理想を実現しよう。
一人の人間がそう言った。
酷い現実に見て見ぬふりをすることこそが悪なのだと。虐げられる者を救うことの何が悪いと熱弁を奮う人間がいた。
開放を。自由を。
その理想に自分も惹かれた。傍らの相棒を虐げたことなんてなかったけれど、自分は虐げられる側だったから。傍らの相棒に救われたことがあったから、救われるのことの大切さを知っていたから。自分にできるなら、力になりたかった。
その理想が押し付けであることも、それをすることで今度は別の誰かを虐げていると分かっていた。それでも、虐げている誰かは悪だと思っていた。
理想の前では犠牲はつきもの。悪の犠牲で済むならば、安いものだとそう思っていた。
そう思って久しかったが、一人のトレーナーが自分の前に現れた時、間違いだったのだなと気付いた。
傷つきながら不敵に笑い、挑んでくるトレーナー。その期待に応えながら、戦うポケモン。その姿は虐げられる側でも虐げられた側でもなかった。
冷水をぶっかけるようなその真実を目にしてしまえば、すべての人間からポケモンを奪えば、理想を達成できるという思いはあっさりと消えてしまった。
だから、理想を求めた物語はここで終わる。
次は正しく理想を実現するためにどうすればいいか考えよう。
だから、これから始まるのは終わった後の物語。
理想を抱いて、真実に敗れた後から始まる物語。
――ポケットモンスターブラックホワイト2――
最近はRPGの前になにか入れるのがシャレおつだそうなのでってことで嘘予告第三弾
【なにしてもいいのよ】