マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.1036] プロローグ 投稿者:アルパ   投稿日:2012/09/07(Fri) 16:31:10   37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

プロローグ

 旅立ちの前夜、タツキはなかなか寝付けなかった。
 明日の出発に備えて、9時には支度を終えてベッドに入っていたのだが、これから始まる旅のことを思うと、眠気などすっかり忘れてしまうのだった。
 タツキは早寝するのをあきらめ、ベッドから降りると、カーテンを開けて外を眺めた。
 明かりのついている家はなかった。物心ついてからずっと暮らしてきたマサラタウンは、夜の闇の中で静かに眠りについていた。
 明日になれば、しばらくこの町に帰ってくることはなくなる。一緒に過ごした人々とも――。
 そう思うと、少し寂しさが込み上げてきた。

 空を見上げると、まんまるの月が浮かんでいた。それを見てすぐにモンスターボールのことを連想した自分に、タツキは思わず苦笑した。本当に、旅のことしか考えていないのだった。
 育ててくれた両親に代わって、これからは太陽と月とがタツキのことを見守ってくれる。神さまがいるかはわからないが、タツキは月に向かって旅路の安全を祈った。

 そのとき、月の光が一瞬さえぎられた。

 何か影が通り過ぎたように見えた。鳥ポケモンではなかったと思う。一体何だったのだろう?
 タツキは急いで窓を開けると、身を乗り出し、影が過ぎ去った方角を見た。
 白く、華奢な体躯のポケモンの姿が見えた。初めて目にするポケモンだった。長い尾をなびかせ、夜の空を飛んでいくその姿は、神々しさすら感じさせるほどに美しかった。
 呆然と見ていると、そのポケモンが突然身を翻し、タツキの方に振り向いた。青い瞳から放たれる真っ直ぐな視線に貫かれ、思わず息を呑んだ。かなり距離があるにも関わらず、自分のすべてを見通されているような感じがした。
 不意に、ポケモンが左手をかざした。次の瞬間、全身から力が抜けた。意識は朦朧とし始め、タツキはそのまま、眠りの中に落ちて行った。……



 翌朝起きたときには、タツキはそのポケモンのことを覚えていなかった。


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