ドッ
ドッ
ドッ
ドッ
冷たいコンクリの床に寝そべっていると、耳を貫くような底から湧き上がってくる音で目が覚めた。俺は体に合わない小さな耳をピクリと動かす。エンジンの調子はいいようだ。そして、主人の機嫌もいいようだ。
「……よっし!異常なし!あとは着替えてヘルメットとゴーグルつけて」
主人は女だ。だが性格は男だ。普通、女が相棒と一緒に乗れるくらいのサイズのバイクを購入したりしないだろう。横に俺専用のカーをつけて。ちなみに色は青と黒。寒色系のコラボレーション。
暖色系の体を持つ俺が乗ると、何処へ行っても目立つ。
「はい、アンタもこれつけて!ヘルメットとゴーグル!まだこの季節は風が冷たいし、変な物目に入ったら困るから」
主人は既にレザージャケットに着替えていた。元々豊かな胸が、黒い服のせいでウエストが縮まってるように見えて更に強調されている。これで髪ゴムを外してそのままにすれば、どこぞのモデルのようになるだろう。
もちろん言わないが。
俺は言われた通りヘルメットを被りゴーグルをつけた。暗い赤の世界が無限に広がる。そのまま専用のカーに乗り込む。主人も隣のバイク本体に跨り、再びキーをまわした。
心臓の鼓動。
エンジン音。
全てが混ざり合い、耳に入っては通り抜けていく。
「さあ、目指すはサザナミタウンよ!Lets go!」
(果てしなく遠い ゴールを探しながら 高速で転がる 直上型のBIG MACHINE)
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この一人と一匹はユエとバクフーンです。似合うかなーと思って。
【何をしてもいいのよ】