一個前のssと対になってる感じです。繋がってはいませんが。
道に迷うのは毎度のことながら、今度はサトシとユリーカ達とはぐれてしまった。旅慣れたサトシは心配ない
としても、まだ小さなユリーカはどうも姿が見えないと落ち着かなくて不安だ。
サトシとピカチュウが一緒なのだから、自分といるよりは安心かもしれないが。そんなこと考えながら歩いて
いたら、運動が苦手な自分とセレナ、彼我(ひが)の距離がいつの間にかずいぶんと離れてしまっていた。普通
は女性に合わせてこっちが歩幅を小さくするというのに、セレナの方が歩みが早いというのがとてつもなく情け
ないと自分でも思う。ひいこらひいこら走っていると、いつの間にかその背中に追いついていた。セレナが歩み
を止めて、こちらを待っていてくれたのだ。
「ハアッ・・・・・・ハアッ・・・・・・すみません、迷惑をかけて」
「だってこれ以上はぐれたら大変だし」
つい座り込んでしまう自分に差し出される手はほっそりしていて、なんでこんな手の持ち主が自分より体力を
持っているのが、シトロンにはとんと理解できない。科学で説明できないことは、この世界にたくさんあるのだ
。彼女の手の感触を考えるヒマもないくらい必死に立ち上がって、ぐったりする頭に気合いを入れる。
「セレナも、サトシも、ユリーカも・・・・・・なんだかんだ言って、みんなボクのことを待ってくれるんです
ね」
「? 当たり前じゃない。一緒に旅してるんだから。みんな一緒がいいよ」
セレナにとって、シトロンは大事な旅の仲間の一人、そういう区分でそれ以上ではない。それでもシトロンは
嬉しかった。非科学的なスパークが体の中で轟いて、活力がわき出てくるようだった。
「・・・・・・ありがとう」
「ううん……さ、行こう」
背を向けた彼女は握っていた自分の手を離して歩き出している。自分も後に続く。
いつか出来るのだろうか、自分も。セレナと、みんなと、息を切らさず足並みをそろえて。さりげなく、なに
げなく、彼女の、セレナの隣を歩くことが。