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62 枕返し リング(HP


PDFバージョン  フォルクローレに採用されると見開きの片側に絵がつきます。


 枕が変わると眠れなくなる。布団が変わると眠れなくなる。旅行へ行った時などに、そう言った睡眠事情で困る事ってありますよね?
 もしかしたら、それはお布団の感触による違いのみならず、そこに住んでいるポケモン達のせいかもしれません。
 ジョウト地方のエンジュシティで営業するとある旅館では、いつも寝相の良い人でも普段からは考えられないほど寝具が乱れてしまう事がよくあるそうです。
 その原因となるのが、悪戯好きなムウマな仕業だというのです。彼らは、子供のようなかわいらしい見た目で寝床に現れ、枕をひっくり返すだけならず、酷いときは東向きに眠っている人が朝起きたら西向きになっていたなど、大胆に寝相を乱す悪戯をして、毎晩楽しんでいるのだとか。
 標的にあった人も、驚きはするけれど無害だから怒るに怒れない、何とも可愛らしい悪戯なので、一部の熱狂的なムウマファンがその姿を目に焼き付けようとこの宿を訪れることもあるのですが、そんなつもりで訪れた客の元には警戒して現れないそうで、寝たふりは通じないということが分かります。
 無警戒に眠っていたお客様が、ムウマの気配に気づいて不意に起きたときのみ、ムウマの姿を拝めるそうで、ムウマファンからは『宝の持ち腐れだ』と冗談交じりに不満の声が上がっています。

 かつてその悪戯の犯人が分からなかった時、この現象は『枕返し』という名の妖怪の仕業と考えられていて、別のポケモンが原因の現象と混同されることが多かったと言います。
 混同された例を挙げれば、ところ変わってカントーのシオンタウンにもまた枕返しと呼ばれる妖怪がよく出没していました。
 こちらの枕返しはゲンガーの仕業と言われ、下手すると命を奪われかねない危険な枕返しとされています。
 彼らは、部屋の隅でじっと獲物の様子を伺い、標的が眠っているときに突然寒気を感じて、大きな音をたてられ驚かされたかと思えば、飛び起きた拍子に枕が転がってしまうから、枕が返るのだとか。
 眠っているとき、人の魂は半分ほど体から出かかっており、非常に不安定な状態です。そんな状態で、酷く驚いたりなどすると、魂は一瞬体から離れてしまうのです。
 驚くことを『魂が飛び出る』という表現がありますが、まさにその状態となった魂は、すぐに体に帰ろうとしてもゲンガーが枕を返したことで魂が体に帰れなくなってしまうというのが、民俗学的な見解です
 そうして立ち往生した魂は、ゲンガーの餌食になり、食われてしまいます。同じ枕返しでも、こちらは笑って許すことも出来ないエピソードですね。

 夢を見るという事は、魂が異世界を覗き込んでいるような状態で、枕はその覗き窓のようなもの。ですので、枕を返すとその覗き窓が遮断されてしまうから、飛び出た魂が体に帰れなくなると言われています。
 もしもあなたが眠っている人の枕を返したなら、悪くすればその人の魂の一部、もしくはすべてが体に帰れず、その人の寿命縮めたり、死に誘われたりという結果を招きかねません。
 そうなっても、ムウマならば魂を元に戻すことも出来るでしょうが、私達人間にはきっとその作業は難航することでしょうし、元に戻らない可能性もあります。
 良い子の皆さんは、ムウマの真似をして他人の枕を返してはいけませんよ。取り返しのつかないことになるかもしれません。