あまり知られていないが、ダゲキナゲキとエルフーンは共生関係にある。と、いうのもエルフーンのモコモコしたあの綿は、上質なセルロースで出来ており、人間には理解できないが、メブキジカやバッフロンにとっては甘いらしいのだ(一応、ビリジオンなど三獣士達にとっても甘いらしい)。
何言っているのかよくわからねーと思うが、ありのままに説明するとそれらのポケモンにとってはエルフーンのモコモコはおやつ代わり。綿あめのようなものなのだという。
けれど、エルフーンにとってあのモコモコはファッションだとかクッションだとかそんなチャチなものでは断じてない。外敵が襲ってきたら、それを後ろに向けて身を守るという、有用な使い方があるのだ。
実際、モコモコに噛みつかせて、相手が絡まった綿を取ろうともがいている最中に、綿を千切って逃げたりする姿もよく確認されている。すり抜けの特性も、そうして生き残った個体が積み上げてきた遺伝子の賜物なのである。
戦っても敵わない相手にはそうしてやり過ごし、痺れ粉などをばらまいてエルフーンだが、草食の特性を持つバッフロンやメブキジカにはヤドリギの種も痺れ粉も効かない。だから、普通に考えればエルフーンはモコモコを根こそぎ喰われるしかないのである。
そこで登場するのがダゲキとナゲキだ。彼らは、真っ白な胴着を見に纏い、草で作った帯を締めて気を引き締めることで知られるポケモンだ。彼らは格闘タイプのノーマルタイプに対する優位性を活かしてエルフーンを草食の特性のポケモンから守る代わりに、体毛の薄い身体を傷から守るために綿の衣服を纏うのだ。
そんなエルフーンのセナがやってきて、もう4か月。夏の頃には薄かった背中のモコモコも、だんだんボリュームを増してきているようだ。
その薄かったモコモコというのは、ムーランドやチョロネコのように自然に抜けていくことで薄くなるだけではなく、原因はうちで飼っているポケモンのもう一人、ダゲキのタイショウのおかげだ。
もともとは、お祝いのためにセナをゲットしたのだが、捕まえ方が原因だったのか、最初は俺に心を開いてくれなかった。そんな時でも、本能的に味方だと認識できるのか対象に対してだけは落ち着いて接しており、タイショウの服の修理のために綿を分け与えていた
タイショウは綿を少量つまんで、それをより合わせて糸にする。その糸を、ほつれた胴着と同化させ、繕って穴を塞ぐ。セナを家に迎えるまでは、わざわざ専用の綿を購入していたが、いつでも新鮮な綿が手に入る今の状況を、タイショウは気に入ってくれたようである。
日中の鍛錬を終えると、その過程で傷ついた部分を、夜な夜な修繕する。セナと暮らすうちにそんな習慣が出来てゆき、それが高じた今となっては、暇な時間に他のポケモンの胴着も作ってしまう始末。ダゲキやナゲキは、上手く胴着を作られない子供に対して胴着を作ってあげる習性があるが、その習性の賜物なのだろう。
今日は、数日前に進化したコジョンドのアサヒに対して、一週間かけての進化祝いのお披露目だ。人間と暮らしているうちに、記念やお祝いという概念も覚えたポケモンたちは、アサヒを中心にお祝いのムードを楽しんでいる。
着せてもらった胴着を、鬱陶しいと思いながらもまんざらではないのか、開いた胸元を気にしながらアサヒは照れた顔をしていた。それを作るために体を張ったセナと、腕を振るったタイショウは満足げに微笑んでいる。
「ほら、アサヒ。これが今のお前の姿だぞ?」
みんなが幸せそうな表情になる中、鏡を持ってきてアサヒ自身にもわかりやすく披露目を。人間の俺にとってみれば妙に似合っているその立ち姿。それがポケモンにはどう映るのかわからないけれど、タイショウのためにも喜んでくれるといいな。
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ダゲキナゲキとエルフーンの関係は、私の脳内ではすでに鉄板になっている……ドレディアよりも好きなんです。
野生の本能や習性と人間の文化の融合。そんなものがポケモンにあるのならば、こんな光景もあるんじゃないかと思います。