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  [No.1070] 第42話「働かざる者食うべからず」 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2012/12/01(Sat) 21:26:32   81clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「おい、これは一体どういうことだ」

「あーら、随分でかい態度じゃないの。私がちょっとでも機嫌を悪くしたらどうなるか、分からないのかしら?」

「質問に答えろ。なぜ俺達の部活の予算が出ないんだ。昨年の予算ではちゃんと出ていたと書いてあるのによ」

「鈍いわねえあなたも。昨年のポケモンバトル部の失態への制裁なの、これは。本来なら学校の名誉毀損で訴えても大丈夫だけど、特別にこの程度で済ませてあげてるの。むしろ感謝してほしいわ、ほーっほっほっほ!」

「……ちっ、余計なことを」

「あ、そうそう。制裁はもう一つあって、今年度の公式試合で勝てなかったら廃部ですわよ。せいぜいあがきなさい、ほーっほっほっほ!」










「……というわけだ。学校側からの資金援助どころか廃部の可能性にさらされることになった」

 4月16日の金曜日、夕刻。俺は今朝あったゴタゴタについて3人に話していた。全く理不尽なことだが、このくらい慣れっこだ。俺が普段通りに説明したせいか、どうにも事態の重要性を認識してないな。まあ、廃部のことを言わなかったのもあるが。

「それは大変なことになりましたね。でも、予算って何に使うんですか? 僕達の練習ってポケモンとの取っ組み合いか筋トレくらいじゃないですか」

「まあ、普段はな。だが遠征の費用や訓練の質を向上させるための投資が必要になる。ポケモンに持たせる物も工面しないといけない」

「では自費でこなすというのはどうなのでしょう?」

「それも考えたのだがな、猛反発するのがいたのでな」

 俺はその反対者の方に顔を向けた。ターリブンが熱弁をふるうのが見える。

「オイラ、これ以上支出が増えたら生活できなくなるでマスよ!」

「ということだ。しかし気に揉む必要は無い。金のなる木のありかは掴んでいるさ」

「お、さすが先生でマス!」

 ターリブンの表情はスロットの出目のごとく変化するな。もう少し落ち着きを持ってほしいぜ。

「今から早速全員で行くぞ。ついてきな」










「ようテンサイさん。なんだいそいつらは、隠し子か? 相手はやっぱりナズナさんかい?」

「相変わらずだな、ガッツさん」

 太陽がいよいよ沈もうとしている時分、俺達は学校近くの商店街のある店を訪れた。この商店街には色々あって、創業うん百年の薬屋から各種飯屋、メイドカフェなんてものまである。

 で、着いて早々俺は店長と冗談を言い合った。スキンヘッドに鉢巻き1つ、腕まくりをした深紅のシャツにオーバーオールが異様に目立つ。どことなく土管が似合いそうな雰囲気が出てる。

「誰でマスか? このオクタンみたいな頭の人は」

「おう坊主、今時度胸があるじゃねえか。だが口が悪いのは感心しかねる。よく覚えとけ、俺様は『ボクジョー軒』店長のガッツだ」

 店長のガッツは啖呵を切った。この威圧感は初対面の奴らを縮こませる。3人とて例外ではない。俺は両者の間に入ってガッツ店長の紹介をした。

「ボクジョー軒ってのは野菜や木の実を扱う店でな、他では中々売ってない物が多数ある。ジョウト地方はなぜだか木の実の栽培が行われないから、こういうところで買うわけだ」

「その通り! テンサイの旦那にはいつもひいきにしてもらってるぜ。特に努力値を下げる木の実を大量に買ってもらってるのさ」

「努力値?」

「……それについては後で説明しよう。それよりガッツ店長、今日は注文に来たのだが。これが目録だ」

 俺は懐からメモ用紙を取り出した。ガッツ店長はそれを眺めるなり、腕組みをしてしまった。

「どれどれ。うーん、こりゃ高くつくよ。ざっと10万はかかる」

「構わん。その代わり、増えた分を買い取ってほしい。あと、俺がここに来ていることは漏らさないでくれ」

「ほう、なるほどね。なら、来週には仕入れておくぜ。どーんと俺様についてこい!」

 ガッツ店長は胸を叩いた。そのポーズはさながらケッキングと言ったところか。しかし、有能だから気にならないね。

「そうしてもらえると助かる。……そうだ、ついでにこいつらの紹介をしとこう。右からイスムカ、ターリブン、ラディヤだ」

「イスムカです、初めまして」

「ターリブンでマス。おじさん鉢巻きが似合うでマスね」

「ラディヤです。これからよろしくお願いします」

 3人は頭を下げた。この挨拶に気を良くしたのか、ガッツ店長は

「おう、気持ちの良い若者じゃねえか。俺様はガッツ、覚えとけよ!」


・次回予告

さて、資金稼ぎは様々な方策を取らねばならない。どれかが立ち行かなくなってもリスクを小さくするためだ。だが、そればかりやるわけにもいかない。というわけで、実戦練習もかねて全国のトレーナーと勝負することにしよう。次回、第43話「ランダムマッチ」。俺の明日は俺が決める。



・あつあ通信vol.107

同じ話で何度も場面を変えるのは好きではありませんが、あまりに短いのでつなげました。最初の場面を簡潔に済ませることでなるべくスムーズかつ分かりやすくなるよう配慮しましたが、大丈夫でしたかね。


あつあ通信vol.107、編者あつあつおでん


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