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  [No.2411] 世界で一番の貴方へ 投稿者:ことら   《URL》   投稿日:2012/05/05(Sat) 23:03:12   114clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 爆発音が聞こえる。

ダイゴさん。
どうしたの?久しぶりにそう呼ばれたな、ハルカちゃん。
ダイゴさんに会ったのは、ちょうど今の私くらいの時で、石の洞窟でしたね!
ああ、そうだね。真っ暗なところに手紙届けに来たのがハルカちゃんだったね。女の子一人ですごいなぁと僕は思ったよ。

 続くコンクリートが崩れ落ちる音。

私、その時なんてかっこいいんだろうって思いました。一目惚れっていうんですかね、とにかく好きです。
ふふっ、知ってるよ。僕もハルカちゃんが大好き。
でもそれ以降、全く会えなくて寂しかったんです。だから川の向こうで会えた時は凄い嬉しかったんですよ!
ハルカちゃんが僕を好きでいてくれたから、とても嬉しいよ。
その頃からではないですよね?
知ってたのか。もう少し後だったけどね。でもとにかくハルカちゃんは僕のことを一人の男として好きになってくれたことは嬉しかったよ。
前にも言いましたけど、ダイゴさんを好きって言って、ダイゴさん以外のどこを見ればいいんですか。
ハルカちゃんは本当に人を見るんだね。世の中には人ではなくて、お金とか地位しか見ない人間が多いんだ。

 異変に気付いた人々が次々に通報する。

それからカクレオンにぶつかった時は、道具くれましたよね。デボンスコープ、もう動かないけど。
ものはいつか壊れてしまうものさ。あれから長いこと動いたし、長持ちした方だよ。
でも私がダイゴさんからもらった初めてのプレゼントはあれなんですよ。だから大事にしてたんです。
そうだったの。もう少し気の利いたものをあげれば良かったね。

 集まってきた人は、モンスターボールからポケモンを繰り出した。

次にもらったのも、トクサネのダイゴさんの家に行った時の秘伝マシンです。
あれ、そうだっけ?ハルカちゃんにはたくさんプレゼントしたから覚えてないな。
もう、ダイゴさんはどうして私の気持ちを考えてくれないんですか。女の子が好きな人から貰ったものは、全部覚えてるものです。
そうなんだ。やっぱり僕は幸せだな。こんなに好きな人に愛されてるなんて。
…愛してますよ。ずっと。初恋は実らないとか言いますが、私が好きになって愛した人は生涯でダイゴさんだけです。

 それぞれ状況にあった技を指示する。

それから、グラードンと戦った時もカイオーガと戦った時も、ずっと側にいてくれた。私はダイゴさんが側にいてくれるだけで頑張れました。
僕は本当に何も出来なかった。空をみて現状を嘆くくらいしかできないのに、ハルカちゃんは惨事に立ち向かっていったね。なんて強い子だろうって思った。同時に勝てない、いつか負けるって思ってたよ。でもその頃から好きだったのかもしれない。ずっと気になってた。
だから私が帰って来るまで待っててくれたんですよね。凄い嬉しかった。

 人だかりになっていた。

でもチャンピオンって黙ってたのは今でも思い出すとムカムカします。
前も言ったけど、怖かったんだよ。ハルカちゃんが僕自身を好きになってくれても、チャンピオンっていう地位に目移りしちゃうんじゃないかって。
だから私はダイゴさんの元カノじゃないんですから!ダイゴさんの役職を知ったところで、目移りするわけないじゃないですか!それに…

 上空にはヘリコプターが飛んでいた。

何も言わずダンバルおいて行っちゃうし!
だからちゃんとエントリーコール出たじゃない。
出ればいいってもんじゃありません。おいてかれた私の気持ちはどうなんですか!
だからシンオウの珍しい石をお土産に…冗談だよ。知ってたから怖くて逃げ出した。僕は臆病だからハルカちゃんより弱い男なんて受け入れてもらえないんじゃないかって思ってたんだよ。
ずっと思ってましたが、ダイゴさんは考えすぎです。考えたことを話してくれないから不安になるんです。
そうだね。付き合うようになってから会話の数は増やしたつもりだったけど、やっぱり不足だったかい?
私は欲張りだから、ダイゴさんともっと話したかったです。ダイゴさんと恋人になれて嬉しくて、たくさんダイゴさんのこと知りたいと思いました。初めての夜は、最後までできなかったこと覚えてますか?
そんなこともあったね。あの時は僕も緊張しててね、隠すのが大変だったよ。

 それでもこの状況は変わらなかった。

ダイゴさんがプロポーズしてくれた時は凄い緊張してたのを覚えてます。ダイゴさんは緊張すると物凄い早口になりますから。私の聞き違いかと思いましたもん。
そりゃあ緊張するよ。ハルカちゃんは解らないかもしれないけど、受け入れてもらえなかったら僕はただのロリコンじゃない。それに結婚した当時でさえ出来たから結婚したって散々陰口いわれてさ。3年後に一人目が出来た時は僕の容疑も晴れて嬉しかったな。
妊娠したって一番喜んでくれましたよね。不安で仕方ない時もずっと励ましてくれた。そのことを友達に言ったら、有り得ないって言われたんですよ。
えっ、なんで?
旦那がそんな優しいのは有り得ないんだそうです。
そうなの?だって僕がハルカちゃんの青春を全部持って行っちゃったようなものなのに、優しくしないのがおかしいと思うんだよなぁ。
ダイゴさん。だから私はダイゴさんが好きです。初めて会った時からずっと好き。
ありがとう。僕も大好きだ。ハルカちゃんが僕の妻で、とても嬉しい。

 さらに人は集まるが、事態は一向に収まらない。

子供が大きくなって、ポケモンが欲しいって言われた時、ユウキに頼みましたよね。ユウキは自分の子供の面倒も忙しいのに、大変そうでしたよ。
ああ、ユウキ君には悪いことしたね。いきなりポケモンが欲しいって言って、困らせた。けどお世話になってるからって最優先で用意してもらえて。僕はとてもいい人たちと知り合っているんだね。
あの子たちも大きくなって、世界大会まで行きましたね。やっぱりダイゴさんの子なんだなぁって思いました。
ハルカちゃん、自分の功績も忘れないでね。ハルカちゃんも強いよ。僕たちの子だもの、強いに決まってるさ。

「父と母がいるんです!」

私たちを必要としない年齢になった。ポケモンたちも支えてくれる。
もう行こうか。僕たちはここに留まってはいられない。
ねぇダイゴさん。世の中にはどんなに愛し合っていても、最期は一人だって言うじゃないですか。私は違う。最期の瞬間までダイゴさんの隣で、ダイゴさんの顔を見て。
僕も同じだよ。最期の瞬間に愛してる人を見ながら死ぬことが出来る。残された方はこんな事故で悲しいかもしれないけどね。
あなた。
ハルカ?
ううん、やっぱり何年経っても、ダイゴさんはダイゴさん。呼び方が変わっても、ダイゴさん。
そうだね。ハルカちゃん。僕たちはずっと一緒だ。…もう行こう。ここではないどこか遠くへ。幸せな人生だった。だからこそ次の人たちも幸せであるように。
はい。ダイゴさんと一緒で、私は幸せでした。


 リニアが爆発した。ほとんど原型を留めずに散っていた。
 テロと思われたが、原因は整備不良によるもの。
 乗客乗員全員が死亡。大惨事に連日新聞のトップを飾る。
 その中に大企業デボンコーポレーションのトップとその夫人がいたことは、マスコミがいち早く嗅ぎ付けたが、その子供たちは毅然と彼らを避けたという。

ーーーーーーーーーーーーー
スパコミで手に入れたダイハル小説があまりに感動しすぎて、その勢いで書いたもの。
【好きにしてください】


  [No.2412] 走馬灯 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/05/06(Sun) 22:22:29   87clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

短めですが感想を。

私は「ゼルダの伝説」シリーズの中でも、64の「ムジュラの仮面」が一番好きです。
三日後に滅びてしまう世界の中で、人々はそれぞれの形で死と滅亡に向き合おうとします。
人によってその姿勢は多種多様ですが、どれもとても人間らしく、記憶に残るシーンばかりでした。

このお話も、回避できない滅びを前にした二人の心情をつぶさに描いたものになっています。
二人の安らかな語りと、行を追うごとに壊れていく世界の対比が、悲しくも美しい模様を描いています。

二人の死という結末は変えることができず、読者はかなり早い段階でその事実を知ることになります。
ずっと前にどこかで書いた記憶があるのですが、結末の読める物語というのは通例、つまらないものになりがちです。
しかし、このお話のように「結末(=滅び)を前提とした」形を取る場合は、結末が明確に、かつ動かしようが無いと分かっているほど、かえって強い印象をもたらします。

以前、同じように「滅亡を前にした人々」をモチーフにして一本書いて、今一つ綺麗に決まらなかった経験があるので、
いずれどこかでリベンジを決めてやりたい、そう思わせてくれるお話でした。

今後の更なるご活躍を期待しております(´ω`)