<テーマ>
送 / 贈
<ワード>
◆送 / 贈
・そう‐そう〔サウ‐〕【葬送】
[名](スル)遺体を葬るために墓所まで送ること。のべおくり。送葬。「―する行列」
・おくり‐び【送り火】
盂蘭盆(うらぼん)の最終日、親族の霊を送るために門前などでたく火。門火(かどび)。《季 秋》「―のあとは此世の蚊遣哉/也有」⇔迎え火。
・おくり‐ぼん【送り盆】
盂蘭盆(うらぼん)の最終日で、親族の霊を送る日。《季 秋》「茄子(なす)や瓜一つに流す―/かな女」
・かど‐おくり【門送り】
葬送の際、喪家には行かず自分の家の門口で見送ること。
・しょうりょう‐おくり〔シヤウリヤウ‐〕【精霊送り】
盂蘭盆(うらぼん)の終わる日に、送り火をたいて精霊が帰るのを送ること。たまおくり。
・のべ‐おくり【野辺送り】
死者を火葬場または埋葬地まで見送ること。また、その行列や葬式。野辺の送り。野送り。
・ぼん‐おくり【盆送り】
盂蘭盆(うらぼん)の最後の日に、精霊(しょうりょう)を送り返し、供え物を辻・川・海などに捨てたり流したりする行事。精霊送り。送り盆。
・おくり‐もの【贈(り)物】
人に贈る物。進物(しんもつ)。プレゼント。
・おく・る【贈る】
[動ラ五(四)]《「送る」と同語源》感謝や祝福などの気持ちを込めて、人に金品などを与える。贈り物をする。「記念品を―・る」「はなむけの言葉を―・る」
◆Limbo
・リンボ,地獄の辺土 《地獄と天国の間にあり,キリスト教以前の正しい人,洗礼を受けなかった小児,異教徒,白痴者の霊魂の住む所》.
・忘却; 無視された状態.
・リンボ, 古聖所:天国と地獄の中間の場所;洗礼を受けなかった幼児やキリスト降誕以前に死んだ善人の霊魂がとどまるとされる
→the limbo of infants(幼児リンボ界)
・忘却のかなた
→be cast into limbo(忘れ去られる)
・(両極端の)中間状態[地帯];どっちつかずの状態.
・拘置所, 刑務所;拘置状態, 拘禁.
→in limbo(不安定な状態で, 宙ぶらりんの状態で).
・虚無
◆Animo
アニモ。作中のポリゴンにつけられた名前
→エスペラントは「人工言語」、人為的に生み出された言語
→ポリゴンは「人工のポケモン」という触れ込み
→アニモ[animo]は「魂」「霊魂」などを意味する
<交通整理>
・死者との別れを「送る」と表現するのは間違いのない事実。つまり、死者の魂は確実に「何処かへ辿りつく」と考えられている。
・主人公はアニモに魂が宿っていると考えている。アニモの停止は死と同義であり、アニモの魂もまた「何処かへ辿りつく」必要があると考える。
・肉体が物理的に喪失するまで、魂は眠ったまま宿ると考えられる。送り火山でアニモを葬ろうとしたのはそれが理由。
・しかし送り火山にて、端的に言うと「アニモは生物ではない。無生物だ」と拒絶されてしまった。ここでアニモの「生物である」という前提が揺らぐ。
・この前提の揺らぎが、主人公の思考に大きな影響を与えている。アニモは生物なのか?無生物なのか?
・スピアーの針を供養する「針供養」、ジュペッタにならないために人形を供養する「人形供養」など、無機物に魂が宿っているかのような風習の数々。
・無生物であっても魂は宿るのか?無生物のアニモに魂が宿るなら、その魂はどのようにして送られるべきか?
・アニモは「デジタル・セメタリー・サービス」に「送られ」(送信/伝送/伝送)、今の形を「デジタルで寸分違わず」留めたまま、サーバで眠りに付く。
・肉体の喪失=魂の遊離が前提ならば、アニモの魂は永遠に留められたまま、天国にも地獄にも行けない一つの場所に留まることになる、それこそがLimbo。サーバはLimboである。
・主人公は、アニモをサーバに「送った」のが正しいのか、ずっと答えを出せずに迷っている。
<シチュエーション>
・【魂はある】針を供養するおばあさんとスピアー
・【魂はある】古くなった人形を供養する少女
・【魂はある】森羅万象に魂が宿ると主人公に聞かせたおばあちゃん
・【魂はある】人類が「誕生させた」と説明するプレゼンター
・【魂はない】壊れた竹蜻蛉を捨てる少年
・【魂はない】アニモの供養を拒絶する送り火山
・【魂はない】アニモの死を「機能停止」と表現するカスタマーサポート
<デフィニション>
◆アニモ
主人公のポリゴンの名前。享年十五歳。由来はエスペラント語の「魂」(Animo)から。
◆デジタル・セメタリー・サービス
シルフ社が提供する「電子霊園」。亡くなったポケモンをデータ化して引き取り、「当時の姿を留めたまま」半永久的に保管するサービス。
<募集テーマと作品テーマの摺り合わせ>
・魂は送り込まれ、送られてゆく
・魂は如何にして送り込まれる?
・魂を送り込むのは誰?
・魂は何処へ送られてゆく?
<ポケモン小説としての意義>
・ポリゴンは生物か?無生物か?
・ポリゴンの終末は死か?停止か?
・ポリゴンが生物であるなら、魂は宿るのか?
・魂が宿るとするなら、その魂はどこへ送られるのか?
<タイトルの意味>
◆存在
・キリスト教以前の正しい人
→ポリゴンにとっての「キリスト」はいない
→ポリゴンの善悪を裁く者の不在
◆状態
・どっちつかずの状態・中間状態・不安定な状態
→生物か?無生物か?
→ポケモンか?プログラムか?
→死か?停止か?
・無視された状態・忘却のかなた
→ポリゴンの魂は人々に無視されている or 忘れられている
→魂があるということを無視されている or 忘れられている
◆場所
・天国と地獄の中間の場所
→天国にも地獄にも行けない
→中間・中途半端・どっちつかず
・無用なものの捨て場所
→機能停止したポリゴンはデータとしてサーバに送られる
・拘置所
→サーバに留められたポリゴンは天国にも地獄にも行けない
<何が言いたいのか?>
◆二次創作的アプローチ
「ポリゴンに魂は宿るのか?」
◆テーマ的アプローチ
「ポリゴンの魂はどこへ送られるのか?」
◆タイトル的アプローチ
どっちつかずの状態
→ポリゴンは生物?無生物? 魂は宿る?宿らない?
中間状態
→生物でも無生物でもない、魂が宿るとも宿らないとも限らない
無視された状態
→ポリゴンは生物でありながら、それが無視されている?
天国と地獄の中間の場所
→ポリゴンは天国と地獄、そのどちらにも行けない
無用なものの捨て場所
→ポリゴンの送られるサーバは、無用となったポリゴンの捨て場所
拘置所
→天国にも地獄にも行けないまま、ポリゴンは半永久的にサーバに拘置される
<時系列整理>
・主人公の誕生とアニモの登場
・主人公とアニモのふれ合い
・おばあちゃんとアニモの関係
・おばあちゃんの死
・アニモの死
・アニモの葬儀が拒絶される
・アニモをDCSへ送ることになる
・スマートフォンに写るアニモの姿を見る
<実際の書き起こし順の整理>
・スマートフォンで何かのデータをダウンロードする主人公
・スマートフォンで何かをダウンロードする少女→話の導入
・画面には「アニモ」と書かれている→アニモの存在を定義
・生まれた次の月に家へやってきたアニモ→生まれたときからずっと一緒にいたことの定義
・父親にアニモは玩具ではないと諭される→アニモを「生き物」と考えるようになったきっかけ
・竹トンボを壊す少年→無生物は「死ぬ」のではなく「壊れる」
・一週間前の出来事が脳裏をよぎる→次の回想へのつなぎ
・アニモが死ぬ/機能停止する→アニモが既に亡くなっていることを記す
・変わらないように変わってしまった→重要なメッセージ「変わらないように、変わってしまった」
・人形供養をする少女→無生物にも魂が宿ると言う考え方の暗示
・その傍らには祖母と思しき女性が立っている→祖母の登場に向けての布石
・祖母を一年前に亡くしている→アニモの死を受け入れられたのは、祖母を同じように亡くしていたから
・祖母は常々、あらゆるものに魂が宿ると言っていた→祖母の言葉が、主人公に大きな影響を与えている
・粗大ゴミの山を見つめる→葬られること無く、ただ積み重ねられた無生物
・かつて使われていた痕跡が多く残っている→かつてはどこかで使われ、確かに居場所があったはず、ということの示唆
・送り火山に葬ろうとしたところ拒絶される→非常に重要なシーン。送り火山に拒絶される
・ポリゴンは生物ではないという→ポリゴンは生物ではなく無生物であり、そもそも送るべき魂が存在しない
・スクラップしておいた古い新聞サイトの記事→次へのつなぎ
・架空の人物の告別式・葬式が行われたと言う話→架空の人物でさえ時として別れの儀式が行われることの表現
・カスタマーサポートに「再起動」するよう言われる→アニモが魂のない無生物であると突きつけられる
・プログラムを初期化すると、過去の記憶は消えてしまう→再生ではなく「再起動」であることを示す、ポリゴンが「プログラム」であることを表現する
・ダウンロードの終わったスマートフォン→次へのつなぎ
・片隅に「DCS」の文字が見える→次へのつなぎ
・シルフから「デジタル・セメタリー・サービス」を提供される→デジタル・セメタリー・サービスの定義
・促されるまま、少女はアニモをDSSへ送信する→アニモをDCSへ「送信(伝送)」する
・動いていた頃のアニモの写真→ダウンロードが完了した
・ニュースメールのプレビュー「人類が初めて作り出したポケモン・ポリゴン」→「作り出した」という言葉を使い、ポリゴンが「生み出された」のではなく「作られた」のだと強調する
・友達と喧嘩をして落ち込んでいると、アニモが寄り添ってくれた→アニモの心遣いと優しさ
・固い無機質な感触に、言いようの無い頼り甲斐を覚えた→アニモは確かに意思を持ち、いつも自分の側にいてくれた
・少女は問う「あなたをそこに送ったのは、正しいことだったの」→中途半端で割り切れない場所(=Limbo)に立たされた少女が、永遠に変わらない場所(=Limbo)にいるアニモに問い掛ける
・写真の中のアニモは、何も言わずにただ視線を送るだけ→アニモは何も語らず、ただいつもと変わらない、変わらなくなってしまった視線を「送る」だけ
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Limboの構想ノート兼プロット。本編の執筆時間よりこのメモを弄ってる時間のほうが圧倒的に長かった。
よく見てみると、完成稿ではカットまたは変更された内容も結構あったり。