マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.1522] 真相を求めて 投稿者:じゅぺっと   投稿日:2016/02/25(Thu) 19:44:18   21clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

フエンタウンジムリーダーに完敗し、目の前が真っ暗になったサファイアが目を覚ますとそこはフエンのポケモ
ンセンターだった。

「ここは・・・ルビーが運んでくれたのか?」

 すぐそばに座っていたルビーにそう聞くと、ルビーは目が覚めたんだね、と言ったあど首を降った。
 
「まさか。君はボクがここまで運んでくるには重いよ。ポケモンも力尽きてしまったしね」
「じゃあ・・・」
「彼だよ」
 
 ルビーが向こうを手のひらで示す。サファイアが目線を向けると、そこには自分達を完膚なきまでに負かし
たジムリーダーが壁際にもたれて腕を組んでいた。憮然とした態度で言う。
 
「バトルに負けて気を失うとはな」
「・・・」
「ネブラは貴様を随分と評価していた。だから少しは楽しませるやつかと期待したが・・・拍子抜けだ」

 いつもなら食ってかかったかもしれない。だが今はそんな元気も気力もなかった。

「通常のジム戦に勝つ程度の実力は見受けられた。ジムバッジはそこの女に渡してある。ーーさっさと次の町
へいけ」

 それを言うためにサファイアが目を覚ますのを待っていたのだろう。用件を言い終えると、出口へと歩いて
いくジムリーダー。
 
「・・・待ってくれ」
「なんだ」
 
 呼び止めると、彼は止まってくれた。
 
「あんた、ただのジムリーダーじゃないよな。イグニス・ヴァンダー。ホウエンリーグ四天王。シリアに最も
近い男・・・そうだろ?」
「それがどうした。ただのジムリーダー相手なら負けなかったとでも言いたいか?」
「違う」
 
 サファイアは思い出していた。旅に出る前に見たテレビの映像。シリアと戦っていたのは、正に目の前の彼
だった。
 
「あんたの本気、凄かった。手も足も出なかった。だから聞きたいんだ。あんたはシリアと戦ったとき・・・
本気でやってたか?」
「・・・」
 
 今度はジムリーダー・イグニスが黙る番だった。静寂が通りすぎたあと、彼は語る。
 
「そこに勘づいたか。だがお前には、真実は受け止めきれんだろう」
「聞いてみなきゃ、なにもわからない。俺はシリアのこと・・・そして隣にいる彼女のこと、もっと知りたい
んだ」
「サファイア君・・・」
 
 ルビーが僅かに顔を赤くし、目をそらす。それはまだ打ち明けていないことがあるゆえか。
 
「敗者に語るつもりはない、俺は行く。・・・また来るのなら、何度でも本気でやってやる」
 
 今度こそ、イグニスは出ていった。残されるサファイアとルビー。

「ルビー、ごめん」
「急にどうしたんだい?」
「俺・・・きっと油断してた。あの博士を倒して、ジムリーダーに認められて・・・いい気になってた」

 だからイグニスの正体に気づくのにも時間がかかった。バトルでも一方的にやられた。それが悔しくて、一
緒に戦ってくれた彼女にも、ポケモンにも申し訳なかった。
 
 そんなサファイアを、ルビーは後ろから覆い被さるように抱きしめる。サファイアからは見えないが、いと
おしそうな表情をして。
 
「ボクには特別そうは見えなかったよ。だけど、自分でそう思えるなら、きっと君はもっと強くなれるさ」
「ありがとう、ルビー」
 
 自分を励ましてくれる彼女に礼を言い。サファイアは決意する。
 
「俺、イグニスに勝ちたい。そしてシリアの・・・真実をあいつに聞きたい。
 
 だから強くなりたい。そのために、付き合ってくれるか?」
 
 新たな目標を掲げる。後ろにいるルビーは、クスリと笑った。肩を竦めて、さも面倒くさそうに言ってみせ

 
「やれやれ、仕方ないなあ。ボクも兄上が何を隠してるのかは気になるしね」
「・・・本当にありがとう」
 
 サファイアは立ち上がる。そうと決まれば、こんなところでじっとしていられない。さっそくバトルしよう
ぜ、と言い二人はでこぼこ山道に戻るのだった。
 
「準備はいいか?」
「いつでもいいよ」
「ルビーと普通に勝負するのはそういえば初めてだな・・・いくぞ、ジュペッタ!」
「あのときは迷惑をかけたね。でも今度も手加減しないよ?いくよ、サマヨール」
 
 まずは先の戦いを踏まえた上で自分達のバトルを見つめ直す意味でバトルすることにした。
 サファイアはさっそくジュペッタをメガシンカさせ、指示をだす。

「現れ出でよ、全てを引き裂く戦慄のヒトガタ――メガジュペッタ!!よし、まずはあのファイアローの速度
に負けないイメージでシャドークローだ!」
「サマヨール、全力を込めて守る」
 
 サファイアはスピードを、ルビーは防御力を求めて技を命じる。ジュペッタは出来るだけの速度で漆黒の爪
を振るうが、あの速度には到底追い付けず、サマヨールの守るに弾かれた。

「いきなりはうまくいかないか・・・」
「メガシンカしたジュペッタの特性は変化技の速度をあげるものであって普通の攻撃技には影響しないしね。
その辺も考えてみたらいいんじゃないかな」
「わかった、だったら・・・ジュペッタ、怨み!」
「ーーーー」

 ジュペッタが攻撃を防がれた事への怨みをサマヨールに籠める。相手の技を出せる回数を減らすだけの技で
普段はあまり使われないが、変化技であることもあり即座に出せる。

「そこから影打ち!」

 元から先制を取れる変化技にさらに先制技である影打ちを重ねることで更なる速度で影を飛ばす――その目
論見は、どうやら成功したようだった。ルビーが反応する前に影がサマヨールにあたり、ダメージを与える。

「よしっ!」
「やるね。これならあのファイアローの速さにも太刀打ちできるんじゃないのかい?」
「うん、だけどこれだけじゃまだ足りない。やっぱりもっと基本からやり直さないと……いくぞジュペッタ、
虚栄巨影!」 

 ジュペッタの体が、爪がナイトヘッドによって巨大化し、シャドークローが敵を引き裂く漆黒の刃と化す。
サファイアとジュペッタの最大の攻撃に対しルビーはやはり守る、と呟いた。サマヨールの緑の防御壁が、漆黒
の刃を防ぎきる。
 
「さすがに硬いな」
「まあ、それが取り柄だからね。でも彼の攻撃は防げなかった……さあ、もっと攻めてきていいよ」
「わかった。なら二体同時にいくぞ。出てこいオーロット、ウッドハンマー!ジュペッタ、虚栄巨影!」
「サマヨール、守る!」
 
 二体での攻撃を、サマヨールが再び防ぐ――その時、緑の防御壁にわずかに黒色が混じったのをルビーは見
逃さなかった。
 
「サマヨール、もう一度やってみて」
「〜〜」
 
 もう一度守るを使うと、今度もやはりわずかな黒色が混じった……これが何を意味するのか、まだ正確には
わからなかったが。

(あの敗北は、確かにボク達の経験値になっている)

 それだけは確信できた。サファイアも恐らくそれには気づいているだろう。
 二人はそれからしばらくお互いの技を確認しつつ、サファイアは相手を翻弄する速さを。ルビーはどんな攻
撃にも耐えきる守りを高めるべく修行を続けた。相手の熱量に耐えるために、温泉のサウナで熱さに耐えながら
バトルのイメージトレーニングなんかもしたりして、たまにのぼせることもあったが。修行は順調に進んでいっ
た。

「よし……今日も一日頑張ろう、みんな!」
「ふふ、すっかり熱くなっちゃってるね」

 そんな二人を、イグニスは影から見つめて――かつての自分とネブラを思い出し、ふっと微笑むのだった。

 
 

 修行を始めてから約一か月後――二人は、再びフエンジムを訪れた。そこにはイグニスと……キンセツシテ
ィジムリーダー、ネブラがいた。二人は何かを話していたようだったが、サファイアたちの姿を認めるとこちら
を見る。
 
「……来たか」
「ふはははは!随分こっぴどくやられたと聞いたが……よもや二の舞を演じることはあるまいな!」
 
 片方は寡黙に、片方は大仰に二人を迎える。サファイアとルビーはイグニスを見据えて言った。
 
「……ああ、今度は負けない。俺たちは本気のあんたに勝ちに来た」
「いいだろう。ルールはこの前と同じでいいな」
「ふ……せっかくこの俺様がいるというのにそれではつまらんな」
 
 イグニスとサファイアが二人で会話を進めてしまうので、ネブラは――それでは面白くないと言わんばかり
に待ったをかける。
 
「この前は二対一――イグニスが不利な条件でバトルをしたと聞いた。今日は俺様がイグニスに加わり、互角
の条件で相手をしよう。勿論、俺様も一切加減はせん」
「……!」
 
 サファイアとルビーは息を飲む。イグニスだけでも一か月前は圧倒的な力を見せつけられたというのに、そ
こに本気のジムリーダーが加わるというのだ。
 慄くサファイアに、ネブラはこう挑発する。
 
「ふ……俺様を恐れるか?それとも貴様たちの修行は自分たちが有利な条件でないと戦えん程度の物か」
「……そんなことない。いいさ、やってやる!」
 
 ためらいがないといえば嘘になる。それでも、自分たちの修行の成果を、仲間たちを信じてサファイアは勝
負を挑む。
 
「やれやれ。それでいいのかい、フエンタウンジムリーダー?」
「俺たちがまた圧勝する結果しか見えんが……ネブラの思い付きはいつものことだ。貴様らがいいならそれで
構わん」
「なら決まりだね」

 ルビー、そしてイグニスが承諾する。バトルを始める前に、サファイアは一つ提案した。

「俺たちが勝ったら……その時はあんたたちが知ってるシリアのことを教えてくれるか?」
「いいだろう。いくぞネブラ」
「はははは!貴様とのタッグバトル・・・・・・そして相手は我が町を救った英雄どもか。胸が躍るな!」

 ネブラとイグニスは、それぞれ普通のモンスターボールではなく紫色のボールを取り出した。サファイアた
ちは知らないが、マスターボールと呼ばれる道具。出てくるのは――


「烈火纏いし怪鳥よ。その羽搏きは大陸に伝わり、その炎は月まで届く不死の煙となる。現れろ、ファイヤー!

「雷光満つる怪鳥よ。その羽搏きは大陸に伝わり、その雷は大地をも焼き尽くす閃光となる。現れろ、サンダ
ー!」

  
 カントー地方における伝説とも呼べるポケモン。ファイヤーとサンダー。その二体の威容はまさに不死鳥と
雷の具現だった。
 
「ふはははは!さあこの二体を相手にどう挑む小童ども!貴様らの力、見せてみよ!」
「……」
 
 サンダーが鳴き声は雷鳴のごとく轟き、ファイアーは無言で火の粉を散らす。前にも増して凄まじい相手を
前に、もうサファイア達は怯まない。
 
「……楽しいな」
「ほう?」
 
 サファイアの呟きに、ネブラが興味を示す。
 
「俺たちの修行の成果を見せるのが、あんたたちみたいな凄いトレーナーと戦えるのが……楽しくてワクワク
してしょうがないよ!いくぞ、メガヤミラミ!その大楯で、俺の大事な人を守れ!」
「それじゃあボクも……いくよ、サマヨール」
 
 サファイアとルビーがポケモンを繰り出す。さあ――楽しいバトルの始まりだ。
 


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