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  [No.52] SpecialEpisode-6(4) 投稿者:あゆみ   投稿日:2010/09/19(Sun) 16:25:19   56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

SpecialEpisode-6『もう1つのバトルチャンピオンシップス!』

(4)

ナナシマ・バトルチャンピオンシップスは、バトル大会で2000名、コンテスト大会でも1500名を越すトレーナーやコーディネーターが参加した一大イベントだった。
次々と行われる試合、そして演技に、実況アナウンサーやゲスト解説も忙しく対応しながらも、それでいて中身の濃い体験をすることができた。
中でも試合が昼の休憩に入るとき、そして1日の試合がすべて終了した後はスタッフ一同で楽しく食事をとる時間となっており、日替わりでいろいろな弁当が支給されたのだった。
それは大会初日、ちょうどユカリがコンテスト大会二次審査・コンテストバトルに駒を進めた夜のことである。この日の夕食として支給される弁当はシウマイ(※1)をメインに、卵焼きや唐揚げ、かまぼこ、竹の子の煮物、魚の照り焼き、昆布、漬け物、あんずが入っていた。業者も栄養面に配慮してか、ヘルシーな組み合わせとなっていた。
だが、業者と担当スタッフがやりとりしたとき、どういう訳か8食分の弁当が余計に注文されたのだった。昼食のときの弁当は誤発注はなかったのだが、これは一体どうしたことなのだろう。
放送スタッフ「(どうしよう・・・。8個も余計に注文されている。イチロウさん、シンイチさん、ルリカさん、ソウスケさんの分、そしてうちらの分。おかしいなぁ。どう考えても8個余ってしまうんだよなぁ・・・。)」
スタッフは8個分が上乗せされた弁当が入った袋を抱えてスタジオのドアを開けた。
放送スタッフ「皆さん、今日の晩ご飯が届きました。」
イチロウ「おっ、晩ご飯ですね。」
ルリカ「美味しそうですね。ここまでいいにおいが漂ってきます。」
シンイチ「にしても、ちょっと多い気がするのは気のせいではないでしょうか?」
放送スタッフ「(まさかとは思いたいけど・・・。)たぶん気のせいだと思いますよ。さあ、早く食べましょう。冷めてしまいますよ。」
ソウスケ「そうですね。ところで今晩のは何でしょうか?」
放送スタッフ「シウマイです。ほかに唐揚げや卵焼きなどおかずもいろいろ入っています。それにあんずも入っているんです。」
ルリカ「結構たくさん入っているんですね。皆さん、早く頂きましょう!」
放送スタッフ「そうですね。それでは皆さん、どうぞお召し上がりください!」
一同「いただきます!」

だが案の定、放送スタッフの予感は的中していた。誰のものでもない弁当が8個、袋の中に残ってしまったのである。
イチロウ「あれ?お弁当、余っちゃいましたね・・・。」
ルリカ「そうですね。ほかの皆さんは、もう召し上がったんですよね。」
スタッフ全員で文字通り美味しく頂いた弁当。だが8個分が余計に注文されたのだろう、手つかずのまま残っている。
シンイチ「もしかしたら誤発注の可能性もあるかもしれないですね。確認してみます。」
そう言うとシンイチは電話のところに向かい、注文を担当したスタッフに聞いてみることにした。
シンイチ「実況席のシンイチです。いつもお世話になっております。・・・今晩の弁当なのですが、どうも発注ミスでも起きたのでしょうか、8個余ってしまったんです。ちょっと確認して頂けないでしょうか?」
注文担当スタッフ「分かりました。ちょっと調べてみますね。」
電話の向こうでキーボードを叩く音がした。どうやらスタッフも発注ミスの原因について調べているとみて良さそうである。
注文担当スタッフ「これは・・・?」
シンイチ「どうかしましたか?」
注文担当スタッフ「はい。やっぱり私の方のミスでした。注文するとき、32個って誤って送信してしまっていたんです。私を入れて24人のはずなのに、おかしいとは思っていたのですが、恐らくはキーボードの打ち間違えだと思います。」
シンイチ「差額は私達で負担いたします。それにしてもこの弁当、どうしましょう?」
注文担当スタッフ「今更返品もできないですよね。したらしたで『食べ物を粗末にするな!』って言われるのがおちですので・・・。」
シンイチ「そうですね。どうもありがとうございました。」
そう言ってシンイチは電話を切った。
シンイチ「・・・確認してみたところ、どうやら担当した側の発注ミスでして、8個余計に発注してしまったそうです。今更返品するわけにもいきませんし・・・。」
ルリカ「(8個ね・・・。)」
8個。それはちょうど8人分である。これを見てルリカはふとひらめいた。
ルリカ「(このまま食べ物を粗末にするわけにもいかないわ。そうだ。マサト君達にも食べさせてあげたいわ。マサト君、コトミちゃん、トモヤさん、ミキさん、ユカリさん、レイカちゃん、サヤカさん、そしてケイコさん。8人分ぴったりあるわね。)」
そしてこう切り出したのである。
ルリカ「あ、じゃあ余ったお弁当、私が頂いていいですか?」
ソウスケ「えっ?ルリカさんが?」
ソウスケは驚いた表情でルリカを見た。
ルリカ「知り合いに差し入れとして持って行こうかと思いまして。よろしいですか?」
シンイチ「ええ。構いませんよ。」
ルリカ「ありがとうございます。では行ってきます。」
イチロウ「はい。」
余ったままの弁当。腐らせてしまうのはあまりにももったいない。食べ物を粗末にしないためにも、知り合いに食べさせた方がいいのだろう。それに味もよく整っており、知り合いも喜んでくれるだろう。イチロウ、シンイチ、ソウスケを始め、ほかの放送スタッフも同じことを考えていた。
そしてルリカは弁当を持って放送席を出て行った。――その後ろ姿を見て、スタッフの1人はこう呟いていた。
放送スタッフ「ルリカさん、優しいんだね・・・。」

そしてこのことが、かえってスタッフと業者の間に親密な関係を築き上げたのである。それにふさわしい出来事が、いよいよバトル大会決勝トーナメント決勝戦、そしてコンテスト大会二次審査・コンテストバトルファイナルを迎えた日に起きたのだった。
この日の弁当は誤発注もなく、無事に発注できたのだが、発注が終わるとルリカは弁当の発注を担当するスタッフの元を訪れたのである。
ルリカ「失礼します。」
注文担当スタッフ「おや、ルリカさん。ここまで足を運ぶとは珍しい。どう言ったご用件で?」
ルリカ「はい。私達実況の関係者向けの弁当とは別に、特注のお弁当を発注して欲しいのです。」
注文担当スタッフ「へぇ。特注のお弁当を、わざわざ発注してもらいたいとは。早速業者の方に聞いてみます。ルリカさんもどうぞ。」
ルリカ「よろしくお願いします。」
注文のスタッフは弁当を製造する業者に連絡を取った。
注文担当スタッフ「いつもお世話になっております。ナナシマ・バトルチャンピオンシップス実行委員会・放送担当です。」
弁当業者「こちらこそお世話になっております。お弁当の注文、承りました。」
ルリカ「初めまして。私はバトル大会でゲスト解説を担当しておりますルリカと申します。」
弁当業者「確か、ジョウトリーグの四天王でしたね。お名前はかねがね伺っております。今回はどのようなご用件で?」
ルリカ「今晩、私の知り合いのためにパーティーを開こうと思っているんですけど、そこでお弁当を出したいのです。よろしいでしょうか?」
注文担当スタッフ「(知り合い・・・?ああ、そうか。こないだお弁当を持って行った方に食べさせてあげるんだね。)」
弁当業者「はい、かしこまりました。何名様でしょうか?」
ルリカ「8名分です。大丈夫ですか?」
弁当業者「大丈夫です。ではどう言ったものにいたしましょうか?」
業者はそう言ってたくさんのメニューを見せた。――リーズナブルなものから豪華なものまで、いろいろ揃っている。ちょっと手軽に食べたいときのおにぎりから、がっつり食べたいときのためのボリュームたっぷりの弁当まで、量も様々だ。
ルリカ「あ、じゃあこの『とり南蛮重・大盛り』(※2)で。」
それはこの業者が作っている弁当の中でもとびきりのでか盛りだった。ご飯の上にぎっしりと鳥南蛮が載せられており、アクセントにいろいろな色のピーマン、さらに玉ねぎ、レモンも入っている。その量たるや半端なものではなく、何と800グラムを超えていた。そのためか業者のメニュー表にも「あなたは食べきれますか?」と言う一文が添えられていた。
弁当業者「かしこまりました。とり南蛮重・大盛りを8つですね。今日の夜に配達いたします。ありがとうございました。」
ルリカ「ありがとうございました。」
そう言うと業者は電話を切った。
注文担当スタッフ「800グラム・・・。たくさん食べさせてあげたいんですね。」
ルリカ「うふふっ。こう言う私って、変ですか?」
注文担当スタッフ「それはないと思いますよ。ルリカさん、本当に優しいんですね。私、今回ルリカさんみたいな方と一緒に仕事ができてよかったです。」
ルリカ「ありがとうございます。」
ルリカはそう言って、にっこりと笑った。

(※1)「初日で差し入れした弁当の表記について」
この出来事はちょうどChapter-27の出来事と一致しています。このときも述べましたが、通常は「シウマイ」「シューマイ」「焼売」などいろいろな表記があります。ですがここでは、モデルとなった横浜駅の駅弁・「シウマイ弁当」にちなみ、「シウマイ」で統一することとします。
(※2)「決勝戦の夜に差し入れした弁当の表記について」
この出来事はChapter-38の出来事に当たります。モデルとなったのは小田原駅の駅弁・「BIGとり南蛮重」です。名称をそのまま使用することは商標登録に引っかかると判断したため、名称を一部変更して表記することとします。

(5)に続く。


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