「………ぴーかちゅぅ?」
目蓋を抉じ開けると黄色いネズミが、私の顔を覗きこんでいた。
寝不足の頭をフル回転させて、昨日の夜の事を思い出す…。
「そうか、交換して………そのまま寝落ちしたのか。」
てしてしと人のでこを叩いてくる黄色いネズミを無視しつつ、見覚えのある天井を見上げる。
茶色い人の形にも見えなくもない染みがそっぽをむいていた。
何も変わらない
何時も通りの朝だ。
「よし!」
気合いをいれて上半身を跳ねあげる。
黄色い毛玉がころりと転がったが気にしない。
時計は気にしない、今日の予定は無くなった。
外が明るいので朝か昼だ。
とりあえず、ご飯だ。
「ぴーかーー!」
「……黄色もお腹減ったか?」
「ぴか!」
「仕方ないなぁ………てか、お前の名前も決めなきゃな。」
名前を決めるにしても、種族すらわからない。
いや、見たことはある。
たしか、赤い悪魔が使ってた……思い出せない。
寝起き特有の空回りする思考を楽しみながら、フライパンを火にかける。
加熱している間に棚から瓶詰めのポロックを一粒取り出す。
「ほら、ご飯。」
「…………ちゃぁ。」
「ん?辛いのは嫌いか…………あとは酸っぱいのだね。」
「ぴか!」
「えー、酸っぱいのか。ストックほとんどないから後で作りにいかな駄目かな。」
瓶の底の方に辛うじてあったポロックを黄色に投げ渡す。
投げた結果は見ずに自分の朝食に取りかかる。
若干、加熱しすぎたフライパンに油をしき卵を割り入れ蓋をする。
火力を弱火にして、待ってる間にトーストにベーコンを乗せて一枚焼いておく。
布団をたたんで折り畳み式のテーブルを出せばいい案配に朝食ができた。
「いただきます。」
「ぴーかーぴっ!」
重ねられた声に黄色を見るとポロックを両手に持ってぺこりと頭を下げていた。
それから、美味しそうにポロックをかじりだす。
挨拶なんて妙な物を仕込んでるんだなぁ等と思いつつ、目玉焼きに醤油を垂らす。
空間モニターには今日の天気が写し出されていた。
生憎の雨らしいが彼方には関係ないだろう。
たまにはポロックを作る以外にぶらついてみるのもいいかもしれない。
卵の黄身を潰し私はぼんやりと考える。
あぁ、そうだ。
姓名判断師も探さないとな…。
私が交換したポケモンの名前が変えられないと言うシステムを思い出すのは大分先の話である。