マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
このフォームからは投稿できません。
name
e-mail
url
subject
comment

[新規順タイトル表示] [ツリー表示] [新着順記事] [留意事項] [ワード検索] [過去ログ] [管理用]

  [No.1012] 第23話「新顔現る」 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2012/07/19(Thu) 07:53:14   75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「じゃあ、まずはラディヤからだ。全力でかかってこい」

 俺と部員達は、互いに適当な間合いで対峙した。向こうは1番手がラディヤだ。果たして、いかなる動きをするか注目だな。

 そよ風に周囲の雑草がざわめく。自然の観客もお待ちかねだ、そろそろいくか。俺は先日教えられたようにボールを投げた。それに釣られるようにラディヤも繰り出す。

「小手調べだ、エレブー!」

「いきますよ、キノココ!」

 俺が使うのはエレブーだ。先週捕まえた、実に20年ぶりの新戦力。随分せっかちだが、能力や技を考えると適していると言えるだろう。

 対するラディヤはキノココか。かの有名なキノコのほうしを覚えるポケモンで、進化すると無限戦術と言う戦法を使えるキノガッサになる。能力的には平凡だが、一撃で落としては訓練にならない。少しは考えて技を選ばないとな。

「まずは10まんボルトだ」

 先手はエレブーだ。エレブーは両腕をプロペラの如く回し、頭の角から電撃を放った。電気は伝わるのが速い。キノココはこれを真面目から受け、弾き飛ばされた。しかし、その丸々とした体はすぐに起き上がる。これを見て、ベンチから疑問の声が聞こえてきた。

「キノココに対して電気技でマスか?」

「そりゃ訓練だからな。いきなり弱点突いて倒したら、意味が無い」

「なるほど」

 イスムカが軽くうなずいた。彼が頭を上げるまでの一瞬のうちに、ラディヤは叫ぶ。

「キノココ、きのこのほうしです!」

 キノココは頭上から苔のような色の粉をばら撒きだした。粉は風に乗り、エレブーにまで到達。すると、エレブーは膝をつき、しまいには地面に伏していびきをかき始めた。

「まあ、予想通りの展開だな。さて、これからどうする?」

 エレブーは寝た。しかし向こうに決定力は無い。キノココと言えば、どくどくだまを持たせて特性のポイズンヒールを発動し、みがわりを利用して戦う無限戦術だ。それは先程も述べたが、キノココに変化は無い。こりゃ手ぶらか。なら待つか。

「もちろん考えてあります。やどりぎのタネ!」

 そうこうするうちに、キノココが仕掛けてきた。またしても頭のてっぺんから種を出し、無抵抗なエレブーに発射。種は瞬く間に発芽し、エレブーの左腕に絡みつく。

「……ほう、それは悪手だな。起きなエレブー、ボルトチェンジだ」

 俺は眠っているエレブーに指示を送った。幸いにもエレブーは目覚めた。それから電気をまとってキノココに体当たりをし、すぐさまボールに戻る。あんまり悠長にやってたら、簡単に交代されるってのが良く分かるだろうな。

「隙あり、みがわりです!」

 もちろん、彼女もそれは理解しているようだ。俺が次のボールを投げると同時に、キノココは人形を額に作り出した。一方俺は、こいつを2番手に投入。それを見て、ベンチのイスムカが声を上げる。

「あれは、フォレトスか!」

「ご名答だ、イスムカ。フォレトス、むしくい攻撃」

 フォレトスは速かった。回転しながらキノココに接近し、鋼鉄の殻で噛みついた。キノココはタネばくだんで抵抗するも、かすり傷にもなりゃしねえ。

「ああっ、みがわりが……」

「ついでにもう1発、とどめだ」

 動揺するラディヤを尻目に、もう1度むしくいをお見舞いした。エレブーの攻撃とみがわりで消耗したキノココを倒すには、十分すぎる攻撃だった。キノココは気絶し、その場に転がる。

「キノココ!」

「緒戦は俺の勝ちだな。次はどっちが勝負するんだ?」

 俺はベンチの2人に問いかけた。これを受け、威勢よく動いたのはターリブンだ。

「ふふふ、ここはオイラに任せるでマス。全部やっつけるでマスよ」

「そいつぁ、大した自信だ。ならば早く出しな」

「わかったでマス。ハスボー、出陣でマス!」

 ターリブンは腕に力を込めてボールを投げ込んだ。出てきたのは、頭に平たく大きな葉っぱを持つポケモン、ハスボーだ。

「ハスボー?」

 俺は不意を突かれた気分だった。ハスボーは水、草タイプ。水タイプの技ならフォレトスに通るが、こちらは虫タイプだぞ。もしや……。

「いくでマス、懐刀めざめるパワー!」

「……フォレトス、むしくいだ」

 思った通りだ。ハスボーは体から力を放出しようとした。だが、ハスボー程度には抜かれねえよ。なにしろこのフォレトスは、ぎりぎりまで速く動けるように育てなおしたんだからな!

 フォレトスはハスボーの攻撃を避け、またしても殻で食らいついた。そして、ハスボーもキノココと同じ末路をたどった。ミイラ取りがミイラになるってところか。

「や、やられたでマスー!」

 ターリブンは地面を踏みつけた。その悔しさをぶつけてほしいものだな、今後の訓練に。

「やれやれ、まだまだ読みが甘いな。わざわざ弱点の相手に出したら、疑われて当然だ。では、最後はイスムカの番だぞ」

「は、はい。くそー、こうなりゃやけくそだ。トゲピー、頼む!」

 さあ、ターリブンも退けた。残るはイスムカただ1人。イスムカは明らかに緊張している。表情が強張っているからな。そんな彼が勝負を託したのは、まだよちよち歩きのトゲピーだった。こいつぁ、面食らったぜ。

「トゲピー……だと? サファリにこんなポケモンいたか?」

「いませんよ。このトゲピーは、家にいるトゲキッスが持ってたタマゴから生まれたんです」

「そういうことか。ま、いるならなんだって構わん。フォレトス、じしん攻撃」

 俺はすぐさま勝負に出た。フォレトスは軽く飛び上がると、大地に全力でタックル。そこからトゲピー目がけて地割れが起こった。その衝撃でトゲピーは転ぶ。もっとも、この程度で沈む程やわな耐久でないことは分かっている。それはイスムカも同じなようで、彼は緊張しながらも声に力を込めた。

「負けるなトゲピー、だいもんじだ!」

 トゲピーは、イスムカの期待に応えんとばかりに両手を前に突き出し、口から火の玉を発射。火の玉はすぐに大の字となり、フォレトスに襲いかかる。フォレトスはしばし火だるまとなったが、なんとかしのいだ。俺は冷や汗を滴らせながらも胸を張る。

「ぐ、だいもんじたあ派手にやってくれるじゃねえか。だが残念、さすがのフォレトスもこの程度の攻撃は……こ、これは!」

俺はうなった。なぜなら、耐えたはずのフォレトスが飴玉のように転がってしまったからだ。まさか、この俺が素人に不覚を取ろうとは……。

「フォレトスが倒れています! トゲピーの勝ちですわ!」

「ふうー、危なかった。特性『てんのめぐみ』で火傷にできなかったら負けてました」

 イスムカは額の汗を拭った。ま、こんなこともあるよな。気にしても仕方ない。俺は次のボールを懐から取り出し、こう言うのであった。

「……ふん、運には恵まれているようだな。それが吉と出るか凶と出るか、見物だぜ。さあて、気を抜くなよ。勝負はまだまだこれからだ」



・次回予告

今日は久方ぶりの休日だ。だが、ただ休むのは大層愚か故に立ち読みでもすることにした。そのつもりだったのだが……。次回、第24話「休日なんて無かった」。俺の明日は俺が決める。


・あつあ通信vol.89

今日は久々の対戦回。ダメージ計算は全員レベル50の6V。ただしハスボーはめざぱの都合上攻撃特攻素早がU。キノココは陽気無振り、エレブーはせっかち無振り、フォレトスは陽気攻撃素早252振り、ハスボーは控えめ無振り、トゲピーは図太い無振り。キノココはエレブーの10万ボルトとボルトチェンジを確定で耐えます。しかしむしくいにはやられます。ハスボーも確定1発。一方トゲピーの大文字はフォレトスでもタネばくだんのダメージ込みで耐えられるものの、火傷ダメージ込みだとギリギリ確定1発にできます。


あつあ通信vol.89、編者あつあつおでん


- 関連一覧ツリー (★ をクリックするとツリー全体を一括表示します)

- 以下のフォームから自分の投稿記事を修正・削除することができます -
処理 記事No 削除キー