前置き1:流血シーンといったような怖いシーンがあります。
苦手な方はご注意ください。
前置き2:作者の妄想がある意味、大爆発を起こしています。
ご注意くださいませ。(汗)
【<<Id>>】
この世の全てが欲しい。
契機はそんなささいな想いからであった。
この世界はポケモンという不思議な生き物が我々の生きる道に溢れている。
時にポケモンは人を欲し、人はポケモンを欲する。
ならば、そのポケモンを我々の手に入れることができて、我々の許しなしでポケモンを扱うことを禁ずるようにしてしまえば、この世界の人も、ポケモンも全て自分のものになる。世界を思い通りに動かすことができるのではないか。
その為には何をすべきかと考えてみる。
まずは自分についてきてもらう人材を探すか。もちろん自分には逆らえないような人材が必要だ。裏切りなどを起こす気を完全に摘み取り、そして自分に従順になるように教育も怠ってはいけない。一人でも自分にとって不安要素となりうるものは完全に排除しなければ……そこから一気に全てが崩れ落ちるかもしれないからである。排除の方法はなんでもいい。監禁でもいいし、最悪、殺してしまうのも悪くない。
人材がそこそこ集まってきたら今度は組織を作るか。組織には何かしらの目的が必要だ。世界を征服という言葉を直に使っては表の世界で歩きにくい。そこで考えてみたのが、ポケモンと人の関係である。人間はポケモンをバトルなどで傷つけたり、モンスターボールという道具で拘束していたりするのだがそれはどうなのだろうか? 最近はタマゴを孵化させたものの能力が低いという理由だけで、産まれて間もないポケモンを捨てているというではないか。実に都合のいい道具だ。これらをベースに人々にポケモンの自由と権利を訴える形にしていけば、我々がやっていることは決して悪いものではないということが分かるだろう。もしかしたら、それを機に新しく人材が増えるかもしれない。人材が更に増えていくとなると、それをまとめるのは一人だけでは困難になる。特に監視の意味では、一人で追い切れない可能性が高い。そこで考えたのが幹部の存在だ。なるべくなら統率力のある者が好ましい。
ここまで考えついたときに一つの問題にたどりついた。大きくなった組織の表舞台を歩くのは自分の本来の計画を進めるのに支障をきたす可能性があるのではないかということについてである。そこで考えたのが自分よりも更に上の地位――つまりリーダー的な者を作り、組織全体を導いてもらうことだ。その存在がエスケープゴートのような役割を果たすと同時に、自分は組織の後ろ側に回り、自分の為の計画を進めることが可能になる。
さて、そこでリーダー的な存在にふさわしい人物とはどのような器のことを指して言うのだろうか、カリスマ性……確かにそれも求められる。他にはやはりポケモンは味方、ポケモンといる人間は敵ということを教え込んだ方が望ましいだろう。何故なら自分が作ろうとしている組織はポケモンから人間を解放するという目的に立っているのだから。ここまで来たら思いつく方法は実に簡単だ。小さな子供に人間の手によって捨てられたポケモンと共に過ごしてもらい、ポケモンは味方、人間は敵だという刷り込みをするのだ。ちなみに何故、小さな子供なのかというと、子供の吸収力や周りの環境から受ける影響力が強いからである。この強い吸収力や影響力を持って人格が育っていくといっても過言ではない。
組織にふさわしい人格を製造する為の調教。
この調教は長期間に渡り行い、その子供が大きくなったときに組織のリーダーとして世界を動いてもらうことにしよう。求める気持ちは分かるが焦っては駄目だと自分に言い聞かせる。育った環境の中で培った意志というものは決して簡単に曲げることはできない。その子供にはそれを武器に戦い、自分はそれを駒として動かすだけのこと。こうなれば、誰も自分の邪魔はできない。
全ては自分の手中に。
人間も。
ポケモンも。
そして世界も。
全ては自分の手中に――。
そのはずだった。
唐突に現れた二人の少年少女に全てを変えられてしまった。
小さな子供も育ち、大人になり、組織のリーダーが完全に生まれて組織が活発に動き出したときにその少年少女は現れた。
組織の行く先々に彼らは現れ、何度も邪魔をされた。
最初は些細な被害であったが、彼らが強くなっていく度にその被害は徐々に拡大していく。
何度、彼らをどうやって弄ぼうかと思い、その身に絶望を刻みこんでやりたいと願い、殺してやりたいと叫んだことだろうか。
しかし、自分の思いとは裏腹に少年少女は組織に傷を与える。
自分の世界にも傷が入っていく。
最初はかすり傷のように、それから転びに転びまくってヒビが入っていき、最後は高いところから突き落とされたビー玉のように地面にたたきつけられ――。
世界が壊れた。
レッドアウト。
【<<Tr>>】
「ぐわぁああああああああああぁぁあああぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
そこは一つの病室。
真っ白なベッドの上には横たわっている黄緑に染めた髪を持つ男が一人いた。
その男から見て右側の目は白い包帯で巻かれていたのだが、その白さは今ではもう跡形もなく真紅に染まっていた。
「ワタクシの、ワタクシの世界がああぁぁぁぁぁあぁあぁぁああああああああああああ!!!!」
その男は発狂したかのように声をあげ、その悲痛な叫びから救いを求めるように左手を天井に上げていた。
しかし、その左手は空を切るばかりで何も掴めていない。
ただひたすら、右目から絶望を包帯に滲ませながら叫び、左手を挙げている男の様子を、二足歩行でたて髪を部分的に赤く染めた黒い狐が三匹見つめていた。
悲しげな顔を浮べながら、しばらく見つめる三匹の黒い狐の耳に不協和音が流れ続ける。
やがて、何かを諦めたかのような顔を浮べた三匹の黒い狐は男に向かって一つ鳴くと、近くにあった窓からその身を消していった。
その三匹の黒い狐のことなどは全く見えておらず、男は叫び続けるが――。
やがて男の左目に映っていた白い天井が黒く塗りつぶされた。
『次のニュースです――という事件で、ゾロアーク三匹を助けた男は病院に搬送され――』
【書いてみました】
ある日のこと。
ことの始まりはふとした疑問からでした。
「ゲーチスの右目にある仮面みたいなのって何かな? スカウ○ーみたいなもの?」
「それともゲーチスの右目には傷があって、それを隠す為のものなのかな」
皆さんも気になりますよね、あのゲーチスの右目の仮面(?)の存在。
さて、この妄想がどう展開したかといいますと。
ポケモンBWの世界はもしかしたら右目に幻想を埋め込められたゲーチスさんが、見た世界なのかもしれなくて。
そして、そのゲーチスさんの右目に幻想を埋め込んだ三匹のゾロアークこそが、ダークトリテニティで、きっと彼らは恩返しをしたかったんだけど失敗しちゃったかもしれない、といったように滅茶苦茶な妄想が大爆発しております。
ちなみに、これを忘れてはいけませんということで、タイトルの<<Id>><<Tr>>の意味について。
『<< >>』は右目、左目を表しており、(本人から見て)右目にはId=Ideal=理想、左目にはTr=True=真実と、ポケモンBWのテーマでもあるものが埋め込められています。
そういえば、三色目が出るとしたら、ゲーチスの過去を覗けますかね……? それがすごい気になるのですが(ドキドキ)
彼がどのような過程で世界征服しようと決めたのが、今回の物語の執筆を通して、更に興味を持った今日この頃です。
ありがとうございました。
【何をしてもいいですよ】
【三色目はいつに( 】