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  [No.203] フタチの球世主(ポケモン野球小説)第1章1話 投稿者:ヒーアラン   投稿日:2011/02/12(Sat) 22:45:36   46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

(ポケ野球小説) フタチの球世主
 ポケモンを廃人から守るため・・・。
 199X年から201X年にかけて、ある青年とその父がポケモンを開放しよ
うとたくらんでいた。
 この年代にポケモンが心無い廃人によって傷つけられ、生態系を破壊
していったおかげである。使い物にならなければ捨てられ、一部のもの
のポケモンだけが強くなっていく。それが許せなかった。
 そう、ポケモンと人間は完全に隔離せねば!と。
 阻止派も大勢いたがどうだろう、みなも廃人同然の育成をしている。
これが実態だった。
 トモダチ?ペット?関係ない。ポケモンに人間の手など邪魔に過ぎな
い。

 そしてその青年は神のポケモンを駆使し、実現させた。
 幾多の阻止をも振り切って。
「ポケモンは、須くして独立して生きる生き物だ。これでもう・・・大
丈夫だよ。僕の、トモダチ」
 こうして、ポケモンと人間の共存という名の人間のエゴは終わった。
 人間界にポケモンはいなくなった。1匹たりとも。

そして、その青年によって作られたポケモンのみが住む島、ソウハク
島である。
 人間から独立して2X0年後。ポケモンは人間にも劣らない文明を成
し遂げた。
 人間やアニメのニャース(笑)同様、人間の言葉を話せるようになった

 日本語も英語も、フランス語や関西弁だってしゃべってしまう(笑)。
 ポケモンが人間に従うのではなく、ポケモンが独自に創造することが
できたのだ。
 もはや最初から人間なんか存在していなかったかのように。
 ソウハク島にもはや50万個体生息し、それがそれぞれ企業を立ち上
げ、技術を磨き、教育を施し、経済活動や政治、医療まで執り行ってい
る。201X年当時649種族がいくつに増えただろうか。

 そんな22XX年夏のことである。
 人間界では地球環境云々となっている時期だと思うがソウハク島のあ
る星では関係ない。名ばかりでない持続可能な開発を続け、過度な温暖
化を防止した。人間界で「流行っていた」ソーラー発電だって安くつけ
られるようになった。
 そして夏といったら海!・・・と思っていたら大間違いである。ソウ
ハク島では7月に高校の入学試験がある。どこかの国では4月に入学を
していたみたいだがこの島(というか現に世界では多いんだけど)は9
月に入学をする。
 7月某日。平治(ゼニガメ)は半そでシャツを身にまとい、紺碧の肩
掛けカバンを背負って若葉電鉄に乗り込んだ。2両編成の車両である。
現実団地駅から乗り込んだ。空気式のうるさいドアの閉まる音を残し、
発車した。
 平治は周りをきょろきょろとして、落ち着きがないように見える。冷
房が冷や汗にかかってさらに身震いしている。
「あぁぁ、今日落ちたら宋台行きじゃないか〜・・・。宋台はやめてく
れ〜・・・」
 受験票を大切に持ちつつ、こぶしを震わせていた。
 若葉駅で東本線に乗り換え、3つ目の双葉駅に降りた。電車は30分
に1本しかない。淡い緑で塗ってある鉄筋コンクリの、とがった直角三
角形の屋根が2つの駅舎だ。双葉をモチーフにしたのだろうか。そして
もう合格を知ったのか、喜んでいるのもいれば、落ちたのか、駅前のコ
ンビニの前でうずくまるやつがいる。平治は足がすくみそうになった。
 駅から歩いて6分ほど、平治が最後に受けた双葉智開高校が見えた。
純白の校舎が並木道の向こうに見える。この学校を受けたポケモンたち
が見える。
 平治の受験番号は『17』。
 そして智開高校は定員56人に対し受験者81人。倍率は1.45倍と結
構な倍率である。
 数字が並んでいる掲示板にたどり着いた。平治はたて横斜めにに首と
目を動かし、『27』という数字を探す。1番から順番になっているの
に、右往左往に顔を動かしている。
 するとふと左上に目をやると『17』が見えたような気がした。平治
は目をこすり、もう一度顔を上げた。

 ―幼稚園のころから足が遅いとからかわれ、テレビゲームも弱かった
。靴も隠された。
 しかし小学校5年から始めた野球があった。土日のきつい練習も耐え
、正捕手になった。中学でも2年から正捕手になった。3年の2月まで
野球にのめりこんだ。すばらしいチームメイトとともに。
 だが勉強で少し遅れが出た。2年までは上位5パーセントに入ってい
て、学区ナンバー1の若葉東高校も夢ではなかった。しかし3年12月
ごろから手詰まりになってしまった。国語の読解が壊滅的になった。同
級生が学力を上げているのに、自分は・・・。
 成績を上げて喜んでいる同級生を見るたびに自然とこぶしを作った。
「平治、東はきついなぁ」
 担任がため息をついて言う。平治の目の前には成績表が置いてある。
強烈な西日が照っていた。
「でも、僕は、行きたいんです!」
「まあ万が一落ちたら・・・II期はフタチ(双葉智開のこと。ある御三
家に似ているがきにしない)でいいんだな」
「・・・はい、覚悟しています」
「じゃあまずSPEで宋台と東条で出すから、そこを押さえてからだな

 SPEとはSurely Pass Examの略で、内申書のみで合否を決める。ソ
ウハク島には例の青年の『ポケモンにまで教育格差を作るとはけしから
ない。すべて公立で平等に』との理念から、私立高校がない。SPEは
いわゆる滑り止めのようなものだ。
 ソウハク島の高校入試はこうだ。SPEで2校まで出願できる。それ
は自分の実力より2〜3段階下の高校しか選べず、その高校の数も限ら
れる。これが6月初旬に行われる。ちなみにその学校に内申が行く前に
高校から送られる、生徒には非公開の審査基準を中学校で行うが、それ
を満たせばほぼ合格する。
「おい平治、どっちも取れたぞ」
「ええ、まあ、本命には程遠いですが・・・」
「I期は東だな。がんばれよ!」
「はい!」
 そのI期で見事に玉砕した。後で聞いた話によると若葉東をパスした
連中は多くはSPEは取っていないかSPEが出来る高校で最難関の桔
梗高校だったそうだ。
 そして、II期で単位制というのと綿密な進路指導がウリの少し気にな
っていたフタチを受験―

「あった!あったぞ!」
 平治は軽くガッツポーズをした。ほっとしすぎたのかうれしいのか、
足がほころびながらも受付で手続き書類を受け取るのだった。