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  [No.910] 心を繋いで 投稿者:大門 鋼生   投稿日:2012/03/19(Mon) 16:39:45   31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


こちらは、ゲーム「ポケットモンスター ダイヤモンド・パール・プラチナ」のストーリーに沿いながら書かれている物語です。

ストーリーの主軸となっているのはプラチナですが、ダイヤモンド・パールの要素やオリジナルを交えながら書いています。

更新日等は不定期ですが、宜しければお読みいただけると嬉しいです!

ごゆっくりお楽しみください!


こちらの全ての記事には
「描いてもいいのよ」
「評価してもいいのよ」
のタグがついております


  [No.911] プロローグ 投稿者:大門 鋼生   投稿日:2012/03/19(Mon) 16:45:39   32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

Prologue
「Ordinary Dialy〜ありふれた日常〜」



ここは「シンオウ地方」始まりの町「フタバタウン」。

いつもの昼下がり。
この町に佇む一軒のポケモンの育て屋もお昼時を向かえ、一人の少年がキッチンに立っていた。

彼が今作っているのは、預かっているポケモン用と自分たちが食べる用の昼食だ。
上機嫌に鼻歌などを歌いながら調理を進めていると、階段を掛け降りてこちらに走ってくる足音が聞こえた。

誰が来るのか、少年には分かっていた。
これがこの家の"日常"だからだ。


「コウキ兄ぃお昼まぁぁだぁぁ!?アタシもうお腹すいたよ!」
「もうちょっと待ってなよマイ!」
「え〜!可愛い妹がお腹空かせて倒れそうなんだよ!?」
「もうすぐできるから座ってなさい!ったく、マイはいつもそうやって急かすんだから」


呆れたような声で妹の愚痴をこぼしながら、毎日こんなやり取りを続けている。

調理を終えて食器に盛り付けながらマイへ視線を送る。


「マイ、母さんと姉ちゃん呼んできてくれる?」
「マイはお腹が空いてうごけませ〜ん」
「お昼食べさせないよ?」
「呼んでくる!」


コウキの一言によって、マイは素直に姉と母を呼びに席を立つ。
昼食を誰よりも待ち望んでいる彼女には「お昼を食べさせない」という言葉は効果抜群だ。

コウキはそんなマイの弱点を知っている。


暫くしてマイは姉と母を連れて食卓に戻ってきた。
既にテーブルの上にはきれいに盛り付けられた、コウキ作の昼食が並べられている。


「それじゃ、僕は先にポケモンたちのご飯をあげてくるよ」


そう言ってコウキはポケモンフーズの盛られた容器を幾つか持って、家の裏にある小屋へと向かった。

小屋に着くとお腹を空かせたポケモンたちが、「待ってました」と言わんばかりの表情でコウキの周りに集まってきた。
このポケモンたちはこの家のポケモンではなく、トレーナーたちから預かっているポケモンだ。

ポケモンたちが美味しそうにポケモンフーズを平らげていく光景を、コウキは笑みを浮かべながら見ていた。


何気ない、いつもの昼下がり。
こんな日常もコウキは好きだった。

しかし、そんな日常が少しずつ変わり始めようとしていた。

運命が動きだし、「冒険」に満ちた日常が、コウキの前に訪れようとしていた。


それは、また次回のお話し…



To be continued...


  [No.912] キャラクター説明 投稿者:大門 鋼生   投稿日:2012/03/19(Mon) 16:55:16   32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]



・コウキ
年齢:11歳
性別:♂


「シンオウ地方」の「フタバタウン」出身のポケモントレーナー
テレビでやっていた「ナナカマド博士が帰ってきた」というニュースを見て、「ポケモンが貰える!」と騒いでいた幼なじみの「ジュン」に連れられて「マサゴタウン」へ
そこから事件へと巻き込まれていく。
母(アヤコ)、姉(ホノカ)、妹(マイ)との4人暮らし
何処か抜けている姉と妹の2人とせっかちな幼なじみに囲まれて育ったせいか、至って真面目な少年に成長
料理やポケモンの世話が得意で、毎食の当番とポケモンの世話を担当
ポケモンバトルは今まで殆ど経験していないため、実力は未知数
普段の一人称は「僕」だが、感情が高ぶったりすると「俺」になる


・ジュン
年齢:11歳
性別:♂


コウキと同じくフタバタウン出身のポケモントレーナーの少年
かなりせっかちな性格で、思い立ったら即行動の無鉄砲
父親はジュンが小さい頃に旅に出ていったきり戻ってきていないが、その実力はかなりのものらしい
ジュン自信も父親譲りのバトルセンスを発揮しながら、トレーナーとしての実力をめきめきと向上させている



・ヒカリ
年齢:11歳
性別:♀


ナナカマド博士の研究を手伝っている「マサゴタウン」に住む少女
普段は大人しくおしとやかな性格だが、好奇心が強く初めて見るものによく食い付く
コウキやジュンとの出会いを切っ掛けに、彼女もシンオウ地方を見聞するための旅に出る
何かと事件やトラブルに巻き込まれることも多く、その度に2人に助けられる
バトルよりもコンテストのほうが得意



・ホノカ
年齢:13歳
性別:♀

本作主人公コウキの姉
面倒見がよく、小さいポケモンの世話などを担当している。
家事全般を得意とする彼女だが、唯一の欠点は極度のブラコンということ


・マイ
年齢:9歳
性別:♀

コウキの妹
なかなか生意気な性格で、コウキの事を兄として見ていない
しかし、母のアヤコや姉ホノカとは仲がいい



・アヤコ
年齢:非公開
性別:♀

コウキたちの母
元トップコーディネーターであり、トレーナーだった頃はコンテストで名を馳せていた
引退した今でも彼女のファンは多く、フタバタウンのお祭りなどのイベントでたまに演技をすることがある



ナナカマド博士
年齢:60歳
性別:♂

マサゴタウンに研究所を構えるポケモン研究者
ポケモンの進化について研究しており、最近までは同じポケモン研究者である「カントー地方」の「オーキド博士」のところを訪ねていた
ある偶然からコウキとジュンにポケモンを託す


  [No.913] 1話 変わり始める日常 投稿者:大門 鋼生   投稿日:2012/03/19(Mon) 16:57:54   45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]



ポケモンたちが食事を始めるのを確認し、コウキも昼食をとるために家に戻る。
腰に巻いているエプロンを外し、自分の席について盛られた料理に箸をのばす。

ふと自分の隣に座っている妹の皿に目を向ける。
食事を始めてからさほど時間はたっていないはずだが、既に彼女は半分以上を食べていた。


「早食いは体に悪いぞ?」
「おああういてうんあから…モグモグ、仕方ないじゃない」


口に食べ物を含みながら話していたため、マイの言葉の前半はあまり聞き取れない。
それについて再びコウキが注意すると、「は〜い」と生返事を返して、空になった食器を流しに持っていく。

そのままマイは二階の自室へと戻っていく。


「まったく、マイはいつもいつも」
「まぁまぁそれがマイでしょ?」
「そうそう」


愚痴るコウキを反対側の席に座っている2人が宥めようとする。


「母さんとホノカ姉ちゃんがそんなんだからマイも調子に乗るんじゃないかぁ!」
「そんなこと言ったって、マイは昔っからあの調子なんだから仕方ないじゃない @ラ


コウキの姉、ホノカは軽くコウキの言葉を受け流す。
ホノカはマイに対して少し甘いところがあるらしく、マイの肩を持とうとする。

こんなことが続いており、「姉としての自覚が薄れてきているんじゃないか」と、コウキは最近感じていた。
自分もまだ小さかった頃は"頼りになるお姉ちゃん"とホノカのことを見ていたが、最近はマイの姉というよりも"友達"といった感じだ。

そんな調子で昼食も終わり、食卓にいるのは食器洗いをしているコウキとテレビを見ている彼の母、「アヤコ」の2人だ。

先程の会話を思い出してアヤコがコウキに言葉をかける。


「コウキももうすっかりお兄ちゃんが板についてきたわね」
「どうしたんだよ急に…姉ちゃんがあんなんだから、僕が面倒みるしかないでしょ?」
「フフッ、確かにそうね。ポケモンたちもお昼を食べ終わった頃だし、食器を持って来るわね」


そう言ってアヤコはポケモンたちがいる小屋に向かった。

コウキは再び食器洗いを始めたのと同時に、テレビに速報が入った。
不意に、コウキはテレビに視線を向ける。

そのニュースの内容は『ナナカマド博士がシンオウに帰ってきた』というものだった。



昼食の後片付けを終え、ポケモンたちとのんびり過ごすコウキのいつもの昼下がり。
それを打ち壊すかの様に、一人の少年が慌ただしくコウキの家へと走ってくる。

急いで玄関の扉を開け放つと、少年は大きな声で叫んだ。


「コウキ!コウキ!コウキ!コウキ!コウキ!コウキーーーー!!大変だぁぁぁぁ!!」


突然の声に、耳鳴りをおぼえながらコウキが玄関へとやって来た。


「どうしたのさジュン!いきなり叫ばないでくれよ!」
「どうしたもこうしたもあるかよコウキ!お前もさっきのニュース見たろ!?」


コウキの言葉の後半には全く触れずに、自分が話したいことを話し進めるジュン。

彼はコウキの幼なじみで、家が近い者同士ということもあり、小さい頃からよく遊んでいた。
ジュンの欠点と言えば、先の言動からも分かるように、かなりせっかちなことだ。


ジュンの問いかけにコウキは頭にクエスチョンマークを浮かべる。


「さっきのニュース?」
「『ナナカマド博士がシンオウに帰ってきた』ってニュースだよ!お前だって見ただろ!?」


そう言えばそんな速報がテレビで流れていたなぁ、とジュンの言うニュースの内容を頭で思い返す。


「で、それがどうかしたの?」
「『どうかしたの?』じゃねぇよ!本当にお前って鈍いよな!」
「それとこれとは話が別だろ!?第一、どうやったら"ナナカマド博士が帰ってきたこと"と"ジュンが慌ててること"が繋がるんだよ!」


コウキの言葉に対し、ジュンは頭に右手を添えながら、呆れたようなため息をひとつ吐く。
そして、再度自分がコウキに伝えたかったことを話す。


「いいかコウキ。『博士』っていうくらいだからナナカマド博士はポケモンを沢山持ってるはずだ。ここまではいいな?」
「うん」
「だからさ、俺たちも頼めば博士が研究してる『特別なポケモン』の一匹や二匹貰えるんじゃないか?」
「それはどうか分かんないだろ?」
「いいや、そんなことはない!絶対に貰える!だからコウキ!これから『マサゴタウン』に行くぞ!!」


コウキの話しに聞く耳も持たず、ジュンは独断でマサゴタウンに行くことを決めてしまった。
こうなったら、いくら言ってもジュンには聞かない。

それでもコウキはジュンに制止を掛けようとしたが、早速ジュンは出掛ける準備をするために自宅へと引き返してしまった。

遠くから「遅れたら罰金100万円な!」と言うジュンの声を耳にしながら、仕方ないと諦めムードのコウキも自室へと向かう。


「まぁ僕もナナカマド博士に会ってみたかったし、丁度いいと言えば丁度いいか」


そんな事を呟きながら、クローゼットからベストやマフラー、帽子等を取り出す。


  [No.920] 2話 予感 投稿者:大門 鋼生   投稿日:2012/03/22(Thu) 15:41:49   42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]



外出用の服に一通り着替え終え、階段を降りて玄関に向かう。
コウキが階段を降りる音に気づいたのか、マイが自室から顔を覗かせる。


「兄お出かけ?」
「うん。ちょっとジュンと出かけて来るよ。晩ごはんの支度には間に合うように帰ってくるから!」


靴を履いて、勢いよく玄関から飛び出す。
それと同時に、『何か』が家の裏の方から駆けてきてコウキの肩に飛び乗る。

『何か』とはコウキのパートナーである電気タイプ、『こねずみポケモン』のピチューだ。


「行くぞ、ピチュー!」


コウキはフタバタウンからマサゴタウンへ続く『201ばんどうろ』へ向けて走り出した。



…………………



「遅いぞコウキ!」


201ばんどうろの看板の下、既にジュンと彼のパートナーの『よなきポケモン』ムウマが待っていた。


「そんなに待たせてないだろ?僕だって急いで出てきたんだから」
「そんなのはどうだっていいんだよ!早くマサゴタウンに行こうぜ!」


話があまり噛み合わないまま、2人と2匹はマサゴタウンへ向けて201ばんどうろを歩いて行く。


「でも、どうしてジュンはそんなにナナカマド博士のポケモンが欲しいの?」


ふと、コウキは頭に浮かんだ疑問をジュンへ問いかける。
少し考える素振りをした後、ジュンはコウキの質問に答えるべく口を開いた。


「旅に出たいんだよ!」
「旅に?」
「あぁ!バトルはフタバタウンの誰にも負けない自信がある。けど、それだけじゃもっと強く…ダディみたいに強くなれないんだ!」
(ジュンの…父さん)


コウキはジュンの父親について思考を巡らせる。
ジュンの父親は、彼がまだ小さい頃に旅に出ていってから殆ど家に帰っていないらしい。

コウキ自身も会ったのは一度だけで、しかもかなり幼い頃の出来事のために記憶が曖昧である。
しかし、一つだけ覚えているのは、彼のバトルの腕だ。

当時トレーナーではなかったコウキやジュンから見ても、彼の実力の高さをはっきりと感じることができた。

そんな父親だからこそ、ジュンは彼を目標とし、その背中を追いかけるためにも旅に出たいと言ったのではないかとコウキは考えた。

「だったら、今まで以上の努力が必要だろ?もっと強くなるためにはさ!」
「そんなのとっくに知ってるよ!だからこそ旅に出て、ジムに挑戦して、いつかダディを越えて見せる!」


そんな事を話しているうちに、2人はマサゴタウンに到着した。

コウキとジュンは早速ナナカマド博士の研究所を訪ねる。

正面玄関の呼び鈴を押すと、研究所内からナナカマド博士の助手であろう研究員の女性が出てくる。


「何のご用かしら?」
「俺ジュンです!早速、俺にポケモンを下さい!」
「はいっ!?」
「違うだろジュン!」


自分の気持ちをストレートに言い放ったジュンにコウキが思わずツッコム。

──全く、せっかちにも程がある。──


「僕の名前はコウキと言います。あの、ナナカマド博士はご在宅ですか?」
「あら、あなたたちナナカマド博士に用事?」
「はい!ナナカマド博士に会ってポケモンを…」
「ジュンは黙ってて」


先程の様に話を拗らせないように、ジュンの言葉を遮る。
「なんだってんだよ〜!」と騒いでいるジュンを尻目に、コウキは研究員の女性と話を続ける。


「ナナカマド博士なら、助手のヒカリちゃんと一緒に『シンジ湖』に行ってるわよ?」
『『シンジ湖』に!?』


シンジ湖と言えばシンオウ地方の三代湖の一つに数えられる湖で、フタバタウンの近くに存在する。
しかも、彼らが今いるマサゴタウンとは正反対の方角に、その湖はある。

つまり、コウキとジュンがここへ来たのは無駄足になってしまっと言うことだ。


「なんだってんだよー!折角ポケモンが貰える……じゃなくて、博士に会えると思ったのによぉぉ!!…って、コウキ?」


コウキの何かを考えた込むような、それでいてどこか不安そうな表情に気づき、ジュンは言葉を止めた。


「あの、博士たちは何をしにシンジ湖に?」
「え?シンジ湖に生息するポケモンの生態調査だけど、それがどうかしたの?」
「博士やヒカリって子はポケモンを持っていきましたか?」
「ヒカリちゃんはポケモンを置いて、博士は成長過程を観察中のポケモンを連れていったわ」

(『成長過程を観察中』ってことは、レベルの低いポケモンだよな…)


コウキの表情にあった不安の色が徐々に危機感に変わっていく。
彼の頭の中に、ある最悪の出来事が想像されたからだ。


「ジュン!シンジ湖に行こう!」
「一体どうしたって言うんだよ!?」
「今のシンジ湖にポケモンを持たずに行くのは危険なんだ!だから、2人が危ない!」


そう言ってコウキはシンジ湖に向かうために、急いで201ばんどうろへ引き返していく。
その場に残されたジュンと研究員は何がなんだか分からず、ただ立ち尽くしていた。


「え…2人が危ないってどういうこと!?」
「よく分かんねぇけど、兎に角俺たちに任しといてください!俺はバトル強いですから!」


ジュンもコウキの後を追って駆け出す。