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100 船玉様  No.017(HP


PDFバージョン  フォルクローレに採用されると見開きの片側に絵がつきます。


 航海の安全は、今も同様であるが昔の人々の切なる願いであった。現代でこそ船が沈んだりする事例は少なくなったが、今も昔も海を渡るとか猟に出ると言えばそれは命掛けの行為である事には変わりない。そんな猟師達に信仰されてきたのが船玉様だ。船大工が新しく船を造る時、そのご神体は女性の毛髪を束ね玉状にしたもので、船の中央の帆柱の下などに、はめ込んだという。人形(ひとがた)だったり、さいころ二個などである場合もあったらしい。そしてホウエン地方の一部などはカゲボウズの形の張り子や木彫り像などを船玉様のそれとしたという記録がある。ご存じの通り、カゲボウズは憎しみ、怒り、恨みなどの負の感情を喰らうとされており、船を襲い、自分達の仲間にくわえようとする船幽霊から、護ってくれると信じられていた。海上で万が一、船幽霊に出会ってしまってもカゲボウズがそれらの霊の恨みを忘れさせ、成仏させてくれると考えた訳である。
 尚、用途や目的異なるが、西欧の航海士達の間ではマッギョが大人気だったという。船底について貰えれば電撃で船底をかじるサメハダーや海のゴーストであるブルンゲルを追い払ってくれるから、という事らしい。お守りとして船底にマッギョのレリーフをつける事もあったようだ。