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137 シェイミのブーケ  No.017(HP


PDFバージョン  フォルクローレに採用されると見開きの片側に絵がつきます。


 母や父、それに恋人へのプレゼントとしてシェイミを贈るのがブームになっているのをご存じだろうか。
 もちろん本物のシェイミはとても珍しいポケモンなので入手は難しい。この場合のシェイミとは好みの花を組み合わせたブーケをランドフォルムのシェイミ鉢植えに入れて作るシェイミブーケである。そのかわいさと、色とりどりのリジナルシェイミを作れるのが人気となり、フラワーショップごとに様々なデザインのものが考案され、売られているという。
 これに便乗したのがシンオウ地方ソノオタウンだ。花畑が有名な同市は年二回、母の日と父の日にシェイミブーケコンテストを開催するようになった。会場にはたくさんの人々が集まり、用意された種々の花や木の実を用いてブーケを作り、シェイミ鉢に収めていく。会場に集まった人々とゲスト審査員の投票によってその年のベストシェイミを決めるそうだ。
 シェイミ陶器はもともとハクタイシティの花屋店員がハクタイの森の苔を売り出すのに考案したのが始まりらしい。地元の人々にはかねがね好評で、その後、ガーデニング用品として商品化され、ホームセンターの片隅で陶器が売られていたりした。
 転機が訪れたのは数年前だった。母の日にネットユーザーがブーケをシェイミ鉢に入れ写真撮影、「母の日にシェイミを贈りました」と写真をアップしたところ、真似してオリジナルのブーケをアップする人々が続出、シェイミ陶器が一時期品薄となる事態が発生した。問い合わせも多数あり、以来、プレゼントの定番として様々なフラワーショップで取り扱うようになった。母の日、父の日、ホワイトデー、結婚記念日などの場面で引き合いがあるという。
 そんな訳でこのシェイミブーケは比較的新しい文化である。だが、母の日などに花を贈るという習慣のそれ自体は比較的古い歴史を持っている。
 感謝ポケモンと言われるシェイミは、感謝の気持ちを感じ取ると花を開かせ、その気持ちを届ける為にスカイフォルムとなり飛び立つという言い伝えがあり、グラシデアの花を好むという。グラシデアは子供の手の平ほどの赤い花で、乾燥や冷害にも強い為、寒い地域でも育てやすい。北欧の地方には母の日などにこの花を贈るという習慣があって、多くが栽培されている。
 この地方に伝わる昔話によれば、まだ王様が国を治めていた時代、北国から遠い異国に嫁いだ王女が自分の息災を伝える為、両親に赤い花を贈った。それがグラシデアの花で、それを運んだのがスカイフォルムのシェイミであったという。花を受け取った王様とお后様は大変に喜んで、種を増やし、国中に植えさせた。以来、北欧では記念日、ことに母の日や父の日にグラシデアを贈るようになったという。
 現在ではスカイシェイミの役割を様々なポケモンが担っている。母の日、父の日になれば、伝書ポッポやヤヤコマがグラシデアの花束を運ぶ姿が町のあちこちで見られる。大きい花束やたくさんの数を運ばせたい場合はペリッパーを使う。陸上のポケモンに運ばせる人もいるが、やはりスカイシェイミを意識してか、運び役は鳥ポケモンの人気が高いという。
 シンオウ地方のソノオでもそれは同様だ。コンテスト審査を終えたシェイミブーケ達は籠に入れられると、ムックルやムクバード達によって各家で待つ父母の元へと届けられていく。コンテストの優勝作品はひとつだけだが、贈られる側にとっては受け取ったそれこそが優勝作品であろう。
 国や地方ごとに形を変えながら、今年も感謝の花束は空を行く。