僕はもう行かなければならない。ここではない、どこか遠くに。
僕はまず家に寄った。きっとあの子はここに立ち寄ってくれるはずだ。
あの子には本当に悪いことをした。僕に好意を持ってくれたこと、素直に嬉しいと思っているよ。
だから、最後のダンバルは君に託そう。まだまだ輝く未来を待つ君のパートナーとして欲しい。
机に向かう隣にはエアームドが力無く鳴く。ごめんね、最後まで無理させて。僕にもう少し力があれば、こんな結果にはならなかっただろう。
全ての真実を手紙にしても、君にはちょっと信じられないことばかりだから、僕は誰にも告げずに旅立つ。
ごめんね。本当は君のことをもっと誉めたかった。君の成長を見届けたかった。君の好意を受け止めたかった。これじゃあ僕が君から逃げたみたい。
神様はいつも意地悪だ。願い事など叶えてくれない。けど一つだけは叶えてくれたようだ。
手紙を書き終えた。ペンをおいて、ダンバルのボールを置いた。きっと見てくれると信じている。
扉の開く音がする。思ったよりも早かったね。
「ダイゴさん?」
いつもと違うから戸惑っているのかな。机の上にある手紙を見つけてた。何を考えてるかなんて表情で解るよ。
「ダイゴさんに会いたいよ」
ごめんね。君の願いを聞くことはもうできないよ。僕の願いが叶ったのだから。だから僕は遠くへと行かなければならない。君にこんな無様な姿を見られたくはないんだ。
ポケモンたちが行こうと言う。君が開けた窓から潮風が入り込む。君の髪が潮風に揺れた。僕も君の髪に触れて旅立つ。
「さようなら、ハルカちゃん」
君が教えてくれたのは、人の暖かみ。こんな小さな子に教わるとは思わなかった。
君が立派なトレーナーになって、僕を打ち負かした時は、なんて早く願いが叶ったのだろうと思った。僕はとても嬉しかった。
『ルネシティで、若い男性のものと見られる遺体が発見されました。なお、死後かなり経過しており、警察では身元の確認を急いでいます』
「ざまぁねぇな」
「この先には行かせない…君たちのような無法者に、未来を摘み取る権利などない」
「口だけは達者だな。望み通りしてやるよ!」
もし、生まれ変わりがあるとしたら
君のポケモンになって、ずっと一緒にいてあげる
それで悪い奴らに絶対に負けないくらい強く、君を守ってあげるからね
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あまりの欝さに自分が暗くなった。
【何してもいいのよ】