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  [No.2431] 花と嘘 投稿者:レイニー   投稿日:2012/05/22(Tue) 10:30:44   106clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 始まりは、一輪の向日葵だった。出かけた先で親切な人から偶然一輪もらったのだ。
 家に帰って一輪ざしに挿してみたら、彼女が反応した。草タイプであるチュリネにとって、やはり花に対して何か思うところがあるのだろうか。
 日課の水やりは、気がついたら彼女がするようになっていた。時折一方的に花に話しかけたりしていた。その姿は花を愛でるというより、共に日々を過ごしているようだった。

 そんな向日葵はあっけなく最期の日を迎えた。
 しょげている彼女を片目に見ながら、枯れた向日葵をゴミ箱に捨ててしまうのは忍びなかった。

 向日葵が去ってから、彼女はすっかり元気をなくしてしまった。
 彼女がふさぎ込んだ姿を見るのがあまりにも辛かったので、僕は嘘をついた。
 彼女のために新たに買ってきたのは、作り物の花。
 紙で出来た偽物だということを知らない彼女は元気を取り戻した。

 この枯れない花のように、彼女の笑顔が枯れなければいい。そう思っていた。
 しかし、僕は彼女に優しい嘘をついたことを後悔することとなる。

 彼女は花に水をやりつづけたのだ。かつて本物の向日葵にそうし続けたように。
 僕がこっそり水を捨てても彼女は水がないことにすぐに気づき、水をやっていた。
 紙で出来た花は水を吸い、枯れないはずの花はどんどんやつれていった。

 彼女は造花が弱っているという不自然な状況には何も気づかず、かつて生きた向日葵に与えたそれと同じように、ちょっと悲しそうな瞳をしながら、それでも水をやり続けた。

 ふと、昔テレビで観た物語を思い出した。
 親がこの世を去ってしまったことを言いだせず、優しい嘘をついた兄。親が戻ってこないことを知らず、帰らぬ親を思い続けた妹。

 ああ、優しい嘘は、何も事態を解決しやしないんだ。

 僕はもう限界が来ていた美しかった紙を捨て、新たな命を購入し、花瓶に挿した。
 今度は命の終わりをきちんと彼女に語ろうと心に決めて。


 時が過ぎ、そんな彼女も今はドレディアになった。自らもいずれ枯れるのだということを理解しながら、そしてその時が近づきながらも、今でも花に水をやり続ける日々だ。
 そして僕も、いずれ枯れる日が来るまで、彼女が花と共に生きるように、彼女と共に生き続けよう。


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最近文章書きから遠ざかってしまっていたので、リハビリのための習作。

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追記:投稿久しぶりすぎてタグ付けるの忘れてました(汗)
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