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  [No.1221] WeakEndのHelloWin 5 投稿者:烈闘漢   投稿日:2015/02/28(Sat) 22:14:31   28clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

WeakEndのHelloWin
       5







「ジョーイさん! 僕のポケモンが大変なんです! 治療してください!」

「どうしたの? ケガでもしたの?」

「はい。ポケモンバトルしてたら、ダメージ負っちゃって、『ひんし』になっちゃいまして」

「たわけ! ポケモンバトルなんてするから、ポケモンがケガするんでしょうに!
 わざわざ自分からケガさせるような真似しておいて、治せとか、阿呆臭ぁなるわ!」

「え? じゃあ僕のポケモン治してくれないんですか? 職務放棄ですか?」

「いや、するけどー。仕事だしするけどー。でも、やりきれないもんがあんじゃん?」

「はあ……さいですか」

なにやら受付カウンターの側で一悶着あった様子だが、すぐに事は治まった。
静けさを取り戻したポケモンセンターには、眠気を誘うBGMだけが流れている。
清潔感漂う待合室にて、ずらりと並んだ椅子をベッドにして横たわり、
天井の光を眺めながら、シオンは一人、ぼけーっとまどろんでいた。



「『シオン君』って! 『ジ○ン軍』と! なんか似てるよね!」

病院だろうと、客がいようと、お構いなしの大音声が轟き渡る。
ふりかえらずとも、誰かは分かった。
トンカチで釘打ってるみたいな靴音が、シオンに向かって迫り寄る。
寝転がっていた状態から起き上がり、姿勢を正して、座席にしっかり腰かけ直すと、
シオンの隣のビニール椅子が、オウの巨体でどごぉ! と凹んだ。

「遅いぞ偽審判。逃げたのかと思った」

「ダイヤモンド君が! 見当たらないね!」

「今、便所に行ってる」

「ふーん! そーなんだ!」

耳元での叫び声に、たまらずシオンは隣の席へと移動し、オウから少し距離をとった。
こんな騒がしい大人と一緒にいるところを見られていると思うと、なんだかむしょうに恥ずかしくなる。
かといって、こんな恐ろしい外見の大男に注意できる勇者も、この場にはいないであろう。

「とりあえず、これ! 返すよ!」

オウの分厚い手の平が、隣の空席にモンスターボールを乗っけた。
取り上げるなり、すぐさまボールを割り、膝の上に現れたピチカの脇をシオンは両手で持ち上げる。

「無事か! 大丈夫か! 何もされなかったか! 生きてるか! 変な所触られなかったか!」

言いながら、シオンはピチカの全身を舐めまわすかのようになでまわす。
赤い頬をこねたり、黄色い腹の肉をつまんだり、長い耳を軽く引っ張ったりして、ピチカの安否を確かめた。

――ちゅぅううううう

窮屈そうなピチカのいじらしい表情を見入るなり、シオンはホッと安堵の息を吐いた。

「よかった、他のピカチュウじゃなく、ちゃんと俺のピチカみたいだな」

「あと、これも! 渡しておくね!」

次の瞬間、シオンは札束を掴まされていた。

「……うおわっ!」

大金を前に怖気づく。咄嗟に、オウから手渡しされたらしい紙幣を数えた。
オーキド博士のプリントされた一万円札が、おおよそ五十枚、手元で震える。

「って、ちょっと待て。俺は借金ゼロにしろとは言ったが、金をくれとは言ってないぞ。
 あっ、いやもちろん、もらっといてやるけどさ」

「一週間前に! 探偵を雇い! ポケモンレンタルもしたよね!」

「……ああ、その代金を払っとけってことだな。じゃ、気が変わらない内に、遠慮なく」

嬉しくてつい、御礼を言ってしまいそうになるも、なんとかこらえ、札束を財布の奥へとしまいこんだ。
(せっかくだから、探偵代もレンタル代も支払わないで、
 このまま冒険の旅という名の夜逃げでもしてしまおっかなあ)
などという不埒な企みがシオンの脳裏をよぎった。

「すっかり騙されてしまった!」

オウの大声に、ピチカは尖った耳を折り曲げて、くしゃっと顔を歪ませる。
可哀想だったので、シオンはそっと、ボールの中に戻しておいた。

「よりにもよってピカチュウだったから!
 だから僕は!
 君が『ポケモンアニメの主人公』の真似事をして喜んでいる馬鹿だと、勘違いしてしまっていたんだ!」

「え? それ俺、けなしてね?」

「いや!
 ピカチュウだったから勘違いしたわけじゃない!
 君がもう少し賢そうな顔をしていれば!
 ポケモンが外に出ていることに!
 何か理由があると疑っていたかもしれないのに!」

「なんてひでえ言い草だ……」

自分が馬鹿そうな顔で良かったと、素直に喜べそうにはなかった。

「とにかく僕の負けだ! 君の反則を見破れなかったから!」

「……は!? なんて!?」

シオンは信じられないモノを見る眼つきで、オウの横顔を見上げた。

「は? いや、だってお前……力尽くで負けがなかったことにしたり、
 無理矢理俺を反則にしたり……屁理屈で駄々をこねたりとかしないのか?」

「そんな悪いこと! 僕にはとても出来ないよ!」

「何をたくらんでる? 潔いぞ。お前のような人間が、素直に負けを認めるなんて考えられん」

シオンはオウの見開いた目玉の瞳孔を、疑いの眼差しでジッと観た。
ふいに浅黒い顔面から、ニヤリ、と鈍い金歯を覗かせる。

「僕としても不本意なんだ! 反則の証拠くらい、でっちあげたかったさ!
 けどね、そんなことをしたら! 僕はぶっ殺されてしまうじゃないか! ダイヤモンド君にね!」

「ああっ。そうか。そうだったなぁ……」

結局、すべて、ダイヤモンド一人の力で解決したようなものだった。
自分はいなくてもよかったのだ。
分かっていたはずなのに、むなしくなった。

「そうか。全部アイツの手柄ってわけか。そいつは面白くねぇなぁ」

ピチカのボールを握りしめて、哀しい表情をするのを我慢した。
反則とはいえ、自分のやって来た努力と勝利を認められないのは、悔しくて悲しくて歯痒い。
一度、軽い深呼吸をして、憎しみを紛らわせる。

「あのさ、お前さ、なんで、んなことすんだよ」

「んなこと、って!? 心当たりがありすぎて分からないよ!」

「ほらあれだよ、何でその……トレーナー狩り? みたいなことをやっていたんだ?
 俺達からから金奪って、けど、金が欲しいってわけじゃないんだろ?
 じゃあ、お前がトレーナーを襲う意味って何なんだ?」

「トレーナーが増えすぎだから消してくれ! って、この国に頼まれた!」

「嘘臭いなあ。
 けど確かに、国が味方しているなら、あんな恐喝がまかり通ったりもするかもしれない。
 じゃあ、何で国がそんなことをお前に頼んだんだよ?」

「この国に! 弱いトレーナーはいらない! だってさ!」

「あのバンギラスを倒せなかったトレーナーを、弱いと決めつけるのは未だ早いだろ。
 今はともかく、いつかは強いトレーナーや強いポケモンになってるかもしれないじゃないか。

「そんなことは知らないよ! 負けた方が悪い!」

「む……だが真理ではあるな、それ。
 負け犬の分際でトレーナーを続けようなんて、おこがましいにもほどがあるよな」

そう言うシオンも、すでに二度、敗北している。
しかし、人生を賭けてポケモントレーナーを目指すシオンにとって、
趣味や遊びのつもりでポケモンバトルをする者達を、非常に鬱陶しく思っていた。
特に仕事や学業の片手間にポケモントレーナーをやっている連中は、
木端微塵に砕け散ってほしいと心の底から願っていた。
シオンはトレーナーになると同時に、高校進学をあきらめている。

「僕も一つ聞きたいな! どうしてシオン君は! 反則ばっかり使うんだい!」

「負ければ金取られるんだぞ。人目とか罪悪感とか、一々気にしてられるか」

「それって、要するに! 勝つ作戦を思いつけなかった! ってことじゃないのかい!?」

「……え? 何だって?」

シオンは顔面をぐしゃぐしゃに歪ませ、怒りをぶつけるようにしてオウを睨んだ。

「お前、言ってたよな。こんなレベルの差を覆せるわけがない、的なこと言って驚いてたよな。
 そのお前が、ディアルガやらメガバンギラスとやらに勝つ作戦があった、って言えるのかよ?
 反則なしでピチカが勝つ方法があったっていうなら、教えてくれよ、なあ」

「僕に勝ったトレーナーが! 君だけとは限らないよ!」

「そんなことは聞いていない。どういう作戦を使えばお前に勝てたんだ、って聞いてるんだ」

「僕を倒したトレーナーが! 強いポケモンを持っていたとも限らないし! 反則を使ったとも限らないよ!」

「……本当の話なのか? お前に勝ったトレーナーが、俺の他にもいるのか?
 それって、ダイヤモンドのことじゃないのか?」

シオンが前屈みになって尋ねた直後、オウがいきなり立った。

「ぼく もう いかなくちゃ!」

「は?」

「ニビシティの皆が待ってる! 僕の審判をね!」

「いや、ちょっと待てって。また借金取りしに行くつもりか」

シオンがオウの腕を掴むと、あっさりと、強引に振りほどかれてしまう。

「誰だよ、お前を倒したヤツって! どっか行く前に答えろよ! 気になるだろ!
 意味深なこと残して立ち去ろうとしてんじゃねえよ! うぉい!」

「早くニビシティの皆にも! 現実教えに行かないと!」

迷いのない足取りでコツコツ鳴らし、オウがシオンの側から離れてゆく。
巨体を察知した自動ドアが、ウィーンと開くと、オウの動きがぴたりと止まった。

「ねえ、シオン君! いくら反則で勝てるようになったからって! ポケモンバトルは強くなれないよ!」

そして、振り返りもせずに、オウは去って行った。
紫色の背広は、閉まった自動ドアのガラス越しへと向かい、すぐに見えなくなる。
気が付くと、シオンは一人になっていた。

「……分かってるよ。そんなことくらい」

反則を使わなければ、勝利はもたらされないのか。
これから先、ずっと反則を続けていかなければならないのか。
苦悩と葛藤は不安となり、ハッキリとしないモヤモヤが胸中で渦巻きだす。
しかし、この嫌な気持ちが、トレーナーにならなければ味わえなかった気持ちだと気付くなり、
シオンはひどく幸せな気持ちになった。



静けさを取り戻したポケモンセンターの片隅で、シオンは一人、戸惑っていた。
三千円を破られ、『きんのたま』を握られ、借金を背負わされ、バイトをさせられ、
そんな憎い宿敵であるオウ・シンとたった今まで自分は普通に会話をしていた。
昨日の敵は〜今日の友って〜、それはなんだか気味が悪い。
反則の不安など、もうどうでもよくなっていた。

「いや〜、シオンさん。物凄くドでかいのが出ましたよ〜。ふんばった甲斐がありました〜」

背後から、ダイヤモンドの呑気な声がやって来た。
シオンは振り返りもせず、握っていたモンスターボールを後方に見せつけた。

「おっ? ということは……シンさん、もう行っちゃったんですか?」

「お前と入れ替わる形でな」

「あひゃあ。それで? シンさん、なんて?」

「もう悪い事はしません。だってさ」

「絶対嘘ですね、それ」

ひょいと、ダイヤモンドがシオンの隣に腰掛ける。随分とスッキリした顔をしていた。

「つまり、シオンさんが勝ったってことで、いいんですよね?」

「うーん、まあアイツは負けを認めたわけだから、そういうことでいいんじゃないか」

「それはよかった! 『ときのほうこう』を三回も使って、時間を戻した甲斐がありましたよ〜」

「……えっ?」

言葉の意味を理解するなり、一瞬遅れて、シオンの全身から血の気が引いた。

「お前っ……なんだって?」

「いえいえ、なんでもありませんよ。冗談ですから」

「まさか……俺が負ける度に……時間を……」

「で・す・か・ら、冗談ですって!」

「……ああ、そうか。冗談か。そうかそうか」

「ハハハ。そうですよ。はい」

ダイヤモンドが何を言ったのか、本当はハッキリと聞こえていた。
しかし、これ以上の詮索はいけないと、シオンの本能が告げている。
その言葉が嘘か真実か、追及する勇気はなく、分かったような態度をとって誤魔化すしかなかった。

「そういえば、シンさん、どこかに行くって言ってました?」

「あいつならニ……いや、えっと……あいつ確か、シンオウ地方に行くとかなんとか言ってたぞっ」

なるべくさりげなく、シオンは嘘を教えた。
オウがニビシティでトレーナー狩りを再開するというのは、シオンにとって実にありがたい行為であり、
ダイヤモンドにそれを止めに行かれるわけにはいかなかった。
なにせ、ポケモントレーナーが少しでも減ってくれれば、
その分シオンがポケモンマスターになりやすくなるからだ。
(俺の野望のためだ! 喜んで犠牲になれ、ニビ人どもっ!)
自分が悪魔のような笑みを浮かべていると、シオンは気付いていない。

「それでは、トキワシティの平和も守られたことですし、そろそろ僕も、旅立とうかな、と」

「もうこの町に用はない、ってところか。なら最後に、ポケギアの番号でも、交換してくれないか?
 せっかくの縁だからよ」

「いいですよ。ちょうどジョウトでふらついてた時に買ったのがあるんです」

「助かる」

言いながらシオンは、左手首を突き出して見せた。
旧式の、漆黒カラーの腕時計型ポケギア。
対してダイヤモンドが取り出したのは、最新モデル、ヴァイオレットの卵型ポケギア。
格差社会を垣間見た気がした。
向かい合ったポケギアで赤外線通信を開始する。
ピロピロ電子音の後、登録完了の文字がポケギアの画面に浮かびあがった。

「サンキュー、ダイヤモンド。これでいつでも、困った時はお前を呼ぶぜっ」

「えええっ! 普通、逆じゃないですか!? 困った時はいつでも呼んでくれ、じゃないんですかぁ!?」

「何言ってんだ? 俺より圧倒的に強いお前が困るような問題、
 俺に解決出来るわけがないじゃないか」

「まあ、確かに、そうかもしれませんけどぉ……」

ダイヤモンドは腑に落ちない様子で、顔を強張らせている。
何のメリットもないのに、シオンごときに利用される派目になったのが気に入らないのかもしれない。
このままではポケギアの番号を消されかねないので、慌てて別の話題にすり替えた。

「それで、お前、これからどこに行くつもりなんだ?」

「シオンさんこそ、これからどうするつもりなんですか?
 正直言って、僕は心配です。また悪いことするんじゃないかって……」

「さっきトキワシティまるごとぶっ壊したお前が『悪いこと』とか、よく言えるな。
 まぁ、それはいいとして、
 あの偽審判、トキワのトレーナー全員をカツアゲして所持金零円にしちまったっていうし、
 つまり今のこの町じゃあバトルで勝っても賞金がもらえない。
 ってことは、俺ぁ、フレンドリィショップのバイト、続けるしかないんじゃないかあ?」

「ではシオンさんも旅に出てみたらいいんじゃないですか。ポケモンバトル武者修行の旅にでも」

「いや、そもそも俺は金もなければ食料もないんだ。隣町に着く前に餓死してしまう。
 ひょっとして、すれ違ったトレーナーから金品だけでなく食料まで巻き上げろってことか?
 それは構わないんだが、変な噂広まったら、誰も俺とバトルしてくれなくなるだろうし……
 なんとかして口封じ出来ればいいんだがなぁ……」

「駄目ですよ、そんなことしたら!」

「じゃ、どうすりゃいいのよ、俺は?」

「そうですねぇ……では、ジムに挑戦するとかどうですか?
 シンさんも自分が倒せないトレーナーが相手じゃ、お金、むしりとれないでしょうし」

「お前、分かってて言ってるのか?
 トキワシティのジムリーダーっていったら、ジムリーダーの中でも最強と言われてるジムリーダーなんだぞ」

「そんなに手強い相手なら、勝った時、たくさんお金がゲットできますね。これで隣町にも行けますよ」

「よし。それじゃあ今の内に新しい反則技でも考えとくか」

「いや、ですから、駄目ですって!」

「んだよ、お前、さっきから。誰の味方なんだよ!」

「正義の味方ですよ!」

「共存戦隊〜……」

「ホウエンジャー!」

なれあっている内、ふと、シオンは気付いてしまった。
トキワシティの隣町といえばニビシティではないか。
ニビシティに到着した時、既に街のトレーナー全員がオウの支配下にある可能性がある。
なんだか行きたくなくなってきた。

「やっぱ俺、しばらくは、この町でいいや」

「いいんですか、それで?」

「まあ、なにすりゃいいかわからんけど、そのうちなんとかなるだろ、たぶん」

楽観的思考というよりは、もはや思考停止に近い。
これからもずっとトキワシティに幽閉され続けるしかない。そう考えると、シオンは少し憂鬱になった。
ふわっと、ダイヤモンドが席を立つ。

「僕はこれから、霊峰白銀に向かおうかと思ってます」

「シロガネ山のことか?
 なるほど、それでトキワシティなんてしけた田舎なんかにはるばるやって来たわけだな。
 それで……山籠りでもするつもりか。これ以上強くなって、どうすんだよ?」

「『レッド』というトレーナーを探そうと思ってます。
 なんでも、ディアルガが本気を出しても勝てないくらい強いトレーナーだと聞きまして、
 是非ともバトルしてみたいなあ、と」

「……『レッド』? その人、シロガネ山なんかにいないだろ?
 それに、トレーナーじゃなくて博士だった気がするけどなぁ」

「知ってるんですか!」

キョウミシンシンイキヨウヨウ。
シオンにガッツクかのよう、前かがみになって、ダイヤモンドは尋ねる。

「確かテレビに出てたんだよな。ポケモン○ンデーとかいう番組で……」

「それで、どこにいるか分かりますか。その『レッド』さん」

「テレビに出てたんだから、多分、ヤマブキとかじゃないか? ちなみに俺の苗字もヤマ……」

「ありがとうございます! じゃ行ってきます!」

シオンが言い終わる直前に、身を翻し、全速力でダイヤモンドは走り去ってしまった。
自動ドアが閉まり、あっという間に一人取り残されてしまう。
ポケモンセンターのBGMが、いつもより切ない音色で響いていた。

心地よい寂しさの中、天井を見上げながら、シオンはうんと伸びをする。
オウに勝ち、借金を失くし、全てが上手くいったおかげで、ようやくゼロの状態に戻ってこれた。
今日くらい、肩の荷を下ろし、御祝いとして遊び呆けていたくもなる。
静けさの中、ここでしばらく昼寝でもしようかとも思った。

だがしかし、こんなところでボケーっとしていられる暇などシオンにはない。
ポケモントレーナーを続けたいのならば、休んでいる余裕もなければ、
勝利の余韻に浸っている間も一秒だってありはしないのだ。
時間が惜しい。
頬を叩いて、席を立つ。

「おし! そんじゃあ早速、ジム戦にでも行ってきますか!」

リュックを担ぎ、帽子を被り、ピチカの入ったボールを握って、シオンは再び戦場を目指す。
闘志を宿した眼差しと、
勢いの付いた足取りで、
ポケモンセンターを後にした。







おわり







あとがき

よくぞ最後まで読んでくださいました。本当にありがとう、おめでとう、素晴らしい、見る目があるよ君、
感謝の嵐でございます。

なんだかシオンさんが、バイトを無視して、これからジム戦に挑もうとしてる気配がありますけど、
このオハナシはこれでお終いです。続きません。俺達の戦いはこれからだ、的な打ち切りエンドです。

なにせ、私はとんでもないくらい遅筆なもんですから、
このオハナシを完全に完結させようとした場合、
私の残りの人生が全て無くなってしまいます。

死ぬ間際に「もっと色んな事しときゃあ良かったあ!」、って叫びながら絶命するより、
「わが生涯にいっぺんのなんちゃらー!」って言ってくたばりたいもんじゃありませんか。

なので続きは書きません、たぶん。撃ち斬りDEATH。面目ない。

そんなこんなで、マサラタウン(のポケモン図書館)にさよならバイバイです。
何か機会があればいずれどこかでお会いいたしましょう。
ありがとうございました。


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