僕が生まれて初めて見たものは高い高い空をかけて行く大きな生き物だった。
気がつくと荒野に一人たたずんで空を見上げていた。守ってくれる親や仲間などいるはずもなく、
身を守るすべや生きるすべを知ることもなかった。
のこのこと歩いていたら怖い目にあう。これだけは理解するのに難しくなかった。
ひ弱な体をふらふらさせ、一匹で歩く姿は恰好の的なのだろう。
こそこそと物陰で寝泊まりし、細々と食いつなぐ生活……
頭の中にはただ一つ。 あの空を自由に駆け回るんだ!
どうすればあの空を走れるようになるのか、全く分からないけど前へ進むことしか頭になかった。
あの生き物が進んでいったほうへ……それがきっと空に繋がっているはずだから……
ただただ前に進んだ。前へ前へ。空へ空へ。
そうしてどれほど進んだのかわからなくなっても、さらに歩き続けてたどり着いた森の入り口。
木に片足をかけた鳥が不思議そうに首を曲げ、ただただ空を見上げ前へ進む僕を見ていた。
「お前はどうして空を望んでいるのかな?羽がないものは地に足跡を付けながら生きるしか術がないだろうに。」
そう何気なく言った鳥は、木にかけた片足を外し僕が願ってやまない空へと軽々と、飛んで行った。
しばらく鳥が去った方を呆然と見ていた。
なぜ気付かなかったのだろうか……確かに空を駆ける者はすべて羽を持っていた。
そしてそれは僕にはついていないものだった。
ふと冷たいしずくがほほを伝った。悲しくて悲しくて。ただただ空を夢見て前へ歩いてきた心に、ぽっかりと大きな穴が開いたようだった。
涙の足跡を作りながら、とぼとぼと森を進む。
もう少しで広い広い空を遮る鬱蒼とした木々もなくなりそうな気配がしてきても、僕は一向にうつむいていることしかできなかった。
高くて手の届かない空の元に出ていくのが悲しくて、ゆっくりゆっくり森の中を進んでいたとある晩。
目の端にかすかにきらきら光るものが見えた気がして、そっと光のほうへ近づいてみた。
木の陰から光を覗くと、どうやら森でよく見かけた木や地面にひっついて動かなかった者たちが光っているようだった。
その光がだんだん強くなっているみたいで、あたりは月の光が地面を照らすよりももっと明るくなってきていた。
綺麗な光景に声をなくししばらく眺めていると、木に張り付いていた者たちから羽が生え、木から、地面からふわりと、足が離れたのだった。
飛んだ……。
彼らは最初こそ頼りなくふわふわしていたものの、次第に羽をひらりひらりと躍らせて一匹、そして一匹……と夜空へと舞って行った。
初めて目にした進化に僕の興奮は止まらなかった。
今はひ弱で羽のない小さな体でしかないけど、僕たちには進化がある!!いつかきっと力強くなってあの空だって駆けまわれるようになるに違いない!!!
そうだ。まだあきらめるには早い! まだまだ。前へ!前へ!
森を抜け、地を駆け、もっともっと先へ!
そしてあの空へ! あの果てしなく広がる広大な空へ!!
……そうして歩き続けてるうちに僕は大きくなっていた。
手足が大きくなり、体は逞しくなって、しっぽだって見違えるくらい太くなった。そうして……羽は……。
僕はいまだに空から遠く、あの者たちのようには舞うことができず、地面にへばりついて足跡をつける毎日。
結局僕はあそこに行くことができなかったのだ。
それでも……と僕は歩きだす。
僕は大きくなった。逞しくなった。
ひ弱な体で歩き回り恰好の的になっていた僕は、今や返り討ちができるほどに強くなった。
空には手が届かなかったけれど、それなら僕は僕のやり方で空に挑戦してやろうじゃないか。
この地面にたくさんの足跡を残して、あの大きな空からでも駆けまわる僕が分かるように。
僕は僕のやり方であの空を目指そう。
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コンテスト参加した小説を修正しました。
多少はましなものになった!!はず!!ですwww
けど、厳しい評価大募集ですwww
タグは 素敵にしてくれてもいいのよ っていう感じで。