最近ポケモンが減って来た。原因など解っている。戦争が始まったからだ。
優秀なポケモンはもちろんのこと、その辺にいる適当なポケモンだって戦力になると捕獲された。
そんな戦争の初期、優秀なトレーナーはみんな徴兵された。この男もそろそろ自分の番とおびえている。
殺し合い、奪い合い。なぜお上の決めたことに命をかけなければならない。いや原因は向こうの国が無茶難題を押し付けるからだ。そうでないと、今の裕福な生活はまもれない。そんなことは解っている。それでも殺される恐怖や徴兵される恐怖におびえていた。
いつもならポケモンの鳴き声が朝からけたたましい。けれど最近はめっきり静かだ。静寂の朝を迎えて男は郵便受けを確認する。
良かった、今日も来ていない。徴兵を知らせる紙が。
「ぽぽくるぽー」
男は上を見上げた。聞こえるはずのない声がする。
この声は誰だ。確か、そうだハトーボーだ。ポケモンがまだいる。まだ鳴いている。野生のポケモンはまだ生きてる!
しかし屋根を見ても空を見ても、ハトーボーの姿はなかった。鳴き声だけがそこにある。姿は見えなかった。
「くるぽぽぽぽぽ」
男はハトーボーに呼びかける。降りてきてくれ、と。
野生のポケモンはいなくなった。朝も昼も夜も静寂。ひとたびその姿を見せればすぐに捕獲される。だからこそ男はハトーボーの野生に生きる姿を見たかった。
「ぽぽぽぽ」
ずっと右から聞こえる。どっちを向いても右から聞こえる。相当姿を消すのが上手いハトーボーだ。だからこそこんな時代でも野生で生きていられるのだろう。
通りすがりの人が不思議そうな目で見ている。男は答えた。ハトーボーが鳴いている、さっきからずっと鳴いている、と。その人は何も聞こえないよ、と言った。
「くるぽっぽー」
姿は相変わらず見えない。けれどそこに確かにハトーボーが存在している。
昼になってもハトーボーは鳴いている。増えてきたようで、さらに鳴き声はざわざわしている。
ああそうだ、ハトーボーが集まるところには平和の国があると聞いたことがある。
戦争しているこの時代に、ハトーボーが集まるのであれば平和に導かれているのかもしれない。そうだとしたらハトーボーたちを保護して住みやすいところにしてやりたい。
平和の国のハトーボー。ああそうして戦争が終わって、平和な国になって。またポケモンたちが朝に鳴いて一日が始まるのに。
「くるぽぽぽぽっぽー」
なんだって、よく聞こえない。男はそう言った。
男のまわりには常にハトーボーの鳴き声がしていた。心配になった家族が病院に連れて行く。
「ぽぽぽくるるっっぽぽぽー」
突発性難聴。そう診断された。
ハトーボーの鳴き声もその症状だと。
男は認めなかった。このハトーボーの声は確かに存在している。存在しているのに否定するのか、と。
平和はそこまで来ているんだ。そんな病気ではない。
邪魔するな。ハトーボーは確かにいる。姿は見えないけど確かにいるんだ!
「ぽっぽー」
戦争はやがて酷くなり、侵攻されるようになっていった。
それでもハトーボーの鳴き声は止まらなかった。
いつかこのハトーボーたちが戦争をとめて平和に導くと信じている。
男の家も戦地となり、凶悪なドラゴンポケモンに焼かれるまで、ずっと。
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覚えてますか、エイプリルフールという名のマメパト襲来を。
乗っ取られたタイトルを一つずつ見ていって爆笑したのが「ポッポ嫌い」と「よわむしピジョット」だったのはよく覚えてます。
そして漏れず乗っ取られたのがマメパト。
Tranquillは英語でハトーボーです。そろえた方がいいかと思ってこっちにしました。
意外に冗談通じないかもしれません。
外語ポケモン楽しいですね。
ハトーボーの平和の国はいつか使いたいと思っていました。
【なにしてもいいですよ】