「さ、これが注文したものだ」
「これが能力上昇の木の実かあ」
4月19日の月曜日、放課後。いつものように部室に集まっていた。ひとつ違うのは、俺が紙袋に入れた木の実を持ってきたというところだ。どれもこれも滅多に手に入らない逸品ばかり。これを見たラディヤはピンときたみたいだな。
「チイラ、リュガ、ヤタピ、ズア、カムラ、サン、スターと勢揃いですね。図鑑でしか見たことがありませんでした」
「スターの実とはかっこいい名前でマス。確か、ランダムで能力が大きく上がるでマスよね」
「そうだ。ガッツ店長が『バトルサブウェイで203連勝して仕入れた物だ、収穫できたら俺様に流せよ!』と言っていた。サンの実も似たような仕入れらしい」
……俺も実物を目にするのはこれが初めてなんだよな。まあ、これから見飽きるほどになるわけだが。しかし、こいつらはそれ以外の点に注目してやがる。
「先生物真似上手いですね」
「余計なことを。それより、早速これを植えるぞ。ただし部室の中だ」
「部室の中、ですか? この辺りは日当たりが良いですから外の方が適しているのでは?」
ラディヤは辺りを眺めた。西日が差し込む部室の隣では、朝日もまた浴びることができる。昼間に至っては言うに及ばず。それでも、何も考えずに植えるのは自殺行為だ。
「全くもってその通りだ、ラディヤ。だがな、あの教頭の存在を忘れちゃならねえぜ」
「あっ、そうでしたね」
「あの教頭は鬼畜でマス。きっと収穫直前の苗を引っこ抜いたりするはずでマスね」
「そういうことだ。幸い、部室の窓は大きい上に南向き。万が一気付かれたなら、授業中は蛍光灯で補助して部活の時間に外で日光浴させて育てるのが良いだろう。とにかく木の実は水と光。水やりを忘れるなよ」
俺は注意事項を説明し、鉢植えに土と肥料を入れた。これもボクジョー軒から注文したが、ホウエンやシンオウの肥沃な大地に匹敵するものだそうだ。
「はい。それじゃ、日替わりで水をやろうか」
「それが良いでしょうね」
「じゃあ今日はオイラが水をやるでマス」
こうして、鉢植えにそれぞれの木の実を1個入れ、まずターリブンがジョウロで水をまくのであった。あとは無事に育つのを期待するしかねえな。
「頼むぜ、金の成る木」
・次回予告
忘れてもらっちゃ困るが、サファリでのボランティアは順調だ。せっかくだからここでも木の実を育ててみるか。最近は農園を始めたらしいし、木の実の予備はあるからな。次回、第45話「バオバ農園」。俺の明日は俺が決める。
・あつあ通信vol.109
木の実は種から育てるのでしょうか、実を植えるのでしょうか。どちらにしろ、ゲームのように数日で木になる成長の早さは異常ですね。最短クラスの桃栗3年と最長の4日でできる木の実を比べても、約274倍も早い。もし現実に存在したら、アメーバのような質感でしょうね。
あつあ通信vol.109、編者あつあつおでん