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  [No.2181] 日常 〜彼女達の場合〜 投稿者:akuro   投稿日:2012/01/08(Sun) 03:30:18   100clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 「ああもうハクリューマジ美しすぅぅぅ!!」

 カントー地方、マサラタウンの北に広がる草むらで、桃色の帽子を被った少女が突然叫んだ。 周囲に人は見当たらなかったが、近くにいた彼女の手持ちポケモン達は大いに驚いた。

 「ぐおお……だからいちいち叫ぶなよモモコ! 耳が痛いわ!」

 最初に言葉を発したのは耳を押さえて抗議したライチュウ。 これは彼らにとって日常茶飯事とはいえ、さすがに突然叫ばれたら驚かない方がおかしい。

 「だってりゅーがめちゃめちゃ美しいんだもん! らいちもそう思わない!? この美しく青いボディーに輝く綺麗な水晶……」

 モモコと呼ばれた少女は瞳をキラキラと輝かせながら、らいちと言うライチュウにハクリューの良さを熱弁し初めた。

 「また始まった……別になんとも思わねえよ。 こんなナルシスト野郎のどこがいいんだか……」

 その言葉を聞き、モモコの傍らにいたハクリューが、ライチュウの前に進みでた。

 「我はナルシストなどではない、単純に美しいだけだ」
 「それをナルシストって言うんだよ!」
 「なにを言う。 もしやこの美しき我のことが羨ましいのか?」
 「はあ!? おまえ、バカなのか? その思考なんとかしろよ!」
 「我のどこがバカだというのだ。 理解できん!」
 「俺も理解できねーよ!」

 ギャーギャー騒いでいる2匹を、モモコはニコニコと見つめている。 その腕の中にはいつのまにかふわふわなワタッコが居た。

 「モモコ〜止めないの〜?」
 「大丈夫大丈夫! あの2匹はケンカするほど仲がいいってやつだから」
 「そなの? じゃ〜あおば寝る〜」

 モモコの腕の中で、ワタッコのあおばはいつものようにスヤスヤと寝息を立て始めた。

 「おやすみあおば♪ ……うふふ、あおばも可愛いなあ♪」

 眠っているあおばを抱きしめながら、モモコはらいちとりゅーの喧嘩に目を戻した。








 既にバトルに突入している2匹のポケモンを、少し離れた木陰から見守っているポケモンがいた。

 「もう、♂ってどうしてあんなに子供なのかしら……」

 呆れたようにため息をつくシャワーズに、隣に居たロコンが無表情で呟く。

 「……そーいう生き物なんでしょ。 それより相談ってなに」

 彼女……ロコンのあかねは、隣のシャワーズのみずりに「相談がある」と言われ、ここに連れてこられたのだ。

 「そ、そうだった……あのね」
 「前置きはいいから」

 「……実は最近、らいちやりゅーと話すと、緊張してつい思ってることと反対のこと言っちゃうの」
 「で?」
 「……いや、これはなんでなのかなって」
 「ただのツンデレ。 以上」

 そう言うとあかねは木に登り、昼寝する体制に入った。

 「え……あかね、それだけ?」
 「うん」

 みずりは呆然としている。

 「……ツンデレってなに?」
 「自分で調べて」

 「調べるって、どう……」
 「モモコに聞けば? あたしは寝る。 邪魔したら燃やす」

 あかねはキッパリと言い、それっきりみずりが話しかけても返事しなくなった。

 残されたみずりは1人呟く。

 「……いつものこととはいえ、やっぱあかね怖いなあ」



 ーーこれが、彼女達の日常である。


 [なにしてもいいのよ]