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96 箒の魔女の正体 リング(HP


PDFバージョン  フォルクローレに採用されると見開きの片側に絵がつきます。


 魔女(広義には男性魔法使いも含む)と言えば、箒に乗って空を飛ぶ。
 名作ドラマの一つである、『奥方は魔女』という作品でも、そのオープニングにカートゥーンアニメ調で描かれたヒロインが空を飛んでいる映像が印象的で、魔法少年の半生を描いた大作映画でもそのイメージは根強く染みついています。そのほかにも、魔女の宅配便などと言った名作アニメに登場する魔女っ子も、魔女が箒に乗って空を飛ぶイメージを植え付けることに一役買ってくれています。
 そんなイメージの源流を遡ると、欧州の大陸を支配していた宗教にとって異教徒とされた女性たちの儀式が元となっています。
 古代欧州に栄えた帝国では、箒とは魔女の仕事の一つである産婆さん達のシンボルでした。女性達は子供が生まれると、家の入口を箒で掃くことで、悪霊が子供に害をなすことを防いだのです。その他にも、時代が移り変わっても箒は魔除けや男根信仰の象徴として使われ、時にそれは女性の自慰のためにも使われたと言われています。
 箒の柄に薬を塗りつけることで、行為の最中に空を飛ぶかのような浮遊感を得ることが、空を飛ぶというイメージにつながっているのです。

 ですが、空を飛ぶというイメージは、何もそういった人間の営みだけが形作ったイメージではないようです。中世には、魔女が実際に空を飛んでいたという目撃情報がそこかしこに上がっており、魔女裁判の尋問で得られたようなあまり信憑性のない証言もあれば、貴族や教会の僧侶たちが実際に目の当たりにしたという文献まで様々です。
 信憑性の高い文献では、魔女達が箒の先端を前方に向け、月の光を受けながら跳んでいたという記述が共通していることが特徴としてあげられます。これは、満月の夜は一部のエスパータイプの力が最も強まることが原因とされ、また先端を前に向ける理由は、その魔女の正体がテールナーやマフォクシーだったことに答えがあります。
 箒のように見えていたのは、テールナー達の尻尾であり、彼らは尻尾を股の間に挟むことで飛行姿勢をとるのです。尻尾の中ほどに木の枝を刺した姿が、月に照らされて箒に見えたのでしょう。どちらも、比較的人の姿に近いポケモンでしたから、魔女が飛んでいると思われていたのでしょう。
 そのため、魔女が空を飛ぶ際の姿勢は箒の先端を前方に向けるというのが正しく、上述したドラマやアニメの飛行方法は逆向きに飛んでいることになるわけですね。こうしたマフォクシーたちの尻尾の位置や形状は、後に男根信仰と関連付けられ、おそらく箒を使った疑似性行も、マフォクシーの飛行姿勢のイメージが先行しているのでしょう。
 今では空を飛ぶマフォクシーを見かけることはありませんが、それは彼らが退化してしまったのか、それとも今もまだ人里離れた山奥で人知れず飛び回っているのか? 月夜の晩に空を飛ぶ練習させてみれば、意外に空を飛ぶ技を覚えてくれるかもしれませんよ。