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27 蟲毒 リング(HP


PDFバージョン  フォルクローレに採用されると見開きの片側に絵がつきます。



 蟲毒という呪術がある。これは肉食のポケモンを一箇所に集めて黒いまなざしなどを利用し閉じ込め、共食いをさせて最後の一匹になるまで殺し合わせるというものである。
 古くはタマゴグループに蟲が含まれるポケモンのみで行われたがゆえに『蟲』毒という名前にその名残があるが、初期のころより怪獣グループやドラゴングループのポケモンも使われていたため、定義は曖昧だった。
 だが、呪いに使われるポケモンの種族は大して問題ではなく、重要なのはそうして生き残ったポケモンの強力な力についてである。
 そもそも、生き残ったポケモンだって度重なる殺し合いの後。よほど他と実力が離れていなければ酷い重傷を負っているはずであるが(もしくは、腕が千切れたくらいでは死なないからこその蟲系のポケモンなのかもしれない)死なないのは何故なのか?
 最後に生き残ったポケモンはすさまじい生への執着を持ち、その上に死んでいったポケモン達の恨みや憎しみ抱えているため、生命力は強化されその存在自体が呪術『蟲毒』となるからである。
 蟲毒となったポケモンは術者に富をもたらすが、定期的に生贄をささげなければ、(術者と同種の生物でなければいけない。要するに、原則的に人間を生贄にささげるわけである)代わりに術者が殺されてしまう。そして、術者が蟲毒を捨てようとしても、蟲毒は何度でも舞い戻ってきて、しかも物理的な手段では殺せない。
 蟲毒を捨てるには、蟲毒がもたらした富と共にポケモンを他人に押し付けるしかなく、それによって押し付けられた者を殺すためにも使用されるのである。

 だが、蟲毒の最も恐ろしい性質は、蟲毒となったポケモンを喰らうことで、術者自身が新しい蟲毒になることも可能となるという点だ。
 術者が蟲毒になるという現象で記録に残されているもので最も有名なものは、五百年前にズイタウンで起こった大虐殺であろう。
 かつて、この地を開拓しようとやってきた侵略者に、一族を皆殺しにされた男がおり、襲撃を受けながらも命からがら落ち延びた彼は、同じくズイタウンの開拓監督に追われているという呪術師に出会う。男は呪術師が侵略者と同じ人種であるにもかかわらず、敵を同じくするという共通点を頼りに意気投合した。
 蟲毒の話を持ちかけられたとき、彼も一度は『ポケモンを殺し合わせるなんてとんでもない』と反論するも、一族を丸ごと殺された怒りには勝てず、呪術師のポケモンと共に巨大な穴を掘り下げ、百七のポケモンに殺し合いを行わせ、最終的にそれを喰らい自身が蟲毒となった。
 百八の魂の頂点に立ち蟲毒となった男は、侵略者達をたった一人で集落ごと殲滅させるも、ピカチュウを連れた波導使いが命懸けで封印したといわれる。要石に封印された男は波導使いの手により御霊の塔に封印され、今も開拓者の墓に寄り添うようにして、恨みを晴らす機会を待っているのだとか。
 ちなみに、その呪術師の身元は一切不明であり、蟲毒のポケモンを集めた方法も不明。蟲毒となった者も本当に先住民だったかどうかすら定かではない。真相はあくまで波導使いの手記に残されるのみである。