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98 アズマオウ合戦  No.017(HP


PDFバージョン  フォルクローレに採用されると見開きの片側に絵がつきます。


 江戸時代、大名達は菊を観賞して楽しむという菊見を行った。お抱えの菊師に菊の花を育てさせ、その大きさや美しさ等を競ったという。
 それに負けず劣らず流行ったものがある。それはトキサキント・アズマオウである。これは特に商人達のステータスであった。彼らは大きな生け簀や池などに各々持ち寄ったトサキントを放して泳がせ、その美しさを競ったのである。それは菊見に対し、魚見などと呼ばれた。浮世絵にも魚見を題材にとったものは多い。
 その魚見の最高峰は、ジョウト地方のチョウジに近いいかりの湖で行われるアズマオウの品評会であったという。その魚見は何時の頃からか「アズマオウ合戦」と呼ばれた。一年に一度、アズマオウが一番美しくなる秋になると各地の豪商達が自慢のアズマオウを持ち寄って、湖に集結し、湖は紅く染まった。山々の紅葉にも負けぬその色彩に人々は息を飲んだという。夜になってチョンチーの篝火にに照らされる水面を見ながら、商人達は豪華な食事を楽しみ、商談をした。このアズマオウ合戦には各地の金魚師や操り人も訪れ、同じように参加する事が出来た。特に大きく美しいアズマオウは豪商達が買い上げてくれる事もあった為、彼らにとって一攫千金のチャンスでもあったようだ。彼らにとってアズマオウはまさに「金」の魚であった。