グロいです。
ユウキが久しぶりにホウエンのミシロタウンに帰ったのは、チャンピオンとなり、さまざまなところへと行った後だった。もうすでに年も14となり、成長期を迎えて体格もそれなりに男らしくなってきた。
懐かしさのあまりユウキはミシロタウンの入り口から走って家にたどり着く。久しぶりに見る両親の顔や、自宅に置いて来たポケモンたちと再会する。オーレ地方では危険だからと精鋭しか連れていけなかったし、イッシュ地方では新しいポケモンを捕獲するのが忙しかった。だからこそホウエンでチャンピオンとなった時のメンバーとはだいぶ違ってしまったが、ユウキにとっては大切なポケモンたちだ。
しばらくゆっくりするつもりで帰って来た。そういえば友達たちは元気だろうか。あれから手紙を1年に一回送るか送らないかの仲ではある。新しいポケモンはいるのかな。病気は完全に治ったのかな。
自宅にいるとは限らないけれど、ユウキはまず同じ町内に住むハルカを訪ねる。オダマキ博士への挨拶という名目だったが、やっぱり友達に会いたいというのが強かった。あの時と変わらない。呼び鈴を押す。
「あら、ユウキ君じゃない。ごめんねえ、ハルカいないのよ」
用件を言う前にいきなり追い返される。昔からちょっとつっけんどんなお母さんだなと思っていたけど、こんなに冷たい覚えはなかった。
仕方ない。オダマキ博士への挨拶だけは済まそう。ユウキはオダマキ博士の研究所へと足を運ぶ。
「おやユウキ君。久しぶりだな。元気そうで何よりだ」
「はい。お久しぶりです。博士にいただいたポケモンもかなり強くなりました」
たわいもない世間話だ。昔話からチャンピオンになった後にどこにいったのか、そしてその間に捕まえたポケモンの話。
さらにユウキは気になったことを聞いた。
「家にいったんですけど、ハルカいなかったんですよね。やっぱりフィールドワークの手伝いを……」
「ああ、ハルカならどこかいるんじゃないか」
ユウキの言葉を遮ってオダマキ博士は答える。その雰囲気に疑問を持っても、もしかしたらいなかった数年に何かあったのかもしれないし、あまり詮索することではない。土産として持って来た向こうの珍しいモンスターボールをオダマキ博士に渡すと、ユウキは研究所を後にした。
やたらと知識だけはあったハルカのことだ。もしかしたらすれ違いで旅に出てしまっているのかもしれない。それで帰りが遅くて心配してるのかもしれないし。
ユウキは部屋でゴロゴロとしていた。オーレで買ったポケモンデジタルアシスタントを見ていると、お腹の上にプクリンが乗ってくる。気持ちよい手触りの毛並み。この毛並みを整えるためにシンオウのデパートではポフィンを探した。そのおかげでコンテストでも勝てた。けれど戦うことに関しては、毛並みが崩れるのを防ぐために自宅へ預けていた。
するとポケナビにメールが入る。久しぶりから始まるメール。ハルカだった。
「おかえり私のいない間に帰ってたんだねユウキ君血がほしいよどうしたらいい私に血がないの」
何のこったい。意味の解らないメールにユウキは返信に手がのびない。こんな気味の悪い文章を送ってくるような子ではなかったと記憶している。ズバットを育ててた時もそんなこと言わずにオレンの実をあげてたのに。
「どうした?クロバットがそんなにたくさんいるの?」
当たり障りない返事を打つ。数分もしないうちに帰ってくる。
「違う血が欲しい血があればよかったのに」
なんだかおかしいと思った。ユウキは上半身だけ起こして急いでメールをうつ。
「今から行く。どこにいる?」
ポケナビを置いた瞬間だった。再び受信のメールが来たのは。
「家」
ユウキは自分のモンスターボールから一つ選ぶ。あのお母さんに会わずにハルカに会える一つの方法はテレポートしかない。スプーンを二つ持ったフーディンがあらわれる。
いきなり部屋にテレポートするにはためらった。せめて部屋の前、二階の廊下にするべきだろう。そこまでフーディンが考えていたのかは知らないが、ユウキがテレポートした先はちょうど部屋の前だった。ノックして、返事のないドアをあける。
「なんだ、ここ」
前はエネコのぬいぐるみが飾ってあったのに、いまは殺伐とした風景だ。旅先で会った同い年くらいの女の子たちだってもっとかわいいものを身につけていた。それなのになんだここは。廃墟のような部屋にユウキは何も言えない。そして人の気配などなかった。
「まったく、あの子はどこいったのかしら。ハルカ!」
ハルカの母親の怒声が聞こえる。ここにいるのがバレたらヤバい。ユウキはクローゼットの中に隠れる。その直後、ドアが勢いよく開いた。
「抜け駆けだけは早いんだから。掃除さぼって何をしてるのかと思えば。全く。今日のご飯は無しね」
ユウキが聞いてるのも知らず、不機嫌な足音をたてて去って行く。遠くなったのを見計らい、ユウキはそっとクローゼットから出る。
「なんだなんだ、何が」
ハルカはいない。そして荒れた部屋。ハルカの母親の態度。そしてオダマキ博士の態度。それらを総合すると、ユウキはとてつもないことに関わってしまったような気がした。帰った方がいい。ユウキがフーディンのボールを出した時に気付く。
机の上にある古い日記。他人のものを見てはいけないと思いつつ、ユウキは手を伸ばした。何か解るかもしれない。
「今日はご飯なかった」「おとうさんになんで帰って来たって言われた。」「鍵をかけられた」
ユウキは読む手を止める。あの温厚そうな博士がそんなことを言うとは思いもよらない。ユウキはページをめくる。
「血が欲しい」
それだけ見開き1ページにでかでかと書かれていた。
「出て行きたい血が欲しい血があればやさしくしてもらえる」
また血だ。ユウキはさらにページをめくる。
「ミツル君は血がないのにどうして優しいの。どうして私にはない。消えてしまいたい血だって消えていくよ」
ミツルにあって、ハルカにない?ユウキはますます混乱する。最後のページを見るまで。それを見てユウキは固まる。そして。
「フーディン行くぞ」
フーディンに命令し、その場から去る。ハルカの行きそうな場所。そこは
「ハルカ」
ユウキは彼女の名前を呼ぶ。同じくらいの高さだったのが、今では頭一個分ユウキの方が高い。
「迎えにきた。帰ろう」
振り向いた彼女の顔は暗く、久しぶりに会うというのに笑顔一つみせない。
「血がないと帰れない」
「だから俺と帰ろう。ハルカの居場所はあそこじゃないよ」
「どこに帰るの」
「ホウエンは広いし、他の地方だってある。俺が行ったところはほとんどみんな優しかったよ。大丈夫、俺も一緒に行く。ハルカが博士の本当の子じゃないなら、ここに居続ける必要だってないだろ?」
血はクロバットの餌のことじゃなかった。血縁関係のことだった。最後のページには戸籍謄本が折り畳まれていた。そこに書いてあった事実はユウキにも衝撃を与える。
友達が困ってる原因がこれだ。これしかない。ならば少しでも助けたい。ユウキはそんな思いで来た。すでに旅立つ準備もして。
「それにハルカだってホウエンを一周したんだから旅慣れてるだろ。行くぞ」
ユウキはハルカの手を引っ張る。帰るところはミシロタウンではない方向に。
ーーーーーーーーーー
Q何が書きたかったの
A解らん
オダマキ博士って主人公には色々してるけど、実子の方には多少つめたいのを大きくしてみた。
【お好きにどうぞ】