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  [No.994] 第21話「それはわがままなのか」 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2012/05/31(Thu) 07:48:02   70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「ほら、さっさと復習をやりな」

「待つでマス、今日は大事なニュースの日でマス! だからまずニュースでマス」

 10月29日、木曜日。今日も今日とて訓練の後に復習をやっている。時間は5時頃で、この季節ならもう夕日が目に刺さる自分だ。俺はと言うと、仕事を定時までに仕上げて誰もいない図書室で部員達の勉強を見ている。

「なら、さっさとやることを済ませるこった。そしたら好きなだけ見るが良いさ」

「……ターリブン、諦めろ。まずは今日の復習をやろう」

「イスムカ君までひどいでマス……」

 俺とイスムカに促され、ターリブンは渋々ノートを開く。……向学心はバトルでも大事だってことに、早く気付いてもらいたいもんだね。

「さてと、今日の仕事が終わった俺は夕刊でも読むか」

 俺は図書室に置いてある夕刊を手に取り、2面と3面を読み始めた。勉強の世話と言えど、ただ見るのも時間の無駄遣いなんでな、夕刊でも読もうってわけよ。ついでに説明すると、俺が1面を読まないのは大事なことが書いてないからだ。センセーショナルな記事で読者の目を引き、本当に重要な話題は1面から追いやる。俺を今の境遇に導いたあの事件だって、大した話じゃないにもかかわらず1面だった。全く、なんのための新聞か分かったもんじゃねえ。

 頭に血を昇らせていると、夕刊越しに何かの影が俺の視界に入った。俺が夕刊を閉じれば、そこにいるのはいつもの3人だ。皆1面に釘付けである。

「……おいお前達、何見てんだ。そんなに驚くような記事でもあったのか?」

「そりゃそうでマス! オイラが知りたかったのはこのことでマス!」

 ターリブンは力強く指差した。その先には、このような内容が書かれてある。

「何々、『ツカノ選手、入団拒否』か。ツカノって誰だ?」

「ご、ご存知ないのですか先生? ツカノ選手は大学で最も評判のトレーナーで、お爺様が監督をするタテウリアイアンツへの入団を希望していたんですよ」

「ところが、昨日のプロポケモンリーグのドラフト会議で波乱が起きました。アイアンツは他チームに指名されないようにしていたはずなのに、リングマファイターズが指名して交渉権を手に入れたんですよ。で、今日何か発表があるんじゃないかと噂されてたと言うわけです」

 ラディヤとイスムカの説明で、話はぼちぼち理解できた。アイアンツはタマムシシティを本拠地にしていて、プロリーグの盟主を気取ってることで有名だ。今回の事件は、ここのわがままを通すための算段か。

「そうか、そりゃ随分意志の固い野郎だ。その是非はともかく、自分から望んだ道を否定するなんざ、中々できねえぜ」

 俺は皮肉交じりにそのツカノって奴を評した。すると、ラディヤがこう尋ねてくる。

「先生はこれについてどう思いますか?」

「俺の意見か。そうだな……この会議で指名されるには、事前に申請しなきゃならねえんだろ? チームが1つじゃないのは周知の事実、だからトレーナー側は『どのチームに選ばれても文句言わない』と認める必要があるだろう。プロになりたいって意志表示しておきながら、お望みのチームじゃなければ交渉もしないなんてのは、単なるわがままだろ」

「そうでマスか? 別に問題無い気がするでマスが……」

 ターリブンは頭にクエスチョンマークを浮かべながら首をひねる。理由も無しに反論する、あまり感心できねえな。

「おいおい、冷静に考えてみろよ。例えば、ターリブンがクラス中の女子へ一斉に告白したとする。当然彼は、とにかく誰か彼女になってほしいと思っている。にもかかわらず、彼の告白を受け入れた女子を『好みじゃないでマス』の一言で振ったらどうなるよ? 言動と行動が矛盾していると指摘されても仕方あるまい」

「うーん、そう言われてみればそうだな。他チームに移籍する手段も結構ありますし、入っといた方が良いかもしれませんね」

「だな。まあ、交渉できるのが1チームだけってのも問題だとは思うが。複数チームが、くじ引き等によって優先順位が生まれるよう交渉できれば、んなことにはなってないだろうし」

 俺は例え話に加えて、現状の制度の改善すべき点も指摘しておいた。これで少しは考えもしっかりするだろう。

「そうでマスな。2年後、オイラが選ばれる頃には改善してほしいものでマスよ」

「では、2年後に選ばれるためにも勉強をしっかりしないといけませんね、ターリブン様」

「う、それは勘弁してほしいでマスよ……」

 ラディヤの鋭利な突っ込みに、一同笑いを込み上げるのであった。さあ、そろそろ勉強を再開させるか。


・次回予告

週末、約束通りサファリの手伝いにやって来た俺達。それも終わり、訓練の時間が訪れた。そう言えば、あいつらは先週何を捕まえたんだ? 勝負がてらに確認しておくか。次回、第22話「ボランティアと秘密の訓練」。俺の明日は俺が決める。


・あつあ通信vol.87

今日の話の元ネタ、プロ野球好きなら知ってるはずの話題だったでしょう。現実世界の話題を積極的に取り上げると言う今作の目標をこなせて良い感じでした。ところで、今この後書きを書いているのが2012年3月16日で、丁度某球団が色々やらかしたニュースが話題になってます。こういうのもまた別の機会に書いてみたいですね。


あつあ通信vol.87、編者あつあつおでん


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