テーマ:『マメパト』
おととしの九月から結成されたというマメパトの革命集団『覇闘暴』が、マサラポケモン自治区の豪雪地帯にある『招雪西都(しょうせつさいと)』をクーデターで落とし、その際に図書館の中庭を利用して乗っ取り記念鴨鍋パーティーなるものを始めたそうだ。 何を煮込んでいるのか……それは、つい最近までここを収めていたというポケモンたちだろう。見覚えのあるその亡骸が肉となり、骨となり、出汁としてスープにされていたのだ。
この鴨鍋パーティーに俺たち掃除屋(スカベンジャー)が呼ばれたのは、何の間違いかと思ったものさ。なぜって、俺たち最下層のポケモンは一生を労働に費やし生きる『掃除屋』なのだから、政治には無関係の存在だ。政権なんて誰が執り行おうとも変わらないから、政治にはほとんど無関心で生きてきたし、むしろ鳩のくせにタカ派のあいつにゃ、無関心ながらも風のうわさを耳にしては不信感を抱いたりもしたもんだ。 そんな掃除屋を鴨鍋パーティに呼んだのは、俺たち掃除屋に一つの仕事を頼むためであったようだ。
それは、屈辱と恐怖を与えることだ。前の政権を牛耳っていたやつらの家族や、腹心などに恐怖や屈辱を与えるには、俺ら最下層の住民に喰われることが効果的だと。 掃除屋……それは、文字通り掃除する事ではなく、雪の季節はいつまでも残る凍死体を骨まで余さずに処分するバルジーナとグラエナの事を指す。 鍋によって出汁を吸い尽くされた骨を、雑炊と一緒に振る舞われる。正直、マメパト共のこともあまり好きではなかったが、久しぶりの暖かい飯に俺は飛びついたってわけさ。 俺はグラエナ。丈夫な顎と丈夫な胃袋で、骨まで食ってしまう掃除屋だから、恐怖を与える役にはもってこい。 バルジーナの野郎どもは、頭骨をオムツにしてやるだとかで、わが子に対して王冠のようにカモネギの頭骨を差し出してやっている。屈辱を与えるには追って来いってこったね。 そのおどけた様子を、マメパト共は酒に酔いしれたようなテンションで、楽しそうに見守っていた。
さて、このマメパト共の権力もいつまで続くことだろうか。俺の生活はきっと、だれが政権を握ろうと変わらないだろうがね。
(スラム街に生きる掃除屋グラエナHさんの証言より抜粋)
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