マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
このフォームからは投稿できません。
name
e-mail
url
subject
comment

[新規順タイトル表示] [ツリー表示] [新着順記事] [留意事項] [ワード検索] [過去ログ] [管理用]

  [No.1086] Landry8 -Sunday Morning- 投稿者:レイニー   投稿日:2013/03/12(Tue) 22:31:42   63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:洗濯日和】 【カゲボウズ】 【※おそらく2010年当時の文章】 【何故か発掘されますた

日常は相変わらず過ぎていく。

私が大切な人を失って……平たく言うと告白することもなく失恋してから、数カ月がたった。
それでも特に日常は変わることなく過ぎていく。

また日曜日、つまり休みの日がやってきた。
忙しい日々だけど、こうして適度にきちんと休みがもらえているのはありがたい。
仕事の日よりちょっと遅めに起きて、まずは朝ご飯から。
冷やご飯を電子レンジに入れようとして……視線に気がついた。

数匹のカゲボウズたちが、窓ガラス越しにじっとこちらを見ている。
そしてその横には、一匹のジュペッタ。
あら、ジュペッタが来るなんて珍しい。
でも、ジュペッタはカゲボウズの進化系だから、一匹くらい混ざっててもおかしくないのかな。
などと思いつつ。

「さ、おいで。」
声をかけながら、カゲボウズたちを迎え入れる。


そう。あの日から、変わったことが一つ。
私の家に時々カゲボウズが寄りつくようになってしまったこと。
カゲボウズは恨みや妬みといった感情を食べるらしい。
それであの日、私から発せられていたものすごい妬みオーラを嗅ぎつけて、大挙してきたらしい。

それからカゲボウズたちは、ときどき私のもとにやってくるようになった。
あの時みたいにベランダを真っ黒く埋め尽くす程の大群で来ることはないけれど。
きっと彼らは、やっぱり私の負の感情に惹かれて、ここまで来ているのだろう。

忘れなきゃ、忘れようとは何度も思った。思ってる。現に前よりは大丈夫になってきている。
でも、それはいつもどこか不完全な決心で、何かの拍子にぐらついてしまう。
引きずりっぱなしじゃいけないのはわかってるんだけどな……

どことなく楽しそうなカゲボウズたちを迎え入れ、私は手早く食事の準備をする。
「……悪いけど、今日もあなたたちの分はないからね。」
あの日の翌朝は、うっかりご飯を与えてしまったけど、よく考えるとあんまり餌付けしてしまうのもよくないだろう。
残念そうなカゲボウズたちを尻目にご飯。
うう、あの定食屋さんで食べるときはカゲボウズに見られてすっきりするのになぁ。

でも、どこか申し訳ないと思いながら食べていたはずなのに、気がついたら食べてるうちに気分が軽くなっている。
カゲボウズたちの表情も、私が食べ始めた時よりも何だか清々しい。
その真っ黒で柔らかな体を揺らし始めて、楽しそうにも見える。

まさか彼ら、自分たちの負の感情をも解消しているのではないだろうか。
……だとしたら何と効率のいいポケモンだろう。
なんだか羨ましいなー。

楽しそうにしているカゲボウズたちの隣で、ジュペッタはお構いなしにシャドーボクシング。
……あ、そっか。この子、この間ヒメちゃんボコボコにしたあの子なんだ。
あの謝りにきたトレーナーさん、いい人だったなぁ。
わざわざヒメちゃん直してくれて……
ふと、ヒメちゃんを直して持ってきてくれたときの、あの人の優しい顔を思い出す。
なぜだかあのときの笑顔が、頭の中で鮮やかに蘇ってきて。


食べる前とは対照的に、食事を終えたときには晴れやかな気分だった。
さて、次は洗濯だ。
日が出ているうちに早いとこすませないと。
そうでなくても休みの日はあっという間に過ぎてくんだから。

洗濯を始めようとした私に気付き、カゲボウズたちが、ここぞとばかりに身を左右に揺らす。
「わかってるわよ。ちゃんとあなたたちも洗ってあげるから。」
何だか彼らは、洗ってもらうのが好きらしい。
あの日汚れた彼らを洗ってあげたのがよほど気に入ったのか、彼らは来るたびに、
洗ってくれ洗ってくれと、身体である布をはためかせながら大きな瞳で訴えかける。

ちょっと待っててねとカゲボウズたちを制し、まずは自分の洗濯物を片付ける。
洗い物をいっぺんに洗濯機に入れて、洗剤を入れ、スイッチを押す。
徐々に泡が生まれ、ぐるぐる回りだす洗濯槽。

ガタンゴトン。ガタンゴトン。

……最近ちょっと音が大きくなってきた気がする。
心なしか、前より大きく揺れるようになってきた気もするし。
でも、寿命にしてはちょっと早い気もする。
この間の台風で動いてる時に停電しちゃったせいかしら。
一度電気屋さんに訊いてみた方がいいのかなー。

とか思っていたら。

バチッ。

目の前で何か、いや、まぎれもなく洗濯機から、一瞬、一筋の光が現れ、そして消えていった。
どう見ても電流だ。

え、なにこれ。故障……!?

すると。
カゲボウズたちが洗濯機をじっと見て、そして身をひそめあっている。何か話し合っているみたい。

「……何?洗ってほしいんじゃなかったの?」
いつもと様子が違うカゲボウズたちが気になって、声をかける。
すると。

次の瞬間、カゲボウズたちから放たれたのは、黒い球体だった。
黒い球体……シャドーボールは、まっすぐに洗濯機に突撃していく。

へー、この子たちシャドーボール使えるんだ。
案外レベル高かったんだ。

……。

「……って、ええっ!?」

私が理性を取り戻し、声を上げた時には時すでに遅し。
カゲボウズたちが放ったシャドーボールは、洗濯機に直撃。クリーンヒット。
あまりにも突然すぎる事態、むしろ暴挙に、思考回路がストップ。
な、何でこんなことに……?

さらに次の瞬間。
シャドーボールを受けてから、どことなく電気を帯びている洗濯機が。

勢いよく水を噴出した。
いわばハイドロポンプのごとく。

ドバアアアアアアアアアアアアッ。

ハイドロポンプと共に排出される洗濯物たち。
洗濯物と水を吐き出したっきり、ぷつりと動かなくなった洗濯機。
そして水浸しの床。
ずぶぬれのカゲボウズと私。

「ど……どうなってるの……。」

何が起きたか理解できず、ただつぶやく私の前に現れたのは、カゲボウズたちのようにとがった頭をして、電気を帯びてる、オレンジの生き物。
ずぶぬれの私たちの惨状を見て、ニヤニヤ笑っている。

オレンジの生き物、ロトムと、びしょ濡れでちょっと寒そうなカゲボウズたち。
台無しになった洗濯物と、そして壊れた洗濯機。

こうして、普段と違うとんでもない休みの日は幕を開けたのだった。




おわろう



【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【まとめていいのよ】

---

ポメラの中身整理してたら出てきました。……が、あとがきまで含め完成しているっぽいにもかかわらず、投稿された形跡がない。
あとがきに「世間はBW一色」と書いてあるので多分その頃。何故寝かされていたのかは不明。
というわけで勢いだけで晒してみることにした。一切手直しなし。文章が若い(気がする)。



ちなみに当時のあとがき。

---

世間はBW一色ですが、まだまだカゲボウズ。

本当は、主人公別にした、全く違うカゲボウズものを書くつもりだったのですが、そちらが座礁。
座礁したまま長らく放置していたのですが、ロトムネタ思いついた結果、勢いで書いていた。

再度幸薄荘のカゲボウズたちを勝手に友情出演させていただきました。ありがとうございます。

---

だそうです。


【追記】
よくよく見てみたらパソコンの中から差分発掘。
そのファイルの最新更新日が2010/10/28。
……若干恐れをなしております。


- 関連一覧ツリー (★ をクリックするとツリー全体を一括表示します)

- 以下のフォームから自分の投稿記事を修正・削除することができます -
処理 記事No 削除キー