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77 マフォクシーの樹  No.017(HP


PDFバージョン  フォルクローレに採用されると見開きの片側に絵がつきます。


 かつてカロス地方はその全域が森だったと言われており、開発の進んだ現在においても木の実の大樹が街道のあちこちに残されている。今となっては真偽を確認する事も出来ないが、街道で確認出来る大樹にはそれぞれ言われがあるのだという。
 例えばミロワール通りこと11番道路のオボンの大樹はかつてのカロス王家に連なる大貴族が手植えしたと伝えられているし、8番道路のあるミュライユ海岸のマゴの大樹はカロスの国民的ヒロインであり守護聖人の一人であるジャンヌ・ダルクがゴーゴートに乗って訪れた際、鞭に使っていた木の枝を地に刺したものが根付き、成長したものと言われている。
 ジャンヌはカロスの東部の村に住んでいた農夫の娘で平凡な少女であった。が、ある時に「我が土地を解き放ち、カロスを守護せよ」という妖精王ゼルネアスの声を聞いて従軍した。妖精王は千年の間、眠り続けている自分の代行者としてカロスの地を守れ、と語った言われる。というのも、ジャンヌが生きた時代、カロス地方は他国に制圧されかけ、危機に瀕していた。敵国は強力なドラゴンポケモンの軍団を率い、カロス各地を支配下に収めていった。そんな中、ジャンヌは旗揚げ、森のポケモン達と操り人を集めて騎士団を組織した。フェアリータイプの頂点に君臨するゼルネアスの加護を受けた騎士団のポケモン達は次々にドラゴンの軍団を打ち破り、カロス各地を開放して回ったという。そんな事があってジャンヌ手植えであったり、持っていた鞭代わりの木の枝が由来と伝えられる大樹がカロス領内には実に多いのである。
 妖精王の加護を受けたジャンヌの騎士団の乗っていたゴーゴートの蹄の跡からは、草が生え、花が咲き、その花をフラベベ達がお供とした。彼女らが花を構え妖精の風を吹かすと、焦土と化していた土地一帯に花々が咲き乱れ、緑が蘇ったと伝えられている。バトルシャトーを有し、広大な花畑の続く7番道路のリビエールラインもかつて騎士団が通った道として謳われている。
 また、ジャンヌを守った騎士の手持ちの一匹には雄のマフォクシーがいたと言われている。彼は常に護衛としてジャンヌに寄り添い、木の枝を振るって念力や炎を起こして、敵兵士を蹴散らした。異国の侵攻によって荒廃したカロスの地に持っている木の枝を刺せば、枝葉は瞬く間に根付き成長し、実をつけた。お陰でジャンヌが回った土地の人々は餓えから救われたのだと伝わっている。そんな縁起があって、ジャンヌの樹と共に、マフォクシーの樹も各地に存在しているのである。
 その代表は15番道路、ブラン通りの大ヒメリだ。秋になると紅葉の落ち葉が美しい事で知られるこの街道にはしばしばフォッコを貰ったトレーナー達が訪れる。彼ら、彼女らのお目当ては大ヒメリの木の枝で、フォッコに食べさせたり、テールナーやマフォクシーに与える為に拾って帰るという。ジャンヌを守護したマフォクシーの縁起にあやかろうというのだ。
「大事な勝負がある時はここの樹の枝を拾って使うの」
 そう教えてくれたのはトレーナーになって二年目というバリーさんだ。今回はジムリーダーに挑戦するので枝を拾いにきたという。
「炎の勢いが違う気がするの。なんとなくだけどね」
 彼女はそう言うと、紅葉するマフォクシーの大ヒメリの下、パートナーのテールナーと一緒になって手頃な枝を探し始めたのだった。