「ボクたちを止めるならキミも英雄になるんだ! そう! レシラムと対をなすポケモン、ゼクロムに認められてこそようやく対等になれる! ボクたちを阻止できる! さて、どうする?」
冬のセッカシティの空気は冷たい。走っても走っても体は暖まらず、肺まで入ってくる冷たい空気に体温は下がって行く。凍った池の上をすべり、目指すのはソウリュウシティだ。
息が切れて足も重い。それでも走ることは止められない。止めてはいけない。リュウラセンの塔で見たレシラムから感じた威圧感。それを手に入れたN。勝てる気がしない。
「おめでとう! アナタはわれらが王に選ばれました。アナタがこのままポケモンと共存する世界を望むのなら、伝説に記されたもう1匹のドラゴンポケモンを従えわれらの王と戦いなさい。でないならプラズマ団がすべてのポケモンを人から奪い、逃がし、解き放ちましょう!」
鞄の中には沈黙を守ったままのダークストーンが入っている。重くて体力を余計に消耗する。
「そのダークストーンを手にするということは、わしになにかあったときにNと戦うということだぞ。それでいいのか?」
「Nの望む世界……ポケモンとトレーナーとが切り離される世界を待つというのか?」
「……そうか。いまのがおまえの覚悟なんだな。わかった。こころして受け取れい」
凍った池に足を取られ、バランスを崩して派手に転ぶ。モンスターボールが転がり、そのうちの一つが開いた。カノコタウンから一緒のダイケンキが見ている。ごめんね、と言ってダイケンキを戻した。
まわりをみれば、鞄からダークストーンが転がってしまっている。氷にまみれたそれはとても冷たかった。そのまま持ち上げて見つめる。
鞄の中にダークストーンを入れた。やることが違うから。
「デボラ!」
懐かしい声に振り向く。緑の帽子とロングスカートの女の子。幼なじみのベルだ。
「ベル!ベルぅー!!!!」
デボラがベルに抱きつく。小さな子供のように。声をあげて感情を爆発させて。
「わ、わわ? どうしたの?」
「できない、私には出来ない!なんでみんな私に押し付けるの!?Nが私だと言ったから?世界を背負うなんて私には出来ない!出来るわけないのに、どうして!」
「デボラ……」
「私はチェレンみたいに強くない!なりたいものなんてない!あんなレシラムみたいのと戦えないよ!どうしてみんな私に、私に押し付けるの!?」
ベルは思いっきりデボラを突き放す。そして涙に濡れる頬を叩き付けた。
「甘えないでよ!」
二人の間に沈黙が流れる。ベルに叩かれた頬を押さえ、デボラはただ彼女を見上げるだけだった。
「……あたし、ヒウンシティでだいじなポケモンをプラズマ団に奪われたことがあるでしょ……その時、デボラはこういったよね。『ベルはポケモンに優しいけど、優しいだけじゃダメ。ムンナをこれ以上怖い目に会わせないためにも強くなろう』って。あの時、デボラがすっごくかっこ良く見えた。だからあたしもデボラに追いつくために強くなった……それなのに何? あたしの友達は、そんな弱い子じゃなかった!」
ベルの声が曇ってる。手で流れる涙を拭きながらベルは話を続ける。
「プラズマ団のNが、デボラを呼んでる。他に誰も勝てない。勝手なのは解ってるよ!でもプラズマ団がムリヤリポケモンを解放したら悲しむ人ばっかりだよ! だからデボラ!」
ベルの暖かい手がデボラの冷たい手を握る。
「プラズマ団をとめて!!ポケモンが大好きな人から、ポケモンを奪われないようにして!それがデボラが求める真実とか理想だとおもう……」
「ベル……」
「ごめんね……大変なのにわざわざこんなこといいにきて。本当はデボラのこと、リラックスさせるつもりだったのに……でもデボラなら大丈夫だよ。うん!絶対に大丈夫! あたしが保証してあげる!だから、うん……うまく、いえないけど応援してるよ」
「ベル、ベル……!」
「デボラ、信じてるから。あたし、デボラもチェレンも大好きだよ」
「うん、うん……ありがとう、ベル」
デボラは立ち上がる。そして体についた雪を払う。
「出来るところまで行く。私に出来るか解らないけど、Nに会ってくる」
「デボラ、がんばれ!」
「うん!」
デボラは再び走り出す。もう迷いは消えた。心にあった重苦しい思いもいつの間にか消えていた。ベルに手を振って、ただひたすら前に進む。
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ポケモンホワイトをプレイしていて、ここらあたりで私がおいてけぼりになってしまった。
主人公おきざりにしてまわりが盛り上がってるようにしか見えなかったですよ奥さん。
だからきっと主人公はこう思いながらシリンダーブリッジ前のベル戦を戦ってたんじゃないかって思った。
【なにしてもいいのよ】【みんなの主人公はどう思ってた?】