戻る
------------

113 処刑台に寄り添う不吉 リング(HP


PDFバージョン  フォルクローレに採用されると見開きの片側に絵がつきます。


 中世カロスにおける魔女狩り。これは、悪魔と契約して魔女の力を手に入れた異端者を排除するという建前のために行われたもので、教会同士の対立と、それによって生じる権力の揺らぎへの対抗策として行われた行為です。
 魔女裁判は密告が奨励され、隣人同士があらゆる行動に目を光らせ、疑惑の目で見られました。教会への礼拝が少ない、逆に熱心すぎる、医者や産婆が医療行為に失敗したりといった行為が疑わしいとされたり。あまつさえ、魔女裁判を批判すれば、お前が魔女だから批判するのだろうと疑われ、商売が成功すれば悪魔との契約だと言われて。魔女であることを疑われます。
 そうして魔女と認定された者達は牢獄へと収監され、ました。この時点で彼らの運命は決まったと言ってもよく、これより先の処刑に必要なのは彼らの自白か、もしくは彼らが悪魔であるという確固たる証拠のみ。
 しかし、その証拠というのは、処女膜の有無であったり、水中に投げ込んで浮かべば魔女、浮かばなければ人間というものだったり(大抵の人間は浮かび、沈んだとしても息が続かない程長い時間沈んでなくてはならないため、どちらにしても死ぬ)と、ねつ造し放題であり、また迷信に基づいたいい加減なもの。
 それらの証拠を出されても魔女であることを認めなければ、拷問によって強制的に自白を引きずり出すというものでした。それで自白を引き出しても、共犯の魔女がいるのではないかと問い詰められ、拷問は終わらないのです。そうして、何人もの無実の人々が犠牲になってゆきました。

 そんな時代には、それなりのモノが集まる定めなのでしょうか。憎しみを蓄えて死んでいった魂を貪るように、処刑台に、犠牲者の家に。怨みを食べて生きるカゲボウズと呼ばれるポケモンが、数え切れないほど集まっては不吉な陰としてささやかれていました。時には、処刑された者を密告した者が、あまりに異様な光景に恐怖で発狂しては、狂人の疑いがかけられ新たな犠牲者になるという何とも因果応報な結果になったという話もありました。
 不吉な存在はそれだけではありません。処刑(特に絞首刑)が行われ日の夜には、どこからかパンプジンが引き寄せられて、処刑台の近くの土に植わっているのです。突然あられた植物の芽のようなパンプジンの上半身を見て、引き抜けば叫び声をあげてそれを聞いた者を殺すという伝説のあるマンドレイクだと恐れて近寄りたがらなかったそうです。
 それらを躍起になって排除した聖職者もいたのですが、それらのポケモンは憎しみを浄化したり、さまよえる魂を導いたりという役割を担っています。排除すれば、周囲に憎しみや浮かばれない魂といった穢れがくすぶって、それらに影響を受けた人の心は荒み、病んでしまうのです。魔女狩りが長い時代続いた理由は、それらのポケモンを排除しようと躍起になったことも原因なのではないでしょうか?