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  [No.173] 幻影狂想曲 投稿者:紀成   投稿日:2011/01/14(Fri) 18:50:33   62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

こんにちは,いつも短編掲示板の方で活動しております,紀成と申します。
以前チャットにて,『NO,017さんのキャラクターのツキミヤさんと,我が家のファントムガールのカオリをコラボさせてください!』とお願いしたところ,許可をいただきました。
ありがとうございます。
ですが,書いていくうちにどんどん長くなってしまい,とても短編掲示板の方では(色んな意味で)打てないと思ったので,こちらにアップさせていただくことにします。
どうぞ,よろしくお願いします。


  [No.174] プロローグ 投稿者:紀成   投稿日:2011/01/14(Fri) 19:11:07   56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

窓の向こうの景色が,ひたすら右に流れていく。既に山や街路樹は青々とした葉を茂らせている物が多く,花がまだ付いているものは少なかった。
カオリは通路を挟んで騒ぐクラスメイト達の声を嫌だとは思っていなかった。人それぞれだと思っていた・・というより,諦めていたと言った方がいいだろうか。
「あんまり騒がないでよ」
目の前でカゲボウズ達がキャンディの袋に顔を突っ込んでいた。ガサガサという音は,車内の騒音に掻き消されて聞こえることはない。なので,袋が勝手に動いていることに気付く者はいない。
・・だが。

「ミスミ,さっきから何見てるんだい」
カオリの席から四つ斜め後ろに,ミスミとミコトが座っていた。車内だというのに,ミスミはノートパソコンを起動させている。
「カミヤ・カオリ。私達のクラスメイト。誰とも群れることなく,常に一匹狼。時折影の形が縦に増えていたりと,とにかく謎の多い人間・・と」
「ちょっと」
ミコトがノートパソコンを取り上げた。
「話を聞かないなら,これ壊すよ」
「ミコト」
いつになく真剣な表情だったので,ミコトはパソコンを戻した。
「何だよ」
「ミコトは気付いてないの?この前,カミヤさんと話した時のこと」
「カミヤ?」
駄目だ。全く気にしてない。
「ああ,彼女のことか。うん。ちょっと面白そうだとは思ってるよ。
・・で,どうしたの」
ミスミは一呼吸置いて言った。
「私,今回の旅行で彼女とグループを組む。隠してる何かを探し出すのよ」
カオリは外をつまらなそうに見ている。時折手元にある本を広げるが,特に変わったことはない。
ただ,彼女の上で何かの影がふわふわ浮いていた。


時は,高校一年生の春・・の終わり。生徒の親交を深めるために二泊三日の合宿を計画し,それに向かうところだった。
中等部から来た子も多く,既に仲良しのグループは出来上がっていたため,意味があるのかは不明だったが,とにかく私・・ミスミは楽しんでいた。
・・この時は,まだ。

電車から降り,バスに乗り換えても彼女はまだ一人だった。私は横の席に座る。
「カミヤさん,一緒のグループにならない?」
「いいよ」
あまりにもアッサリ言われたので,私はひっくり返りそうになった。
「え,いいの?」
「別に」
それだけ言うと,カミヤさんは窓の外の景色に視線を移してしまった。
こうして横顔を見ると,なかなかの美人だと思う。男子が憧れのまなざしで見ていることはあるが(女子が恨みのこもった目で見ていることはよくある)それでも,表情一つ変えない。
街の中心部まで来た時,クラスメイトの一人が何かに気付いて声をあげた。
「あれ」
山側の景色を指差している小高い丘の頂上に,城があった。
「あれ,なんですか」
「お城のことですか?あれは,雷雲城。その昔,この土地が戦によって平民が敵軍の兵に焼き殺されそうになった時,空から沢山の雷が落ち,人々を救ってくれたそうです。その出来事を祭ったのが,この城だと言われています」
ガイドさんが詳しく説明してくれる。
(今度の小説のネタに使えるかも)
「・・・」
カオリは,その城をジッと見つめていた。


  [No.175] 幻影狂想曲 キャラクター 投稿者:紀成   投稿日:2011/01/14(Fri) 20:35:46   54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

カミヤ カオリ(火宮 香織)

高校一年生だが,同年代の子とは全く趣味が合わず,いつも一人でいることが多い。銀がかかった白の髪を持ち,ゴーストタイプを手なずけている。
彼女に危害を加えようとした者は,皆病院送りになるという噂がある。
どんな場所でも一人で生きていくだけの精神力と知識,体力を備えている。両親と引き離されて育ったため,人を信じることに慣れていなく,思ったことはずけずけという性格である。


カゲネコ ミスミ(影猫 弥恭)

カオリと同じクラスの少女。小説家で,作中に出てくる名前はペンネームらしい。ミスミという名前は本名。
天真爛漫で,怖いもの知らず。幼馴染で親友のミコトを小説に出したり,その小説をバッドエンドにしてしまったり,悪く言えば自分勝手で我侭である。
カオリの秘密を探ろうと近づいたりするが,あまり相手にされない。


スナガミ ミコト(砂神 命)

ミスミの親友兼暴走ストッパー。サバサバした性格で,鰐が大好き。
持っているポケモン三匹の中の二匹は鰐である。
退屈を嫌い,休日になると三匹と一緒に遠くの山や海へ遊びに行き,危険なことに巻き込まれているが,本人は全く気にしていない。
凄まじい怪力の持ち主。


おそらく,説明することはこれくらいでしょう。
では,一章目に入ります。
are you ready?


  [No.176] 第一章 投稿者:紀成   投稿日:2011/01/14(Fri) 20:58:43   63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

宿舎に入り,諸注意の後に荷物を置きに行く。元々小学校だったらしく,教室の一つ一つに二段ベッドが六つ置いてあった。というわけで,誰が上か下かのジャンケン。
ただ,カミヤさんは,

「どうでもいい」

と言って,やらなかった。
結果,私が下,ミコトが上になった。ちなみにカミヤさんは一番端の下だけど,上に寝るはずの子が他の部屋の友達と並んで寝ると言ったらしい。つまり,カミヤさんは一人になる。
荷物を置いたら,早速ガイドを広げる。
「ほとんどは単独行動でいいらしいよ。うちの学校も太っ腹だよね」
「じゃ,お城の方行ってみない?あ,海にも近いんだ。
ねえ,カミヤさんも一緒に」
言いかけた私の言葉がとまった。既に姿はない。
「カミヤさん,もういなくなってる・・」
「ミスミ,まさか彼女も連れて行くつもりだったのかい?大体,僕達を待ってるわけないじゃないか」
「えー」
カミヤさん,何処行ったんだろう?


カオリの足元で,白波がくだけ,サーッと引いていく。遥か彼方に見える群青色の水面は光を受けて輝いている。
「強制参加だったけど,悪くないね」
『いいのか,あの城に行かなくて』
「あともう一日あるから,今日はこっち」
カオリの髪を,海風が撫でていく。灰色のような銀が空に映える。
『カオリーあめくれー』
「はい」
カゲボウズ達にねだられ,ウエストポーチから棒つきキャンディの袋を出し,一本取り出す。口に押し込めばそのまま向こうへ飛んでいく。
『平和だな』
「平和すぎるのも考え物だけどね」
その時,右目の横で黒い何かが飛んでくるのが見えた。ツノの生えたてるてるぼうず・・カゲボウズ。それは百も承知だ。
でも。
「このカゲボウズ,私と一緒にいる子じゃない」
ケケケとその子は笑った。こちらが驚いていることが面白くて仕方ないようだ。
「トレーナーは?野生じゃないよね」
『!』
一緒にいたデスカーンが私の前に出た。私も感じていた。近づいてくる人間の気配を。
そして,その周りに蠢く,カゲボウズの真っ黒な群れを。
「・・」
「こんにちは」
その人間は,男だった。年齢は二十歳前後。落ち着いた色合いの金髪,色白。世間で言うところの『美形』に分類されるような容姿だった。
「・・こんにちは」
警戒しながらも,カオリは何故かこの青年から目を離せないでいた。美形だからではない。彼の持つ独特の気配に,魅せられていたのだ。
「・・カゲボウズだらけ,ですね」
「!」
青年は少し驚いた後,カオリに笑顔を見せた。
「君のポケモン達,君のことが大好きみたいだ。警戒してるよ」
「デスカーン,皆,抑えて」
カオリが言うと,しぶしぶゴーストポケモン達は下がった。だがその目の鋭さは落ちていない。
「あの,貴方は」
「ちょっと不思議な雰囲気を感じたものだから」
「貴方も・・ちょっと変わってますね」

冷たい海風が,背たけの違う二人の間を駆け抜けていく。

「名前」
「?」
「貴方の名前は?私は,カミヤ・カオリ」
「カミヤさんか・・。ちょっと似てるね」
「え」

「僕はツキミヤ。ツキミヤ・コウスケ」
そう言って,青年・・ツキミヤは笑った。


  [No.177] キタコレ 投稿者:No.017   投稿日:2011/01/15(Sat) 12:24:10   59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

ぐふおおおおおおおおおおお……!
ほ、ほかの人の文章にツッキー出てくると異様にはずかしいんだぜ……!
(嬉しいやら恥ずかしいやらで悶絶)
ちなみに彼は影の中にカゲボウズを収納?してるので、普段はあんまりぞろぞろではないです。
でもゴーストの気配に釣られて出てきちゃったのかもしれないのでそれでも無問題w


  [No.181] 第二章 投稿者:紀成   投稿日:2011/02/02(Wed) 20:11:04   54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「ミコト,ちょっと」
「何」
一通り民芸品の店を冷やかして回った後,ミスミとミコトは旅館街やみやげ物の店を抜けて浜辺の方へ来ていた。買うのは最終日でいいだろうということで,まずはどんな物があるかを見学・・ウインドー・ショッピングをしていた。
「へー。銘菓,雷獣焼きだって。おいしそー」
「少し離れた場所にガラス工房があるんだってさ。ミドリちゃんが聞いたら羨ましがるだろうなー」
「ミコトもちょっとは女の子らしい小物を身に付けなさいよ,この香袋とか」
それを目の前に突き出そうとするミスミの手を,ミコトはパシッと払いのけた。
「あのさ,こうも観光ばっかでいいのかい?少しはこの地の文化財を見てみるのもいいと思うけど」
「えー」
「さっきガイドさんが言ってたじゃないか。お城。そこに行ってみるのもいいんじゃないかな」
「本当まじめよね,ミコトって」
そんな無駄口を叩きながら浜の方へ歩いて来て,ミスミが人影を見つけて・・
今に至る。
「あの左にいる子,カミヤさんじゃない」
その言葉にミコトは目を凝らした。砂浜に立つ二つの影。片方は確かに彼女だ。
だが,もう片方は・・。
「どれどれ」
ミスミがウエストポーチから双眼鏡を出して,覗き込んだ(ちょっと,何でそんな物持ってるの)
「おー,結構かっこいいじゃない」
「カミヤさんと話すって,相当の変わり者だと思うんだけど」
「ちょ,あの人だれ!?」
「・・聞いてる?」


「僕はこの街に少し用があってね。近くのポケモンセンターに泊まってるんだ」
「私は・・合宿で」
「学生さんか。一緒に回る人はいないのかい?」
少し躊躇った後,カオリはこくりと頷いた。
「でもその警戒心の強いポケモン達がいるから大丈夫だね」
「・・うん」
カオリは何故か緊張していた。初対面の人間と話す時にしどろもどろになるほど,小心者ではない。なのに,今は体がガチガチになっていた。
(風邪でも引いたかな)
「それにしても,カゲボウズ達が見えるとはね。君のポケモンの気配に誘われて出てきたとはいえ・・」
ツキミヤの周りにカゲボウズ達が浮いていた。カオリに懐いているカゲボウズ達とはやはり少し違う。
「僕の知り合いにもいるんだ。君みたいな人」
「へえ・・」
「ホウエンの送り火山に行ったきり戻ってこないけどね」

それから二人は,海を見ながら話をしていた。いつもならば初対面の人間には全く口を開かないはずのカオリが,その時だけはちょっとおしゃべりになっていた。
見ていたミスミもポカンと口をあけていた。ミコトが見るに見かねて口を閉じようとしたが,それでもすぐに開いてしまうのだ。

「ああ,もうこんな時間か。ごめんね,引き止めちゃって」
カオリの付けている腕時計が午後三時半を指していた。
「ううん,すごく楽しかった。・・あのさ,また来てもいいかな」
カオリの言葉に,後ろに控えていたデスカーン達は凍りついた。カチーンという音が聞こえそうなぐらいに。
「いいよ。じゃ,明日はあそこで待ち合わせしようか」
ツキミヤが指した場所は―

『・・』
一方,こちらはやぶれたせかい。一匹のヨノワールが,透明な玉を覗き込んでいる。いや,透明というわけではない。中に人間が映っている。
先ほどツキミヤと話していた少女,カオリだ。
『カオリ・・』
ヨノワールは胸を押さえた。それには,カオリに対する気持ちだけでなく,別の何かも混ざっているような気がしてならなかった。
違和感というのか,それとも・・
『同じような力を持つ者同士が出会った』
胸騒ぎか。
『話してみるか・・』

ミスミは,戻ってからずっとカオリを観察していた。いつになく話しかけても上の空な感じだったが,それには今までとは違う別の何かがある気がした。
「カミヤさん,ちょっと?」
ゆすってみても反応が無い。心ここにあらずということだ。多分。
「ねえってば」
しびれを切らしたミスミは,側にあったうちわでカオリの頭をペシペシ叩き始めた。
「カミヤさんってば」
そして叩き始めてから二百十九数えた後・・
「痛い」
やっと反応した。叩かれた所が微妙に赤くなっている。
「何」
「え,えって・・。カミヤさん,さっき男の人と話してたよね。あの人って誰?」
「関係ない」
バッサリ切り捨てると,ベッドから降りて部屋を出て行ってしまった。
「彼女のプライベートに干渉すること自体が間違いだったんじゃないの」
ミコトの冷たい子tに貫かれそうになっても,ミスミはめげない。
「面白そうなら,私は何でもするわよ!」
「・・野次馬根性」
夕日で温まっている部屋が,南極のブリザードが吹き荒れる場所のようになった気がした。

『カオリは気にならないのか』
「何が」
『あの男のことだ。カゲボウズを引き連れている人間なんて,俺は見たことが無い』
「うるさいなあ。棺おけは黙っててよ。それに向こうも同じようなこと思ってるよ」
小高い丘の上にある宿舎。さっきの浜に行くには,二十分くらい必要となる。
「ま,違和感は少しあるけど。ただ,それ以上に」
『・・それ以上に?』
嫌な予感がした。純粋無垢故質の悪い,とは正にこのことか。
「分からないけど・・。別の何かにその違和感が全て押しつぶされてる」
そういうカオリの表情は,今まで見たこともないような物だった。ミスミが側にいたら,こう言っただろう。

『それはアレよ,アレ!恋ってヤツよ!』


  [No.182] Re: 第二章 投稿者:No.017   投稿日:2011/02/03(Thu) 00:16:36   58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

やつのプレイボーイっぷりに目が離せない。
顔の毛穴から火を吹き出しそう。
しかしこのパターンはいやな予感しかしないwwww
(私の脳内ではご褒美ですが)


文法的なこと
どうしてでもこれでなくてはならないという理由が無いならば
「・・」「,」はいわゆる主流のルールに従ったほうが閲覧者には読みやすいかも。
「・・」→「……」
「,」→「、」
に直すことが望ましいかと思います。

参照
http://www.asahi-net.or.jp/~mi9t-mttn/cstory/write11.html


ちなみに雷獣焼きで吹き出したのは私だけではないと信じている。


  [No.183] 第三章 投稿者:紀成   投稿日:2011/02/05(Sat) 15:56:16   65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

夕食を摂った後、宿にある風呂に入る。ミスミはカオリを誘ったが、部屋のシャワーで済ませるとあっさり断られてしまった。
「本当人付き合い悪いねえ」
「カミヤさんの家、何処にあるか知ってる?」
「さあ」
そんなクラスメイト達の会話を尻目に、ミスミ達二人は湯船につかっていた。温泉らしく、神経痛、筋肉痛、リューマチなどに効果があるという。まあ、まだそんな物には縁が無い二人だが温泉自体は気持ちが良かった。
「あー生き返るー」
「まだそれほど歩いてないんだけど」
「文を書く仕事をしていると、どうしても家にこもりがちになるのよ。運動してないから冷え性も酷いし」
中学時代からの付き合いのため、ミコトはミスミが運動嫌いなのは知っていた。五十メートルは九秒、水泳はクロールで二十五メートルがやっと。一番酷いのはマラソンで、毎回限りなくビリに近い順位に入っていた。
「私思うんだけどね、カミヤさん絶対バトル強いと思うの」
「いきなりだね。どうして?」
「んー…勘かな」
「…」


氷かと思うくらい冷たい水が体に叩きつけられる。ちっともお湯にならないので、そのまま水を頭からバシャリとかぶった。髪からポタポタと雫が流れ落ちる。
ミスミの誘いを断ったのには理由があった。かつて、火宮の家にいた時に付けられた首の縄の痕を見られたくなかった。
(大分消えかけてはいるけど)

それでも、カオリは嫌だった。
人に気を許すことが。笑顔を見せることが。

『では何故、あの男と話した』

聞き覚えのある声がして、カオリは目を開けた。髪の毛の水をしぼり、側に置いてあったタオルを手に取る。
周りを見回すが、デスカーン達は外に待たせているため、何も感じない。
「誰」
『鏡の曇りを取ってくれ』
少々変に思いながらも、カオリはタオルで鏡を拭いた。
そこには、自分と…
「あ」
『久しいな』
ヨノワールが薄く映っていた。

「楽しかった?」
『は?』
その後、カオリはヨノワールを自分が借りているベッドの場所に案内した。一応誰かが入って来た時のために、ヨノワールは日陰にいる。そこにいれば、影で姿が分かることもないからだ。
「鏡の中から私のシャワー姿見てたんだよね?」
『そ、そんなつもりで話しかけたんじゃ』
「冗談だよ」
ヨノワールはため息をついた。彼女といると、どうしても調子が狂う。
「で、何の用」
『先ほど話していた男のことだ』
「皆気になるんだね。カゲネコにも聞かれたよ。私が男と話してたらいけないのかな」
不満そうなカオリに、ヨノワールは切り出した。
『心を許していた…私には、そう見えた』
「!」
細い目が真ん丸くなった。自分でも気付いていなかったらしい。
「笑ってた?私が?」
『そちらに聞くのが一番だろう』
そちら、と言われてカオリはカゲボウズ達を見た。小さな頭で一斉にガクガクとうなずく。
「へえ」
信じられない、という表情で顔をおさえる。ヨノワールが何か言おうとした、その時。
「カミヤさん?」
部屋のドアを叩く音がした。ハッとして振り向く。この声は、カゲネコだ。
「何」
「後五分で夕食だから、下に来て」
時計を見れば既に針は午後六時五分前を指していた。
「分かった。今行く」
人の気配が無くなってから、ヨノワールは話を再開した。
「明日、あの男と会うのか」
「まあ。…何が言いたい?」
一呼吸置いた後、小さく、でも鋭く言った。

『気をつけろ』


一方,ツキミヤはまだ浜辺にいた。夕暮れ時の不思議な色合いが、彼の周りの白い砂を染めている。
「不思議な子だったな」
柔らかい波が、ツキミヤの足元を削り取っていく。それと同時に,彼の影がざわざわと揺れる。
「何か隠しているのかと思いきや、優しい顔になる。こちらを疑っていたのに、一瞬にして心を開いたような雰囲気になった」
そして何より、第一印象の。
「何か裏のありそうな、目の光」

「明日は期待してていいと思うよ」
ツキミヤの影の中で、あやしい光がゴソゴソと蠢いた。


  [No.185] 第四章 投稿者:紀成   投稿日:2011/02/07(Mon) 21:40:16   61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

深夜、皆が寝息をたてている部屋で、動く影が一つ。
(何を話そう…)
横に寝返りをうつカオリ。明日のことが気になって、なかなか寝付けない。
一応本は持ってきたが、あまり他人を起こしたくないのだ。
こんな夜は…
「デスカーン、まだ起きてる?」
『カオリ?』
月明かりで出来た影の中からむっくり起き上がる棺。一本の黒い手がカオリの髪に触れる。その手を取り、呟いた。
「連れ出してくれないかな」

二本の腕に支えられ、カオリは深夜の浜に降り立った。時刻は午前二時丁度。当然、誰もいない。
ザザン、ザザン、という波の音が静かな浜に響いている。空には月と星が瞬き、カメラマンにはもってこいの撮影場所だろう。
「ヨノワールの言葉が、ちょっと気になってさ」
『あの男についてか』
「うん」
どうしていいか分からない、と言った方がいいかもしれない。ヨノワールが自ら出てきて言うということは、胸騒ぎでもするのだろう。そしてそれは、きっと的中する。
でも、自分ではどうかと言われると、よく分からないのだ。いつもなら冷静に自分で判断を下せるはずなのに、今回は全く違う。ツキミヤのことを考えるだけで胸がドキドキして、痛くなり、上手に息ができなくなる。おまけに、顔も熱い。
「慣れない土地に来て、菌でも拾ってきたかな」
『…』
デスカーンは、カオリに何と言っていいのか分からなかった。彼女を傷つけたくはないが、そういう気持ちを知らないでいると、後で今以上に苦しむ気がする。
きっと、カオリの今の思いが幸せな結末に繋がることは無いのだから。
『人を信じてみようと思うのは初めてか』
うなずくカオリ。
『たとえどんな結末が待っていようとも、最終的に判断するのは自分自身だ』
裏切られても、放っておかれても、悲しいことがあっても,その先に待つ運命を変えることなどできないのだから。
「火宮の姓を持った親に産まれたことも、運命だったのかな」
『珍しいな。無神論者のお前がそんなことを言うなんて。
…後悔しているか?』
カオリの脳裏に、おぼろげな両親の顔が浮かんだ。引き離された時が幼すぎて、記憶が全く無い。
「別に。…ただ」
『ただ?』

「自分の人生を、決められない環境で育てられたことにはちょっと腹立たしいけどね」
砂浜に、赤い血がポタリと落ちた。

戻ってからもカオリは眠らなかった。ヒトモシを呼んで、ギリギリまで炎を小さくしてもらい、その灯りを使って本を読んだ。
そして朝になり、皆で下で朝食を摂っている最中にツキミヤから電話が来た。内容は、今日の午後四時くらいに雲雷城の駐車場まで来て欲しいとのことだった。
何故彼がそんな時間をチョイスしたのかが気になったが、その明確な理由が分かったのは、その時になってから。
終わりへのカウントダウンが刻まれ始めた時だった。

「嫌な予感しかしない」
「何が」
朝からのミスミの言葉に、ミコトはイラついていた。朝起きた時の第一声が『嫌な予感しかしない』なんて、どういう神経をしているのだろうか。
「さっきカミヤさんに電話が来たでしょ。多分相手は昨日話していた人よ。
…決めた」
「何を」
続く言葉に、ミコトは泣きたくなった。
「私、カミヤさんを尾行してみる!」


  [No.187] ああ! 投稿者:017@原稿中   投稿日:2011/02/08(Tue) 19:14:34   54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

ああ! いいところで終わりやがって!
しかしだんだんカオリちゃんがかわいそうになってきた……

もー、黙ってるつもりだったのについ書きこんじゃったよ。
原稿中の密かな楽しみにしております!
ではっ

(ササッ


  [No.193] 第五章 投稿者:紀成   投稿日:2011/02/11(Fri) 16:07:57   57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

午後三時半。カオリは、少し早く駐車場に来ていた。今のお供はデスカーンだけだ。
そしてその五百メートルほど後方に双眼鏡を構えている人物。
ミスミ。
そしてさらにその双眼鏡のレンズの中からカオリを見ているポケモン。
ヨノワール。
こうして見るとかなりカオスな状態だが、ミスミは当然ヨノワールがいることに気付いていないし、またカオリも一人と一匹に見られていることに気付いていない。
「少し早く来たけど…いいよね」
『遅れるよりはマシだろう』
そう言いながらも、デスカーンはツキミヤのことを信用できなかった。何故カオリに話しかけたのか。何故浜ではなく、この場所を選んだのか。
…そして。

何故、カゲボウズを引き連れているのか。

カオリのような過去を持つということも考えられる。だが、それなら人と関わるようなことはあまりしないだろう。ましてや、同じような境遇を持つ者と。
過去を話したくないのなら、なおさらだ。
そして、カオリの引き連れているカゲボウズと何かが違う。こう、イキイキとしているというか、もっとこう…
『気』が強いと言ったほうがいいか。

ガサガサッ

「!」
数分後、駐車場の裏にある森から何かが出てくる音がした。
「誰」
『人じゃない。立てる音が小さい。…ポケモンか?』
それは、茂みから出てカオリの姿を見ると、そのまま飛び掛って来た。
「おっと」
かわしたカオリにもう一度立ち向かおうとしたが、痙攣を起こして倒れてしまった。
「ヨーテリーだ」
『首輪がついている。トレーナーのポケモンか』
カオリは森の方を見た。夕方とあって、明るい場所と暗い場所の差が激しい。
「…行ってみようか」
その時のカオリは、ツキミヤに会う前の、冷静な目をしていた。


「カミヤさんが森に入ってく」
遠い場所でそれを見ていたミスミも、少し間を置いてから森に入っていった。もちろん、レンズを通して見ているヨノワールも。

夕方の森は不気味だ。光があまり入らない上に、静かすぎて不気味だ。
「今のヨーテリー、すごく怖い目に遭ったんじゃないかな」
『何故だ』
「主人を置いて逃げるなんて、ヨーテリーは普通しない。相手がポケモンや人なら立ち向かっていくだろうね。そう、敵が認知できる物ならね。
…でも、得体の知れない物だったら」
ポケモンは何かを感じる能力が人より遥かに優れている。自然災害の前には危険を感じて安全な場所へ移動したという例もある。
「見えないゴーストタイプに反応して吠えたりする場合もあるけど…。もっと別の何かかもしれない」
『…』
「デスカーンも…感じる?私も何か嫌な感じがする。寒気っていうか、もっとこう…吐き気?」
『吐き気は分からないが、とにかく負のオーラが出ているな』
「どうする?」
『慎重に行くぞ』


だが、慎重に行く必要など無かった。次の木を通り過ぎた瞬間、彼らは見てしまった。
二人の人間と、そのうちの一人に侵食する黒い影を。
生気を失った人間の目を。おぞましい負の感情を。
そして。

その情景を笑って見つめている、ツキミヤという名の人間を。


  [No.195] 第六章 投稿者:紀成   投稿日:2011/02/12(Sat) 21:23:19   57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「何、あれ」
『分からん』
カオリの表情は青ざめていた。口調は至って冷静だが、中身が落ち着いていないことは自分自身がよく分かっている。
今まで生きていてこんなおぞましい物を見たのは初めてだった。黒い影が人間の全身を覆い、何かをしている。ツキミヤはまだこちらには気付いていないようだ。
「見つかったら同じ目に遭う気がするよ」
『逃げるか』
「待ち合わせ場所に戻っても、動揺していたら意味無いから」
沈黙する一人と一匹。重い口を開いたのは、カオリだった。
「デスカーン、約束してくれる」
『何だ』
「今から私が指示を出すから、それをした後、ヨノワールを呼んで」
『!?』
「お願い」
デスカーンには、カオリの言っていることが理解できなかった。否、理解したくなかったの間違いかもしれない。
『カオリ』
「私、はっきり言って怖い。こんな状況初めてだから、どうしたらいいかも分からない。分かるのは、ツキミヤさんが私達の力に負えるような簡単な力の人じゃないってこと。
断言してもいい。絶対デスカーンと私だけじゃ勝てない」
『ヨノワールに頼むのか』
「どちらにしろ、このままじゃ見つかる。行くよ」
有無を言わせない威圧感に、デスカーンは思わず頷いていた。
ザッと木の影から飛び出す。ツキミヤが少し驚いた表情でこちらを見る。
カオリが、叫んだ。

「シャドーボール!」

爆発音が響き渡った。それは、当然ミスミとヨノワールにも聞こえていた。
ミスミは走り出す。音の方へ。
途中何かとすれ違った気もしたが、そんなことは今はどうでもいい。
知りたいことは、一つだけ。

(何が起きてるの!?)


もうもうと土煙が上がる。風で着ていたジャケットがなびく。何も見えない。
口を手で押えながら、カオリは辺りを見回そうとした。
だが。
「!!」

体が動かない。足元が真っ黒だ。光も何も無い、ねっとりとした闇。何かが足元に密集している。吐き気とも言えるような何かがこみ上げて来て、冷や汗が額を流れ落ちた。
「見られちゃったか」
「…ちょっと気になったから」
荒い息を鎮め、カオリは向こうを見た。女が倒れている。
「何をしていた?」
「ちょっと食事をね」
「…食事?」
意味が分からないという顔をすると、ツキミヤは笑って、
「言い方が難しかったかな。彼らに食事をさせてたんだよ。その足元にいる彼らにね」
「…」
「じゃあ、問題。カゲボウズの好物は?」
こんな時に問題を出してくるツキミヤへの腹立たしさと、それを考える自分への情けなさに頭を抱えたくなったが、それどころではない。
カオリは今までに読んだ本の中から記憶をほじくり返す。私について来るカゲボウズ達は甘党で、キャンディが大好きだけど、普通に食べる物といえば…
そこまで考えて、ふと頭の隅にひっかかっていた謎が解けた。ツキミヤのカゲボウズと、自分に懐いているカゲボウズの違い。
「…食べている物が違う。彼らの主食は、感情。喜びとかじゃない。負の感情。恨み、妬みとか」
ツキミヤが拍手するような仕草をした。
「ご名答」
「そこに倒れてる人は?」
「ああ」
起き上がってくる気配は無い。胸が動いているため、死んではいないようだ。
「彼女は泊まっている場所で知り合ったんだ。只の一般人。会った時から彼らが騒がしくてね。押えるのが大変だったよ。弟を溺愛していて、その弟に彼女が出来たと知ってずっと恨んでいたらしい」
「…悪いけど、私は食事相手にならないと思うよ。だって特に恨みたいと思ってる奴なんて」
「恨みたいだけ、かい?」
ツキミヤが何を言いたいのか分からない。
「カゲボウズ達は言ってたよ。出会った時から、恨みはあんまり伝わってこないけど、怒りは伝わってくる。決して表には出さないけど、何かに対する凄まじい怒りが」
「カゲボウズ達に何をさせる気?」
その質問の答えは、ゾッとするような台詞だった。

「知ってる?感情って甘い味がするんだよ」


  [No.198] おいしいです 投稿者:017@原稿中   投稿日:2011/02/15(Tue) 00:21:19   49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

おっかしいなー
いつも自分で妄想してることなのに、他の人が書くと怖い怖い。
ツッキーこえー。

おいしいです。
いろんな意味で。もぐもぐ

最近連載板に通うのが楽しみです。ほんと


  [No.199] 第七章 投稿者:紀成   投稿日:2011/02/18(Fri) 21:28:17   62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

風を切り裂くような音と、パリン、と何かが割れる音がした。
何が起こったのか分からないまま、ミスミは落ちた破片を拾い上げる。自分がさっきまで使っていた双眼鏡のレンズ部分が、木っ端微塵になって地面に落ちていた。
勿論、彼女自身が木にぶつけたわけではない。
「?」
しっくりこなかったが、今はカオリを探す方が先と考え、ミスミは再び走り出した。


ぞぞぞ、とカオリの足をカゲボウズ達が飲み込んでいく,もう身動きは取れない。別に逃げるつもりも無いのだが。這いつくばってまで逃げるなんて、カオリのプライドが許さなかった。
「やっと分かった。ツキミヤさんのカゲボウズが私のカゲボウズと違う理由。…こんな物食べさせてたら、元気になるはずだよね」
「怖くないのかい」
「…聞いてもいいかな」
反対に質問されて、ツキミヤが少し怒ったような表情を浮かべた。
「何?」
「分からない。分からないんだ。こんなことになっているのに、恐怖心はあまり感じない。でも、何故か別の意味での嫌な予感はする。このまま食べ尽くされて、気を失って、すぐヨノワールが来て、私を宿舎へ連れて行く。
そして次に起きた時私は…」

カオリの右目から、丸い雫が落ちた。

「ツキミヤさんのことを、全て忘れてるんじゃないかって」


「…そうだよ。今まで食べてきた人間は、皆この状況を嫌だとか、怖いだとか喚いていた。そういう感情を植えつけられても仕方の無いことなんだ。でもそれを思い出すことはない。だって怖いっていう感情も残らないくらいに喰らいつくすから」
そして、それを与えたツキミヤの存在も、忘れてしまう。
「いくらゴーストタイプが見える君でも、それは変わらない」
「じゃあ、もう一つだけ答えて」
腕まで飲み込まれた。並みの人間ならもうまともに話すことすらままならないだろう。
「…この気持ちは、何?」

人の話す声がして、ミスミは足を止めた。そのまま、一歩、二歩とゆっくり歩みを進めていく。
木に隠れて声だけを聞く。カミヤさんと、若い男の声がした。おそらく、昨日浜で話していた青年だろう。
ただ、昨日のような雰囲気は何処にも無い。コップに入れた水が、今にも溢れ出しそうな感じだ。
「私は、喜び、哀しみ、楽しみ、そして怒りや恨みの感情を知ってる。怖さも幼い時に経験したことがある。でも、ツキミヤさんに対する感情だけは分からないんだ。
怪我をしているわけでもないのに、胸がすごく痛くて、走った後でもないのにドキドキして、呼吸が苦しくてたまらないんだ」
ミスミは確信した。やっぱりカミヤさんは、この人のことを…
「忘れた方が楽になれる気がする。でも何故だろうね。
…貴方のことだけは、忘れたくないんだよ」
カオリが言葉を発したのは、それが最後だった。カゲボウズが、身体を全て飲み込み―


「!」
「えっ?」
「…」
三つの反応が重なった。何かが攻撃を仕掛けてきた。丸くて深い穴が、ツキミヤの後ろの木についている。
「これは…」
言う前にもう一発打ってきた。ツキミヤの髪の端が少し持っていかれる。木に隠れているミスミも、そっと覗き込んだ。スコープのような物を持っていればいいのだが、生憎そんな便利な物は持っていない。
だが、無くても別に構わなかった。カオリの身体からカゲボウズを引き剥がした後、それは実体を現した。
灰色の身体に、黄色い模様。赤い瞳の一つ目。
ツキミヤが、その名を呼んだ。
「ヨノワールか」


ミスミは、写真以外でヨノワールを見たのは初めてだった。図鑑で見るより大きく、そしてずんぐりむっくりしている。
(塀の上に座ってたら、ハンプティ・ダンプティみたい)
こういうことを考えられるあたり、この状況を楽しんでいる気がする。何かヨノワールが話している感じがするが、ミスミには分からない。
ツキミヤには、テレパシーのような物で話しかけてきた。口調は普通だが、凄まじい怒りのような感情が入っていることがよく分かった。
『傷つけてはいないな』
「ちょっと食べさせてもらったよ。甘すぎて喉の奥が焼けそうだ」
わざとらしく咳払いをするツキミヤを尻目に、ヨノワールはカオリを見た。特に苦しそうな様子も、外傷もない。
右目から何かが流れた跡はあるが。
「次に起きた時、全て忘れているよ。彼女は」
『思い出すことは無いのか』
「僕は、最初から彼女に会わなかった。彼女も僕という存在なんて最初から知らなかった。完全に抹消される」
『完全?…笑わせるな』

言葉が分からないミスミも、この時ばかりは身体が震えたという。一応ボールに入れて連れて来ていた二匹のポケモン達が、中で泡を吹いていた。
立っていられなくて、その場に座り込んだ。


『完全という物は、神にしか通用しないものだ』


  [No.200] エピローグ 投稿者:紀成   投稿日:2011/02/18(Fri) 21:35:09   58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

『その後私はカオリを宿舎に連れて行った。意識は回復したが、あの男の言った通り、何も覚えていなかった。…いや、まるでそんなことが最初から無かったかのようだった』
所変わって、現在のやぶれたせかい。長い長い話がやっと終わろうとしていた。
『で、そのツキミヤとかいう奴はどうしたんだ?』
『去って行った。何処で何をしているのかも分からない。それ以前に、何故カゲボウズを大量に引きつれ、感情を食べさせているのか…』
『ふーん』
それだけ言うと、レントラーはそのまま眠ってしまった。
『カオリが何も無ければ、私はそれでいい。そう、思い出さなくていいんだ…』


カオリ…ファントムは、曇り空の下を歩いている。大通りの交差点の信号が青になり、駅とセンター街から一斉に沢山の人間が吐き出される。彼らの中に混じって、ファントムも歩く。
真ん中まで歩いた時、一人の青年とすれ違った。落ち着いた色合いの金髪、整った顔立ち。不思議な雰囲気を持つ者だった。
ファンは何も言わず、センター街の方へ歩いて行く。


灰色の空から、白い物が舞い落ちる。
最後の日の街に、雪が降って来た。


―THE END


  [No.201] あとがきという名の裏話 投稿者:紀成   投稿日:2011/02/19(Sat) 08:06:29   53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

紀成です。現在布団の中です。携帯から書いてます。もふーん。
さて、長そうで短かったコラボ小説ですが・・。まず最初に。

No.017さん、快く許可してくださって、本当にありがとうございました!
他の人が作ったキャラクターを動かすのはほんと勇気がいるものですね。
というわけでちょっとした裏話を。


カオリは元々、レギュラーキャラとして出す予定は全くありませんでした。何か面白い感じのイメージで書きたいなーと思ってたらこうなりました。
今やファントムとして世界を回る日々・・でもないか。
彼女が今からどんな物を見つけて、何を確信して、どんな最後を向かえるのか・・
大体は出来てますが、これだとあまりにも救いが無いのでちょっと変えようかと思ってます。
でも救いが無いのもたまには・・

ツキミヤさんを知ったのは六年くらい前になります。まだ小学生でした←
鳩急行のイラコンのリンクから飛んだこのサイトで、初めてNo.017さんの存在を知りました。水彩画の美しさに呆然とした覚えがあります。ちなみに当時No.017さんを男だと思っていた事実。
本当すみません。

まさか当時はこんなことになるなんて思いもよらなんだ。
改めて、感謝です!

それでは、短編掲示板の方でまたお会いしましょう。

ありがとうございました!