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  [No.810] 第6話「部員を探せ」 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2011/11/16(Wed) 10:30:40   77clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「で、残った部員ってのはどんな奴だ?」

 放課後。俺とナズナは職員室で話をしていた。話題はもっぱら部活についてだ。彼女は1枚の紙を眺めながら俺の問いに答える。

「名簿を見ると、いるのは1年4組のイスムカ君ですね。早速2人で探しに行きますか?」

「そうだな。……ところで、何故あんたが一緒なんだ?」

 教員の一覧はチェックしたが、あんたは確かポケモンミュージカル部の顧問のはずだが。彼女は待ってましたと言わんばかりに説明をした。妙に生き生きしているぞ。

「へへ。今日は部活も休みで、仕事も全部終わりましたからね。やっぱり、困っている人を放っておくことはできませんよ!」

 ……やれやれ。できれば、あまり俺に関わってほしくないんだがな。

 俺達は職員室を出て、教室に向かった。職員室のある棟には3年生の教室がある。一方1年生の教室はその隣の棟にあるらしい。俺は大股で素早く移動した。やがて、目的地の1年4組にたどり着いた。

「……教室に着いたが、もぬけの殻だな。既に帰ったか?」

 今日は本来始業式、早く帰っても不思議ではあるまい。しかも事件の関係者となれば、いたたまれない気分になるのも分からなくもない。俺も昔は似たような状況だったからな。まあ、俺の場合は自業自得だが。

「そうですね、練習しているかもしれませんよ。専用コートに行ってみましょう」











「専用コート、なあ。おもいっきり他の奴らが使っているぞ。まあ、顧問も部員もいないから当然か」

 俺達はポケモンバトル部のコートに来ていた。コートは2面あり、公園2つ分くらいの広さはあろう。全くもって恵まれた環境であるが、そこに部員の姿はない。あるのは、これをチャンスと好き放題やっている生徒達のみだ。仕方ねえ、こうなれば家に乗り込むか。俺がそんなことを画策していると、ナズナが辺りを見回しだした。

「……うーん」

「どうしたんだ、唸り声なんて似合わねえぞ」

「それが、何かを感じるんですよ。どこか……私達を見ているような」

「何、それは俺達に対する挑戦か。くそっ、どこにいやがる」

 新手のストーカーか、あるいは追っかけか。さては、俺の正体を知った奴か?
 俺は周囲の障害物を凝視した。こういうところに隠れるのが常套手段だからな。

 しばらく探していると、ある草むらが目に止まった。やけに揺れているな。これはもしや……俺は草むらに近づき、分け入った。その時、叫び声が聞こえてきた。俺は不覚にもひるむ。

「あっ!」

 草むらから現れたのは、少年だった。ひょろっとした今時の少年である。そいつは俺がひるむ隙に逃げ出そうとした。野郎、舐めやがって。良い度胸してやがる。

「逃がすな、ソーナンス!」

 俺はソーナンスを繰り出した。ソーナンスは少年の影を踏んで逃がさない。俺達はゆっくりとそいつに近寄り、声をかける。

「おい、いきなり逃げようなんて、何か後ろめたいことでもあんのか?」

「うう……」

「はっきりしやがれ! まずは名前を教えろ」

 俺は少年を睨みつけながら怒鳴った。少年の顔は強張っている。全く、返事くらいはっきりしねえと困るぞ。

「ぼ、僕はイスムカ。おじさんこそ誰ですか?」

「……そういや、始業式やらなかったよな。俺はテンサイ、ポケモンバトル部の顧問代理だ」

「え、あなたが新しい顧問!」

 少年イスムカはのけぞった。ここまで失礼な奴もそうはいないだろう。このオーバーリアクション……ある種の才能だな。

「おいおい、悪いか? 俺はただ手拭いとサングラスを装着しているだけだろ」

「うーん、それでも十分不審だと思いますよ?」

 ナズナの鋭い突っ込みが俺に突き刺さる。確かに、その点は否定できないな。だが、今はそんなことを言ってる場合じゃねえ。俺はイスムカに確認を取った。

「ま、まあ良い。で、イスムカ。残った部員はあんただけなのは分かっている。当然、これから部を引っ張ってくれるよな?」

「えっ。それはちょっと……」

「なんだ、何か問題でもあるのか?」

「だって、俺は1人ですよ。今更どうしたところで、廃部は目に見えてます」

 イスムカは臆面もなく言ってのけた。……こいつ、よりによって俺が最も嫌いな考え方を持ってやがる。さて、どうしたものかね。少しきつめに言っておいた方が後々のためか。

「はっ、小市民の考えそうなことだ。1人でやって駄目な理由なんざ見当たらねえが? それに、人数が足りないなら探せば良いだけのこと」

「う、うう……」

「……逆に考えてみな。人数が減ったということは、それだけ1人に注目が集まる。こんな経験、あんたみたいな奴は卒業しちまったら永久に無理だ。だからこそ! 命を賭けて、かかってこい!」

 俺は彼の目を見た。彼は視線を逸らそうと試みるが、絶対に逃がさない。首を縦に振るまでここに居座るぜ。そんな雰囲気を全開で出していたら、遂に奴が音を上げた。よし、これでこっちのものだ。

「……わ、わかりましたよ。部に残れば良いんでしょう。くそ、暑苦しい人だな」

「何か言ったか?」

「い、いえ別に!」

「それで良い。では、明日から部員集めだ。放課後、必ず俺の下に来るように。もしもの場合は……分かるな? では俺はこの辺で失礼する。ちゃんと寝ろよ」

 俺はそう言い残すと、立ち尽くすイスムカを放ってさっさと職員室に戻るのであった。さて、明日から忙しくなるぜ。




・次回予告

部員集めを始めた俺とイスムカ。しかし誰1人として首を縦に振りやしない。だが、そんな俺達にも運は味方しているもので、大きなチャンスを見出だすのだった。次回、第7話「新たな仲間は人気者」。俺の明日は俺が決める。


・あつあ通信vol.72

最近、アニメカービィやロックマンエグゼをようつべで見直しているのですが、面白いです。年取ってからその魅力に気付きました。皆さんにもそのような作品はあるでしょうか? あったら教えてほしいです。


あつあ通信vol.72、編者あつあつおでん


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