マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.1452] おはよう 投稿者:浮線綾   投稿日:2015/12/10(Thu) 20:50:02   32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]



おはよう



 ぼくは、サラマンドラです。
 むかし博士のところにいた時は、ぼくはただのヒトカゲでした。博士のとこには他にも何匹かヒトカゲいました。
 でも、ぼくはご主人様に出会えたので、もうサラマンドラです。
 ご主人様は、ちょっと変わった服装の、黒髪に灰色の瞳のひとです。でもそっくりな人が他に三人いるので、慣れないとちょっと困ります。
 ぼくのご主人様はレイアという名前です。お耳に赤いピアスをつけていて、前髪はいつも鼻にかかっていて、ちょっと目つきは悪くて、歩き方は大股でちょっぴり猫背で、鋭い大声を出して、でも普段はとっても優しい、ぼくの相棒です。それがレイアです。


 レイアと出会う前は、ぼくはサラマンドラじゃなくて、ふしやまもふしやまじゃなくて、ピカさんもピカさんじゃなくて、アクエリアスもアクエリアスじゃなかったです。
 博士の研究所には、ぼく以外にヒトカゲは何匹かいましたし、ふしやまじゃなかった頃のふしやま以外にもフシギダネは何匹かいましたし、ピカさんじゃなかった頃のピカさん以外にもピカチュウは何匹かいましたし、アクエリアスじゃなかった頃のアクエリアス以外にもゼニガメは何匹かいました。
 でも、ぼくとふしやまとピカさんとアクエリアスは、ずっと一緒でした。それぞれの仲間より、四匹で一緒にいる方が楽しかったのです。四匹で探検隊を結成して、博士の研究所を探検して、こっそり外の街にも探検しに行って、博士の助手の人に何度も連れ戻されました。とても楽しかったです。
 あの頃の楽しかったことを思い出していると、どうにも、ぼくは昔からサラマンドラで、ふしやまは最初からふしやまで、ピカさんはずっとピカさんで、アクエリアスはいつもアクエリアスだったような気がします。
 だから、ぼくたち四匹は、ご主人様に名前を貰って初めて、命を始めたのだと思います。


 もう少し、思い出していきます。
 博士は、新人トレーナー用のポケモンのお世話をしていて、そういうポケモンは新しく旅をするトレーナーに貰われていきます。
 ぼくとふしやまとピカさんとアクエリアスも、そうでした。
 僕ら四匹も新人トレーナーのために育てられてました。
 ほんとはぼくらと違う、ハリマロンとかフォッコとかケロマツの三匹が手渡されることが多いです。なぜかというと、ハリマロンとフォッコとケロマツというのはこのカロス地方だけで生息する、いわばカロスの文化を代表するポケモンとされているからです。なので、カロスのトレーナーを育てるために、このカロスに愛着を持ってもらえるようにと、新人トレーナーにはカロスのポケモンを渡すんです。
 で、ヒトカゲとフシギダネとピカチュウとゼニガメは、カロスのポケモンではないみたいです。
 なのになぜ博士がぼくらを育てていたかというと、やっぱり新人トレーナーのためです。新人トレーナーが最初に渡されたポケモンだけでは、どうしてもポケモンのタイプが偏ってしまって、バトルで不利になるのです。なので、補助的に、もう一匹別のポケモンを与えることがあるみたいです。
 博士の研究所にいた頃は、ポケモンのタイプとか相性とか全くわからなかったので、ぼくらがなぜここにいるのか、これからどうなるかなんて全く考えてなかったです。
 ただ、ある日博士がにこにこ笑って、ぼくとふしやまとピカさんとアクエリアスを集めて、ぼくら四匹のご主人様が決まったと言ってきたので、そうかと思っただけです。
 これからは、自由に探検できます。
 でも、ふしやまやピカさんやアクエリアスと離れ離れになるのはさみしいなあと思って、ちょっと泣きました。
 ふしやまはよく分かんなかったですけど、ピカさんは「変なトレーナーに貰われてくぐれぇならミクダリハン突きつけて出てってやるわ」とか息巻いてましたし、アクエリアスは毎日癇癪を起こして泣き喚いて、とてもたいへんでした。


 で、ぼくら四匹が引き合わされたのは、そっくりな四人の人間の子供でした。
 みんな腰まで黒髪を伸ばしていて、曇り空みたいな灰色の瞳で、そして裾とか袖のたっぷりした変わった服を着ていました。お香みたいな、甘い不思議なにおいも漂ってきました。
 赤い着物の人、緑の着物の人、黄の着物の人、青の着物の人。
 四人は仲良さそうに手を繋いでましたけど、なんだか不機嫌そうに俯いてました。でも、ぼくとふしやまさんとピカさんとアクエリアスを見たとたん、四人はぱあっと顔を輝かせて飛びかかってきました。
 びっくりしました。
 赤い着物のレイアは、迷うことなくぼくを拾い上げました。
 ふしやまは緑の着物の、キョウキという人におとなしく抱き上げられました。
 ピカさんは、黄の着物のセッカという人に思いきり頬ずりされて、ぽかんとしてました。
 アクエリアスは、青の着物のサクヤという人に拾い上げられ、ただただその人と見つめ合ってました。


 そのそっくりな四人は、きょうだいなのです。一つのタマゴから孵ったきょうだいなんだそうです。だからそっくりなんですって。
 そういうわけなので、別々に貰われていったぼくとふしやまとピカさんとアクエリアスも、これっきり会えないのではなくて、ときどき会えるみたいだということが分かりました。
 なのでちょっとさみしかったですけど、ぼくは赤い着物のレイアと一緒に旅を始めました。
 ぼくが小さくて足が遅いので、レイアはぼくを脇に抱えて歩きます。寒いときはぼくを抱きしめてくれます。寝るときも一緒です。ぼくの尻尾の炎で木の実やパンを炙って一緒に食べることもあります。ぼくとレイアはいつも一緒です。
 レイアは色々なことを教えてくれました。色々なポケモン、そのタイプ、相性、技のタイプ。他にもきのみなんかの道具の使い方も教えてくれました。レイアはとても物知りで賢いです。レイアの言う通りに戦えば、大体バトルで勝てました。
 レイアはモンスターボールで仲間を増やして、何だかんだで今はぼく以外に、ヘルガーのインフェルノ、ガメノデスのなのです、マグマッグのマグカップ、そして新入りさんのエーフィの真珠と、ニンフィアの珊瑚。全員で六匹体勢でレイアを守ってます。
 ぼくはレイアの手持ちのリーダーです。
 何しろ一番レイアのことを知ってますし、バトルもたくさんやってますし、何より強いです。ぼくはインフェルノにも、なのですにも、マグカップにも、真珠にも、珊瑚にも負けたことはありません。
 ヘルガーのインフェルノはおとなしい性格で、なかなか物わかりのいい奴です。
 ガメノデスのなのですは頑張り屋さんの女の子で、レイアのためにものすごく頑張るいい奴です。
 マグマッグのマグカップは呑気で、何を考えてるかよくわからない食えない奴です。
 エーフィの真珠は割と冷静で、でもまだまだ甘いです。
 ニンフィアの珊瑚は無邪気な子で、でも双子の兄と同じでまだまだ甘ったれです。



 ぼくたちは今、キナンシティに来ています。
 ふしやま、ピカさん、アクエリアスも一緒です。それぞれの相棒も一緒です。
 みんなで広いお家に住んで、真珠や珊瑚や瑠璃や琥珀や瑪瑙や翡翠や螺鈿や玻璃を毎日鍛えています。
 そしてレイアは、バトルハウスに挑戦しました。
 前はマルチバトルをキョウキと組んでやっていたのですが、今はローテーションバトルにお熱みたいです。
 ローテーションバトルでは、三体のポケモンをバトルの場に出し、あと一体を控えにできます。四対四のバトルなんです。
 前衛として技を繰り出せるのは一体だけ、場に出ている残りの二体は後衛なので行動はできません。シングルバトルとあまり変わりないですね。
 シングルとの違いは、実際に戦う前衛のポケモンの交代に手間がかからないことと、どのポケモンが前衛に出るかの読み合いが高度になることです。


 ぼくはレイアに抱えられたまま、ニンフィアの珊瑚の戦いぶりを見ています。
 ムーンフォースが決まりました。相手のサザンドラが倒れます。
 なかなかいい戦いでした。ここ数日で随分と力をつけたようですね。ぼくもうかうかしていられません。
 ぼくはマネージャーみたいに、ずっとレイアに寄り添っていました。
 ここのところ、レイアは様子が変です。レイアだけじゃない。そっくりさんのキョウキも、セッカも、サクヤも、どこか余裕がないみたいなんです。
 今日の夜明け前も、そのことでふしやまとピカさんとアクエリアスと相談をしていました。
「ねえ。なんだか最近のご主人様たち、切羽詰まってる感じしない?」
 ぼくがそう尋ねると、ふしやまが穏やかに答えてくれます。
「確かに。おそらく、ピカさんとセッカさん、そしてアクエリアスとサクヤさんが見たモノが影響しているのでしょうが」
 ピカさんが息巻いています。
「ほんと胡散臭えぜ、あの背高のっぽ……。ポケモンに人殺し命じるなんざ、正気の沙汰じゃあないってもんだ」
 アクエリアスは呑気に首を傾げてます。
「なんであんなことするんだろうなー? あの真っ赤な人たちはさ」
 ふしやまがそのアクエリアスの疑問にも答えます。
「フレア団、ですね。セッカさんが話していたでしょう、あの背高のっぽのエイジ氏は敵です。わたくしたちはそれぞれの相棒を、エイジ氏をはじめとしたフレア団から守らねばなりません」
「敵が家の中にいるの? それでご主人たちは困ってるの? なんで追い出せないの?」
「ふん、当たり前だぜサラマンドラ。そりゃ、あの髭面のおっさんが邪魔だからよ」
「じゃあなんで、サクヤ達はこっから出てかないんだ? なんでなんだ?」
「いいですか、アクエリアス。今のわたくしたちに必要なのは、逃げることでも、敵を消すことでもない。強くなることです。それだけを考えて、バトルハウスで戦っていればよろしい」
 ふしやまはあっさりそう言い切ってしまった。
 ピカさんも腕を組んで唸っている。
「確かにおれらにできんのは、戦ってセッカたちを守ることぐれえよ。おれらには役目ってモンがある。パーティーをまとめ、いつ敵と戦う羽目になっても六体一丸となって全力で主を守る。それが相棒ってもんだろが」
「ピカさん、変わったね」
「ほんとほんと! ご主人たちに会う前はあんなにトレーナーのこと嫌ってたのにさ!」
 ピカさんの成長に、ぼくやアクエリアスが笑います。
 ピカさんは怒り出してしまいました。
「うるさい! おれは自分の運命を受け入れる覚悟があるだけだわ!」
「そうですね。我らの主と命運を共にする覚悟、それが無くば今回の敵は退けられません。サラマンドラ、アクエリアスも、気を引き締めて。新入りさんたちの指導、しっかりとお願いします」
「うん。がんばるよ」
「やってるよ! サクヤを守れるよ!」
 そうして登り始めた朝日の中話し合っていますと、そのうちにぼくたちのご主人様たちが目を覚ますのです。


 ご主人様たちは、毎晩布団の中で何やら激しく言い争いをしています。
 ご主人様たちは四つ子で見た目はそっくりですけど、性格はバラバラで、意見が合わないことはしょっちゅうあります。
 なので、ご主人様たちの間の喧嘩そのものはぼくらも慣れっこなのですけれど、今回はちょっと問題ありです。
 いつもなら、二人が喧嘩をすれば残る二人がそれを仲裁し、三つ巴の喧嘩となれば残る一人がそれを収める――そういうふうに、ご主人様たちは互いの喧嘩を収めていました。
 けれど、今回は、四人の中で意見が真っ二つに分かれてしまっているのです。そうなると、人間のよく使う多数決も使えません。
 毎晩、布団の中に潜って、言い争いをしています。
 ぼくの相棒のレイアが怒鳴ります。
 ふしやまの相棒のキョウキが、何やら笑っています。
 ピカさんの相棒のセッカが、喚いたり冷たい声を出したりしています。
 アクエリアスの相棒のサクヤが、ぼそぼそと何かを呟いています。
 ぼくとふしやまとピカさんとアクエリアスは、ベッドの枕元で丸くなって、ご主人様たちの言い争いを聞いていました。難しい話で、ほとんど理解できません。ポケモン協会を信じる信じられないだの、そもそもフレア団は敵か否かだの、いわゆる水掛け論になっています。
 月明かりの中。
 ふしやまが微かに溜息をつきます。
「こうして主たちが不毛な論争を繰り広げていることこそが、主たちを消耗させている気がしてなりません」
「そうだね。これこそがあのエイジって人の作戦なのかもしれないよね?」
 僕が考えたことを行ってみますと、アクエリアスがうんうんと頷きました。
「うん、おいらもそう思ってたとこ!」
「嘘つけや」
 ピカさんが尻尾でアクエリアスの頭を軽くはたきました。アクエリアスはむくれて手足を甲羅に引っこめ、文句を言います。
「でもさぁ、ご主人たちがお互いのこと信じられなくなったら、それが一番怖いと思うんだぞ?」
「そりゃそうだろ。セッカの仲間はレイアとキョウキとサクヤだけだ。それだけでも追い詰められてんのに、これ以上孤立しちまったらお終いだ」
「群れからはじき出されたポケモンの生存率も低いことですしね」
 ぼくもついつい溜息をついてしまいました。
「ご主人たち、喧嘩してほしくないなあ」
 両親の喧嘩を見る子供は、こういう気持ちなのでしょうか。いやいや、ぼくたちはレイアたちの相棒なのです、支える仲間なのです。ご主人たちを信じなくてどうするのですか、ぼくたちは守られてばかりの子供じゃない。
 たとえご主人たちが喧嘩別れしてしまった時でも、それでも寄り添い続ける。それがぼくたちにできることです。
 ぼくとふしやまとピカさんとアクエリアスはそれを確かめ合って、目を閉じました。
 ご主人たちも言い争うのに疲れて、眠ってしまったようです。



 レイアは鬱憤を晴らすように、ローテーションバトルを繰り返します。
 勝ちます。ときには負けます。勝負を繰り返します。何度も。何度でも。
 ぼくたちは、ご主人たちを裏切りません。強さでもって、勝ちでもってご主人たちに応えます。
 フレア団なんぞ吹き飛ばしてやりましょう。
 フレア団の手の届かない高みへ、共に行きましょう。
 ご主人たちは人間ですから、色々なものが見えているかもしれません。
 でも、強さだけで物事を見ればいいんです。
 強くなればいいんですよ。
 ヘルガーのインフェルノが、ラフレシアを焼き払います。
 ガメノデスのなのですが、カバルドンを仕留めます。
 マグマッグのマグカップが、ヘラクロスに岩を落とします。
 エーフィの真珠が、ローブシンを倒します。
 ニンフィアの珊瑚が、ヤミラミを沈めます。
 そしてぼくが。ケンホロウを、ヤドランを、フワライドを、フライゴンを、プクリンを、エレキブルを倒しました。もっとたくさん倒しました。ぼくはパーティーのリーダーです。誰よりも強くなければ。


 レイアの手が伸びます。ぼくは迷わず飛びつき、すると姿勢をかがめていたレイアが背筋を伸ばし、ぼくを胸に抱えます。
 レイアの視線を追いました。
 バトルハウスの二階に、緑のドレスの女の人が姿を現しています。物凄い歓声です。
 レイアが呟きました。
 僕は応えました。

 その緑のドレスの人のバトルを、僕は知っていました。
 ピカさんとセッカ、アクエリアスとサクヤがマルチバトルで挑んだ相手です。でも、あの時は本気ではなかった。きっと今日は真面目に戦ってくるでしょう。
 ぼくは仲間のポケモンたちを叱咤しました。
「ここで負けるわけにはいかない。この人を倒すことがレイアの目的だから」
 モンスターボールの中の仲間たちがかたりと動きます。ぼくを無視したらぼくが制裁を下すから、ちゃんと返事をするのです。
 ぼくはインフェルノを、なのですを、マグカップを、真珠を、珊瑚を順に見つめました。
「無様な戦いしたら、許さないから」
 インフェルノはゆったりと座ったまま首をもたげ、小さく火の粉を吐きました。
 なのですは思い切り気合を入れています。
 マグカップはメラメラしています。
 真珠と珊瑚は相変わらずぼくにびくびくしてました。威圧してるつもりはないのですが、この二匹にはぼくに怯えないほどの自信を、いつかつけてほしいですね。


 敵は前衛にクレッフィ、後衛にマンタインとマルノーム。
 レイアは前衛にエーフィ、後衛にマグマッグとニンフィア。
 ぼくはレイアに抱えられたまま、客観的にバトルを見つめます。敵のクレッフィが金属音を放ち、こちらのエーフィが瞑想します。
 レイアはエーフィを後衛へ下げさせ、マグマッグに鬼火を撃たせました。その鬼火を受けたのは、敵のマンタインでした。マンタインは水のリングを纏い、火傷のダメージを吸収してしまいます。
 マグマッグが岩雪崩を撃ち、それを受けつつ敵のマンタインは熱湯を放ちます。
 度忘れしたレイアのマグマッグは熱湯を耐えきり、さらに岩雪崩。マンタインを苦しめます。
 その隙にレイアはマグマッグを温存して、ニンフィアを前衛へ。
 ニンフィアのムーンフォースで、敵のマンタインが倒れます。これで残りは四対三で、一歩リードです。

 敵の前衛にはクレッフィが出ます。後衛の空白はメブキジカが埋めました。
 敵のクレッフィのラスターカノンが、こちらのニンフィアを撃ち抜きました。
 たまらず目を回したニンフィアをレイアは労う間も惜しんでマグマッグを前衛へ、火炎放射。すかさず敵のクレッフィも倒します。これで残りは三対二、まあ順調な進行でしょう。
 レイアは四体目に、ガメノデスを出しました。エーフィと共に後衛に並び、前衛のマグマッグの脇を固めます。
 敵は前衛をマルノームに、後衛をメブキジカ。
 レイアはマルノームを仕留めるべくエーフィを前に出しましたが、敵のマルノームは後衛に下がってメブキジカが出てきてしまいました。
 敵のメブキジカのメガホーンを受け、たまらずエーフィは倒れます。残りは二対二。
 レイアはマグマッグを前衛に出しました。火炎放射でメブキジカの体力を削りましたが、敵のメブキジカの捨て身タックルで倒れてしまいました。これで一対二ですけれど、マグマッグの炎の体は、敵のメブキジカに火傷を残しました。いい働きです。

 レイアの最後の一体、ガメノデスが前に出ます。メブキジカを睨みます。
 敵が火傷の痛みに怯む隙を逃さず、ガメノデスの毒づきが、体力残り少なかったメブキジカを容易く沈めました。
 残るは互いに一体ずつ。
 最後に残った敵はマルノームのみ。
 マルノームの毒々を受けつつ、ガメノデスは爪とぎをします。そしてシェルブレードで斬りかかりました。
 敵のマルノームは身を守ります。絶対防御の術です。
 レイアのガメノデスは続けざまに斬りかかります。鋭いシェルブレードがマルノームに襲い掛かりますが、すべて耐え切られてしまう。
 マルノームが地震を撃ちました。
 ここが正念場です。地面タイプの技は、ガメノデスには効果は抜群です。耐えてください。でないと負けだ。
 ガメノデスは、揺れる大地を踏みしめました。そして跳びました。
 地面にへばりついている敵のマルノームに、振りかぶり、とどめを刺しました。


 ぼくはレイアを見つめます。
 どうですか、ぼくの仲間たちはここまで戦えるようになりました。
 だからレイアは何も心配しなくていいんです。
 でも、観客席の悲鳴や怒号の中で、レイアは無表情でした。
 レイアの考える事は分かります。こんな見世物に付き合わされたって仕方がないと考えているんでしょう。
 レイアの欲しいものはこんなものではなかったと、レイアも気づいたんです。
 ぼくはレイアの求める場所についていきます。


 ぼくの仲間たちがすっかり回復すると、レイアはぼくを抱えて歩き出しました。今日のローテーションバトルは終わりみたいです。
 そしてどこに行くのかと思うと、そこはトリプルバトルの会場でした。
 レイアと僕がその広間に入った途端、そこは急にわあっと盛り上がりました。
 何かと思って背伸びして覗き込んでみると、大階段の踊り場に、緑の被衣のキョウキとふしやまが現れたところでした。


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