灰色の路地を走り抜ける小さな火があった。
様々な音が起こり傾れぶつかり壊れ爆ぜていき幼いヒトカゲの耳は都会の騒音に対応など出来るはずもなかった。
必然的に彼はネオンの明るい場所から暗がりへと逃げ込む。全ては投げかけられた言葉の悪意から逃げるため。
生まれおちたポケモンに何故自分がここにいるか何のためにここにいるかをすぐさま理解するほど彼は聡明でなかったにせよ、本能は敏感にこぼれおちた言葉から己が求められていないものであると感じ取った。
次に来たのは『ここにいては危ない』・・・全く根拠がない思想だと言えばそうであるが、小さな蜥蜴はその感覚を信じて疑わず戻される前にそろりと駆けだした。
もっとも、彼の“親”に当たるトレーナーに言わせれば、数ある卵から作った失敗作が一匹、目を離したすきに逃げだしただけであり、気にも留めなることもなければ、ただ都合が良いと感じたのだろうが。
所詮は逃がす運命である。その手間が省けただけの事。
それでも親から逃げだすだけで持っている勇気も度胸も振り絞ってしまったそいつは、駆け込んだ先から翻る光にわずかにしか反応できなかった。
突っ込んで来たのは発光体ではなく、路地に入る光を反射した鋭利な爪が振り下ろされる。咄嗟にトカゲがとった行動は、全く同じ技をぶつけ返すことだった。
弱い力とはいえ踏み込んだ反動を利用した大振りの攻撃はともかくふってきた攻撃を払いのけた。思いがけず反撃にあったらしく少しばかり派手に飛んでいったそいつに影が群がる。
すぐさま立ち上がったそいつは、そいつ等はぱっとヒトカゲを取り囲む。
光にてらされてきらりと光る全身刃物、ただじっと見つめるコマタナ達に進むも引くもたたれた蜥蜴は、諦めることすらも忘れてただ両手の爪を鋼色に変えかけた。
その場を制止する声が届く。びくりとコマタナ達の動きが止まった。
おもしろいな、私達と同じ技を使う輩か。暗がりから音もなく出てきたそいつは低い声でそう言った。気に入った。そいつを持って帰るぞ。
言葉が終らないうちに蜥蜴の腹に一発ぶち込まれた。軽く意識が吹っ飛んだそれを何処か不満げなコマタナどもが担ぎあげる。
かくして、都会に潜むキリキザンの群れの中に見慣れないポケモンが混ざるように噂される数時間前の事。
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余談 エイプリルフールです。本当はこの後立派に成長したリザ―ドとコマタナ3兄弟の掛け合いやらキザン隊長達もマメパト大反乱に加わるはずだったのですが死力を振り絞ったポッポ部隊にぼこされて消えました。
べ、べつにイケズキさんと朱雀さんのお誕生日おめでとう御座います話をこの日に流用しようとか思ったわけじゃないですからね。
【好きにすればいいのよ】
【いまさらですがお誕生日おめでとうございまする】