うちには、タマゴからの付き合いのヘルガーがいる。元々が猟師から貰ってきたから、狩りの本能だけはばっちりあるヘルガー。と思えばおすわりも覚えられないバカ犬であったり、庭に植えていたイチゴをかじっては捨てかじっては捨てた学習能力のないヘルガーである。かと思えば、人の顔は覚えていて、餌をくれた人はばっちり覚えているのだから現金なやつだ。
ヘルガーというのは食べ物を消化する過程の毒を燃やして炎を出すから、何日も洗わないと臭い。犬臭いなんてもんじゃない。冬は1ヶ月あらわなくてもいいんけど、夏はもう一週間洗わないと困る。
遠くに入道雲が見える。日差しが強くなって、ヘルガーも庭に穴をほってそこで過ごしてる。
「リンー! ヘルガー!」
「ラジャー!」
暗号だ。ママが一言でも「洗って」「お風呂」「シャワー」など言えばその場でヘルガーは姿を消す。炎タイプなんだから仕方ないとかいう問題じゃない。問題はこれが密室で言っても、筆談にしてもシャワー決行だと姿を消す。
「ヘルガー覚悟しい」
犬臭い。体を上から押さえつけるように抱き上げて風呂場へ向かう。その時のヘルガーの顔は「ぼくなにかしましたか」みたいな顔。ポケモンだからよくわからないけど。
風呂場についた。逃げられないようにドアを閉める。そうするといつもの場所につく。
浴槽の高低差を利用して、一番高いところに前足をかける。なるほど、なるべく顔に水がかかりたくないらしい。
シャワーをひねる。しっぽが動いてない。容赦なく後ろ足からお湯をかける。あっという間に濡れヘルガー。そこに大量のシャンプーをわっしわっしとつけてわっしわっしと洗う。
その間中、ずっと動かないヘルガー。騒ぐわけでもなく、大人しくしている。抵抗しても無駄と小さい頃から教えた甲斐があったもの。そんで顔を洗おうとするとすっごい嫌がる。口吻(犬とかのあの鼻先から口の名前)に生えてるひげがなんども濡れる。シャワー攻撃から逃げられると思うなよ!
全部すすいで、本当に小さな黒いヤギみたいな生き物になったヘルガーは、まだ同じ所で抵抗してる。ヘルガー用のバスタオルを取ろうとした瞬間だ。いつもこの瞬間だ。ヘルガーの逆襲と名付けている。体についた水をぶるぶるして弾き跳ばすから、そこら中みずびたし。
夏だからかわかすことなくそのまま庭に出す。あつい日光にも関わらず、ヘルガーはそこらを走り回ってる。その顔はやっと開放されたという自由の喜びに満ちた顔だ。
一週間後。
庭に出る。ヘルガーは違う穴をほってそこで涼んでる。そして私の姿を見るなり、一目散に逃げ出した。
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犬バカですごめんなさい。
【なにしてもいいです】