マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
このフォームからは投稿できません。
name
e-mail
url
subject
comment

[新規順タイトル表示] [ツリー表示] [新着順記事] [留意事項] [ワード検索] [過去ログ] [管理用]

  [No.814] 第9話「俺対ターリブン」 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2011/12/12(Mon) 20:56:13   99clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「では、手短に2匹ずつでいくぜ」

 俺とターリブンはコートで対峙した。周りには選考会の参加者の他、多数の野次馬がいる。もちろんイスムカとラディヤもだ。

 若者との勝負か……久しぶりのようで、実はそうでもないんだよな。あの時は負けたが、今回は俺が勝つ。

「わかったでマス。待ってるでマス、オイラのラディヤちゃん」

「は、はあ……」

 しかし、この緊張感の無さは何事だ。ターリブンはラディヤにアピールするのに夢中で、俺の話は殆ど聞き流してやがる。彼女が困っているのにも気付いてない様子だ。……最初から彼女狙いだったのか。ま、不純な動機でも一向に構わないが。遠くイッシュ地方では、もてるためにやっていたら上手くなったトレーナーもいるらしいからな。

 さて、そろそろ動くか。俺はボールを手に取りながらターリブンに声をかけた。

「うつつを抜かすなよ。ではまず俺からだ、ニョロボン!」

「もちろんでマス。いくでマス、ボーマンダ!」

 俺とターリブン、勝負の火蓋は切って落とされた。俺はニョロボン、奴はボーマンダが先発だ。

「やはりボーマンダからか」

 俺は一言つぶやいた。ボーマンダはドラゴンタイプであるコモルーの進化形で、非常に強力な性能を持つ。その根拠は、まず全ての能力が高く、素早さ、攻撃、特攻が抜きん出ている。そこから放たれる高威力の技はそうそう耐えられない。また、特性のいかくで物理相手に後だししやすいのも魅力的だ。強敵には違いないがニョロボンなら大丈夫さ。

「じゃ、いきなりだがぶちのめす。ニョロボン、れいとうビームだ」

「……甘いでマス。ボーマンダ交代、メタグロスでマス!」

 まずはニョロボンのれいとうビーム。渦巻き模様から発射された冷気はボーマンダに命中したと思われたが、寸でのところで逃げられた。代わりに攻撃を受けたのは、4本の足とばつ印が印象的ポケモンだ。ちなみに、足には何かのハチマキが巻かれている。

「メタグロス……メタマンダか」

 俺は2匹目のポケモン、メタグロスを眺めた。メタグロスはエスパーに鋼と言う変わった組み合わせのタイプ構成を持つポケモンだ。互いの耐性を相殺しているから微妙ではあるが、それでも押さえるべき耐性は残っている。タイプ相性の良さからボーマンダと組んだ「メタマンダ」が大流行した時期もあったが、最近はそうでもない。まだ使うトレーナーがいたとはな。だが、甘いぜ。

「ふん、その程度の動きは承知の上だ。ニョロボン、ハイドロ……」

「しねんのずつきでマス!」

「なんだと!」

 俺は半ば信じられない光景を目にした。ニョロボンが技を使おうとしたところ、メタグロスが瞬く間に接近。そのまま鋼鉄の頭を叩きつけ、ニョロボンを沈めてしまった。あれは同じ速さの競り合いじゃねえ。

「ちっ、素早さ重視たあ盲点だったぜ。それにこの威力、こだわりハチマキか」

「おおっ、オイラの秘策を理解してくれる人がいたでマス。良い人でマス!」

 ターリブンは1人で勝手に喜んだ。ナンパしたり騒いだり、忙しい奴だぜ。立場上負けられないのに、こんな相手に負けたら示しがつかねえな。

「そりゃどうも。ではこちらも本気を出すか、カイリュー!」

 俺はニョロボンとの入れ替えでカイリューを繰り出した。お前の新しい力、今こそ見せつける時だ!

「カイリューでマスか。鈍速ドラゴンなんてお呼びでないマスよ」

「それはそれは、随分不勉強だな。カイリュー、りゅうのまいだ」

 カイリューは空を飛びながら、怒り狂ったかのように踊った。力がみなぎっているのが俺にも良く分かる。もちろん、それを見逃すようなターリブンではない。

「そうはさせないでマス、しねんのずつき!」

 カイリューが地上に降りてきたのを見計らい、メタグロスはしねんのずつきをかました。カイリューは直撃を受けたが、余裕の表情である。これにはさすがのターリブンも動揺したのか、声を荒げた。

「ど、どういうことでマス? びくともしないでマス、こんなのインチキでマス!」

「それは違う。これは特性『マルチスケイル』の効果だ。これは体力が満タンの時、ダメージが半分になるって言う便利な代物さ」

「な、なあんでますとおお!」

 お、やっと静かになったか。さてさて、先制技の心配も無いことだし、とっとと片付けよう。

「もう誰も止められねえよ。じしん攻撃」

 カイリューはその足で地面を蹴り上げ、メタグロスをその衝撃で襲った。りゅうのまいで底上げした攻撃の前に、メタグロスはたまらず力尽きた。これには周囲からどよめきが沸き起こる。

「め、メタグロスがやられたでマス……。ええい、こうなったらボーマンダの出番でマス!」

 ターリブンは冷や汗を滴らせながらボーマンダを再登場させた。ボーマンダのいかくでカイリューは少し後退りするが、今更関係ねえ。

「いかく、か。それじゃあ駄目だな。げきりんを決めろ!」

 カイリューはボーマンダを上回る速さで旋回し、渾身の力でボーマンダを殴り倒した。ドラゴンタイプの弱点はドラゴンタイプ、問答無用の威力だった。

「や、やられたでマスう!」

 ターリブンが肩を落とす。ふっ、勝負あった。ギャラリーは展開の速さに感嘆するしかないみたいだな。まだまだ俺もやれるもんだ。もっとも、実際に戦うのはポケモンなんだが。

「よし、俺の勝ちだ。……まあ、これだけできるなら大丈夫だろう」

 俺は何度か頷くと、ターリブンの元に歩み寄り、そしてこう言った。

「ターリブン、負けたが良い腕をしてるな。これなら文句無しで入部決定だ、是非とも俺達の力になってほしい」

 俺の言葉を聞いたターリブンは、しぼんだ風船のような状態からみるみる元気になった。現金な奴め。

「ほ、本当でマスか! やったでマス、ラディヤちゃんと仲良くできるでマス」

「おいおい」

 これで大丈夫なのか、なんとなく心配になってきたぜ。




・次回予告

最低限の人数は揃った、後は鍛練あるのみ。しかし、高校の勝負のルールはどうなってるんだ? 俺達は暇な時間にルールブックを読んでみるのであった。次回、第10話「これがルールだ」。俺の明日は俺が決める。


・あつあ通信vol.75

ターリブンは元々、パワポケのメガネ一族みたく「〜ダ」という名前にしたかったのですが、全員「あ」の音で終わるのはバランスが悪いと考え、こんなことに。ターリブンはアラビア語で「student」の意味です。アラビア語からすると、この言葉は外来語なんですよね。で、複数形は「タリーバン(tali-bが「学生」、anが「〜達」)」で「student共」となります。anの部分は昔からある使い方で、英語の〜erに当たります。

お気付きの方もいらっしゃると思いますが、かの有名なイスラム過激派組織タリバンは、アフガニスタン統一を願う学生運動から始まったのでした。なお、他の過激派アルカーイダやその指導者だったウサマ・ビン=ラディンとは、本来別々の組織です。アルカーイダは、ソ連のアフガニスタン侵攻に対する義勇兵の一部が、闘争の舞台を海外に求めて作られたのです。

ダメージ計算は、レベル50、6V、ボーマンダ無邪気特攻素早振り、ニョロボン控えめHP特攻振り、メタグロス@ハチマキ陽気攻撃素早振り、カイリュー陽気攻撃素早振り。メタグロスのハチマキしねんのずつきでニョロボン確定1発。攻撃1段階上昇カイリューの地震は、ニョロボンの冷凍ビームと合わせて確定でメタグロスを倒せます。そして、通常状態の逆鱗でボーマンダを確定1発。


あつあ通信vol.75、編者あつあつおでん


- 関連一覧ツリー (★ をクリックするとツリー全体を一括表示します)

- 以下のフォームから自分の投稿記事を修正・削除することができます -
処理 記事No 削除キー