から案件として管理すべきとの提言が上がり、裁定委員会はこれを承認、各地の事案を取りまとめた上で、案件#114954として管理することを決定しました。担当者が割り当てられるとともに、集団#114954についてのより踏み込んだ調査が実施されました。

集団#114954は、6人/体/個の人間/携帯獣/無機物(構成体#114954)からなる異常な集団です。集団は必ず6の単位で形成され、それ以上少ない数になることも多い数になることも決してありません。6人/体/個の構成体#114954で一集団を形成し、他の構成体#114954に対して概ね40センチメートルから1メートル以内の距離を置きつつ活動します。6を一単位とすることから、集団#114954は携帯獣の「タマタマ」とほぼ同じ性質を持つと推定されています。

この集団#114954が持つ最大の特徴は、まったく関連性の見られない複数の人間/携帯獣/無機物から成る構成体#114954により集団が形成されることです。各集団#114954の調査結果から、恐らく種族的/物質的な制約は存在しないものと推定されています。無機物については携帯獣由来のサイコキネシスによって地面を引きずる形で移動させられていることがほとんどですが、動力を持つものであればそれを用いて移動しているケースもあります。すべての構成体#114954は自我を持たず、単一の集合意識に基づいて行動しているようです。

集団#114954は一般的なタマタマと同程度のサイコキネシス能力を持ち、捕獲に抵抗して攻撃を試みてくるケースが数件確認されています。このことから、集団#114954はタマタマの変種或いは亜種である可能性が示唆されています。しかしながら、本来のタマタマと構成する要素があまりに異なるためか、これまで実験したすべてのデバイスは集団#114954をタマタマとしては判定せず、特定不能の未知の存在と判断するか、そもそも存在そのものを認識することができません。

以下は、これまでに確認された集団#114954と、集団#114954を形成する構成体#114954をまとめた一覧です:


[集団#114954-1]
構成体#114954-1-1:
ホウエン地方にあるカイナ南高校の夏期仕様のものと一致する制服を着用した、16歳頃と見られる少年。右手に折りたたみ式の携帯電話を持っているが、既知のあらゆる機種と一致しない。

構成体#114954-1-2:
高齢(少なく見積もっても20歳以上)かつオッドアイになっている♂のニャース。集団#114954-1-4の側にいることが多い。

構成体#114954-1-3:
通常個体よりも一回り大きな♂のペロッパフ。青いリボンが結びつけられている。

構成体#114954-1-4:
72歳頃と推定される、ベージュのエプロンを着用した女性。手に調理用の泡立て器を持っている。

構成体#114954-1-5:
2000年代前半にSony社が発売した四足歩行型ロボット「AIBO」の初期モデル。風雨に晒されかなり老朽化している。

構成体#114954-1-6:
カントー地方シオンタウン在住の5歳の少女と外見的に一致する少女。本人は健在であり、何ら異常が無いことを確認済。本人を摸した別の存在と思われる。


[集団#114954-2]
構成体#114954-2-1:
アトラクション用のピカチュウの着ぐるみ。内部スキャンで人が入っていないことが判明。

構成体#114954-2-2:
大手金融機関のシステム子会社のものと一致するIDカードを提げた30代後半の男性。カードに記載された内容を元に該当する企業へ照会したところ、対象者は既に現場から退場しているとの回答が得られた。

構成体#114954-2-3:
14歳頃と思われる少年のミイラ化した遺体が載せられた医療用のストレッチャー。遺体ではなくストレッチャーが構成要員である。

構成体#114954-2-4:
2004年頃行方不明となり、後に山中で白骨化した遺体で発見された20歳代の成人女性トレーナーと一致する人物。所持品は失踪当時のものとほぼ一致するが、携帯獣の入ったモンスターボールはすべて喪失している。

構成体#114954-2-5:
右腕を喪失した50歳代の成人男性。切断面は完全に治療され、視認できるような傷跡は残されていない。後述する集団#114954-2-6のキャリアとなっている。

構成体#114954-2-6:
集団#114954-2-5のものと推定される右腕。自力での移動は困難を伴うためか、ほとんどの場合において集団#114954-2-5が左手に持って持ち運んでいる。指先や手を動かすことで意思疎通が可能。


[集団#114954-3]
構成体#114954-3-1:
旅行用のスーツケースを持った60歳代前半の男性。小さな帽子を被り、赤いネクタイをしている。外見は2年前から行方不明となっている男性と酷似しているが、これまでのところ同一人物であるとの確証は得られていない。

構成体#114954-3-2:
小包を持った大人のオオタチ。♀と判明。小包と本体が何らかの理由で一体化しているようで、両者を分離させることができていない。小包内部をX線検査で確認したところ、内部には大量の蝋燭が詰まっていることが判明した。

構成体#114954-3-3:
カントー地方シオンタウン北西部にあるシオン第三中学校が定める冬季仕様のものと一致する制服を着用した、小柄な14歳頃の少女。学校指定のバッグと、テニスラケットが入っていると思われるバッグをそれぞれ提げている。

構成体#114954-3-4:
ライムグリーンのバランスボール。

構成体#114954-3-5:
中身が空になった消火器。転がるようにして移動する。接触したものが居ないにも関わらず、不定期なタイミングで直立姿勢になっている。

構成体#114954-3-6:
大柄なサイホーン。♂の個体。本来サイホーンにはほとんど知性が見られないことが分かっているが、本個体はしばしばこの集団を統率している姿が目撃されている。


[集団#114954-4]
構成体#114954-4-1:
6歳頃の少年に対し、自分自身を一般的な風船のように持たせたフワンテ。本来付いているはずの「×」マークが存在しない。調査の結果少年は集団の構成員ではなく、フワンテをこの場に安定させるためのスタビライザーとしての役割を担っていることが判明。

構成体#114954-4-2:
子供用のヒメグマ人形。自律的に移動しているように見える。製品のタグに「まりな」という所有者と思しき名前が油性マジックで記載されている。

構成体#114954-4-3:
買い物カゴに缶詰を満載した補助用のカート。缶詰のパッケージは、中身としてすべて携帯獣の肉を加工した食品が詰められていることを示唆している。缶詰の由来は不明。

構成体#114954-4-4:
パジャマ姿の8歳頃の少女。枕を抱えている。眠って居るような表情をしているが、時折言葉を呟くことがある。言葉を録音して解析したところ、呟いた時間におけるシルフカンパニー社の株価と一致していることが判明した。

構成体#114954-4-5:
剣道着及び防具一式を着用した50歳代の男性。竹刀の代用として鉄パイプを所持している。定期的に素振りの練習をしているが、本来の竹刀の持ち方とは逆の持ち方をしている。

構成体#114954-4-6:
口に電球をくわえたプラスル。♂の個体。日の出から昼にかけて電球が点灯し、日の入りから夜にかけて消灯する。夜間に電球が点灯した記録は存在しない。


[集団#114954-5]
構成体#114954-5-1:
全国に支店があるハンバーガーショップの制服を着用した20代前半の男性。376秒間かけて「挨拶をする→メニューを提示する動作をする→ハンバーガーセットを注文されたことを復唱する→代金を受け取る動作をする→釣り銭として420円を返す動作をする→後方からハンバーガー/フライドポテト/ドリンクを取り出しトレイに載せる動作をする→トレイを客に渡す動作をする→一礼する」というサイクルを一切休むことなく繰り返している。

構成体#114954-5-2:
セガ・エンタープライゼス製のアーケード筐体「ブラストシティ」。内部には同社がリリースした対戦型格闘ゲーム「バーチャファイター2」の基盤がセットされている。

構成体#114954-5-3:
ピンク色のバランスボール。

構成体#114954-5-4:
12歳頃の女性トレーナー。2002年頃にホウエン地方で流行したポケモントレーナーのスタイルと一致した服装や装飾品を身に着けている。所持している携帯獣図鑑には所有者情報が記録されていたが、対象のトレーナーは実在した記録が存在しないことが分かっている。

構成体#114954-5-5:
外見上コラッタに見えるが、多数の相違点が確認された未知の生物。後の調査により、案件#115064(「おそらくはコラッタではない何か」)で管理されている生体#115064と一致することが判明。

構成体#114954-5-6:
構成体#114954-3-3とほぼ同じ服装をした別の少女。こちらは陸上部のメンバーが使用するものと同じバッグを提げている。集団#114954-3-3との関連性は不明。


[集団#114954-6]
構成体#114954-6-1:
任天堂製の携帯ゲーム機「ゲームボーイ」の初期モデル。本来は存在しない「X」「Y」のボタンが追加されている。カートリッジの挿入部分には「スーパーマリオランド」がセットされている。

構成体#114954-6-2:
通常よりもかなり大型のビリリダマ。地上から常に10センチメートル程度浮遊した状態で移動する。

構成体#114954-6-3:
黄色い安全帽に水色のスモックを着用した、4歳から5歳と見られる男児。この集団#114954の統率者となることが多い。

構成体#114954-6-4:
2000年から2002年頃に掛けて人気を博した女性アイドルグループの一人に酷似した女性。当人は現在失踪中であり、家族から捜索願が出されている。当時着用していたステージ衣装のように見える服装をしているが、細部に多数の相違点が見つかっている。

構成体#114954-6-5:
大柄な♂のムーランド。1997年に業務中のインシデントにより殉職した当局の元局員と特徴が一致している。

構成体#114954-6-6:
ところどころに傷が見られる大人のエアームド。移動/行動するたびに、鉄がきしむような激しい音を立てる。携帯獣図鑑による解析は、対象がエアームドではなくサニーゴであるとの矛盾した結果になる。


集団#114954についての調査は、集団を形成する個体自体にも多数の異常性が見られることから難航しています。すべての集団#114954について同一の起源に基づく存在なのかという点も含め、現在も議論が続けられています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1299] #103338 「失敗した食糧計画」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/22(Fri) 23:51:45   50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#103338

Subject Name:
失敗した食糧計画

Registration Date:
2002-09-30

Precaution Level:
Level 0


Handling Instructions:
アムリタ・ファウンデーションの関連会社が関わったとされる「恒久的食糧供給計画」に関する資料は電子化した上で案件別サーバに保管し、原本はセキュリティロックが施された金庫室にバインダーへ綴じて保管してください。電子化したファイルについては、案件担当者及び適切なセキュリティクリアランスを保持する局員であればすべての内容を自由に参照する権限が与えられます。これまでの調査によりほぼすべてのファイルの入手に成功しており、未入手とされるファイルはいずれも計画本文とは関連の薄い付帯資料であると推定されています。

現在の警戒レベルは、「恒久的食糧供給計画」の顛末とアムリタ・ファウンデーションの採る利益重視の活動方針により「0(無力化済)」が設定されています。仮にアムリタ・ファウンデーションやその他要注意団体に指定すべき組織が同種の計画を推進していることが明らかとなった場合、別途新規の案件を立ち上げて対応に当たってください。本案件では、既に中止/終了が明らかになっている「恒久的食糧供給計画」のみを取り扱います。


Subject Details:
案件#103338は、かつてアムリタ・ファウンデーションが推進していた「恒久的食糧供給計画」なる失敗した計画と、それに掛かる一連の案件です。

当局が「恒久的食糧供給計画」について関知したのは、2002年7月上旬にオーレ地方北東地域で実施された、アムリタ・ファウンデーションの関連企業である「ベストミール株式会社」に対する強襲作戦においてです。企業の拠点は既に無人となっており、ほとんどの設備や資料がそのまま残されている状態でした。突入した機動部隊ゼータ-アメシストは残された設備及び資料をすべて押収し、当局の拠点へ持ち帰りました。その初期調査が行われた矢先に、先に述べた「恒久的食糧供給計画」の存在が明らかとなりました。

ベストミール株式会社が推進していた「恒久的食糧供給計画」は、ほぼすべてのカテゴリの廃棄物を食糧源とするベトベター及びベトベトンを人為的に培養し、それらを人類や携帯獣の食糧として加工することにより、廃棄物処理と食糧供給を同時に実施することが主な目的となっています。計画書ではベトベター及びベトベトンの食料品への加工は有望なビジネスになりうるとしており、アムリタ・ファウンデーションによる積極的な資金や人材の投入が行われていたことが詳述されています。

計画では、廃棄物処理についてはベトベター及びベトベトンがそれらを主食としているためにほぼ解決しているとし、残るベトベター/ベトベトンの食品化に焦点が当てられていました。元来ほぼすべての生体組織が人体にとって致命的なレベルで有毒である両携帯獣の食品化は難航が予想され、実際の計画においても幾度と無く試行錯誤がなされた形跡が見られますが、1998年6月頃、ベストミール株式会社の研究チームが食品化のプロトタイプ試験をクリアしたとのことです。

食品化に至るまでの詳細は明らかになっていませんが、資料上の断片的な記載から、何らかの特異な手法ないしは技術が用いられたものと考えられています。ベトベター/ベトベトンを屠殺し、死滅した生体組織を人体の摂取に適した形に再構築する手法が用いられたことが示唆されています。これにより食品化の目処が立ち、さらに1年半程度の改良期間を経て、2000年初頭より恒常的に食糧が不足しているオーレ地方の北東地域にて実地テストが行われることとなりました。このタイミングで、ベストミール株式会社の本社機能も同地へ移転しています。

以下は廃棄されたサーバーコンピュータから入手した、アムリタ・ファウンデーションからベストミール株式会社へ視察に訪れたと見られる社員が、アムリタ・ファウンデーションの商品開発部門へ宛てて送付したメールレポートの転記です:


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Subject: 【報告】BM社主導の食糧供給計画視察結果について(2000/07/12)

宛先各位

いつもお世話になっております。
商品統括部 今村です。

昨日から本日午後にかけて、BM社の推進する食糧供給計画、弊社内コードネーム「ガベージゼリー計画」について視察して参りました。
BM社の営業部長である戸塚さまからご説明を受け、現状に付いて報告いただいた次第です。

率直に申し上げまして、ガベージゼリー計画については明確に失敗と言わざるを得ません。
ガベージゼリーの廃棄物処理能力に付いては申し分なく、当初の期待を上回る性能を見せていますが、弊社がターゲットとして定めるエリアに食糧として展開するには看過しがたい問題が残されたままです。
重点課題No.6として管理されている件ですが、この問題が解決されていない時点で商品化は難しいという認識では一致しているかと思います。展開の都度大規模な媒体工作が必要となれば、掛かるコストは計り知れません。

またそれとは別に戸塚さまから提起された課題として、ガベージゼリーがガベージゼリーを廃棄物として認識するというものがございます。
ある程度の規模を持つガベージゼリー同士で共食いと分裂を起こしてしまうというものであり、保管や貯蔵に際して重大な問題になるのは明白です。

既に現地の実験資材は枯渇しており、周辺地域では明らかに警戒している様子が見受けられます。
戸塚さまは商品開発の継続を要望していますが、現状では弊社に利益をもたらす可能性は低いと判断できます。
プロジェクトのノックアウトファクターを満たしていると言わざるを得ないことから、早期の中止と事後処理推進を提案させていただきます。
製造済みのガベージゼリー及びドキュメント類については、当社の研究開発部門へ移管する準備を始めております。
今後の研究により、少なくとも人体を廃棄物と誤認するような重大な欠陥は取り除かれるべきと考えます。

以上、よろしくお願いいたします。


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Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1300] #90349 「気まぐれな内臓」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/23(Sat) 20:40:00   36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#90349

Subject Name:
気まぐれな内臓

Registration Date:
1998-08-19

Precaution Level:
Level 1


Handling Instructions:
携帯獣#90349は、現在カントー地方トキワシティ第八支局へ収容されています。そのものは一般的なニョロモと同じ性質を持つため、標準的なニョロモの生育手順に沿って収容してください。必要に応じてモンスターボールへ格納することも可能ですが、その場合事前に必ず手順P-90349-1に従って現在の状態を確認・記録してください。

手順P-90349-1によって携帯獣#90349の状態を確認した際、前回の確認時から状態が「反転」していた場合は、特に対応の必要はありません。本稿執筆時点では一度も確認されていませんが、仮に「反転」以外の状態が見られた場合は、可能な限り周囲の状況を詳細に記録した上で、上席に報告を行ってください。必要に応じて、その後の対応について検討することになっています。

不定期に、元の携帯獣#90349のトレーナーが面会目的でカントー地方トキワシティ第八支局を訪れることがあります。受付担当者はトレーナーを出迎えた後、情報漏洩防止用の標準的なアイマスクとヘッドホンを着用させ、収容室内部まで車椅子に乗せて移動させてください。面会が終了した後は、同様の手順に沿って受付まで移動させてください。この手順に沿っている限り、プロトコルUXに基づく記憶処理は必要ありません。


Subject Details:
案件#90349は、ある特徴を持つニョロモ(携帯獣#90349)と、それに掛かる一連の案件です。

本案件を当局が知るところとなったのは、1998年8月中旬にカントー地方トキワシティにあるポケモンセンターに「ニョロモの様子がおかしい」との通報がなされたことがきっかけです。通報してきたのはニョロモのトレーナーである当時10歳の少女であり、本人曰く「昨日までと模様が違う」とのことでした。ポケモンセンターから応援要請を受けた局員が速やかにニョロモを確保し、初期調査及び案件立ち上げが行われました。

携帯獣#90349は、外見的には特に異常が見られないニョロモ個体です。このニョロモが他個体と異なるのは、腹部に現れている渦巻き状の模様が不定期に左右反転することです。ニョロモの渦巻き模様は内臓が皮膚を通して見えているために現れるものですが、内臓が自然反転することは物理的にほぼ発生し得ないことが分かっています。収容時点から、これまでに52回の反転が確認されています。

模様が反転することを除けば、携帯獣#90349はごく一般的なニョロモ個体です。食性や生活リズムは完全に一般的なニョロモ個体のそれと一致し、特異な行動や習性は一切確認/記録されていません。そして食事の際の観察から、携帯獣#90349の内臓は実際に反転していることが分かっています。ただし、実際に内臓反転が行われる瞬間については、まだ観測に成功していません。内臓反転の前後で、携帯獣#90349が不快感や苦痛を示したことはなく、平時と変わらない様子を見せています。

以下は、携帯獣#90349の内臓反転が見られたタイミングと、その後の検証結果をまとめたものです:


反転#90349-2:
収容翌日、毎日6回定時に行われることになっている水浴びのうち、3回目の水浴び後に反転。1,2,4,5,6回目の水浴びでは反転は確認されなかった。翌日は、6回すべての水浴びすべてで反転は確認されなかった。

反転#90349-7:
他案件にて軽微な収容違反が発生したため、安全のためモンスターボールへ格納。2時間後に事案が収拾され、モンスターボールから解放された際に反転が発生。2日後に時間帯を合わせてモンスターボールへの格納実験を複数回行ったが、そのすべてで反転は発生しなかった。

反転#90349-15:
カントー地方トキワシティ全域で集中豪雨。局員や施設に特に被害は無かったが、豪雨が始まった直後に携帯獣#90349の内臓反転が発生。その後、天候が回復するまで反転現象は確認されなかった。

反転#90349-24:
トレーナーとの面会終了直後に反転が発生。これまでに5回面会が行われているが、その前後では一度も確認されていない。その場にいた局員の証言と監視カメラの映像から、トレーナーが何がしかの不審な行動を取った形跡などは見られなかった。


携帯獣#90349の内臓が反転する理由は分かっていません。何らかのサイン/予兆であるとの仮説も示されていますが、これまでのところ内臓反転に対応するような事象は確認されていません。携帯獣#90349がどのような方法で内臓を反転させている、あるいはさせられているのかについても不明なままです。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1301] #118965 「不思議な少年少女たち」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/24(Sun) 20:04:24   50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#118965

Subject Name:
不思議な少年少女たち

Registration Date:
2007-09-13

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
身元不明者#118965と思しき人物を発見したという通報がなされた、あるいは当局にて身元不明者#118965と思しき人物を保護した際は、所持品や特徴を元に身元の調査を行ってください。調査によっても身元が明らかにならず、その由来が不明であると判断せざるを得ない場合は、対人用の手順に沿ってシンオウ地方クロガネシティ第四支局まで移送してください。身元不明者#118965を受け入れた局員は、対象からヒアリングを行った上で個別の収容室へ収容してください。

これまで確認された限りでは、身元不明者#118965そのものはごく普通の健康な児童であるため、栄養価の高い食事を1日に3度与え、収容されている拠点の低セキュリティエリアで自由に遊ばせることが望ましいと考えられます。本人が希望するならば、単純な玩具や平易な内容の絵本などを与えることも許可されています。ただし種類に関わらず、人と携帯獣の関係性について記した書籍を与えることは禁止されています。

それぞれの身元不明者#118965の養育担当となった職員はできるだけ身元不明者#118965の側に寄り添い、対象の口にした言葉や仕草を詳細に記録することが求められます。記録は所定のファイルに日々保存してください。身元不明者#118965が何らかの示唆的な発言をした場合、職員は直ちに拠点監督者に詳細な報告を行ってください。


Subject Details:
案件#118965は、概ね異常性はないものの、由来が完全に不明な人間の児童(身元不明者#118965)と、それに掛かる一連の案件です。

身元不明者#118965が初めて確認されたのは、2005年7月頃のことです。ホウエン地方フエンタウン近郊を散策していたトレーナーが、道端で倒れている10歳くらいの少年を見つけて保護しました。少年は病院へ移送されましたが、そこで行われた検査で健康には特段の問題が無いことが明らかとなりました。直ちに身元の調査が行われましたが、少年は着用していた衣服を除いて一切の所持品が無く、他に身元の情報へ繋がるようなものもありませんでした。病院は少年を児童養護施設へ移送し、さらに調査が継続されることとなりました。

児童養護施設の職員による少年の身元調査の過程で、当局の局員が事案発生の虞ありとして担当者へ連絡を取りました。この時点で既に少年の発見から一年近くが経過していましたが、身元に関わる情報はまったく得られていない状態でした。さらに職員に対して実施したヒアリングの結果、少年について何らかの異常性があることを示唆する証言が得られました。養護施設の職員との協議の結果、当局は少年の身元引受人となることが決定、少年はシンオウ地方クロガネシティ第四支局へ移送されました。少年の身元に関する調査は、当局が引き続き行うこととなりました。

その後一年半に渡り、当局の情報網を用いた大規模な調査が行われましたが、最終的に少年の身元を明らかにすることはできませんでした。少年の由来についての疑念が払拭できないこともあり、裁定委員会は案件#118965の立ち上げを決定、少年を身元不明者#118965と認定しました。

身元不明者#118965は、外見や身体構造的には完全に人間の男児です。概ね10歳頃の平均的な身長/体重であり、知能テストの結果についても特に矛盾した点はありません。しかしながらその由来は完全に不明であり、またいくつかの気になる行動や証言を見せています。

彼は完全に人間の少年でありながら、自身を「ここに来る前は『ピカチュウ』だった」と繰り返し主張します。自分はかつて携帯獣の「ピカチュウ」であり、目を覚ますと見知らぬ道で「ニンゲン」になって倒れていたというのが身元不明者#118965の主張です。それに関連し、名前を除くほとんどの記憶を喪失しているとも証言しています。案件担当者は少年の身体検査を実施しましたが、身元不明者#118965について一切の特異な点を見いだすことはできませんでした。検査結果は身元不明者#118965が紛れもなく人間であることを示すものばかりであり、携帯獣としての特徴は一つも検出されませんでした。しかしながら、身元不明者#118965は自分がピカチュウであったことにある種の確信を持っているようです。一部局員からなされた指摘に基づき、身元不明者#118965に対して標準的な精神鑑定が実施されましたが、例えば精神的なショックで自分自身をピカチュウであると誤認しているといった、一般的な症状についてはまったく確認されませんでした。

第一発見者であるトレーナーや児童養護施設の職員への詳細なヒアリングを通して判明したことは、身元不明者#118965は一切の物理的並びに精神的な影響力を持たず、ただ普通の特徴の無い少年としてしか見なされていなかったということのみでした。彼らの健康状態や精神状態に異常は無く、身元不明者#118965が他の存在に何らかの影響をもたらす可能性は否定されています。

時折、身元不明者#118965は自分がピカチュウであった頃の記憶を思い出すようです。断片的に語られる内容はいずれもピカチュウの生態と完全に合致した内容であり、矛盾した点は見られません。その他の携帯獣に関する知識はごく表層的なレベルに留まっており、身元不明者#118965の携帯獣に関する知識はピカチュウに関わることにほぼ限定されています。担当局員によるヒアリングの結果、身元不明者#118965には通常の子供に期待される程度の識字能力を持たないことが判明しました。そのため先のピカチュウに関する知識は、少なくとも書籍などから能動的に得た情報ではないと推測されています。

身元不明者#118965の特筆すべき行動として、局員に対して不定期に「石を持った子はまだ来ないの?」と問い掛けるものがあります。これが何を意味するのかについては明らかになっていませんが、数名の局員は身元不明者#118965の特異性を指摘し、本案件の警戒レベル引き上げを提案しています。


[2007-12-10 Update]
案件#118965の立ち上げに当たり、これまでに当局が認識していない同種の事案が発生していないかについての調査が実施されました。その結果、身元が一切分かっていない少年少女が合計15名、各地に点在して保護されていることが明らかとなりました。それぞれの最寄の拠点から局員が派遣され、関係者に対してヒアリングを行いました。ヒアリングの結果全員について身元不明者#118965と同じ特徴(自身をかつて携帯獣であったと証言している/該当する携帯獣の生態についての詳細な知識がある/顕著に低い識字能力)が見られたことから、事情を説明した上で身元不明者を確保、全員をシンオウ地方クロガネシティ第四支局へ移送しました。合計16名となった身元不明者#118965は、それぞれ身元不明者#118965-1から-16として再分類されました。


[2009-11-28 Update]
2009-04-18から2009-11-20にかけて、身元不明者#118965と同じ特徴を持つ身元不明の少年少女が新たに5名、各地で発見・保護されました。5名はシンオウ地方クロガネシティへ順次移送され、身元不明者#118965-16から-21として分類されました。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1303] #80060 「あめが ふりつづいている」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/25(Mon) 20:54:19   59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#80060

Subject Name:
あめが ふりつづいている

Registration Date:
1995-05-16

Precaution Level:
Level 3


Handling Instructions:
エリア#80060の区域内には人や携帯獣を立ち入らせず、周囲を高さ3メートルのフェンスで囲ってください。内部に立ち入ることの危険性は少ないと推測されますが、エリア内の調査を実施する場合、実施に先立って詳細な調査計画書を提出し、調査の目的を明らかにしなければなりません。エリア#80060そのものは特徴の無い空き地であり、目立って調査が必要なオブジェクトや建造物は存在していないことが分かっています。

エリア#80060の持つ特異性のために、これまでに複数の要注意団体が制圧を目論んで攻撃を仕掛けてきています。案件担当者は必要に応じて警備を強化し、これら要注意団体による攻撃を退けることを徹底してください。当局が捕縛した構成員による証言は、エリア#80060に当局が把握していない何らかの未知の性質があることを示唆しています。エリア#80060を保全すると共に、要注意団体がエリア#80060の制圧に乗り出す理由についても突き止めなければなりません。


Subject Details:
案件#80060は、長期に渡って特異な現象が発生している区域(エリア#80060)と、それに掛かる一連の案件です。

エリア#80060はホウエン地方サイユウシティ南東部に位置する、およそ80平方メートルの小さな空き地です。内部には建築物などは存在しません。このエリアの特異な点はただ一つであり、端的に言えば「雨が止むことなく降り続けている」という言葉に集約されます。エリア#80060では周囲の天候とはまったく無関係に、常に一時間に15ミリから20ミリ程度の強い雨が降り続いています。

少なくとも10年以上前から、エリア#80060の降雨は始まっています。これまでの観測中に、一度でも天候が変化したという記録は存在しません。当該区域は当局が関知する以前から「雨の降り続いている場所」としてごく一部の人間に知られており、降り続く雨によって近隣とはやや異なった生態系が構築されていました。当局は雨の降り続いている区域をエリア#80060として隔離し、異常なロケーションのひとつとして管理しています。

エリア#80060は当局による観測が開始されてから、範囲が拡大する兆候も縮小する兆候も見せていません。一貫しておよそ80平方メートル以内の区域にのみ強い降雨が続き、周囲には通常の降雨に伴うものを除いた影響を及ぼしていません。周辺は無人であり、アクセスの利便性も低かったために、地域住民でもエリア#80060の特異性について認識していた者はごく少数に留まっていました。

わずかに得られた情報として、かなり以前にエリア#80060付近で雨乞いをするマリルやマリルリの群れが目撃されたというものがありますが、目撃されてから相当な時間が経過したことに伴い、信憑性の有無を検証することはもはや困難であると考えられています。現在はエリア#80060の起源についての調査は優先度が落とされ、当地域にて降雨が続く原理についての調査に焦点が当てられています。


[2009-07-22 Update]
エリア#80060の「雨が止むことなく降り続いている」という特異な性質のために、エリア#80060及びこのエリアを収容するための拠点であるホウエン地方サイユウシティ第二支局は、複数の要注意団体から散発的な攻撃を受けています。特に、近年ホウエン地方を中心に急速に勢力を拡大させている環境テロリスト「アクア団」は、その行動理念からエリア#80060に強く執着しているようです。同団体が頻繁に不法侵入や襲撃を繰り返すために、以前から常駐の局員のみでは対応が困難であるとの声が上がっていました。同団体の攻撃に対処すべく、ホウエン地方サイユウシティ第二支局には機動部隊アルファ-サファイアを常駐させる方針が固められました。機動部隊アルファ-サファイアは、2009年9月より支局に駐留する予定となっています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1304] #76440 「考える貝」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/26(Tue) 20:33:44   40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#76440

Subject Name:
考える貝

Registration Date:
1994-03-23

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
エリア#76440は事実上の自己収容状態にあるため、最低限の警備を除いては特別な対応は必要ありません。対応の主軸としてはむしろ住民#76440の精神衛生を保つことを優先しなければならず、そのためにカウンセリングの能力を持った人員を可能な限り多く配置すべきです。案件担当者は必要に応じて追加の人員を要請するための特別権限を付与されます。住民#76440からカウンセリングの要請があった場合は、必ず応じるようにしてください。

住民#76440に寄生しているシェルダーを安定した状態に維持するため、住民#76440は一般的に想定されるよりも多くの栄養を補給する必要があります。これに伴いエリア#76440は慢性的な食糧不足に陥っているため、現在は当局主導の下に住民#76440及びシェルダー向けの食糧供給を行っています。住民#76440の特徴から老衰や病気による死亡が滅多に見られず、観測開始から本稿執筆時点に至るまでエリア#76440内の人員の総数はほとんど変化していません。


Subject Details:
案件#76440は、携帯獣の「シェルダー」に寄生されたことで特異な能力を獲得した携帯獣(住民#76440)の群れと、彼らが生活を営んでいる人気の無い山村(エリア#76440)、及びそれらに掛かる一連の案件です。

当局がエリア#76440及び住民#76440について認識したのは、1993年末頃のことです。別案件の対応に当たって近隣を捜索していた局員が、偶発的に住民#76440と接触したことが端緒となっています。住民#76440の特異性を認識した局員は直ちに上席に報告、初期調査で多数の異常な点が見られたため、数日後には案件の立ち上げが決定しました。複数の住民#76440からのヒアリングにより取り扱い手順が定められ、本稿執筆時点に至るまで収容が続けられています。

エリア#76440は、ジョウト地方ヒワダタウン南東の山間部に位置する、海に面した小さな山村です。かつては人間が暮らしていたと思しき痕跡が残されていますが、過疎化が進んで多くの住民が退去し、少なくとも1980年代には廃村となっています。その後いずれかのタイミングで住民#76440が住み着き始め、現在のエリア#76440が形成されています。エリア#76440は住民#76440が居住する地域以上の意味を持たず、エリア#76440そのものに何らかの異常特性があるわけではありません。

住民#76440はエリア#76440内に居住している携帯獣であり、これまでのところ36体が確認されています(住民#76440-1から-36と指定)。住民#76440に共通する特徴は、体のいずれかの部位(ほとんどの場合は尻尾になります)に携帯獣の「シェルダー」が寄生していることです。寄生はシェルダーが部位に噛み付くことで行われており、その様態は携帯獣の「ヤドラン」に類似しています。ただしヤドランとは異なり、寄生しているシェルダーは一般的な二枚貝タイプのものに限られています。

ヤドランはシェルダーから注入される毒素により知能を飛躍的に発達させることで知られていますが、それと同じ現象が住民#76440にも見られます。住民#76440の知能向上はヤドランのそれよりもさらに著しく、局員の教育によりすべての個体がごく短期間に日本語をほぼ完全に習得したという事例が確認されています。住民#76440は物事を論理的に、かつ深く洞察する能力に長けており、自分たちがどのような状況/環境に置かれているかを正確に把握しています。

すべての住民#76440は、ほとんどの感染症に対して強い耐性を示しています。これは体内を循環するシェルダーの毒素が、侵入した異物を攻撃して速やかに駆逐する性質によるものです。加えて身体の老化もある一定のレベルで停止しているようであり、住民#76440は高い知性と共に極めて長い寿命を獲得しています。通常個体と比較して身体能力も強化されていることが分かっていますが、住民#76440の思慮深い性質から、戦闘へ発展するケースはまずありません。

発達した知性と長大な寿命のために、ほとんどの住民#76440は一日の大半を思索に耽ることで費やします。ヒアリングを通して、彼らは自分自身の生まれた理由や、シェルダーに寄生されて知性を得たことの意味について深く追求しようとしていることが分かりました。これは住民#76440の知性の現れと言えますが、しかし同時に大変に不毛な思索であり、かなりの数の住民#76440が人間で言うところの抑鬱状態に近い症状を呈しています。彼らは決してエリア#76440の外へ出ようとはせず、当局による収容下に置かれることを強く望んでいるようです。

以下は局員による住民#76440-12(♂のオタチにシェルダーが寄生しています)に対するヒアリングを、局員の許可を得てテキストへ書き起こしたものです:


---------- 録音開始 ----------

局員A:
始めてもよろしいでしょうか。

住民#76440-12:
はい。

局員A:
ここ最近、何か思うことがあるとのことですが。

住民#76440-12:
案件管理局の皆様のご厚意により、私たちはたくさんのものを得ることができました。それは言葉であったり、食糧であったり……何より、私たちのことを受け入れてくれたこと、そのものでしょうか。私たちは、案件管理局の皆様のご期待に沿えていますでしょうか。

局員A:
住民の皆様から得られた情報は、他では得られない貴重な知見として役に立っています。

住民#76440-12:
それは……何よりです。皆口には出しませんが、とても感謝しています。

住民#76440-12:
ですから、今なら客観的に、私たちの思いについて話すことができるように思います。聞いていただけますでしょうか。

局員A:
お聞かせください。

住民#76440-12:
知っての通り、私たちはシェルダーに寄生されたことにより、一般的な携帯獣から、知性を持った別の存在へと変貌を遂げました。以前別の局員の方が仰っていましたが、私たちの思考や生活様態は、携帯獣ではなく人間のそれに近しいと。私たちも、そのことについては認識しております。

住民#76440-12:
しかし――見ていただければ分かります通り、私たちの外見は少々異質な携帯獣そのものであり、人間とはまるで異なっています。ゆえに私たちは人間とともに歩むことはできない、仮に私たちがそれを望んだとしても、それを受け入れることは難しいということは十分理解できます。それは厳然たる事実として、私たちの中では既に合意している事項です。

住民#76440-12:
私たちは携帯獣でもない、ましてや人間でもない。では何か。私たちはこの問いに答えを出せずにいます。幾人もの仲間が幾度と無く言いました。私たちは私たちだと。けれどそれは、問いの本質的な答えではない。人間のような知性を持った、携帯獣のような風貌の生き物。私たちが何のために存在しているのか、私たちには分かりません。

住民#76440-12:
以前別の局員の方が仰っていた通り、私たちは長寿です。異常と言ってもいいでしょう。それは言うまでも無く、シェルダーがウイルスや病原体の類を駆逐してしまうためです。そして老いることもなく、傷を負ってもたちどころに治ってしまう。故に私たちは、長い時間を生きなければなりません。

住民#76440-12:
生きている意義を見いだすことができないのに、私たちは長い時間を生きなければならない。他の種族と相容れることなく、ただ私たちだけで生きなければならない。私たちはとても静かな、しかし決して終わりの無い無価値な戦いを続けていたように思います。

住民#76440-12:
けれど、私は局員の方々とお目にかかって、そして考えました。私たちがなぜここに居るのか――この不毛な問いに対する答えを求めることはやめにしよう、と。

住民#76440-12:
案件管理局で働く方々は、多くの、実に多くの、まったく理解しがたいものを扱っている。それが存在している意味を考えるよりも先に、この世界に危機をもたらさないために。

住民#76440-12:
私たちがすべき事は、私たちもそうした「理解しがたいもの」であるということを受け入れて――せめて、この世界に害を与えるような存在には堕さず、ただ静かに生きていくことだと。私はようやく、一つの答えを見たように思います。

住民#76440-12:
他の者はまだ、自らの存在する意味について考え続けています。自分たちが、何か特別な理由を持って生まれてきたのだと思っている、けれどその理由が分からずに苦しんでいる。そうではありません。私たちはただ「理解しがたいもの」に過ぎない。それ以上の意味は、恐らくは持っていないのです。

住民#76440-12:
そして……私たちがただの「理解しがたいもの」に過ぎず、ここに存在していることに何の意味も無かったとしても、この世界を害を為す存在でなければ、ここに生きていて良いのだと――私は、皆に伝えることができればと思っています。

---------- 録音終了 ----------


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1305] #90816 「苦悶する魂の広間」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/27(Wed) 20:23:50   42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#90816

Subject Name:
苦悶する魂の広間

Registration Date:
1998-10-22

Precaution Level:
Level 3


Handling Instructions:
本案件で取扱対象となる特殊な「Hall of Tortured Souls」を起動するには、ハードウェアとソフトウェア双方の要件を満たし、かつ一般には知られていない操作手順を踏む必要があるため、情報漏洩の危険性は比較的低いものと言えます。担当者は代表的なパソコン通信ネットワーク及びインターネット上の掲示板を巡回し、「Excel 95」「イースターエッグ」「迷路」といったキーワードについて言及されていないかを監視してください。

当局からのMicrosoft社への働きかけにより、Microsoft社は「Excel 95」から「Excel 97」への移行を強力に推し進めていますが、未だ多くの「Excel 95」が稼働している状態です。「Excel 95」がインストールされたほとんどの端末は、本案件で取り扱う「Hall of Tortured Souls」を起動するための前提条件を満たしていないものと考えられますが、いずれにせよ可能な限り早く「Excel 95」を根絶することが望ましいことに変わりはありません。「Excel 97」については、特殊なものも含めてあらゆる「Hall of Tortured Souls」が起動しないことが分かっています。

案件担当者が「Hall of Tortured Souls」にアクセスする場合、書式F-84595-1に必要な事項を記入してワークフローを回付し、事前に上長からの承認を得てください。調査目的以外での「Hall of Tortured Souls」へのアクセスは禁止されています。不正なアクセスが確認された場合は、当局の定める規定に基づき懲罰を受ける可能性があります。


[1999-03-22 Update]
事案#92112の発生を受け、調査/実験目的を含む「Hall of Tortured Souls」へのあらゆるアクセスを一律で禁止することが決定されました。以後本案件については、「Hall of Tortured Souls」に関する情報が外部へ漏洩しないことの監視と、情報漏洩が発生した場合の対処に対応方針が絞られます。「Hall of Tortured Souls」そのものについての研究は無期限に凍結されます。


Subject Details:
案件#84595は、所定のハードウェア構成によるコンピュータにおいて、Microsoft社の表計算ソフトウェアである「Excel 95」で特定の操作を行った際に起動できる「迷路」プログラムと、それに掛かる一連の案件です。

Microsoft社の「Excel 95」には本来の機能とは別に、開発者が遊びとして仕込んだ小規模な「迷路」ゲームがイースターエッグとして存在していることが知られています。「迷路」はウィンドウ名として「Hall of Tortured Souls」というテキストが表示され、カーソルキーにより内部を移動することができます。ウィンドウ名のテキストから、この迷路ゲーム自体が「Hall of Tortured Souls」と呼ばれています。この「Hall of Tortured Souls」の存在そのものは比較的よく知られており、また後述する条件を満たした状態で起動しなければ特に異常な点は見られません。通常の手順で起動できる「Hall of Tortured Souls」は、本案件の取り扱い対象外です。

以下の条件をすべて満たすと、通常とは異なる特殊な「Hall of Tortured Souls」が起動します。本案件では以下の状況により起動された「Hall of Tortured Souls」について取り扱います:


前提条件:
グラフィックカードとして、3dfx社の「Voodoo 2」または「Voodoo Banshee」が取り付けられていること。

起動手順:
1.Excel 95を起動し、カーソルを「A95」セルへ移動させる
2.「A95」セルに「MA42」と入力し、[TAB]キーを押下してカーソルを「B95」セルへ移動させる
3.「B95」セルに「FM21」と入力し、[TAB]キーを押下してカーソルを「C95」セルへ移動させる
4.「ヘルプ」の「バージョン情報」を選択し、「バージョン情報」画面を開く
5.[Ctrl]+[Alt]+[Shift]キーを押しながら、[製品サポート情報]ボタンをクリックする
6.全画面モードで「Hall of Tortured Souls」が起動する


前提条件を満たしていない、つまり所定のグラフィックカードがセットされていない場合は、上記の手順を実行しても「Hall of Tortured Souls」は起動しません。これは「Voodoo 2」または「Voodoo Banshee」相当、あるいはそれ以上の性能を持つ別のグラフィックカードがセットされていた場合も同様です。あくまで「Voodoo 2」または「Voodoo Banshee」がセットされている必要があります。

この条件下で起動された「Hall of Tortured Souls」は通常とは異なり、3dfx社の3Dゲーム用APIである「Glide」を使用した高精細な画面で展開され、通常よりもはるかに視認性が高くなります。また、通常起動後にキーボードから「EXCELKFA」と入力しなければ開かない「隠し扉」が最初から開いた状態になります。加えて「隠し扉」の奥にある細い小径に手すりが付き、「向こう岸」へ容易に渡ることができるようになっています。

小径を渡って「向こう岸」へ辿り着くと、本来掛けられている開発者の絵に代わり、何らかの携帯獣の絵が掛けられているのを確認することができます。これまでの調査では、掛けられている絵は「Hall of Tortured Souls」をプレイしている人間によって変化し、同じ人間が「Hall of Tortured Souls」を起動した場合は同じ絵になります。ただし過去に一度だけ、それまでとは異なる絵が出現したパターンが存在します。

迷路の中の絵として登場する携帯獣は、それまでに携帯獣との死別を経験していないプレイヤーの場合は、これまでに死亡した世界中のあらゆる携帯獣の中からランダムに選ばれます。そうではなく、何らかの形で死別を経験しているプレイヤーの場合は死亡した携帯獣そのものが選ばれます。複数回に渡って行われた調査により、登場する携帯獣は例外なく生前の記憶を明確に保ち、その携帯獣のみが知り得ること似ついても把握していることが分かっています。

携帯獣の絵に近づくと、画面下に小さなコンソールウィンドウが表示されて、絵がプレイヤーに対して英語のメッセージを送信してきます。メッセージは起動する都度変化し、その内容のほとんどは苦痛や困窮を訴えてくる悲痛なものです(「この場所は寒い」「ひもじい」「体のあちこちが痛い」「助けてくれ」等)。コンソールウィンドウにメッセージをタイプすることでこちらも応答を返すことが可能で、相手からは明らかにメッセージを理解していると見られる反応があります。これまでのところ、メッセージを送ること以外のこちらから取れるアクションは見つかっていません。

特殊な条件下で起動された「Hall of Tortured Souls」がどのような性質を持つのかは議論が分かれていますが、数名の局員はこの「Hall of Tortured Souls」が概念としての「死後の世界」のようなものに繋げられており、そこに携帯獣が囚われているのではないかとの見方を示しています。携帯獣のみが登場するのは、携帯獣が持つ自己情報化能力と何らかの関係があるのではないかとのことです。登場する携帯獣の特徴から、この仮説は立証こそ困難であるものの、有力な仮説の一つとして考えられています。


[1999-03-14 Update]
1999年3月11日早朝、本案件の担当者がCRTディスプレイへ顔を埋没させる形で死亡しているのを、別の局員が発見しました(事案#92112)。局員は個人的に養育していたエネコを2ヶ月ほど前に病気で亡くしており、「Hall of Tortured Souls」には前例に沿ってそのエネコが登場していました。局員は数日前に無断で「Hall of Tortured Souls」へアクセスしていることを上司に指摘されており、厳重注意を受けたばかりでした。当局では、局員が「Hall of Tortured Souls」を通してエネコと対話する過程で精神に変調をきたし、自死するに至ったものと結論付けました。

これに伴って取り扱い手順が改訂され、「Hall of Tortured Souls」へのアクセスはいかなる理由においても禁止されることが決定しました。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1306] #127718 「29番目」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/28(Thu) 20:03:13   54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#127718

Subject Name:
29番目

Registration Date:
2010-06-22

Precaution Level:
Level 1


Handling Instructions:
これまでのところ、実際に29番目に相当するアンノーンは実在が確認されていません。29番目のアンノーンについての言及がなされた書籍やWebサイト、あるいはその他資料を発見した場合は、資料の内容を分析した上で、必要に応じて作成元にヒアリングを試みてください。これまでに34の書籍と62のWebサイト、そして15のその他資料が確認されています。これら資料そのものについては、特段の異常性が無いことが確認されています。

別事案/案件により、「!」及び「?」のアンノーンが新たに出現し、過去の因果律が書き換えられた可能性が示唆されています。本案件で取り扱う29番目のアンノーンが「!」及び「?」のアンノーンの出現事例と同一の事象なのかについては、これまでのところ明らかになっていません。ただし、「それまで存在していなかったはずのものが、あたかも存在したかのように受け入れられている」という点では共通しており、注視が必要であることに変わりはありません。


Subject Details:
案件#127718は、これまでに実在が確認されていない29番目のアンノーンに対する言及と、それに掛かる一連の案件です。

当局が29番目のアンノーンに対する言及を初めて確認したのは、局員が書店で購入した子供向けの携帯獣図鑑においてです。当該書籍には「アンノーンは29種類存在する」という旨の文言が記載されていましたが、写真として掲載されているのは既知の28種のみでした。不審に思った局員が出版社へ問い合わせたところ、出版社からは「編集担当者はアンノーンが29種存在すると言っている」との回答が得られました。局員は本件を日報へ記載し、記録として残しました。

次に未知のアンノーンに対する言及が見られたのは、キキョウシティ南部に居住する市民が執筆したblogにおいてです。記事の一つで「撮影したアンノーンの紹介」という名目で写真を掲載していましたが、末尾に「実はもう一種類存在するが、今回は撮影できなかった」というコメントが記載されていました。執筆者にコンタクトを取ったところ、「29種類いるのは間違いないが、まだ実物を見たことはない」との回答がありました。これについても日報へ記録されるに留まり、案件として取り上げられることはありませんでした。

本件がクローズアップされたのは、システムエンジニアとして働くある市民が、ミニブログサービス「Twitter」に「Unicodeのマッピングはおかしい、アンノーン文字は28文字しか存在しないはずなのに、29文字分が予約されている」と投稿したことがきっかけです。このツイートを端緒として、アンノーンは28種であると主張する集団と、そうではなく29種であると主張する集団に分かれ激しい言い争いに発展しました。局員がこのやり取りを目撃した直後、過去に「29番目のアンノーン」について言及があったことを思い出し、これまでに記録された事案とともに取りまとめて案件の立ち上げを行いました。

当局の見解としては、29番目のアンノーンについては「現時点では存在しない」としています。これまでにその姿が目撃された記録が無いほか、具体的にどのような文字がモチーフとなっている(またはどのような文字のモチーフとなった)かが明らかにされていないことが根拠です。しかしながら、存在すると主張する人々は当局の予想をはるかに上回っており、カントー地方を対象に実施したアンケートでは実に52%もの市民が「アンノーンは29種である」と回答しました。実在すると答えたすべての市民が具体的なシンボルをイメージできなかったにもかかわらず、「存在することは間違いない」と答えたことは特筆すべき事象と言えます。

今後の対応方針としてはいくつかのものが考えられますが、現在進められているのは「29番目のアンノーン」がどの時期から言及されるようになったかを特定することです。その前後に何らかの事案/案件が発生していないか、そしてそれら事案/案件が、人々の認識、あるいはアンノーンの性質に何らかの影響を及ぼすような類のものでは無かったかについての検証作業が進められています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1307] #114759 「間引かれた者たち」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/29(Fri) 21:35:14   49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#114759

Subject Name:
間引かれた者たち

Registration Date:
2006-05-14

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
本稿執筆時点においては、浮遊体#114759が人間や携帯獣に攻撃を仕掛けて来たという事例は存在しないため、危険性の評価については保留されています。現在の案件取り組み方針は、確認済の浮遊体#114759を継続的に観察することにより、浮遊体#114759の性質及び由来を明らかにすることが主体となっています。これまでに確認されている浮遊体#114759の一覧については、リストL-114759-1を参照してください。案件担当者は必要に応じてリストL-114759-1を更新してください。

当局では浮遊体#114759の由来について、社団法人ポケモンセンター管理協会が何らかの形で関与しているという疑義を持っています。現在社団法人ポケモンセンター管理協会へ質問状を送付し、回答を待っている段階です。状況によっては、関係者からさらなるヒアリングを実施しなければならない可能性も指摘されています。


Subject Details:
案件#114759は、一部地域で目撃される携帯獣の霊的存在(浮遊体#114759)と、それに掛かる一連の案件です。

本件は、カントー地方セキチクシティ在住のポケモンブリーダーから通報の形で持ち込まれました。当該ポケモンブリーダーの証言によると、一週間ほど前に、かつて自分が育成していた携帯獣の霊体らしき存在が、手放した時からある程度成長した姿で自分の前に現れたとのことです。後に提供先にその携帯獣の現状について照会したところ、提供先は「現在は第三者に渡っており、状況を把握できていない」との回答がありました。これを不審に思ったブリーダーは、当局へ追加調査の依頼を行いました。

ポケモンブリーダーから提供された情報として、育成していた携帯獣は「ゼニガメ」、霊体として姿を表したのは「カメール」、そしてゼニガメの提供先は、同じカントー地方に位置するハナダシティのポケモンセンターでした。ゼニガメを手放したのは2年近く以前でしたが、身体的な特徴からブリーダーは間違いなくハナダシティのポケモンセンターへ提供した個体であると証言しています。

このゼニガメについて当局からポケモンセンターへ照会を行ったところ、ポケモンブリーダーが照会した際と同様に「現在は第三者へ提供している」との回答があるのみでした。これ以上の調査は難しいと判断され、本件は一旦保留の扱いとなりました。その後は未解決事案として残され、進展が見られるまで一覧表上で管理される状態が続きました。

本件が再び持ち上がったのは、複数の支局に対して同種の事案通報がほぼ同時期になされたためです。通報があったのはカントー地方ニビシティ、ジョウト地方タンバシティ、シンオウ地方ミオシティにおいてです。通報者がすべてポケモンブリーダーで、かつ出現した携帯獣が「初心者向けとされる携帯獣が一段階の進化を遂げた姿」という点で一致していました(それぞれフシギソウ/ワカシャモ/ポッタイシ)。これは先述した事案も満たす条件であり、同種の事案であることは明白でした。当局は情報を整理した上で改めて案件として立ち上げ、担当者を募って本格的な調査に乗り出しました。

浮遊体#114759については、当局でもその存在について裏付けを取ることに成功しました。前述した条件を満たす携帯獣そのものの姿をしていますが、身体は半透明であり実体は存在せず、悲痛な表情を浮かべたままその場に立ち尽くす以外のアクションを見せません。こちらからの呼びかけは通じているようですが、発声する能力は失われており、身振り手振りで意思疎通を取るのが現状の限界と見られています。出現時期は完全に不定期であり、またごく短時間しか出現できないことから、このような状態に至った経緯を調査することは困難を極めています。

調査の過程で、シンオウ地方ミオシティ在住の通報者から「ポケモンセンターは引き取り手が見つからないまま成長して進化を遂げたポケモンを、秘密裏に間引きしている噂がある」という情報が寄せられました。残る三名のブリーダーについてもポケモンセンターへ携帯獣を提供しており、二名についてはこの「間引き」に関する真偽不明の情報に聞き覚えがあると答えました。通報者は、殺処分された携帯獣が何らかの形で元のブリーダーの前へ現れたのではないかという疑義を持っているようです。

当局による調査では、ポケモンセンターによる間引き/殺処分が実際に行われたという証跡は得られていません。しかしながら、一部の会計処理に不明瞭な点が見られ、さらに資産として計上されている携帯獣の総数について一部計算結果に矛盾が見られる箇所が見つかりました。案件担当者からの上申を受け、当局では本部局長名義での質問状を作成の上、社団法人ポケモンセンター管理協会へ送付しました。回答は未だ保留されたままです。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1308] #125949 「デデンネの絵」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/30(Sat) 20:30:19   39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#125949

Subject Name:
デデンネの絵

Registration Date:
2009-11-29

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
アイテム#125949は、ホウエン地方カイナシティ第七支局の中異常性取得物保管庫のブロック4-Aに据え付けている、70cm×70cm×70cmの鉛製の金庫に保管してください。金庫の暗証番号は案件担当者が設定します。設定した暗証番号については、書式F-125949-3に沿ってワークフローを回付し、上長が把握できるようにしておいてください。鉛製の金庫へ入れている限り、アイテム#125949は異常特性を発揮しません。

調査・研究の目的でアイテム#125949を持ち出す場合、少なくとも周囲500m以内に不要な電子機器、特に映像が受信可能な機器が置かれていないことを十分確認してください。事象#125949は近隣に存在するすべての電子機器に影響を与えるため、アイテム#125949を活性化させる際は110番道路近郊に設置された当局の実験施設を使用することを強く推奨します。


Subject Details:
案件#125949は、クレヨンにより描かれたデデンネの絵(アイテム#125949)と、アイテム#125949が発生させる異常現象(事象#125949)、及びそれらに掛かる一連の案件です。

当局がアイテム#125949を入手したのは、ホウエン地方フエンタウン近郊に存在する放棄された一軒家においてです。近隣住民から「テレビに時折デデンネやパチリスが映り込むようになった」との通報を受けて当局が調査を進めていた過程で、機能停止した冷蔵庫に磁石で張り付けられた状態で発見されました。現地での簡易的なテストにより異常現象の原因がこの絵にあると判明、当局によって回収されました。

アイテム#125949は、破かれたスケッチブックにクレヨンで乱雑に描かれたデデンネと思しきイラストです。イラストの正確な制作者は分かっていません。発見された廃屋には4年ほど前まで3人ほどの人間が居住していたとの証言を得ていますが、その中にこのようなイラストを描くような小児が含まれていたという情報は確認されていません。イラストの右下には黒いクレヨンで「ゆうた」とたどたどしい筆致で署名がされており、おそらくはこの「ゆうた」がイラストの制作者と推定されますが、それを裏付ける情報は何一つ存在しません。加えて「ゆうた」なる名前の人物がこの近隣に居住していた記録はありません。

このアイテムの特性は、小型の磁石によって黒板/白板のような磁石が貼付可能な場所へ掲示された際に発揮されます。アイテム#125949が活性化すると、事象#125949が発生します。

事象#125949は、周囲の映像を受信可能な電子機器すべてについて、人間の代わりに「電気袋を持つ携帯獣」が出現するようになります。具体的には、ピカチュウ/ライチュウ/ピチュー/プラスル/マイナン/パチリス/エモンガ/デデンネの8種に加え、これまでに発見例の無い未知の携帯獣が8体確認されています。さらに、これまで映像/写真に登場していない携帯獣が含まれている可能性もあります。

特に顕著な影響を受けるのはテレビで、アイテム#125949の半径200m以内ではテレビ番組に登場するすべての人間が電気袋を持ったいずれかの携帯獣に置き換えられます。置き換えのルールは特に無いようで、前日にライチュウに置換されたワイドショー番組の司会者が、翌日の確認ではパチリスに風貌の似た未知の携帯獣に置き換わっていました。ただし出演者の性別に付いては置き換え後も反映されるようで、ピカチュウに置き換えられた人物はいずれも置換前の性別と置換後の性別が一致していることが目視で確認できました。この影響はアイテム#125949から距離が離れる毎に減衰し(置き換えられる人物の減少という形で現れます)、最終的に直線距離で500m以上離れることで事象#125949の影響力は完全に失われます。

他の電子機器も様々な影響を受けます。分かりやすい例として、撮影者が範囲内でデジタルカメラや携帯電話のカメラ機能を使用して人物を撮影した場合、テレビの場合と同じように電気袋を持ったいずれかの携帯獣に置き換えられることが確認されました。この時所持品や衣服についても同様の影響を受けるようで、ピチューに変化した男性局員の場合、着用していた制服がピチューの体格に合わせて縮小していました。所持していたバッグについても同じく縮小し、ピチューが現実的に持てるサイズに変化していました。これらの変化は一貫して写真にのみ影響し、被写体には何ら影響を及ぼしません。

範囲内で無線または有線によるインターネット接続を行うと、画面に表示される写真に登場する人間がこれまでと同じルールで電気袋を持つ携帯獣に置き換えられます。この時の画像は保存することで「固定化」することが可能で、固定化した画像は範囲外でもそのままの状態で閲覧することができます。注意点として、ハードディスクやリムーバブルデバイスに保管されている人間が撮影された写真を範囲内で編集して上書き保存した場合、写真内の置換が永続化されます。この場合、バックアップから復元しない限り、元の体裁の写真に戻すことはできません。

これまでテストした限りにおいて、携帯獣は置き換えの対象とはならないようです。被写体となった携帯獣についてはいずれも本来の姿が保持され、電気袋を持った携帯獣に変化することはありません。範囲内においても不審な行動や事象はまったく確認されなかったため、アイテム#125949は人間にのみ効果をもたらすものと考えられています。

事象#125949の効果範囲は遮蔽物があると著しく減衰するようで、特に鉛については一切透過することができないことが分かりました。これに伴い現在の収容手順が制定され、比較的安全な保管方法が確立されました。アイテム#125949の性質が変化しない限り、この収容状態が無期限に保たれることになっています。

いつの時点でイラストがアイテム#125949に変貌したのかは定かではありません。アイテム#125949が貼付されていた際の状況から、イラストは冷蔵庫に貼付されて少なくとも5年近く経過しているように見えましたが、近隣住民から通報がなされたのはごく最近のことで、それまでは事象#125949は一度も確認されていませんでした。何らかの外的要因によりアイテム#125949が変化したのか、元々内包していた異常特性が活性化されたのかについては、局員の間でも意見が分かれています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1309] #95587 「キュウコンと共に生きた女」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/05/31(Sun) 20:52:50   46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#95587

Subject Name:
キュウコンと共に生きた女

Registration Date:
2000-04-18

Precaution Level:
Level 3


Handling Instructions:
Eliza Valentineこと、参考人#95587の行方を追ってください。最後に目撃されたのはイッシュ地方ソウリュウシティですが、報告から半年以上が経過しているために既に有効な情報ではありません。イッシュ地方及びカロス地方に存在する全支局の局員は、本来の職務と共に参考人#95587を捜索する任務を帯びています。参考人#95587を目撃した、あるいは参考人#95587につながる情報を得た場合は、どのようなものであっても報告し、データベースに登録してください。

仮に参考人#95587を発見することができた場合は、当人の許可を得て同行を求めてください。ヒアリングを実施した上で、異常性の有無について判断してください。結果の如何に応じて、以後参考人#95587を当局にて収容するか否かを決定します。収容すべきと決定された場合は通常の対人収容プロトコルが適用される予定ですが、参考人#95587が何らかの特異な能力を保持している可能性が示された場合は、専用の収容プロトコルを追加で制定することで対応します。


Subject Details:
案件#95587は、いくつかの不審な点が見られる女性「Eliza Valentine」(参考人#95587)と、それに掛かる一連の案件です。

2000年4月中旬頃、イッシュ地方ライモンシティ近隣で別案件のためにフィールドワークに当たっていた局員が、数名の市民が「Eliza Valentineなる女性が最近パートナーのキュウコンを亡くした」との話をしているのを耳にしました。別の市民が続けて「タマゴからロコンを孵してキュウコンまで育て上げて、最後は老衰で天寿を全うしたらしい」と口にしました。これを聞いた局員が疑問を覚え、市民に身分を明かしていくつかの質問を行いました。

キュウコンは大変な長寿で知られ、一般的には約1,000年ほど生きると言われています。これについては実際に900歳を超えるキュウコン個体が数十体確認されていることから、高い信憑性を持つ情報と考えられています。キュウコンの死因は、不慮の事故や感染症によるものがほとんどであり、老衰で死去したというケースは少なくとも記録上は確認されていません。キュウコンは他に類を見ない長寿であり、またそれは科学的に裏付けがなされているものであるということを認識してください。

その上で、仮に市民の証言が嘘偽りの無い事実であった場合、Eliza Valentineはキュウコンがロコンであった頃から含めて1,000年近く共に生きていることになります。局員は市民からEliza Valentineの居住地を聞き出し、応援の局員を伴ってEliza Valentine宅を訪問しましたが、局員が到着した時点では既に彼女の姿は無く、家財一式と共に家を引き払った後でした。当局は本案件を案件#95587、Eliza Valentineを参考人#95587と指定、捜索が開始されました。

参考人#95587について各地でヒアリングを実施したところ、彼女の素性に関するいくつかの証言が得られました。以下は参考人#95587に関する証言の一覧です。


証言#95587-1:
参考人#95587は穏やかな性格をしており、庭でハーブを育てたり油絵を描くなど、悠々自適の生活を送っていたように見えました。傍らにはいつもキュウコンが帯同しており、参考人#95587を護っていたように思います。外見は20代後半から30代前半ではっきりとは判別できませんが、いずれにせよ年老いているわけではなかったという点では間違いありません。これに加えて、庭で子供が遊んでいる光景を何度か見ています。

証言#95587-2:
参考人#95587の元には時々地元の子供たち、特に女の子が訪れ、何がしかのレッスンをしていたように見えました。雰囲気としてはピアノやバイオリンのような楽器を教えているように思えましたが、具体的に何を教えているのかは分かりませんでした。女の子は中学に上がるかトレーナーとして旅立つ頃には参考人#95587の家を訪問しなくなり、また別の子供たちがやってくるというサイクルが繰り返されていました。

証言#95587-3:
夜間になると参考人#95587の家は消灯されていることが多く、その間参考人#95587はどこかへ出かけていたようです。どこへ行っていたのかは分かりませんが、少なくとも近隣で見かけたことがないのは間違いありません。車を持っているわけでもなく、公共交通機関も整備されているとは言えないので、普段どこへ出かけているのか不思議でなりませんでした。時には数日家を空けていることもあったように思います。

証言#95587-4:
以前参考人#95587の家へ誘われて遊びに行った子供が、参考人#95587が不思議なものを見せてくれたと話していました。具体的には何がどう「不思議」だったのか聞くと要領を得ない答えが帰ってくるのみでしたが、とりあえず何かを見たというのは間違いなさそうです。以前から思いも寄らぬ場所にいたりすることもあって、何人かは参考人#95587のことを「魔女」というあだ名を付けていたそうです。


いくつかの不審な点が見られることから、当局では参考人#95587が何らかの特異な能力、あるいは特異体質の持ち主であるとの前提の元に、現在も捜索を続けています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1310] #109827 「攻撃的なボイスレコーダー」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/06/01(Mon) 21:05:18   44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#109827

Subject Name:
攻撃的なボイスレコーダー

Registration Date:
2004-10-20

Precaution Level:
Level 3


Handling Instructions:
これまでに回収された機器#109827は、各拠点に用意した耐火性の金庫へまとめて保管してください。保管する際は機器ごとにラベリングをして、それぞれを識別可能な状態にしておくことが望ましいです。機器#109827は外観とは異なり動作に一切の電力を必要としないため、仮に電池を抜いた状態であっても起動を試みるべきではありません。機器#109827が起動されているかは、本体前面上部にある電源ランプにより確認することができます。

家電量販店や、小規模な電器店を備えるデパート/ショッピングモールを定期的に巡回し、既存の商品に混合させる形で機器#109827が販売されていないかを確認してください。通常、機器#109827は店舗の従業員に無断で配置されており、正規の経路で入荷されることはありません。発見した場合は速やかに店舗責任者へ連絡し、在庫も含めたすべての機器#109827を接収してください。


Subject Details:
案件#109827は、録音した音声にある一定の指向性を持った認知異常を引き起こす効果を付与するボイスレコーダー(機器#109827)と、それに掛かる一連の案件です。

当局に寄せられた「穏和な会話を録音したにもかかわらず、聞かせたすべての人が強い不快感を示したボイスレコーダーがある」という通報により、このアイテムの存在が認識されました。通報者からボイスレコーダーを接収して局内でテストを実施したところ、通報にあった通りの異常特性が確認できました。これにより当局は案件の立ち上げを決定するとともに、ボイスレコーダーを機器#109827として指定しました。

機器#109827は、隅にペラップのイラストが描かれた、外見上一般的なものと何ら相違の見られないボイスレコーダーです。モデルは古いもので、一見すると単三電池二本を動力源としているように見えますが、これは実際には正しくありません。機器#109827は電池がセットされていようといまいと、すべての機能を利用することができます。電池をセットして種々の動作確認を行い、その後残容量を確認したところ、電池はまったく使用されていないことが明らかになりました。

機器#109827の異常特性は、音声を録音した時ではなく、録音した音声を再生する場合に顕現します。録音された音声を耳にした人間及び携帯獣は、それがいかなる内容であろうと、非常に強い嫌悪感と不快感を覚えます。時として、ボイスレコーダーそのものや近くにいる人間/携帯獣に対する攻撃に及ぶこともあります。それらの感情は録音が終了するかあるいは中断されると即座に消失し、周囲の人間及び携帯獣は平静さを取り戻します。同時に、録音された音声を耳にした場合に想定される本来の感情と、実際に自らが抱いた感情の著しい乖離に強く困惑します。

この特性のために、機器#109827は様々なトラブルを発生させる要因となっていました。以下はこれまでに確認された、ボイスレコーダーとして機器#109827を使用したために発生した事案の一覧です。


事案#109827-1:
ジョウト地方コガネシティ在住の会社員が、商談の内容を記録するために機器#109827を使用。その後録音した音声を元に議事録を作成しようと試みたが、途中で強い不快感を覚えたため、上司に商談の中止を直訴するため席を立った直後に不快感が消失。この事に強く困惑した会社員は、自身の精神状態に何らかの問題があると考え休職を申し出ている。会社員はその後局員からの説明を受けて納得し、現在は復職している。

事案#109827-3:
ホウエン地方カイナシティ在住の女性が、帰宅してくる子供に向けて間食の置き場所を録音。帰宅した子供が機器#109827を再生したところ、著しい嫌悪感を覚えて機器#109827を破壊。その直後に平静さを取り戻し、自分の行動について整合性が取れず激しく狼狽、母親が帰宅するまでパニック状態に陥っていた。後日局員が説明に赴き再現実験を行ったことで原理を理解して納得し、破損した機器#109827を回収。

事案#109827-6:
シンオウ地方クロガネシティに立ち寄ったトレーナーが、連れていたペラップに言葉を覚えさせるためのツールとして機器#109827を購入して使用。しかしながら、録音した音声を再生した直後にペラップがひどく興奮し、機器#109827を破損させるに至った。過去の事例とは異なり、機器#109827が機能停止してもペラップの怒りは収まらず、その後2時間近くに渡って機器#109827を執拗に攻撃し続けた。


一部の局員から、機器#109827のデザイン、及び事案#109827-6で見られた事象より、機器#109827はペラップと何らかの関連性を持っているのではないか、あるいは機器#109827自体にペラップの特異な性質が一部組み込まれているのではないかといった仮説が提唱されています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1311] #116881 「生まれいずる場所」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/06/02(Tue) 20:14:01   46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#116881

Subject Name:
生まれいずる場所

Registration Date:
2007-01-15

Precaution Level:
Level 3


Handling Instructions:
ポイント#116881は封鎖状態を維持し、人間や携帯獣を可能な限り侵入させないようにしてください。特に人間の子供が侵入するケースが非常に多く、事象#116881の発生を許してしまうケースが度々あります。ポイント#116881内で不審な人物を見掛けた場合は、例外なく速やかに退去させてください。こちらの指示/要請に従わない場合は、対象を拘束して最寄りの拠点(現在はジョウト地方エンジュシティ第五支局)へ移送してください。

事象#116881の発生が確認された場合は、オブジェクト#116881を回収するとともに、必ず二人存在するペアレント#116881を保護してください。通常、ペアレント#116881の健康状態に問題は生じないことが分かっていますが、念のため対人用の完全な健康診断を行ってください。診断終了後にペアレント#116881に対して手順M-116881-3に沿ってヒアリングを実施し、情報収集後はプロトコルUXに基づくレベル4記憶処理を行ったのちジョウト地方エンジュシティのポケモンセンターへ引き渡してください。ポケモンセンターとは「野生のオドシシとの遭遇」というカバーストーリーを用いることで合意済です。

回収したオブジェクト#116881は、孵化を待って内容物の検査を実施します。一般的な携帯獣が孵化した場合はデータ化して保護し、無機物が孵化した場合は隣接する低異常性拾得物保管庫のブロック3-Eから6-Aまでのスペースに分類の上保管してください。いずれにも当てはまらない異常な物体/生体が孵化した場合に備え、オブジェクト#116881の保管チャンバーに入室する際はレベル3対バイオハザード用スーツの着用が義務付けられます。


Subject Details:
案件#116881は、ジョウト地方エンジュシティ西部に位置する廃棄されたブリーディングフィールド(ポイント#116881)と、不定期にそこへやってくる二人一組の男女(ペアレント#116881)、ペアレント#116881がポイント#116881へ侵入した際に発生する事象(事象#116881)、ペアレント#116881の間で発見される不審なタマゴ状のオブジェクト(オブジェクト#116881)、及びそれらに掛かる一連の案件です。

2007年12月下旬、ジョウト地方アサギシティのジムリーダーを務めているミカン氏から、「娘が同級生の男子との間にタマゴを生んだと訴えてくる父親がいる。ほとんど錯乱状態にあり、至急応援に来てほしい」との緊急通報がなされ、その異常性から3名の局員が急遽アサギシティジムへ向かいました。到着した時点で、その場にはミカン氏とジムのアドバイザー、アドバイザーによって拘束されたと思しき男性、そしてタマゴを抱いた高校生の少女と、同じく高校生の少年の姿がありました。局員はなおも暴れる男性に鎮静剤を投与して一旦鎮圧した後、ミカン氏とアドバイザーを除いた三人をアサギシティ第四支局まで移送しました。

少女と少年からそれぞれ事情をヒアリングしたところ、昨夜二人でアサギシティ北部を歩いていた最中、寂れたブリーディングフィールド(一般的に、携帯獣の育成を代行する個人または業者が所有する一定以上の広さを持つ庭を指します)を発見したところまでは記憶しているとの点で共通していました。その後の記憶は途切れており、気づいた際にはブリーディングフィールド内部でタマゴを抱いて眠っていたとのことでした。共に対人向けの標準的な健康診断を受診させましたが、少なくとも健康状態については問題がないことが確認されました。当局は放棄されたブリーディングフィールドに異常な性質があると判断、一帯を封鎖して管理下に置き、案件が立ち上げられました。タマゴについては当局が接収し、監視下に置かれることとなりました。

回収したタマゴはオブジェクト#116881と分類され、拠点内の実験チャンバーへ隔離されました。隔離から5日後に孵化し、中から外見上特段の異常性が見られないアチャモが現れました。アチャモは局員によって保護され、現在は拠点内のサーバで管理されています。アチャモについて種々の検査が行われませんでしたが、オブジェクト#116881の生成に関与したと思われる少年及び少女との関連性については特に見当たりませんでした。事件現場となったブリーディングフィールドは、ポイント#116881と分類されました。

ポイント#116881は、かつて携帯獣の育成代行業者が運営していた中規模のブリーディングフィールドです。1998年4月に経営不振により登録が抹消され、跡地はそのまま放棄された状態になっていました。当時の職員にヒアリングを実施したところ、本案件のような事象は一度も確認されていないことが判明しました。これにより、ポイント#116881は放棄された後に何らかの理由により変質したものと考えられています。

ポイント#116881には常に3名の警備員が常駐して監視に当たる体制が敷かれましたが、それにも関わらず複数の事案が発生し、都度対応に追われることとなりました。さらに周辺地域で実施した聞き取り調査により、当局が関与するかなり以前から類似の事案が多数発生していたことも明らかになりました。

以下はこれまでに当局が確認した、ポイント#116881における事案の抜粋です:


[事案-116881-1]
事案発生時期: 2002年夏頃
ペアレント#116881-A: 当時6歳の男子児童
ペアレント#116881-B: 当時7歳の女子児童(ペアレント#116881-1の姉)
オブジェクト#116881: 色違いのニョロモが孵化。現在はペアレント#116881によって養育されている。
備考: 当局が把握している最古の事案。ペアレント#116881の二人については、その後特に変わった様子は見られない。当時は二人が短期間の家出をしたものと考えられ、それほど大きな問題としては認識されなかった。

[事案-116881-4]
事案発生時期: 2002年9月13日から14日にかけて
ペアレント#116881-A: 当時13歳の男子中学生
ペアレント#116881-B: 当時10歳の女子児童
オブジェクト#116881: 標準的なサイズのコンパクトディスクが孵化。内部にはペアレント#116881-A及び-Bの個人写真及び家族写真が収められていたが、いずれもそれまでに撮られた写真とは一致しないことが判明。また、写真が撮影されたシチュエーションについても多数の相違や矛盾が見受けられる。
備考:ペアレント#116881-A及び-Bは面識が無く、同時にポイント#116881に侵入したためにペアレント#116881の組として成立したものと推定されている。

[事案-116881-8]
事案発生時期: 2003年5月6日から7日にかけて
ペアレント#116881-A: 当時8歳の男子児童
ペアレント#116881-B: 当時17歳の女子高校生
オブジェクト#116881: 何の異常性も持たないライチュウが孵化。しかしながら、タマゴから最終進化系とされるライチュウが孵化すること自体が矛盾を孕んでいる。ライチュウは現在局員により保護され、経過観察が続けられている。
備考: ペアレント#116881-Bについて、後に本人が病院で自発的に受診した健康診断にて妊娠していることが判明したが、本人からの申し出により、それについては本事案と関連しないことが明言された。

[事案-116881-13]
事案発生時期: 2004年7月11日から12日にかけて
ペアレント#116881-A: 当時9歳の男子児童
ペアレント#116881-B: 当時9歳の女子児童
オブジェクト#116881: 使い古されたヒメグマのぬいぐるみが孵化。ペアレント#116881-Bがかつて所持していたものと一致していることが判明した。ただし、本人の名前が書かれていたというタグは切断され切り取られていた。
備考: ペアレント#116881-A及び-Bの証言により、当人らはポイント#116881について「赤ちゃんができる場所」であるという噂を耳にし、二人で自発的に訪れたことが発覚した。

[事案-116881-19]
事案発生時期: 2006年8月6日から7日にかけて
ペアレント#116881-A: 当時14歳の男子中学生
ペアレント#116881-B: 当時14歳の女子中学生
オブジェクト#116881: 孵化後半年間観察が行われたが孵化する気配を見せなかったため、ペアレント#116881-Aが処分したとのこと。
備考: 事案-116881-13と同様、ペアレント#116881-A及び-Bは自発的にポイント#116881を訪れたことが判明。二人で性行為に及ぼうとしたとのこと。実際には性交に至る前に事象#116881が発生したため、事案との関連は無いと見られている。

[事案-116881-22]
事案発生時期: 2007年4月15日から16日にかけて
ペアレント#116881-A: 当時17歳の男子高校生
ペアレント#116881-B: 当時16歳の女子高校生(ペアレント#116881-Aの妹)
オブジェクト#116881: 異常性の無いフリーザー個体が孵化した。事案-116881-8と同様、孵化した事自体が異常と考えざるを得ないケースに当たる。フリーザーは局員の元で養育中。
備考: ペアレント#116881-Aと-Bは戸籍上兄妹関係にあるが、血縁関係は無いことが分かっている。


本案件については不明な点が非常に多く、さらなる調査が必要です。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1312] #100675 「サヨナラ」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/06/03(Wed) 18:56:32   48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#100675

Subject Name:
サヨナラ

Registration Date:
2001-11-26

Precaution Level:
Level 1


Handling Instructions:
現段階では、行動#100675が持つ意味についてはほとんど解明できていない状態です。また、行動#100675を事前に抑止するための有効な方策についても見つかっていません。今のところ行動#100675には何の意味もなく、ただ時間を浪費するだけの無為なアクションと考えられていますが、当局が関知し得ない領域で何らかの変化が生じている可能性は残されています。しかしながら、それが事実であることを検証する術も、事実でないことを検証する術もありません。

インターネット上の電子掲示板や個人のジャーナルページへの投稿を監視し、行動#100675に関わる情報を収集してください。特に「ポケモンが何かに手を振るような様子を見せた」というような、明らかに行動#100675と考えられる記載を発見した場合は、可能な限り投稿者へコンタクトを取り、詳細についてヒアリングを実施してください。調査の過程で何らかの知見が得られた場合は、本稿の取扱い手順及び案件詳細を欠かさずアップデートしてください。

本案件の警戒レベルは暫定的なものです。行動#100675について新たな懸念が生じた場合、案件担当者は可及的速やかに警戒レベル見直しの申請を行ってください。

Subject Details:
案件#100675は、特定の携帯獣が持つ技能の一つである「ゆびをふる」を行使した際、ごく稀に観測できる未知の行動(行動#100675)と、それに掛かる一連の案件です。

行動#100675は本件の中核に位置付けられる、携帯獣が見せる特殊な振る舞いです。「ゆびをふる」の動作が終了した後少し野間を置いてから、人間で言うところの「バイバイ」(さよなら)のような仕草を見せます。何かに別れを告げているような動作ですが、具体的な効果は無いか、または不明です。行動を起こした携帯獣、行動を受けた相手の携帯獣、双方のトレーナー、周囲で観戦している人々というすべての関係者について、行動#100675の前後で一切の変化が観測されません。その後の継続調査でも、例えばこの技能を受けた携帯獣が急死するといった一般的に考えられるような事象は、何一つとして発生していません。

この行動が初めて観測された正確な時期は不明ですが、当局が調査した限り、1980年代前半には既にカントー地方西部の一部地域で「ピッピが時折見せる不思議な仕草」として知られていたようです。これは野生のピッピが技能として「ゆびをふる」を自力習得することに起因するもので、当局でも初期調査の時点ではピッピ及びピクシーのみの行動と見ていました。しかしながら後の調査で、行動#100675はピッピまたは進化系のピクシーのみが見せる振る舞いではないことが明らかになりました。行動#100675は種族に依るわけではなく、あらゆる手段で「ゆびをふる」を習得可能なすべての携帯獣が、「ゆびをふる」後のランダムな振る舞いの一つとして行動#100675を取る可能性があります。

少なくとも現時点では何の効果も確認されておらず、行動#100675はただの無意味な振る舞いとして認識されています。しかしながら、何者かに別れの挨拶をしているような意味深長な仕草から、無数の都市伝説や流言の類が流布されているのも事実です。中には当局の調査によって事実であると認定された情報(上述した、ピッピ以外の携帯獣も行動#100675を取る可能性があるというものです)もあるため、これらを一概に確度の低い情報として見ることもできません。行動#100675についてはほとんど理解が進んでおらず、さらなる調査を行う必要があるというのが当局の認識です。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1313] #102808 「増長する宿り木」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/06/04(Thu) 21:20:53   56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#102808

Subject Name:
増長する宿り木

Registration Date:
2002-07-31

Precaution Level:
Level 5

Handling Instructions:
オブジェクト#102808はデータ化され、大容量ハードディスクを多数ストライピングした専用のディスクに保管されています。ハードディスクの容量を6時間毎にチェックし、容量不足が懸念される場合は物理ディスクを追加して容量を割り当ててください。容量不足は即時の重大な収容違反を招くため、多少容量に余裕があったとしてもディスクを追加することが奨励されています。ディスクは週に一度10台ずつ、当局と契約している業者によって納入されることになっています。

その規模の大きさから、オブジェクト#102808の具体的な性質について調査することは不可能です。不用意な調査の試みは大規模な収容違反を引き起こす虞が非常に大きいため、局員はオブジェクト#102808を収容することに集中してください。データ化して収容している限り、オブジェクト#102808の特性は「拡大・膨張し続ける」という一つを除いて活性化されません。最終的にオブジェクト#102808をどのように処理するかについては、いくつかの候補が挙げられています。


Subject Details:
案件#102808は、異常な性質を複数持つオブジェクト(オブジェクト#102808)と、それに掛かる一連の案件です。

2002年6月中旬頃、ジョウト地方ヒワダタウンにて、近隣を散策していたポケモントレーナーがポケモンセンターへ駆け込み、職員に「ヤドンが『やどりぎのタネ』を受けておかしなことになっている」と訴えました。職員が現場へ向かい状況を確認したところ、既にヤドンの姿は確認できず、本来対象を縛る程度の強さしか持たない「宿り木」が著しく成長している様子が目撃されました。この時点で「宿り木」は1メートル程度にまで成長し、周囲に根とも蔓とも付かない器官を拡大させている状態でした。

この状況を見た職員は即座に異常事案と判断し、当局に通報がなされました。駆けつけた局員はポケモンセンターの職員から現場保全の任を引き継ぎ、周辺一帯を立入禁止にしました。その間にも「宿り木」は成長し続けていたため、早急に対象を処分する必要がありました。局員は所持していた武器類で対象を攻撃しましたが、通常想定される以上の強い攻撃への耐性を示し、さらに局員に対して器官を向けるなど攻撃的な姿勢を見せたため、処分は一時中断されました。

対象が元々携帯獣であり、また「宿り木」についても携帯獣由来の物質であることから、データ化しての移動が提案されました。局員の一人が対有異常性携帯獣向けのモンスターボールを投擲したところ、目論見通り対象全体をモンスターボールへ格納することに成功しました。しかしながら、モンスターボールのインジケータは対象がデータ化されてなお成長を続けていることを示しており、許容容量を超過した場合は再活性化することが予想されました。局員は直ちにモンスターボールを拠点まで移送、大容量ハードディスクを持つサーバへオブジェクトを移送しました。事案の経過に付いては以上になります。

オブジェクト#102808は、かつてヤドンだった存在に「やどりぎのタネ」が植え付けられた結果生成された、未知の性質を持つ植物性のオブジェクトです。取得された生体サンプルは、対象が植物系の携帯獣に近しい性質を持つことが判明しました。オブジェクト#102808は意識を持っており、非常に攻撃的です。周囲に存在するものは、有機体/無機物を問わず取り込み捕食しようと試みます。この性質のため、活性化した状態のオブジェクト#102808に近付くことは禁止されています。

このオブジェクトの最大の特徴として、データ化された状態であっても成長を続けるというものが挙げられます。成長はデータ量の増大という形で現れ、ほとんど休むこと無く自らの質量を拡大し続けます。オブジェクト#102808が成長する速度は一定でほぼ変化していません。本稿執筆時点におけるオブジェクト#102808の容量はおよそ156GBであり、一ヶ月後には300GBに達するものと推定されています。オブジェクト#102808の質量増大に対応するため、大容量ハードディスクを容易に追加できる専用のサーバ筐体と、すべての領域を管理する機能を備えたLinuxベースのカスタムOSが急遽開発されました。これに加え、オブジェクト#102808を収容するためのデータセンターが建造されました。

ディスク容量の不足は即時の対象の実体化を招くと推定され、当局ではハードディスクを追加することによりオブジェクト#102808の収容状態を保持しています。システムからのデータ削除が幾度となく試みられましたが、これまでのところ不明な原因により常に失敗します。オブジェクト#102808が保管されているディスクの物理破壊試験は、オブジェクト#102808の実体化を誘発する可能性があるために許可されていません。最新の対策として、ハードディスクをローレベルフォーマットすることでオブジェクト#102808を消失させられる可能性について検討が進められています。

オブジェクト#102808の正確な由来は分かっていません。目撃者の証言では、野生のヤドンに対し同じく野生のハネッコが「やどりぎのタネ」を仕掛けたとのことですが、該当するハネッコは未だ特定できずにいます。このためオブジェクト#102808が生成される至った背景として、ヤドンに何らかの異常性があったのか、ハネッコが特異な性質を持つ「やどりぎのタネ」を行使できたのか、それともこれら以外の別の要因によるものなのかは定かではありません。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1314] #106386 「完全に無害なヘドロ」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/07/05(Sun) 19:36:16   47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#106386

Subject Name:
完全に無害なヘドロ

Registration Date:
2003-09-18

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
携帯獣#106386と同等の性質を持つベトベター/ベトベトンを発見した、あるいは市民から発見の報告を受けた場合は、一般的な手順にて捕獲した上で、速やかにカントー地方タマムシシティ第六支局まで移送してください。タマムシシティ第六支局には、携帯獣#106386が生育可能な環境が整備されています。携帯獣#106386はその性質上、外界にて長期間生存することは困難であると判明しています。

タマムシシティ第六支局にて携帯獣#106386の生育に当たる局員は、携帯獣#106386の収容フロアを常に清潔に保ち、一日に二度、殺菌された水と専用に調合された固形食品を給餌してください。これら以外の飲食物は例外なく携帯獣#106386にとって有毒/有害なものとみなされ、健康状態に悪影響を及ぼすことが分かっています。実験目的を除いては、指定された飲食物以外は決して与えないでください。

性別の異なる携帯獣#106386同士を、決して同一のフロアに収容してはいけません。この条件を満たした場合、♀の個体がタマゴを生む可能性があります。携帯獣#106386のつがいからは非常に高い確率で通常のベトベター個体が孵化するため、放置した場合は携帯獣#106386の死亡に繋がります。収容フロア内でタマゴを発見した場合は、可及的速やかにフロアから除去してください。


Subject Details:
案件#106386は、ある特異な性質を持つベトベター及びベトベトン個体(携帯獣#106386-1及び携帯獣#106386-2、総称して携帯獣#106386)と、それに掛かる一連の案件です。

携帯獣#106386が初めて確認されたのは、2003年7月頃のことです。当局がポケモンセンターへ設けている窓口に、市民から「子供がベトベターと遊んでいるのを見て止めさせたが、ベトベターの様子が何かおかしかった」との申し出が寄せられました。局員が通報者と共に現場へ向かうと、外見上特に異常なところは見られないベトベターが這っていましたが、ベトベターの特徴である異臭/悪臭がまったく生じていないという点に気が付きました。局員は通常のモンスターボールを用いて対象を捕獲、初期調査を実施しました。

その後、同種の特徴を持つベトベター及びベトベトン個体が立て続けに3体発見・捕獲(うち1体は捕獲直後に死亡)され、初期調査では判明しなかった特徴が多数判明しました。異常性ありと判断した局員は詳細を取りまとめて本部へ報告、新規の案件として承認されました。

携帯獣#106386は、外見上は異常性の無いベトベターまたはベトベトン個体と差異が見られませんが、体組織が人体及び携帯獣に対して一切の有毒性を発揮しないという特異な性質を有しています。人間や携帯獣が携帯獣#106386に直接接触しても何ら悪影響は無く、極端な事例では携帯獣#106386を摂食しても健康に問題が生じることはありません。この場合、体組織は胃液によって完全に消化されることが分かっています。この性質のため、通常のベトベター及びベトベトン個体から生じる悪臭は、携帯獣#106386からは一切生じません。

もう一つの特徴として、携帯獣#106386は通常個体に比して自身の耐毒性について著しく低下しているか、もしくは耐毒性を有していません。このため携帯獣#106386が通常個体と接触した場合、治療・回復の措置を執らなければほぼ100%の確率で死に至ります。これに限らず、人体には明らかな影響を及ぼさない程度の有毒物質であっても過敏に反応し、衰弱を引き起こすことが分かっています。携帯獣#106386が摂取する食物についても例外では無く、専用に調整された食料を除いては、新鮮な果実や野菜類といった限られた食物しか摂食することができません。

携帯獣#106386が毒性を有していない明確な理由は不明です。通常のベトベター/ベトベトン個体が突然変異を起こしたという仮説が有力ですが、完全に別種の携帯獣である可能性も示唆されています。しかしながら現状、携帯獣向けに開発されたあらゆるデバイスは、携帯獣#106386を例外なく通常のベトベターまたはベトベトンであると認識しています。案件担当者は、携帯獣#106386の由来についてのさらなる調査が必要であると報告しています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1315] #125030 「おそらくはログのようなもの」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/07/12(Sun) 19:43:36   43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#125030

Subject Name:
おそらくはログのようなもの

Registration Date:
2009-08-05

Precaution Level:
Level 2


Handling Instructions:
サイト#125030は専用の端末を使用して常時監視の状態を保ち、何らかの変更が加えられたことが確認できた場合は直ちに保全の措置を執ってください。特に、新たなログ#125030が追加された場合は速やかな採取が必要です。採取されたログ#125030は内容を解析し、既に採取された物からフォーマットが変更されていないことを確認してください。ログ#125030には個人を特定可能な情報が含まれているケースがあるため、保管に際してはレベル3の情報保護規定に沿った取り扱いが必須となります。

ログ#125030の記録を妨害するために、「タブンネの保護」というカバーストーリーに基づく活動を世界的に展開しています。担当する局員は本来の目的を伏せて、「タブンネは絶滅寸前の携帯獣であり、保護が必要である」と宣伝してください。この活動は、現時点ではログ#125030の記録が停止されるまで行われる予定です。ただし、ログ#125030の内容に著しい変化が見られたり、あるいは何らかの副次的な作用が見られた場合は、都度活動内容の見直しを実施します。

採取されたログ#125030には、未だ内容が明らかになっていない部分が32%残存しています。ログ#125030の解析に割り当てられたチームは、可及的速やかにログ#125030の記録内容を特定してください。解析チームには、採取されたログに対するフルアクセスの権限が付与されます。


Subject Details:
案件#125030は、恐らく野生のタブンネが記録していると思われる詳細不明のログ(ログ#125030)と、それに掛かる一連の案件です。

本案件が当局の管轄下となったのは、2009年7月中旬頃のことです。休暇中の局員がインターネットサイトの巡回中、不審なログファイルが大量に保管されたサイト(サイト#125030)を偶然発見しました。ページのレイアウトから、Webサーバソフトウェア「Apache」が標準で備えるディレクトリリスティング機能により列挙された(あるいは意図せず列挙された状態になっている)ものと断定されました。局員はアクセス元を隠蔽しつついくつかのログファイルを採取し、内容について簡易的な解析を行いました。解析の結果明らかな異常性が見られたため、本部に案件立ち上げを申請し、受理されました。

ログ#125030は、サイト#125030に保管されているテキスト形式のログです。文字コードはASCIIをベースにしていると思われますが、マルチバイト文字のエンコーディングは既知の文字コードのいずれの方式とも異なっています。ログにはASCIIコードと一致する部分が約68%含まれていますが、残る約32%は非一致のために読み取ることができず、現状においては詳細な内容は明らかになっていません。

ただし可読部分の調査から、ログ#125030がどのような性質のログなのかはほぼ明らかにされています。ログ#125030は、調査した限りではすべての地域に於ける、携帯獣の「タブンネ」が受けた攻撃についての記録となっています。記録されているのは、攻撃者である携帯獣・携帯獣を使役しているトレーナーのID・攻撃を受けた際の日時・記録時の天候・地理情報・受けた技能の性質や威力・及びログの記録者が内部で管理していると思われる技能毎の固有番号等です。これらはASCII文字によって記録されているため、当局でも内容についての検証が可能でした。非ASCII文字によって記録されている箇所のほとんどは意味が読み取れませんが、末尾に記録されているものは他の項目とは異なり長さが不定であるため、記録者によるコメント/備考のカラムに相当するものと考えられます。

当局による調査の結果、記録内容については極めて正確であることが分かっています。サンプリングしたログに記録されていたIDを割り当てられたポケモントレーナーと接触し、日時や場所と共にタブンネに遭遇したかを確認した結果、トレーナーの記憶が不正確だったものを除き、すべてのケースでログ#125030の記録内容と実際の行動内容が一致していることが分かりました。複数回の調査で同一の結果が得られたため、ログ#125030の精度はほぼ完全なものであると見られています。

ログ#125030がどのような目的で記録されているのかは定かではなりません。サイト#125030にはログ#125030以外のファイルが一切配置されておらず、ログ#125030を記録している理由や、ログ#125030を収集・管理しているのがどのような個人または団体であるのかも分かっていません。現時点で判明しているのは、サイト#125030にはログ#125030が集積されており、ログ#125030は野生のタブンネが受けた攻撃の情報を極めて精緻に記録しているということのみです。トレーナーによって捕獲されたタブンネについても記録の対象となっているかは、サンプルの少なさから明らかになっていません。

ログ#125030の記録目的が明白でないため、現状取り得る方策として、野生のタブンネへの攻撃を極力控えさせるというものが考案されました。当局ではタブンネを絶滅危惧種の携帯獣に指定させるロビー活動を展開するとともに、草の根活動を通じてタブンネへの攻撃を控えさせることをトレーナーに教育していく予定です。現在、フロント組織となるNPO団体の設立準備を進めています。


[2010-11-19 Update]
当局による妨害活動が開始されて一年近くが経過しますが、近年のタブンネの目撃例は増加の一途を辿っており、ログ#125030の記録を未然に防止する効果は低い水準に留まっています。タブンネ自身、あるいはタブンネを統率する未知の存在は当局による妨害行為を認識しているようで、ポケモントレーナーの前に積極的に出現し、自身を攻撃するよう促しているように見受けられます。

これに加えて、タブンネが使用する技能の一つである「シンプルビーム」について、通常とは異なる波長を生じさせるものを使用し、トレーナーに強い敵愾心を呼び起こさせていたという事例も複数件観測されています。タブンネが自ら積極的に攻撃を受け、それによってログ#125030を多く集めようとする動きと考えられます。当局の動きに対抗する措置を取ってきたことから、警戒レベルの引き上げが検討されています。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。


  [No.1324] #142397 「異世界からの帰還者」 投稿者:   《URL》   投稿日:2015/09/06(Sun) 19:11:46   40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Subject ID:
#142397

Subject Name:
帰ってきた少女 [廃止] → 異世界からの帰還者

Registration Date:
2015-02-15

Precaution Level:
Level 3


Handling Instructions:
帰還者#142397には専任の監督官が付き、日々健康状態を記録してください。帰還者#142397は覚醒中ほとんど常に錯乱状態にあるため、覚醒を検知した場合は医療チームが収容室へ向かい、プロトコルCCに基づく鎮静措置が執られることになっています。プロトコルCCによる鎮静措置は帰還者#142397に対して高い効果を発揮することが明らかとなっているため、別種のプロトコルを用いた追加措置は必要ありません。

所持品や身体的特徴の調査から、帰還者#142397の身元はすでに確定しています。そのため、身元に関する調査はこれ以上必要ありません。帰還者#142397の個人情報にアクセスする場合は、本案件の特別なセキュリティクリアランスが必要になります。このセキュリティクリアランスは通常案件担当者のみに付与されますが、案件担当者が許可した場合、レベル3以上の標準的なセキュリティクリアランス保持者に追加で付与することができます。


[2015-04-20 Update]
2015-03-24以降、帰還者#142397はある程度平静な状態を保っているため、以前の取扱手順に存在したプロトコルCCによる鎮静措置は必要ありません。監督官は帰還者#142397に定期的にヒアリングを実施し、帰還者#142397がどのような経緯を経て現在に至っているかの情報を収集することに努めてください。

ただし本稿執筆時点においても、特にヒアリング中に少なくない頻度で軽度の錯乱状態に陥ることがあるため、監督官は必要に応じてプロトコルCCによる鎮静措置を執ることが許可されています。プロトコルCCによる鎮静措置を緊急実施した場合は、その旨を上長まで必ず報告して下さい。鎮静措置後は最低でも12時間は経過観察期間とし、帰還者#142397をしげきすることのないよう注意を払ってください。

帰還者#142397は、少なくとも生理機能については一般的な人間と同等のものを備えていることが分かっています。日に三度標準的な食事を配給すると共に、申し出があれば別途飲食物を与えることが許可されています。


Subject Details:
案件#142397は、少なくとも20年近く行方不明となっていたにも関わらず、失踪当時の姿で発見された14歳の女性(帰還者#142397)と、それに掛かる一連の案件です。

帰還者#142397が保護されたのは、2015-01-12のことです。ジョウト地方アサギシティ第二支局に「支離滅裂な言葉を喚いている少女がいる」との市民からの通報が寄せられ、異常事案発生の虞有りと判断した受付担当者が複数の局員を現場へ向かわせました。現場付近で錯乱状態に陥っている14歳前後の女性を発見し、局員が標準手順による鎮静を試みましたが、対象は鎮静剤を投与されても意識を喪失せず影響を受けていない素振りを見せていました。別の局員が帯同させていたチリーンに鎮静効果のある音色を展開させたことにより対象は鎮静し、その場で確保されました。プロトコルCCは、この確保時の記録に基づいて策定されました。

保護された当初、帰還者#142397は重度の錯乱状態にあり、会話を含む意思疎通が一切できない状態となっていました。そのため、所持品などから身元を割り出すことが優先されました。

事前の予想に反し、調査から三日後には完全な身元が明らかとなりました。帰還者#142397はホウエン地方ムロタウン出身であり、1993年、11歳の頃にポケモントレーナーとして旅立った記録が残されています。14歳の誕生日を迎えるまで毎週レポートが提出されていましたが、1996年3月頃、ジョウト地方アサギシティ近隣を訪れた際に行方不明となり、捜索願が出されていました。その後、何らかの事件・事故に巻き込まれたと判断され、1年半後の1997年9月に消息不明のまま死亡届が出されました。このため、既に帰還者#142397の戸籍は抹消されています。

帰還者#142397の特筆すべき点として、物理的なダメージやウイルス感染などに対し、極端なまでに高い耐性を見せることが挙げられます。帰還者#142397は収容後に計23回自殺を試みていますが、そのすべてで帰還者#142397の高い生命力・治癒力により完全に失敗しています。帰還者#142397が試みた自殺の手法は、手首を切り付ける/首を括る/高所から飛び降りるなど多岐に渡りますが、いずれも一般的な人間であれば死亡しているような状態になったとしても、無傷のまま生命を保持しています。

この異常な生命力の高さは帰還者#142397の生まれつきの性質に由来するものでは無く、失踪中に何らかの異常な影響を受けて、身体の性質が変化したことによって生じたものと推測されています。

どのような経緯で帰還者#142397が行方不明となり、およそ20年が経過した2015年に再度出現したのかは明らかになっていません。現在の所帰還者#142397は錯乱状態にこそありますが、会話を行える兆しは見せつつあるため、継続的な治療と調査が必要であると考えられます。


[2015-04-20 Update]
時間の経過と共に帰還者#142397が落ち着きを取り戻し始め、通常の対話が可能になりました。案件担当者は監督官と共に、ヒアリングによる情報収集を行ってください。その際、帰還者#142397の容態を注意深く確認することを怠らないようにしてください。

これまでに複数回行われたヒアリングと当局の調査により、帰還者#142397が辿った経緯が少しずつ明らかになってきています。以下は、ヒアリングの過程で得られた証言を要約したものです。

帰還者#142397はジョウト地方アサギシティ近海にて、一般に「やぶれたせかい」と呼ばれる異常次元に飲み込まれて脱出できなくなり、その中で時間を過ごしていたと証言しています。同種の事案は当局でも複数管理しており、帰還者#142397の証言は信憑性が高いと考えられます。また帰還者#142397からは、当局がこれまで収集した「やぶれたせかい」に関する断片的な情報と合致する証言が複数得られています。

いかなる理由で帰還者#142397が「やぶれたせかい」を脱出し、通常の世界へ帰還したのかは定かではありません。しかしながら一部の局員は、2015-01-10に発生し当日中に無力化された、ホウエン地方でのレベル5事案(事案#142086)と何らかの関係性があるとの見方を示しています。事案#142086と帰還者#142397の関連性については、事案#142086の担当チームと共に調査を続行中です。


[2015-06-05 Update]
帰還者#142397に類似した失踪者が各地で相次いで発見される事案が発生し、各支局の関係者間で会議が行われました。会議の結果、これらの事案はすべて案件#142397と同一のものとの結論が出されました。これにより、帰還者#142397を帰還者#142397-1と再分類し、併せて発見された失踪者を帰還者#142397-2から-18として分類しました。帰還者#142397は、帰還者#142397-1から-18を総称するものとして、位置付けが変更されます。

帰還者#142397の中には男性も複数含まれているため、案件名称が適切で無いとの意見が出されました。案件名称は一ヶ月以内に見直され、再命名が実施される予定です。


[2015-12-19 Update]
シオンタウン第二支局局長より、帰還者#142397-1の特異体質を用いた低レベル異常物品の交差試験を行いたいとの申し出が寄せられました。帰還者#142397-1が同意し、本部からの承認が行われたため、本日付で帰還者#142397-1をシオンタウン第二支局へ移送しました。以後、帰還者#142397-1はシオンタウン第二支局にて収容されます。


[2016-03-17 Update]
帰還者#142397-1からの申し出により、GPS装置の埋め込まれた機器を身体に装着するという条件の下、帰還者#142397-1が親族(帰還者#142397-1の姪)と共に生活することが承認されました。収容そのものは継続されます。


Supplementary Items:
本案件に付帯するアイテムはありません。